捕捉小話⑤ やはりお前か…
『ジグソーパズルの最後のピースを知らない誰かがハメてしまったような虚しい
気持ち…』これは彼のトラウマのような、悲しい過去に由来する。
その日、ヴィルヘルム少年は高揚感に包まれていた。
ずっと作り続けていた風景画の巨大ジグソーパズルが完成間近だからだ。
何度もロルフに落とされたり、ボールをぶつけられたりして作業が進まず、
手伝ってやると間違ったピースを無理やりハメ続けられた時は、殴り合いのケンカになった。
そしてケンカの最中、いつの間にかパズルに手を出していたフリッツが、判りやすい所ばかり組み立てていて、空と海しか残っていないのを見つけた時には心が折れそうになった。
でももう少しで終わる。だから今日は誰にも会わない。
そう言っておいたのに、廊下で騒いでいるのはロルフだろ……
ベリルが必死に止めてくれている間に終わらせてしまおう。
アイツは人の都合など聞いたためしがないんだ。
そして案の定、扉は開かれた。
「スゲー!もう完成じゃん!」
「だから壊すな、近寄るな」
「手伝ってやるよ」
「いい!余計な事を…」
「よし、これで最後だな」
気が付くと、最後のピースを入れておいた箱は空になっていた。
「外いこうぜ。用事は済んだんだろ?」
「あぁ…たった今、次にやる事を決めたばかりだ…」
ヴィルヘルムはゆらりと立ち上がった。
『コイツを物理でブッ飛ばす』
恐ろしく瞬発力の高いロルフに対抗するため、魔法の発動速度を研究したり、身体強化魔法や肉弾戦をヴィルヘルムが本格的に学び出したのはこの頃。
趣味で魔法の研究をするのは構わないけど、家を継ぐために政治家さんになって
欲しかったダールベルク公爵の思惑が完全に潰えた瞬間だった。
ちなみに格闘技は騎士団長が面白がって教えた。
いろんな意味でヴェッティン家は戦犯なのである。
本編で出したいと思いつつ、出したら大暴走必至なので脇役に徹していただいているヴェッティン父。
八割の人間に嫌われていると言われる、ヴィルヘルムの数少ない理解者です。
必至に走っている時は気づかないものですが、リアルでも弱った時に頼りになるのがこのキャラ。
場合によっては身近過ぎて感謝しづらい相手だったりもしますが、
本当に困った時こそ、感謝を伝えましょう。少なくとも心の支えにはなってくれる筈ですよ。




