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家出公爵様がお帰りになりません  作者: 虚夢想
第一章 捜し人編
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第12話 I’m all right, Jack.

I’m all right, Jack.=お前の事は知らないが、俺は満足だ。(英国スラング)

王族と入れ違いのように夜会の会場から退出すると、まっすぐ城壁を目指す。


「直接あの子の所に飛んでいけねぇのかよ!」

「座標が定まらないと転移できない。高い位置から場所を特定し、叩く」

「りょーかい。」


尋常ではないスピードで城壁に向かう二人に警備兵も異変を感じたのだろう。

慌てて追ってきてロルフに並んだ。


「何かありましたか?」

「未確認情報だが城下で人攫いが起きた可能性が高い。すぐに当直組に巡回させろ。下町もだ」短く返事をした兵士は、慌てて(うまや)に走って行った。


塔の階段を駆け上がりながら魔法を発動させると、影のように足元に現れた魔法陣が光り始め、対になる一本の光の柱が殊の外近い位置に現れた。


「なんでこんなところに…」

「とりあえず先に行くぜ!こういうときお姫様は、助けてくれた男に惚れるもんだからな」

「おまえ、まだそんな事を…」

ロルフは言うだけ言うと城壁から枝に飛び移り、鉄棒のように体を振ってそのまま石畳に着地した。


………アイツに出し抜かれるのは釈然としない。

ヴィルヘルムは足元の空気を圧縮し爆発させると、走るロルフの遥か前方に宙返りをしながら着地した。


「よし。」

「おいっ!城壁が壊れたぞ!道も!」

だが喚くロルフに構う暇はない。

「ダールベルクだ!」と言いながら逃げようとした者達がいたからだ。


明らかに持ち場を離れている兵士を見つけ

ロルフはあっさりヴィルヘルムを抜き去ると、三人の兵士を次々と張り倒した。


「女の子を見なかったか?」

ロルフが相手の胸ぐらをつかんで事情聴取をする間に、再び魔法を発動させると、

光は崖下から複数上がった。




ジャックはソフィアを抱き上げると

「話してくる」と仲間に言い残し坂を下っていった。

そして背後から迫る馬の蹄の音を聞き、崖を飛び降りた。


「ひっ!」咄嗟にしがみつくと

「大丈夫だ。落とさないから」とジャックは優しく背中をなでた。


そして森の深くまで入り、ソフィアを木の根元に座らせると、ゆっくり首に手をかけた。


「ダールベルクに足を開いたのか?」

氷のような眼差しに、ぎこちなく首を振ると


「嫌なウワサを聞いたんだ…ダールベルクが君を買ったって」

再び首を振ろうとしたが、より強く首を抑えられたせいで、わずかに頭が動いただけだった。


「君を信じるよ。君は俺がいいんだもんな」


そうなのだ。

何故だかこの人の頭の中の私は、惚れたこの男のために客を取らない設定になっていて、何度説明しても都合よく曲解してしまうのだ。


「初心なのも可愛いが、そろそろ素直になってほしい」

近づいてくる顔を避けるように首を伸ばし、出来る限り捻ると結果的に首は締まり

益々息苦しくなる。


耳元でクスクスと嬉しそうな笑い声を聞かされて、震えが止まらない。

この男は…苦しい顔をするほど喜ぶのだ。

そして落とす直前で手を緩め、助けを請えと下卑た笑顔を向けたのだ…



恐怖とは別の震えが腹の底から湧きあがり、

歯を食いしばり、涙のうかぶ目を見開いた。


助かろうと足掻きもせずに、助かるはずがないではないか!

今までだって、そうやって生きてきただろう!


そう思った時、突然体が光りだした。

驚いて手を緩めた男を突き飛ばし、森を走りだす。




丘を下って森を抜ければ通りに出られる。

でも森の中は想像以上に足場が悪くて、男の手はすぐにフードに届いた。


慌てて振り払うようにコートを脱ぎ捨てると、勢いで窪地に落ちたが構わず走りだす。


飛び降りた場所は坂道の最後の方だった。

きっともうすぐ森を抜けられる。そう祈りながら走るとまた体が光りだした。


こんな事ができる知り合いはひとりしかいない。

ずっと隠れて生きてきたけど、心から見つけてほしいと願った。


「ヴィル様!ここです!ヴィル様ぁ‼︎」

すると背中に乗るように押し倒された。


「……お前が呼んでいいのは俺の名前だけだろう…」


地面を探ると木の根のような物が落ちていた。すかさずそれを男の手の甲に突き立てる。

立ち上がった男から這い出そうとしたが、その前に蹴り転がされた。


「裏切り者…」そう言って馬乗りになる男の歪んだ顔がハッキリ見えた。

急に明るくなり視界が開けたのだ。


疑問に思う間もなく次いで突風が吹いた。

森の木は丸太状の幹を残して吹っ飛び、凄まじい音を立てて遠くに落ちた。

思わず耳を塞いで体を縮めるが、男は微動だにしない。


男は馬乗りのまま私を見ていたが、私は突如として現れた男の背後の月を見ていた。

手足が痺れてクラクラしてきた。もう息もうまく吸えない。


すると「退け…」と低い声が聞こえて、馬乗り男は見えない何かに殴られたかのように飛ばされ木の幹に叩きつけられた。


「遅くなった」そういって、私と月の間に現れたのはヴィル様だった。


助かったことすら、よく判っていなかった。

ただ抱き起してくれたヴィル様に縋りついて、小さく名前を呼ぶ事しか出来なかった。




人の声と夜風を感じて目を覚ますと、私は相変わらずヴィル様の腕の中にいた。

歩く振動が心地よくて、ふたたび微睡(まどろ)みそうになり胸に擦り寄ると視線を感じた。


「…………!!!」ここはドコ?なんか人がいっぱいいる!


お貴族様がダンスでもしていそうな広間では人が忙しく動き回り

天井には目がチカチカするほどの………たぶんシャンデリア。はじめて見た。


「おかえりなさいませ、ヴィルヘルム様」

「あぁ…」


……お城って王様が住むところじゃないの?…じゃぁ、ヴィル様は王子さま⁇

今更ながら、住む世界の違いを思い知らされる。


「あ、あの…」

『場違いなので帰ります』と言いかけて軽く咳き込み、腹部の痛みに顔をゆがめる。


「気づいていないのだろうが、お前の怪我は相当だぞ。医者を呼ぶからおとなしくしていろ」

「その前にお風呂ですね」


断りたいのにうまく言葉がでてこず、やっと出たのは湯船のお湯に触れた時だった。

悲鳴をあげるほど全身に傷があり、脇腹はどす黒くなっている。

足は特にひどくて、途中で靴も脱げたらしく足の爪までなくなっていた。


お風呂上りにやってきたお医者様に包帯でぐるぐる巻きにされ、

メイドさんにドレスを着せられ寝るように言われたんだけど…

貴族って寝る時もドレスなの?なんかフリルに埋もれそう…


そしてお世話になった年配のメイドさんに聞かれるままに

ヴィル様という名前とお城で働いている事しか教わっておらず、

ストーカー男から守ってもらう代わりに湿疹の治療をしていた事を伝えた。

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