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7 シルバーモンキー視点①



(あれ?)

夢中になって馬を食べていたら、ママがいなくなっているのに気が付いた。


ママが人族に、俺が馬に飛びついたから、あぶれた弟は離れて行く人族の匂いを追って行ったのは知っていた。

俺が食べている馬よりも人族は食べる所が少ないから、食べ終わったママは弟の所に行ったのだろう。

俺もママ達の所に行こうかな? 弟が向かった方へと視線を向けると、いきなり何かが首に巻き付いてきた。突然のことにパニックになる。


(ぐわっ)

首が絞められて苦しい。

一体何が起こったんだ? 慌てて首に手をやり外そうとするが取れない。

蛇かと思ったけど違う。(つた)が絡まったわけでもない。

ガッチリと首に巻き付いていて、どんなにもがいても外すことができない。自慢の爪を食いこませることすらできない。なぜだ? 俺の爪は岩でさえ(えぐ)ることが出来るのに。


何度も首に巻き付いた物を取ろうとしていると、首に巻き付いているのは細長い紐のようなもので、その先は伸びて森の中へと繋がっている。

まるで人族に飼われている家畜みたいだ。

細い紐のように見えるのに引き千切ることができない。


紐の先は茂った草によって見えない。

どこに繋がっているのかと引っ張ってみると、草むらを分けながら何かが近づいて来るのが分かった。

警戒する。


何かはどんどんと近づいて来る。そして現れたのは見たことも無い化け物だった!

怖い。

逃げ出したいのに紐に繋がれて、ただ震えることしかできない。


化け物は全体的に青い色をしている。

身体は柔らかそうなスライムみたいに見えるが……、違う。スライムなんかじゃない。俺が知っているスライムは丸くて小さい。こんな変な形じゃない。

本体は丸く見えなくもないが、頭にボコりと(こぶ)のようなものがあるし、両脇から何かが出ている。いや生えている。


何が生えているんだ?

目を凝らしてよく見てみると、丸い身体の両脇から人族の上半身と足が生えていた。


「ぎゃーっ、化け物っ!!」

(煩いわっ、誰が化け物だ。魔獣から化け物呼ばわりなんかされたくないわっ。まったく失礼なやつだな。俺はどう見たってスライムだろうが)

人族を生やした()()スライムが怒鳴りながら近づいて来た。


強い。

本能で、このスライムが自分よりも強いことが分かる。

ママと同じ位。もしかしたら、それよりも強いかもしれない。

俺は弟よりは強いがママには敵わない。それよりも、こんな不気味なスライムと戦おうとは思わない。

震えが一層強くなる。


「なっ、なんで人族を生やしているんだ。もしかして食べている途中なのか?」

頭からとか足からとか食べればいいのに。なんで真ん中から食べようとするんだ。

目の前のスライムはスライムというには大きすぎるが、それでも人族よりは小さい。身体から人族がはみ出ている。

食べ方の癖が強すぎる。


よく見れば、飛び出ている上半身と足が動かないように、自分の身体を変形させて固定しているようだ。

そして足側の胴体から触手(?)のようなものが出ており、紐のように伸びて俺へと繋がっている。

俺の首に巻き付いているのは、このスライムの触手だった。

触手を出すスライムなんて初めて見た。やっぱりこいつはスライムじゃないのかもしれない。

俺を逃げられないようにして、食べるつもりなんだ。俺はガクガクと震えが大きくなる。


(ご主人様を食べるわけがないだろうが。それに頭は出しておかないと、息が出来ないからな。ご主人様はデリケートなんだよ)

「ご主人様? デリケート?」

スライムが何を言っていのか理解できない。


(……え、俺の言っていることが分かるのか!?)

スライムが驚いているが、俺も今更ながらに気がついた。スライムと話をしている!

俺はママや弟とは話をしていたが、他の魔獣と話したことなんかなかった。まさかスライムと話をすることになるなんて。


(言葉が通じているんじゃなくて、魔獣同士だから何を言っているのか大体理解できているだけだな。まあ念話みたいなもんだろう。俺もレベルアップしたからできるようになったんだろうな)

スライムが自分の考えに自分で納得している。


「そんな……。スライムが食べること以外を考えているなんて」

(そっちなんかーいっ!!)

スライムが首に巻き付けた触手の先で俺の胸を打つ。


(思わずツッコンじまったじゃねーか)

「お願いだ、この触手を外してくれ。俺は食っても旨くないぞ」

なぜか照れ臭そうにしているスライムに俺は懇願する。


(喰わねぇよ。それよりもお前には手伝ってもらわなきゃならないことがあるからな。それが終われば触手は取ってやるよ。こっちに来い)

「うわっ」

スライムはどこかに向かって飛び跳ねだした。首に巻かれた触手を引っ張られ、俺は付いて行くしかない。

スライムが怒って首に巻いた触手に力を込めれば、俺の頭と胴体は簡単に離れ離れになってしまうだろう。従うしかない。


スライムのくせに結構な速さだ。

ビヨンビヨンと飛び跳ねているが、両脇から出ている人族は眠っているのかピクリともしない。揺れてはいない。起こさないようにしているのか?

スライムのくせに人族を取り込んでいるのに食べないとか信じられない。もしかしたら出ている部分以外は既に食べてしまっているのかもしれない。スライムのやることは分からないからな。


俺はただ引っ張られて走り続けるしかないのだった。



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