三時限目:星占いとか、細かいことにこだわっている暇があるのなら、先生の話をちゃんと聞きましょう。
投稿があいてしまってすみませんでした。
またお付き合いしてくださると嬉しいです。
はい、三週間後。小説の中で時が過ぎるのは早い。
体育館に、父兄がひしめき合っていた。
入り口には、『第○回夕日ヶ丘学園高等部夜暗高等学校合同球技大会』という、事実だけを簡潔に伝えているはずなのに、ぜんぜん簡潔になっていない垂れ幕がかかっている。っていうか中国語かよ。
両校の生徒は、それぞれ体育館の前後に控え席があり、そこに座っている。ちなみに、どうでもいいと言えばどうでもいいのだが、天地先生はまだ来ていない。理由は恐らく遅刻だろう。
現在、体育館ステージの上では、教頭による長ったらしい開会の挨拶が繰り広げられていた。なぜ校長ではないのか?理由は単純明快だ。校長がこういう堅苦しいものが嫌いで、教頭はこういう堅苦しいものが大好きなのだ。
と、ここに黙想をしている男が一人。坂本拓馬である。名前がかの有名な幕末の維新志士、坂本龍馬に似ているのは決して気のせいなどではない。
ああ、まだ終わらないのだろうか。
膝の上に頬杖をつきながら、坂本は思った。
教頭は本気で、生徒や父兄がこのような挨拶を真面目に聞いているとでも思っているのだろうか?こんな話を聞いているくらいなら、コーヒーを飲みながら、メザマシてれびを観ている方がよっぽど有意義な時間を過ごせるぞ。
坂本拓馬。『地球環境を良くしたいかもしれない委員会』委員、好きなテレビ番組は、朝のメザマシてれびである。「エコロジー」という言葉にめっぽう弱いが、地球環境を守りたいというその意思と、テレビ番組を見て電力を浪費しているその行動は、本人の中では全く矛盾していないらしい。まあ、そんな感じのよく解らない人物なのだ。 坂本の黙想は続く。
体育館の電球はLEDにならないのだろうか? もう3回も生徒会の意見箱に投書しているのに、なぜまだ採用されないんだ。
今日の占いカウントダウンはいぱーの順位が12位だったのが非常に残念だ。大会の日だというのに。大丈夫だ。ちゃんとヘルプアイテムのギョーザは今日の昼御飯になっているはずだ。ちょっと弁当箱の中身を確認しておこう……
…………な、無い!!
しまった、弁当箱を家に忘れてきた!!後で取りに戻るか。いや待て!そんな暇があるのか!?
たしか12位のコメントは……『小さなミスが積み重なってチームプレイに影響を及ぼす』!!
あああくそ!なんて馬鹿な失敗をしてしまったんだ!!
「……こ、そこっ!!話を聞いているのかね!!」
……へ?
我に返ると、教頭がステージの上からものすごい形相で坂本をにらみつけていた。
熱が入りすぎて、立ち上がってしまっていたようだ。
「あ、ど、どうも……すみません」
顔を赤くして頭を下げながら、静かに席に着く坂本なのであった。