表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家出公爵様がお帰りになりません  作者: 虚夢想
第六章 戦場にI'll be back編
85/117

第85話 そんなの許すしかないじゃない

滑り台で遊び疲れて眠ってしまったエドゥアルトを抱えてゴルド地区に戻ると、

享楽の宴はまだ続いていた。


シガールームはむせかえるほど煙が満ち、人々は生気のない瞳でカードを眺め、

カフェテーブルには金貨が積まれている。


貧民街では食べ物を売り切った店は次々と閉店し、店主はコック服のままダンスに興じ、酒もなくなったところで実質お開きとなった。


理由を聞くと、家畜と作物には休みがないかららしい。


さらに酔いつぶれた者は貴族も平民もなく、温かい温泉施設の床に転がされると

聞いて、意外にも妻は笑っていた。

どうやらエドゥアルトのナニーを任せただけあり、女主人の人となりを知っていたらしい。


夜会会場の壁際には、給仕係が誰も手をつけない軽食と共に並んでおり、どちらが健全なのかとカールは少々測りかねていた。



出入り口から甲高い声が聞こえて視線を向けると、ここまで送ってくれたダールベルク公爵子息がご令嬢に言い寄られ、眉間にシワを寄せていた。

先ほど領民に向けていた穏やかな顔とは別人のようだ。


夜会では公爵にも紹介されていたが、そんな話の最中(さなか)にも、女男爵に婿入り降格などと囁かれていた。

非道な魔術師と聞くが、気難しいエドゥアルトもラクダに乗るときは喜んで抱き上げられていたな…

カールは悪評しか聞かない男に、初めて興味を覚えた。



祭りの片づけをあらかた終えて、家に戻るとすでに夜半に近かった。


そして寝支度を調えてチェルと一緒に眠ろうと階段を登りかけた時、カチャリと

ドアから音がした。

振り返るとドアの隙間からバツの悪そうなヴィル様の顔が半分のぞいている。


「間もなくイブが終わりますよ」

そう言われて慌てて部屋に入って来たものの、一向に近づいてこない。

「何かいう事はありませんか?」するとポツリと

「………………………………あいしてる」と呟いた。

「私もです」両手を広げると、やっと抱きしめてくれた。

「ご無事で何よりです」

欲しかった言葉はソレではなかったけど、とりあえず帰ってきて良かった。


背中に手をまわして寄りかかると、ひどく力が抜けるのを感じた。

顔を見るまで安心できない。でも知ったところで縋りつく事しかできない。

だから私には教えてくれないのだと理解しているつもりだった。



夕方帰ってきたゲオルグに作戦の全容を聞いた時、一般人まで巻き込んだことを

つい責めてしまい「苦情は計画した本人に言ってくれ」と言われてしまった。


レオたちをノイトラールに送った後は、坑道に逃げ遅れがいないかを確認して

鉱石サンプルを拾ってゲオルグとダニエルさんは領地に帰還。

ヴィル様は王太子殿下に報告するために王城に行き、ゴルド地区の夜会に出席するシェーファー魔術師団長に捕まったらしい。

一応非公式な作戦らしくて、レオ達も詳細説明を受けておらず、箝口令(かんこうれい)が敷かれたそうだ。


「日帰りで鉱山占拠なんて無茶が過ぎるでしょう……」

「クリスマスまでに帰りたかったんだ」

そういって、甘えるように摺り寄るヴィル様の髪を撫でながら

『やりたい奴とやらされる奴が違う』というヨハンの言葉を思い出した。



「……………いま…誰の事を考えた?」

「……」

ジト目で覗き込まれて思わず黙る。

「俺がいるのに」

「…イブに戻らなかった人がソレを………」

最後まで言わせずにキスで口をふさがれた。でも身勝手なキスにカチンときた。


「何も言ってくださらないから、心配したんですからね!」

仕事の内容が話せないのは解る。でも何が起ころうとしているのかを知る権利はある。

そういう意味で言ったのに、急に耳元で「…あいしてる」と囁かれ背中がザワザワした。


「そう言えば私が流されると思っているでしょう⁈」

「今夜くらいは独占させてくれ。君はいつも忙しそうだから」

『それをあなたが言いますか!』

叫ぼうとした言葉はまたしてもキスに飲み込まれた。


完全にヴィル様のペースだ。しかも間違いなくワザとだ!

というか、ちょっと怒ってる?私だって怒ってるのに!


「寂しい思いをさせたのは謝るが、付け込まれ過ぎだ。ソフィはどれだけ俺に

愛されているかを再認すべきだ」

耳に唇を押し付けたまま低い声で囁かれると、なんかもう…いろいろダメになる。


今日こそは怒ろうと思っていたのに、耳が溶けそうなほど重く濃厚な愛を囁かれ

続けて、泣きながら謝ったのはソフィアの方だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ