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家出公爵様がお帰りになりません  作者: 虚夢想
第三章 誰がための鐘編
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第45話 虚空をつかむ

靄が薄まり周りが見えるようになると、そこは自宅のポーチだった。

どうやらレヴェンテ殿下の部屋から自宅に転移してきたらしい。

そしてやっとヴィル様の姿を確認することが出来た。


窓辺で殿下に啖呵を切っていた時は闇を背負って浮かんでいたのに、

話し合いを終えてベランダに出たらすっかり闇に飲み込まれていて正直焦った。

よくぞ戻ってきてくださいました。


でも、あれだけの事をしでかして平常心でいられる筈もなく

ヴィル様は部屋に入るなり、私を抱えたままソファに寝転んでフリーズしてしまった。


傷つけてしまう事は解っていた。

そのうえで相談もせずに交渉に向かったあげく、悪役までやらせてしまった。

国を滅ぼしかねない魔力を持っていながら、嫌わないでほしいと願ってしまう人なのに…


「ごめんなさい…」

謝ってすむ話ではないが、それでも「…離れたくなかったんです」と伝える。


誰かの幸福のために、人知れず犠牲になる人がいる。

それはごく当たり前の事で、きっと取るに足らない事なのだろう。

でも闇の中からお互いを見つけられたのは、決して小さな事ではないはずだ。

そしてそれを証明するようにヴィル様の腕にも僅かに力が込められた。


なにかを変えようと思ったワケではない。待つのに飽きた。それだけだった。



「ヴィル様。聞いていただきたい事があるので、そのまま目を瞑っていて下さいね」

「…………………あぁ」


体を起こし、呼吸を整えて一気に話し始める。

「私は今迄に二人の男性からプロポーズを受けましたが…」

「なんだって!」

「目を瞑っていてください!」

慌てて起きようとしたヴィル様を押さえつけて、両手で目を覆う。顔を見ながらなんて、とても言えない!


「わ、私がずっとおそばに居たいのは、お一人だけなんです!」

「…ではその二人を殺さねば、君は手に入らない…そういう事か?」

霧散したはずの真っ黒オーラがまた湧きだした。


「大丈夫です!ばっさり切り捨てましたから!」

「一匹見たら百匹いると思え!害虫駆除の基本だ」

「えーと…虫の話ではなくてですね…」

何を話そうとしたか解んなくなっちゃうよ…


「レヴェンテ殿下は同盟強化のための婚姻ができないのであれば、代わりに帝国が領域侵犯できない状態を作れと言ってきました。

そして国境と接する問題の場所は、母の出身地のグラシ男爵領だったのです。

それで私が爵位を継ぎ、国境を守れと言われて…それで…手を貸していただきたくて……」


息苦しいほど拍動が強くなって、自分の顔が熱を持っているのがわかる。


「…あの…ヴィル様…」

「すまない。続きは俺に言わせてくれないか?」

そう言って体を起こしたヴィル様も真っ赤だ。


「私が言います!ヴィル様を待ってたら、私 おばあさんになっちゃいますので」

「それは死が二人を分かつまで、俺に囚われてくれるという事でいいんだな!」

「悪魔とは契約しませんよ!私が誓いたいのはヴィル様なので」

勇気を振り絞っているのに、甘やかすように頬を包む両手が優しすぎて、眩暈がしてきた。


「…ソフィア…」

額を寄せるように近づくヴィル様の緊張も伝わり、もはや限界だった。


「ヴィル様…どうか私の…」

「俺の()…」

「お婿さんになってください‼」

緊張を振り払うように目を瞑り叫んだので、ヴィル様の顔を見る余裕もなく、息も継がずに一気に話す。


「旧グラシ領は長い間戦場となり荒れ果てていますが開拓し直せば逃げた住人も帰ってくる筈なんです。政治的というと冷たい感じがするかも知れませんが、争わずに済む方法があるなら試してみるべきだと思うのです!ですから今こそ魔力の平和利用でヴィル様のイメージアップを……………ヴィル様?」


「…大丈夫だ。聞いている。…呼吸をするのを忘れていただけだ…」


「では了承していただけますか?それなら急いでレヴェンテ殿下に報告を……」


「待っ…!」

すっかり頭に血が上ったソフィアは素早く立ち上がると、捕まえようとするヴェルヘルムの腕をすり抜けてリスのように走り出した。


『伝えたいことは言えた!でも一番伝えたい事が言えなかった!』


『スキって言うだけなのにぃぃぃーーーー!!!!』

結局ソフィアも、ヴィルヘルムに言ってほしいと思い続けた台詞を言えずに逃げ出した。


そして勢いよく閉まるドアに手を伸ばしたヴィルヘルムは「………婿…」と呟き項垂れた。



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