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アフロディアックスウェスト - 第01話「馬人に乗る少女」  作者: アフロディアックス


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3/7

●act03: 「子供たちの牧場」

馬に乗った二人が道を進むとやがて牧場が見えてきた。

そこには子供たちが十数人いた。

遊んでるのではなく、牛の世話をしているようだ。

先ほどの牛はやはりこの牧場の牛のようだ。

戻った牛を子供たちは柵の中に入れていく。

牛の扱いは慣れているようだ。

「もう、外でちゃダメだよ」

親しげに牛に声をかけ、首輪や鼻輪を持ち優しく牛を引く。

牛も素直にそれに従う。


そんな子供たちのやり取りを二人は柵越しの離れたところから見ていた。


すると子供の一人が馬に乗る女に気づき大きい声を上げた。

「ああ!ニッキーだっ!」

他の子供たちも馬に乗る女を見て「ニッキー!」と名を呼び笑顔で手を振ってくる。

馬に乗る女 ニッキーもほほ笑みながら手を振り返した。


そんなニッキーを見て男は呟く。

「人気者だね」

ニッキーも嬉しげ応える。

「みんな元気そうね」



牧場沿いの道を進んでいくと、青年が駆けて来た。

「お帰り、ニッキー」

「ウェイン、久しぶり。大きくなったわね」

「もうすぐ大人さ」

「頼もしいわね。ケビンとキャンディスは?」

ニッキーは一番年上のはずの少年と少女の名をあげた。もう二人とも成人しているはず。

「二人は一緒(結婚)になってココを出ていったよ。今は町に住んでいる」

「あらぁ、おめでたいわね。あのふたりがねぇ、、、じゃあ貴方が一番年上?」

「ああ、また兄弟が増えたよ」

「そうみたいね。みんなの面倒はしっかりみなさいよ」

「わかっているよ」


ウェインはニッキーとともにいる男を見た。

「この人は?ニッキーの旦那さん?」

「ううん、でも将来の旦那様かな?」

「え、、、?」

ウェインは怪訝そうに男を見る。

男はバツの悪そうな顔をしていた。


ニッキーはウェインに尋ねる。

「ママたちは?」

「家にいる。報せてくるよ」

「いいわよ、わたしたちがいくわ」

「わかった。じゃあ、牛の世話があるから。柵が壊れて牛が外に出ちゃったんだ」

「そうみたいね。大丈夫?」

「ああ、ケリーのおかげで全部戻った」

「ケリー?」

ニッキーが知らない名前。

それが先程のカウボーイのことなのか。

そのことを尋ねようとしたがウェインに出し抜かれてしまう。

「また後で!」

いまのウェインにとっては牛と子供たちの世話が先であろう。

牧場に行けばあのカウボーイが誰かわかるはず。

ひょっとしたら新しく入った孤児かもしれない。

ニッキーは応じ返す。

「ええ、じゃあ後で」


別れ際にウェインは男を一瞥して、

「オジサン、ニッキーを大事にしてよ」

ウェインは子供たちのところに駆けていく。


男が愚痴る。

「オジサン呼ばわりかよ、、、」

「ふふふ、、、」

「ニッキー、あの言い方は、、、」

「おかしい?じゃあ、なんて言えばいいのよ?」

「お付きの護衛とか用心棒とかあるだろ」

「わたしはそう思ってないわ」

「へい、へい、、、」





ニッキーと男が離れたところから牛の世話をするウェインと子供たちを見ていると、先ほどの馬人ばじんに乗ったカウボーイも戻ってきた。

カウボーイの声が聞こえる。

「あといくつ?」

子供が応える。

「みんな戻った。もうおしまい!」


カウボーイの声は男にしては高い声。

スリムな身体。


馬人ばじんが跳ね、その勢いでカウボーイの帽子が脱げた。

するとポニーテールに結ばれた長い髪が現れる。


それを見て驚くニッキー。

「え?女の子?!」

男が応える。

「のようだな。」


長い黒髪、赤い宝石のペンダントを胸にさげた、跳ねる馬人ばじんに跨り乗る娘。


挿絵(By みてみん)







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■タイトル

アフロディアックス・ウェスト

第一話 「馬人に乗る少女」

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ふたりは牧場の家屋に着いて、馬を降り家の中に入った。


牧場主の夫婦がそれを迎えた。

白髪を後ろに纏め結び椅子に座る老婆。

その隣に寄り添うように立つ白髪の老人。


老婆は穏やかな声でニッキーを迎える。

「おかえりなさいませ」


ニッキーも笑顔で応えた。

「ただいま、お久しぶりです」

「もう立派なレディですわね」

「ママもお元気で何よりです」


ニッキーと老夫婦は久しぶりの再会をともに喜んだ。

穏やかなときが流れ、ともにそれを過ごした。










「私たちもそう長くはないでしょう。

私たちが死ぬ前にこの子達にここで生きていける(すべ)をできるだけ伝えていきたい。

生きているうちにハートお嬢様にお会いできたこと嬉しいですわ。

私と夫がいなくなった後も、どうかこの牧場を、この子達をご支援いただきたいです。

どうか、お願いいたします」


ニッキーは笑顔で応えた。

「そんなことを仰らず、長生きしてください。

万一のことがあってもここの子たちは私どもの財団がお守りします。

貴女が育んだこの牧場と一緒に。

お約束します。

ご安心ください。

それと昔のようにニッキーと呼んでほしいですわ」


「ありがとう、ニッキー。

貴女がここにいた頃はいい思い出ね。

マイクも元気かしら?」


「ええ、マイクはワシンで働いています。

元気にしていますよ」


「そう、よかった。

あなた方二人はご両親に似て二人とも優しいから」


老婆はニッキーの後ろで壁に寄りかかり腕を組み立つ男を見て、

「この方は貴女の、、、」


男は腕組みをやめ手の平を見せる。

「私はただの雇われ用心棒ですよ」


そんな男を見てニッキーは、

「彼はロッコ シーフといいます。

いまは付き添いの護衛のようなことをしてもらっていますが、本当は私の伴侶になってほしいのです。

でも、なかなか首を縦に振ってくれませんの」


老婆は笑顔で返した。

「あらあら、なにか訳ありなのかしら」


老婆の隣に寄り添う老人がロッコに話しかける。

「ロッコさんや、貴方もご存知と思うが、ニッキーは優しく素晴らしい女性だ。彼女が貴方を望んでいるのなら、応じたほうがよいと思うがね」


ロッコは軽く会釈して、

「ええ、それはわかっています。ですがこのお嬢様と一緒になれば、世間から注目され一挙手一投足に気を遣わなければならなくなるでしょう。私は彼女のような聖人君子にはなれません。それにこのお嬢様はすこし独占欲が強いようでして、もし彼女の夫となったとしたら、私の隣りに他の女性が立っただけで私は彼女に八つ裂きにされるでしょう」


と言ってロッコはおどけてみせた。

すると穏やかだったニッキーの表情はみるみる赤面しロッコに怒鳴る。

「そんなことしないわよ!!」


ニッキーが感情を露わにすることはあまりない。

したとしても極親しい相手にだけだということを老婆は知っていた。

そんなふたりを見て老婆は微笑みながら、

「仲は善さそうね」


ニッキーは恥ずかしげに俯いてしまう。

「もう、、、」







ニッキーたちが歓談していると、ドアが開き子供が駆け込んできた。

「ママーッ、ケリーがもう行っちゃうって!」

すると牧場主の老婆ががっかりしたように、

「あら、もう?

もっと居てもらっていいのに、、、」


老人が応える。

「じゃあ、私が見送ろう。残念だが、彼女にも都合があるだろう」

老婆が老人に封筒を渡した。

「ベン。これを渡してあげて」

「ああ、わかったよ」

老人は封筒を受け取り子供とともに外に出る。



それを見送りながら老婆は呟く。

「私はあの子の本当の母親でない。でも私をママと呼んでくれる。私たちは、子供を授かることができなかった。ここを孤児院として開放しましたが、そのやり方が正しかったのか、いまでもわかりません」


老夫婦は子供好きであった。

己の子を産むことはできなかったが、身寄りのない子供たちも幸せになってほしいとの想いで孤児院をはじめた。

ニッキーは老夫婦の気持ちをわかっていた。

自分もこのふたりに救われたのだから、、、


ニッキーは牧場主の老婆の手を両手で優しく握り、

「おふたりの気持ちは子供たちに届いていますよ。でなければ貴女を無邪気にママと呼びません。私も貴女の(むすめ)です」

老婆は一粒の嬉し涙を流した。

「ありがとう」



ニッキーは窓越しにカウボーイ姿の少女を見た。

その少女の周りに子供たちが集まり親しげに話しをしている。

「ところであの()は?」

「旅の途中らしくて、先日からたまたまここに泊っていまして、牧場の仕事も手伝ってもらいましたのよ。柵が壊れて牛が牧場の外に出てしまって、でも彼女のおかげでみんな戻すことができました。子供たちも良く懐いてくれたのに、とても残念ですわ。なんでもグランデンのほうに行くとか」

「ふうん、、、」

ロッコが呟く。

「女の一人旅か。訳ありかね」



老人は少女に封筒を手渡していた。

封筒には現金が入っているのだろう。

少女は大げさに手を振り受け取りを拒んでいたが老人に諭されたのだろうか、やがて両手で丁寧に封筒を受け取り深々と頭を何度も下げている。




ニッキーが呟く。

「あの()がケリー、、、」


老婆はすこし驚き応える。

「あら彼女をご存じなの?」

「ウェインから名前を聞きました」

「そう、、、あの()も貴女のようにいい()ですよ。来た当初は旅の疲れで二日程寝込んでいましたが、回復してからは子供たちのめんどうを率先してして見てくれましたわ。思いやりがあって、子供たちに優しくて、、、みんなにも好かれて。それでとても元気。ほんと、昔のニッキーを思い出したわ。」


思わずニッキーは頬を染める。

「私はそんな、、、」


ロッコはそんなニッキーを茶化すのは忘れない。

「さすがハートお嬢様、お子さんたちの心をゲットしまくりですね。」


ニッキーはロッコを冷徹に睨み威圧する。

「貴方は黙っていなさい」

「はいはい」


そんな二人を見て老婆はクスクスと笑う。

ニッキーはまた恥ずかし気に俯く。

「もう、、、」




やがてケリーは黒い馬人に跨り乗り皆に手を振り去っていった。




ニッキーは思う。

ここからグランデンは遠い。

馬人の背に積まれた荷物も長旅にしては少ないように見えた。

旅の疲れで寝込んだというのなら、路銀の持ち合わせがなく宿にも泊まれなかったのだろうか。

旅慣れしていないようにも思えた。




彼女はなんのために旅をしているのだろう。


そう、ニッキーは思った。



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