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家出公爵様がお帰りになりません  作者: 虚夢想
第四章 魔術師追い出し作戦編
52/117

第52話 ガチギレ公爵

念のためゲオルグと共に、ヴィル様が連れてきた防衛開発部が作っているゲートに行くと、確かに横流しと言われてもおかしくない状況だった。


でも実際に使用してみないと検証できないし、大規模に作らせてくれる場所もないので場所を貸す代わりにデータを渡すという相互協力を結んだ正式な書類が出てきた。そしてサインはダールベルク公爵(お義父さま)その人。


さらに停戦で予算が随分余っていたそうで、次年度減額されないように今年中に使い切りたいという思惑があったらしい…


そして防衛省は話が通っていたのに、同じことをしているにも関わらず魔法省では、明らかなコミュニケーション不足により誤解が生じていたと結論付けられた。



「申し訳ありません。クソ隊長殿が王城で嫌われているばかりに…」

「こちらこそ、コミュ症の夫がご迷惑をおかけしました。

一応、事の次第はダールベルク公爵に連絡して取り計らっていただきますので…」


ゲオルグは恐縮しきった顔で「失礼ながら…」と続けた。


「本当にあの男で良いのですか?王城でも八割の人間に嫌われています。確かに

嫌味なほど金は持っていそうですが…」


「ゲオルグは二割の人間なんでしょう?」

「いいえ!渋々!業務に支障が出ないように!しているだけです!」

ゲオルグは気持ちが良いほど大きな声で答えた。


「誰もやりたくない仕事を率先してやってくれる人が一番偉いのよ。

ヴィル様の側に貴方がいてくれて良かったわ」

少しでも労をねぎらいたくて言ったのに


「誰もやりたくない仕事を、好きでやる奴がいると思いますか?」と言い、

スンッとした顔になってしまった。


「ごめんなさい。失言だったわ……」

即座に撤回したが、ゲオルグの瞳からは完全に生気が失われている。

これは冗談で流してはいけないヤツだ。


「ザイン家は代々騎士として王家に仕えてまいりました。

自分の兄も近衛騎士をしており、魔力量の多い自分は魔術師を目指しましたが、

結局は悪魔の下僕になり下がり……」

脂汗を流しながらグラグラしている腕を咄嗟に捕まえた。


「ゲオルグ、貴方しばらくここに居なさい!あなたには静養が必要よ!」

そういうと、ゲオルグは急にハッとした顔をした。


「いえ…自分は…」

「幸いこの町は保養地を目指しているから、あなたの意見が聞きたいわ。仕事として引き受けてもらえない?」

「しかし…」


「もちろん職場の許可は取るわ。大臣(お義父さま)王太子妃(カーラ様)に相談するから安心して!」

「ヒィッ」と声をあげてゲオルグは姿勢を正したが、続く言葉を聞いて完全に固まった。


「それで…全ての元凶である私の旦那様はどちらにいらっしゃるのかしら……」

ゲオルグの腕を捕まえる手に、つい力が入る。


「…………最重要機密ニツキ、黙秘シマス…」

ゲオルグは視線を合わせないように顔をそむけてしまったが、物陰から声をかけられた。


「吐かせますですか?」

「……………」

「彼女は私の護衛のヒスイよ。でも話したくなければ無理には…」


黙ってしまったゲオルグを見上げると、頬を高揚させて真っすぐヒスイを見ている。明らかにヒスイはガン飛ばしているのにだ…


私はヒスイに近づくと、耳元で

「…優しく堕として差し上げて…」と囁いた。


「イエッサー」

ガンギマリの目をしたヒスイは、頬を引きつらせるように笑った。




夕方になり、ゲオルグが転移魔法でダールベルク公爵(お義父さま)を連れて戻ってきた。


「ゲオルグ・ザイン魔術補佐官の配置転換は通ったよ。

周りも働きすぎを心配していたそうだが、優秀な彼の代わりがいなかったそうだ。

でもその分、人数を集めてフォローするって言ってたから大丈夫だよ」


「余程、頼りにされているのね。だったら尚のこと体を大事にしないと。

あらためてヨロシクね。ゲオルグ」

そう言われてもゲオルグは不安そうな顔をしていた。


週末ドクターをお願いしているビルングによると、体調不良も出ており

やはり療養休暇が必要な状態らしい。



「それでヴィルヘルムは潜入捜査の名目で、ハニートラップを楽しんでいるんだって?」


「……ですが…そういうお仕事…」

「そもそも、引っかかっちゃいけないんだよ。

アイツにはソフィアを養子にする案も伝えてあったんだから。もうエミリアが荒れちゃって大変」


「私が仕事にかまけていたので…」

「ソフィアは領主。爵位をもってるんだから堂々としていればいいんだよ。

立ち話もなんだ、ソフィアの澄んだ紅茶を飲ませてくれないか?」



「随分立派になったじゃないか…」

お義父様を案内したのは町役場の応接室。

続きの部屋には町のジオラマが置かれ、実質作戦本部のようなポジションなので

壁にはスケジュールボードや街づくりの設計図が貼ってある。


「木材に壁の石灰岩まですべて地元産です。家具はほとんど卒業制作なので

アカデミーに出展する時期は、一度もぬけの殻になってしまうんですけどね」


「卒業後に移住を希望する者もいるんだろう?人材も確保できて両得ではないか」

お義父様は紅茶の香りを楽しみつつご満悦。


今のところ役場は住民登録と日雇い労働の紹介が主な業務で、トーマスを中心に

要望の吸い上げをしてもらっている。


隣にはドクタービルングの週末治療院が併設され、移動用ポータルも役場内にある。

使える部屋も増えてはきたけど外装はまだ工事中で、窓の下には煉瓦と木材が山積みだ。


「ギルドも作るんだろう?」

「はい。商人ギルドに加えて、住人の商工会のような感じを考えています。

門の近くにそれぞれの国の駐在所を作りますが、騎士科の人たちから自警団を作る案がでていまして、商隊の護衛も検討しております」


「なるほど。ちょうど商売と行政に明るい者を見繕ってきたんだ」

そういってお義父様はテーブルにいくつもの姿絵を並べた。


「ソフィアはどの男が好みだい?」

「………お力を貸していただけるのであれば、どなたでも大歓迎なのですが…?」


「これは釣書と言ってね、要するにお見合い相手の肖像画だ。

ソフィアは私の娘なのだから、選ぶ権利がある」

「………………あの…」


「私はね、ヴィルヘルムの不甲斐なさに本気で怒っているのだよ」


いつも柔和に細められているお義父様の瞼が薄く開き、ヴィル様によく似た赤い瞳が現われた。

静かに怒りをたたえる瞳に、それ以上何も言えなかった。


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