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アフロディアックスウェスト - 第01話「馬人に乗る少女」  作者: アフロディアックス


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2/7

●act02: 「旅する男と女」

なだらかな起伏が続く野原に一本の道が通っている。

その道を二頭の馬が各々人を背に乗せ歩いていた。



男と女、旅をしていた。


挿絵(By みてみん)


ウェーブのかかった金髪、白い肌、蒼い瞳の女。

女は白い葦毛の馬に乗り、その馬には荷物と一緒にライフルが一丁載せてあった。


男は茶色い短髪、浅い褐色の肌、黒い瞳。

スマートだか無骨で筋肉質な体格。

栗毛の馬に乗り、男は背に刀を携えていた。



男が女に尋ねる。

「まだかい?」

「もうすこしよ」


心なしか女の声が弾んでいるように聞こえた。

「今日のハートお嬢様はご機嫌がよろしいようで」

「そうお?」

「朝から笑顔だよ」

「そうね、あの子たちに会うのは三年ぶりだもの。楽しみ、早く顔をみたいわ」


今向かっている場所は女にとって心の故郷と呼べるところだった。

多くの子供たちと過ごした懐かしい思い出。


「いつもそんな調子なら助かるんだがね」

「なによそれ」

「普段オレには仏頂面だからね。」

「それは、貴方がいつもヘンなこと言ってわたしを怒らすからでしょ!」

「はい、はい」


女はプイっと顔を背けたが、しばらくするとまた笑顔になっている。

明らかにいつもと違う。

よほど今向かっている先が楽しみなのだろう。


男はまた女に話しかける。

「君が以前住んでいたところなんだろ?」

「そうよ。両親が亡くなってから成人するまでそこで暮らしていたわ。毎日、朝早く起きてみんなの朝食を作って、牛の世話をして、お昼を作って、また牛の世話をして夕食作って。タイヘンだったけど、楽しかったわ」


「ハート財団のご令嬢がそのようなことをされていたとは。そんなに人が大勢いるところなのかい?」

「身寄りのない子供を受け入れていたの。私がいた頃は20人くらいいたかしら」


「そりゃ孤児院だろ。牧場じゃなかったのかい?」

「牧場よ。まあ、世間的には孤児院ということにもなるかしら」


「強制労働所か」

その言葉に女は強く反応した。

「そんなんじゃないわ。確かに私たち子供が働いていたけど、強制はしないし無理もさせてなかったわ。私たちは血の繋がりはなくても家族として暮らしていたわ」


「ふうん」

「、、、なにを思っているか大体わかるけど、けしてそんなところではないわ。」


「はい、はい」

「もう、、、だから違うって、、、」


女は男のいうことも理解できた。

世間が必ずしも自分がいた牧場を好意的に見てくれていないことも。

しかし、牧場主は自分たちを我が子のように接してくれた。

優しく、ときには厳しく、身寄りのない子供たちがこの世で一人でも生きていけるように。

その(すべ)を身に着けるように。

その子の将来のために。


女はため息をついて、

「身寄りのない子供たちを世間がどう見ているか、そういう子を引き取るところをどう考えているかは理解しているつもりよ。貴方が思うように親を亡くした子供たちは立場も弱い。それにつけ込む悪い奴らもいる。でも、私がいたところは違うわ。」


自分の心の故郷を侮辱されていると思った。

女は男を睨んだ。


そんな女を見て男はその場所が女にとって大切なところであることを理解する。

「悪かった。謝るよ」

「わかってくれればいいわ」


女は話を続けた。

「確かに子供たちがみんな不自由なく幸福であったかはわからない。親を幼いときに亡くした子供たちはみんな心に傷を持っている。夜はみんなを寝かしつけていたけど、小さい子は寝付けない子もいたから気が抜けなかった。夜中にベットから抜け出して家を出る子もいたから」


「夜中にイタズラか冒険かい?」

「ううん、自分の親を探しにいくの。小さい子は自分のパパ、ママが死んだことを理解できていない子もいたから。親元に戻りたいと思って脱走するのよ。どんなに私たちが気遣ってあげても、実の親の思い出には敵わないわ」


「ふうん、君もそうだったのかい?」

「私はもうそんな歳じゃなかったし、、、でもみんなの寂しがる気持ちはわかった、、、私も昔を思い出して泣いたことはあったわ」


「君も普通の女の子だったんだな」

「ぶつわよ」

「お~っ、怖、、、」

「もう、、、」


「でもあそこがあったから、今の私があるの。そう思うわ。」

「ふうん、君の心のよりどころなんだな」

「そうよ」


女は屈託なく笑う。

ときおりみせるその笑顔に男は惹かれる。









しばらく道を進んでいくと、道からすこし離れたところで牛が数頭いて草を食べているのを見つける。

馬に乗る女が牛を見るとその牛たちには鼻輪と首輪が付いていた。


「あら、あれ野牛じゃないわよね」


首輪には鈴がついており牛が首を振るとカラカラと音をたてる。

どこかの牧場から逃げ出してきたのだろうか。

女が知るこのあたりの牧場となると知っているのはひとつだけ。

いま自分たちが向かっている場所だ。

子供たちの牧場。

そこから出てきたとなると気になる。

牧場の子たちは牛が出ていることに気づいているか?



女が思案していると、人を乗せた馬人ばじんが駆けてきた。

黒い毛並みの馬人ばじん

それに跨っている人はカウボーイハットをかぶりグレーのシャツ、ブラウンのチョッキにジーンズ。

そして胸元には赤い宝石のペンダントをさげていた。

男には似つかわしくないアクセサリー。


人を乗せた馬人は牛を脅かさないようにゆっくり近づき、すり寄り自分が来た方向に歩くように牛を促す。

牛もすぐいうことをきいて歩きはじめた。

周りの牛一頭、一頭に同じようにして牛を移動させる。


「手際いいわね」

男が応える。

「そうだな、いいカウボーイだ」


手慣れた様子で馬人に乗る人は牛を移動させていく。

自分たちが向かっている牧場がある方向に。

となると、その牧場の牛なのだろう。

であれば、馬人に乗っていた人はその牧場で働く人となる。


ひとまずは懸念は払拭されたが、女は馬人に乗っていた人に見覚えはなかった。

いま向かっている牧場で新しく人を雇ったという報告は聞いてない。

その牧場に馬人もいなかったはず。


しかし、あの牧場に行くのは三年ぶりとなる。

牧場にいる子供たちが成長した姿なのかもしれない。

「ケビン、ウェイン、バリー、ロン、、、」

思い当たる牧場にいる年長の男の子たちの名前を挙げていく。

子供の成長は早い。

三年も会わなければ見違えるくらいにもなっているかもしれない。

馬人もテリトリーを持たない野良の馬人が居着いたのかもしれない。

、、、まあ、行けばわかるだろう。

女はそう納得した。


「さ、早く行くわよ」

女は自分の馬の尻を叩き駆けだす。


そんな女を見て男は呟く。

「ウチのお嬢様はせっかちだ」

男も女を追うように駆けだした。



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