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家出公爵様がお帰りになりません  作者: 虚夢想
第五章 迷える羊は安息を望む編
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第69話 勇者Lv.1

追い出し作戦のあと、ヴィルヘルムにフルボッコにされたレオンは、怪我が治ると早々にグラシ領から放りだされた。


転移魔法は使えないけどシュバイネハクセ門から出て行ったし、レオンなら歩いて帝都まで帰れると思っていた。


しかし実際は、山一つ隣の町で所持金のすべてを腹に収めてしまい、食費を稼ぐ為にギルドに行き害獣駆除の仕事を引き受けていた。報酬に加え、肉食べ放題と書いてあったからだ。


そして依頼書には『求む、白服の勇者』という不思議な注意書きがあった。


「…シャツは白いから…いいよな?」

レオンは深く考えなかった。



「おお、勇者さま。よくぞ来てくださいましたぞ」

出迎えてくれたビーネンさん一家は全員が白パーカーを着ていた。


「騎士です。害獣駆除に来ました」

「その意気込み。まさに勇ましき者」

どこか話が嚙み合っていない。


「肉食い放題って本当ですか?」

「もちろんです。アレを倒せば…」

そう言ってビーネンさんが指差した山を見上げると、衝撃音と共に土煙が上がった。

「…何頭でも、お好きなだけ召し上がってください」

山中に恐ろしい咆哮が響いた。


「去年がドングリの当たり年だったので、クマとイノシシが急増して餌の奪い合いをしとるのですぞ。

家の周りにも罠は仕掛けとるのですが、特に頭のいい左耳が千切れた大きなクマがおりまして、今のが討伐対象ですぞ」


「……クマって一頭だけでは…」

「もちろんですぞ。この山は人よりクマが多いと言われとりますから。ですがヤツを呼び出す手立てがあるのですぞ」そういってビーネンさんは熊鈴を取り出した。


「これって持ってるとクマが逃げるヤツですよね?」

「どうやらヤツは熊鈴をつけた者から餌をもらったことがあるようで、こいつを

着けとくと出てくるのですぞ」

「それ、絶対やっちゃいけないヤツじゃん!」


「食うか食われるか…それが山の掟ですぞ」

若干引きかけたレオンにビーネンさんは畳みかけた。


「ヤツはよくイノシシと揉めとるのですが、ここの猪肉は美味いですぞ」

「イノシシは…」

「討伐対象ではありませんが、倒してきたらご馳走しますぞ。依頼はヤツを倒すまで。猪肉食べ放題。如何でしょう?」

レオンが返事をする前に、お腹が鳴ってしまった。


「では、お願いしますぞ。勇者様」

「いや…俺は騎士…」

「あの山は勇者の山ハワードベルク。勇ましき者しか踏み込めない魔境ですぞ」


* * * * * *


「おお、勇者レオン。死んでしまうとは何事だ!」


「死んでねーし!つーかこの山おかしいだろ⁈

ブラッディベアにジャイアントファング、ウサギにまで角生えてたぞ!」

「さすが魔境ハワードベルク…恐るべし…」


日暮れまでに戻って来いと言われたレオンだったが、気が付くと暗くなっており、

そしてモンスターにで出会(でくわ)した。


「他のヤツも討伐隊を組むレベルだが、なんだあの化け物イノシシ…」

「ヤツは何処かから移動してきたようで、たくさんのイノシシを連れて突然

夏に現れたのですぞ。そしてクマと縄張り争いを始めたのです」


「イノシシも駆除した方がいいんじゃないか?」

「まぁ、食ってみれば判るのですぞ」

そして夕食に招待されたレオンは語彙を失った。


「……うまぁ…」

「帝都でも食べられない高級肉ですぞ。

そこら中にはおるのですが、罠にでもかかってくれないと倒せない…」

たくさん食べたい所だが、ビーネンさんの家にあったのは数日前に獲れたもので、冬に向けてほとんど保存食にしてしまったらしい。


「倒せたら毎日ご馳走ですぞ」

泊めてもらう事になったレオンは、ベッドに寝転がりながら明日の作戦を考えていた。


「クマは置いといて、とりあえずイノシシを狩ろう。罠を使ってもいいかもしれない…」

そう思いながら目を瞑ろうとしたとき、天井裏からノイズのような音がした………


「この山、やっぱりおかしくないか?」



翌朝の朝食はジャガイモとハムとチーズとクラッカー。


『肉がない…』

肉好きレオンはハムを肉とは認めない。


食べ盛りという事もあるが、父も兄も騎士で三食肉のヴェッティン家は、当然平民の食事量では足りない。


グラシ領では、毎朝特大うずまきウインナーをつけてくれたのに…

追い出されたことが、日ごとに身に染みてくる。


ビーネンさんがクラッカーにチーズをのせてハチミツをかけていたので、少しでもカロリーを増やそうと真似をしたらハチが飛んできた。

そして払っても逃げずに、ハチミツのついた指先にとまってしまった。


潰してしまおうかと思ったら

「ミツバチですから脅かさなければおとなしいもんですよ」と言われたが、指先のハチはそんな穏やかな面構えとしていない。


質問するより先に、ビーネンさんはおもむろにフードをかぶり紐を引いた。

すると顔の前に網が下がり、フェンシングのマスクのようになった。


「今日は天気がいい。やつらが動き出す前に行かれた方がいいですぞ」

どういう事かと聞こうとしたら、背後に攻撃的な羽音が増えてきた。


「白い服を着て、脅かさなければ大丈夫ですぞ」

「それは刺されても大丈夫っていう…」

「たくさん刺されたら死にますぞ。ハチですから」


気が付くと家族全員がフードをかぶり、網を下ろしていた。

レオンは慌てて逃げ出した。


昨日到着したのは夕方近くでハチは巣箱に帰っていたけど、今は家の屋根の下に

真っ黒な塊のようになって蠢いている。


ビーネンさん一家は養蜂家だった。クマに襲われるワケである。


だがこうなるとハチが巣箱に帰る夕方までは戻れない。まずは昼ご飯を狩らないと…

レオンは早くも追い込まれていた。


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