●act06: 「無法者」
夜空に輝く三日月。
月には小さい衛星がひとつあった。
その衛星も月に並んで輝いていた。
草木も眠る丑三つ時。
闇夜に紛れて宿に侵入するイカサマチンピラ連中。
イカサマをした連中がリーダーの男を含め四人宿に入ってきた。
酒場宿の入り口に鍵はかかっていなかった。
バーのフロアに入りそのまま二階の宿部屋への階段を上がっていく。
「奴には連れの女もいるようですぜ」
「女は殺すな。拐ってこい。遊んでやる。奴は殺せ。絶対だ。このままじゃ、示しがつかねぇ。馬人も連れてこい。けっこう金になるはずだ」
男の一人が階段をUターンして馬宿に向かった。
「それと、あの牧場にもいたらしいですぜ」
「ならなおさらだ。殺っちまえ」
ドアをこっそり開けて部屋に侵入。
ベッドを囲む。
頭から毛布を被り寝ているようだ。
チンピラは勢いよく毛布を剥ぐ。
「起きやがれ!」
しかしその中はくるんだ毛布しかなかった。
チンピラの後ろから声が聞こえた。
「誰だ?人のお愉しみを邪魔するヤツは?」
チンピラ、背後からロッコに殴られ倒れる。
もう一人も不意をつかれロッコに蹴とばされ倒れた。
「テメーッ!」
またもう一人が銃をロッコに向けるが、ロッコは刀を抜き銃に切りかかる。
刀で銃身を切られ、それがゴトンと床に落ちた。
「ヒィー!!」
その背後からニッキーがライフルの柄でチンピラの頭をおもいっきり殴った。
その男もフラフラと倒れた。
馬宿に入るチンピラ。
黒い馬人が壁に寄りかかり座っている。
チンピラはその馬人に銃を向ける。
「おい、黙って付いて来い。そうすれば殺さないでやる。俺の言うことがわかるな?」
すると突然チンピラの後ろから声がした。
「デレクになんの用だ?」
ケリーである。
驚くチンピラ。
その隙にデレクの右ストレートがさく裂した。
チンピラ殴られノックダウン。
チンピラ連中は酒場宿の前で縛られていた。
ニッキー、ロッコ、ケリーと馬人のデレクが囲むように立っている。
ロッコを責めるようにニッキーが呟く。
「ロッコ、抜いたわね?」
刀を抜くときはニッキーの許可を得ることがふたりの暗黙のルールとなっていた。
ロッコはとぼけるように、
「今夜は月明りも弱い、これくらいいいだろ?」
縛られたチンピラのリーダーが声をあげる。
「てめえら、牧場の用心棒か?!」
わけがわからずニッキーがかえす。
「なにそれ?」
ロッコが応えた。
「柵を壊して牛を逃がしたのはお前らか。でも残念だったな。女カウボーイさんが牛を全部戻したからな」
「そんなの関係ねえ。牛はもう俺らのモンだ!」
「なに?どういうことだ?」
ケリーが叫ぶ。
「デレク!」
ケリーがデレクに跨り牧場に向かって駆けだした。
「ケリー!」
ニッキーも馬宿に駆けて自分の馬に乗りケリー、デレクを追う。
あきれ顔のロッコ。
「おい、ニッキー!、、、はあ、面倒に首突っ込むなよなぁ」
ロッコは、チンピラの胸ぐらを掴み上げ突き飛ばし、刀を抜いてチンピラの服を切り刻んで裸に剥いた。
チンピラ四人とも縛られていた縄も一緒に切れ自由にはなったが、素っ裸にされチンピラたちは己の股間を両手で隠した。
「テメェ!」
チンピラたちは怒鳴りロッコに襲い掛かろうとした。
だが、ロッコを見るチンピラの顔がみるみるうちに青ざめていく。
恐ろしいものを見る怯えた表情になっていった。
ロッコが呟く。
「てめえら、次ぃオレの女に手ぇ出そうとしたらただじゃあ済まねぇぜ〜」
チンピラたちは一斉にロッコから逃げ出した。
「ヒィーッ!!」
ロッコは刀を鞘に戻しため息をつきひとり愚痴る。
「はあぁ、、、ホント、ウチのお嬢様は面倒事がお好きだ、、、」
朝日が昇り、あたりも明るくなりはじめていた。
ニッキー、ケリー、ロッコは牧場に来ていた。
牧場の家の老夫婦の寝室にニッキーたちはいた。
部屋の中には老夫婦とウェイン、数人の子供たちもいた。
老婆はベッドで寝ており、老人はイスに座り、それを囲むようにウェイン、子供たちがいる。
皆ケガをしていた。
牧場主の夫の老人が頭を抱えながら話をする。
「あの後、アンドリューの連中が来て、逃げ出した牛に納屋を壊された、その時怪我人も出たと言ってきて、弁償代だと言って牛を持っていかれた」
子供が声をあげる。
「飼い牛がそんなことしない!嘘言ってるんだ!」
「わしらには確かめられん。ここの村長や保安官はアンドリュー一家の言いなりだ。軍も証拠がなければ動いてくれん、、、。奴らには逆らえん」
アンドリュー一家。
このあたりを縄張りにするヤクザ一家だった。
数年前にここに来て、地元の為政者を脅し従わせ我が物顔で暴れている。
ニッキーが牧場で暮らしていた頃はいなかった連中だ。
本来なら軍がこのような輩を取り締まるが、証拠や訴えがなければ動くことができない。
しかも村長や保安官がいいなりとなると軍も手が出せないでいた。
そして弱者に暴力を振るい、生活の糧を奪っていく。
酒場宿のイカサマ連中もアンドリューの一味だったようだ。
牛を奪われるときに老夫婦や子供たちは暴力を振るわれたようだった。
腕に包帯を巻いているもの、顔に絆創膏を貼っている子供。
ウェインも大怪我をしていた。
頭に包帯を巻き、右腕も骨折したのかギブスをつけて包帯で肩から吊っていた。
ウェインは俯きしかし憤り声を震わせ、
「あいつらが来てから、、、
いつも言いがかりをつけてきてウチからいろんなものを盗っていくんだ。
しかも今度は子供たち、パパ、ママにも乱暴した。
もうガマンできない。
やっつけてやる!」
ニッキーはウェインの肩を抱いた。
「ウェイン落ち着いて、貴方の一番の役割はココの兄弟たち、ママ、パパを守ることよ」
「ニッキー、、、」
ウェインはボロボロと悔し涙を流す。
「わたしに任せて、奴らの思いどおりにはさせないわ。わたしを信じて。
だから貴方はここの子たちをお願い」
ケリーが無言で牧場の家屋を出ていく。
「ケリー!」
それを追うニッキー。
またそれを追う諦め顔のロッコ。
ニッキーがケリーを呼び止める。
「ちょっとケリー!どこ行くの?!」
「牛を取り返してくる。ここの人たちの大事な牛。」
予想された回答。
無法者を制し罰する手段はいくらでもある。
ニッキーは己の権力を行使すればそれは容易であろうと考えていた。
だが、いまのケリーを抑え納得させることはできないだろう。
自分に優しくしてくれた老夫婦や子供たちが乱暴された。
ケリーの怒りが頂点に達していることは目に見えてわかった。
ニッキーも気持ちは同じだった。
恩のある老夫婦、血の繋がりはなくとも弟、妹と呼べる子供たち。
愛する人たち。
心の故郷、大事な場所を傷つけられたのである。
許せるわけがない!
悪党共に鉄鎚を下さずにはいられない。
ニッキーも覚悟を決める。
「しょうがないわね。ロッコ、行くわよ」
「おいおい、いつからオレらは正義の味方に転職したんだ?」
「バカ言ってないで!」
「、、、オレに拒否権なんてないんだよな?」
「ほら!!」
「はい、はい、、、」




