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アフロディアックスウェスト - 第01話「馬人に乗る少女」  作者: アフロディアックス


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1/7

●act01: 「はじまり」

何もない荒野に雨が降っていた。

どしゃ降りの雨。

久しぶりの雨。

雨が大地を濡らしていく。

水溜まりなどできない。

乾いていた大地に雨はしみ込んでいく。



降り続く雨。



その雨の中、一頭の馬人(ばじん)が人を乗せ歩いていた。


挿絵(By みてみん)


馬人ばじん

魔獣。


魔獣とは、この世界に生きる人でも獣でもないもの。

獣の顔。人のような手足を持ち、身体は体毛で覆われている。

様々な大きさ・形態の魔獣がいる。

特殊な能力を持つ魔獣も存在する。

知性は高く人の言葉を理解し人とコミュニケーションがとれるものが多い。

稀に人の言葉を話す魔獣もいる。

人より古くからこの大地に生息していたと考えられている。

魔獣の種族は多くあるが、その生態は謎に包まれている。

どのように産まれ、どのように暮らしているのか、わからないことが多い。

人との交流をしている魔獣は少なく、多くは己のテリトリー(縄張り)を持ち、人がそこに立ち入りすることを好まない。

攻撃的な魔獣もいるが、理由もなく人を襲うことはない。

人が自分たちのテリトリーを荒らしたり、仲間を傷つけられ殺されたりしない限り、人と争うことは稀である。

だが、その時は容赦がなくなる。

仲間の魔獣が一頭殺されたら人を一人殺しにくる。

テリトリーが荒らされるとその分の物を壊しにくる。

自分たちが失った分の復讐を必ずする。

人々からはそれを『仕返し』と呼ばれ恐れられている。

だから人は魔獣のテリトリーに立ち入ろうとしない。

魔獣も自分のテリトリーから出ることは少ない。



馬人は馬のような顔を持つ魔獣である。

人のような身体をしているが、脚は馬のように蹄をもつ。

手には指がありモノを持つこともできる。

だが無骨な太い指は細かいことはできず不器用なようである。

強靭な肉体を持ち、馬より一回り小さいがその駆け足とスタミナは馬以上である。

馬人は普段は人のように二本の足で立つが、走るときは手を地面に着いて四肢で走る。

人を乗せて走ることもできる。



馬人にはテリトリーを持たず個体で生活をしているものもあり、そのような個体は人と暮らすこともある稀有な魔獣である。

その屈強な肉体から軍の兵として扱われたり、馬のように物を運ぶ手段として働くものもいる。

馬人以外も牛のような頭をもつ『牛人』も人と暮らすものもいる。

しかし、馬人も牛人もその生態はわかっていない。

子供の魔獣がいることはわかっているが、老いた魔獣を見た者はいない。

寿命や繁殖について知る人はいなかった。

いつの間にか現れ、いつの間にか居なくなる。

不思議な生き物魔獣。

だが魔獣は確かにそこに存在している。






いまこの馬人は降りしきる雨の中、四肢を地につき背に人を乗せ歩いていた。

強靭な肉体。黒い毛並み。


馬人に乗る人はカウボーイハットを被りポンチョを羽織っていたが、雨は服の奥まで染み込みずぶ濡れになっていた。

冷たい雨は人の体力を奪っていく。

馬人に乗る人は俯き進む方向は馬人に任せていた。



やがて、一本の大きい木とその木からすこし離れたところに家屋を見つける。

馬人はその大きい木の根元に辿り着く。

雨は凌げそうだ。

その木の下で人は馬人から降りた。

足取りはふらつきだいぶ弱っているようだった。

馬人はその主人を雨粒から守るように抱き、木の根元に座る。




降り続く雨。




離れたところに家屋がひとつ。

しばらくするとその家屋から人が出てきた。

老人と子供。

木の下で人を抱え雨宿りする馬人の前に立ち声をかける。

家に入るよう誘っているようだった。

馬人は主人を抱き上げ、誘われるまま家に入っていく。




やがて陽が沈み、また明ける。

陽が昇る頃にはもう雨は止んでいた。

いつものように日差しが大地を照らし、雨で濡れた地面を乾かしていく。












ここは『人』が一度、『知恵』を忘れた世界。

人は多くのチカラを失ったが生き続けた。

新たに『知恵』を身につけ文明を築いていく。


鉄を造り、火薬を発明し、銃を手に入れる。


ここは新大陸。

西に広がる大荒野。

人は未踏の新天地を開拓していく。



この大地を人はアフロディアックスと呼んだ。



挿絵(By みてみん)



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