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筆録・鬼ノ目  作者: pixivにて~187話まで掲載中
五節・梅子黄、破られし縁
60/186

八話

『みの坊もいたら、さぞ賑やかだったろうになぁ…』

 そう小さく溢したのは、屋敷の門番を若くして任されている吉田

長兵衛(ちょうべい)だった。

 

 ()け放った戸の先に広がる梅雨に彩られた庭を尻目に、これは雨足(あまあし)(とお)のくまでまだ時間が掛かることだろうと考えていた頃。道場に雨宿りついでとでも言いたげにゾロゾロと人が集まりだした。

『こんにちは。八勝(やた)君がいるって聞いたんですけどぉ、伊代ちゃん千代ちゃんも行きたいってきかなくってぇ…。お邪魔しますねぇ?』

 先ず初めに訪れたのは、口振りからして討伐屋の相良の隣で背を正す青年の身内だろうか。長い黒髪を一つ括った、どこかおっとりとした様子の女性が挨拶をする間に、その背後から見覚えのあるそっくり瓜二つの幼い双子が飛び出してくる。

 来訪に気付いた鶴見の青年が慌てふためく間もなく、双子に一気に周りを囲まれて、と。彼は何とも情けない悲鳴が一つ上げていた。


『稽古をされてるって聞いたんですが、自分らも混ざらせてもらえませんかね!』

 次にやってきたのは似た装いに身を包む、和馬もよく知った相手だった。

屋敷の門番を任されている、その(にん)を若くして(まっと)うしている彼と、その背に隠れるように身を縮こまらせる年若い青年が五人。

 かれこれ扇堂家の屋敷に身を置くようになってから半年以上が経つが、和馬の記憶が正しければ彼も自分と同じ頃に屋敷へ出入りする、仕事を任されることとなっていたはずだ。

 秋の終わりから先の春に掛けて、朝早くに門を(くぐ)っては人手の足らぬ討伐屋へと足を運ぶ。陽が暮れてた頃、時折自分を迎えにくる雪那と氷室に、と肩を並べながら屋敷へ戻る。

日に二度も目にしてを毎日のように繰り返していれば、自然とその顔も覚えるというもの。

 よく通る声が離れた場所でも耳に届くもので、彼自身と言葉を交わす頻度は少なくとも、彼がどのような人物であるかを知っていた。

 身の丈が似たようものだから歳の頃が近いのではないか?なんて理由で相手の方から声を掛けてきた時はほんの少しだけ焦ったものだが、少なくとも他人行儀の返しは初めの頃に比べればなくなってきた筈だ。

 明朗闊達(めいろうかったつ)という言葉が何とも似つかわしい彼は、まだ屋敷に馴染みきれていない頃の和馬に対しても他と変わらぬ態度で接してくれた数少ない相手だ。

 幾ら大主様と分家の扇堂美琴が受け入れる意向を示したところで、突然榊扇の里と因縁があるはずの藤原家の血筋の者をすんなりと受け入れられるには時間が掛かった。それが里の住人ではなく屋敷に直接仕える、多少なりとも事情を知っている者らでは尚更に。

 そんな彼が自分よりも背の低い、云うなら弟分か何かのような彼等を引率(ひきつ)れてきたのは発した言葉のまんま、稽古に混ぜてもらうためだったのだろう。

 そしてそれは丁度、氷室が討伐屋の中でも一番上背のある館林を相手に胴へ打ち込んだ後だった。

 自分たちが屋敷から道場へと移動をしてきた、中へ踏み入ろうとしたその時、打ちこみ稽古とは思えない勢いで弥代が氷室の手によって壁際へ投げ飛ばされたところで。

怪我をしているため今日は()るだけだけなのだという相良によって道場の外、縁側の方へ運ばれ休まされることなり、次の相手を所望(しょもう)する氷室相手に春原、芳賀(よしか)、館林、と順に名乗り出た、正にいま次の相手がいないという状況だった。

 一人一人相手取っても圧倒的な力量さを前に一撃も当てることは出来ないだろうことを見越しての、全員で掛かってきなさいという氷室の発言を皮切りに彼等は威勢よく予備の竹刀を手に取り構え出したのだ。

 

 

 暫くして、縁側の方で休まされていた弥代が目を覚まし、目覚めた直後だというのに失礼極まりない言動を雪那に向けて、と。一通り騒ぎまくった頃、よく絞った手拭いで額を(ぬぐ)長兵衛(ちょうべい)が和馬の横に腰を下ろして、小さくそう溢した。


 

 

 その性格と立ち居振る舞いからは顔も広く、同時に自分とは違って友人と呼べる者も多いことだろうと思っていたのだが、意外にも彼が口にする名前は少なかった。

 時折、特別用もなければ世間話をする機会も増えてきた今日この頃、その中でも懐かしむように口にするのが“みの坊”という、既に亡くなっていると聞かされた知人の名だった。

 幼い頃から知った仲であるはあった、ご近所だったというのに友人と呼べるような仲では決してなく、相手がこちらを見てくるるようになったのもここ数年の出来事で。狭い視野に籠りきって自分の言葉をただ紡ぐ、周りになんと言われようとも筆を折らぬ姿勢にかっこよくて、自分もそんな風に本当はなりたかったのだと話していた。

 亡くなってから二月程が経とうとしているというのに、殊更(ことさら)に彼は変わらずにその知人の名を忘れないようにとでも言いたげに口にする。

本当ならあの晩、花なんて散りきった酒の席にその知人・石蕗(つわぶき)(みのる)も招かれるはずだったのだ。


 一度も会ったのない相手なのに、彼の紡ぐ言葉でその人柄を知っているというのはどことなく奇妙なものだ。それでも決して嫌な気持ちにはならない。寧ろ知ることが出来て良かったすら思える。自分と気が合うかどうかは到底分からないが。

『稔さんも、誘うつもりやったんですか?』

『あぁ…、あいつはずっと一人だったからな。もうちょっとしたら俺が口利()いて、そんで本当はこれからもって考えてたんだけどなぁ……』

 過ぎたことをいつまでも悔やみたいわけではないと溢すのは本心からだろう。それでもやはり時々ぼやいてしまうのは仕方のないことだと彼は続けた。

『人だからなぁ…頭じゃ分かっててもどうにもならないことの方が多いのが人生ってもんで。まぁ、なんだ…?諦めるわけじゃないけど受け入れ(どき)ってのも大切なもんなんだよ。』

 何も知らない相手だからこそ言える言葉もあるんだなんて、そんなことをここ最近、友人とはたして呼んでいいのか分からない、なんともいえない仲の青髪の彼女が口にしていたのを思い出す。

 なるほど、まだ自分がそれを理解しきるには時間が掛かりそうだ。



「あーーっ‼︎くっそぉおお‼︎」

 長兵衛が和馬の傍らに腰を落ち着かせて休む一方、目覚めてから体力は底なしか?と疑いたくなるぐらいの威勢のまま、その小さな体を動かし道場内を駆け回る弥代はまだまだ元気そうだ。

 そんなこんながあって予想以上に人が多く賑わった道場内も、日が暮れ出すのに雨音も小さくなってきたのに居合わせたそれぞれがそろそろお開きだと準備を始める。

 これで最後だ‼︎なんて大きく振りかぶり氷室相手に弥代が強く一歩を踏み出したその時、その男は静かに姿を見せた。






「あなた(がた)はいつまでそうして騒がれているおつもりですか?」

 道場内にその声が響けば、その場に居合わせていた皆の視線がその男へと注がれた。

 稽古の風景を観るのに集中していたためにすっかり忘れていたが、そういえば芳賀の口から戸鞠の様子が優れなかったという話が出てきていたことを、彼女の師にいっても過言ではない扇堂家に仕える、大主・扇堂杷勿の専属医である佐脇(さわき)三一(みかず)の姿を見て思い出した。

 今までいなかった人物の登場に気を取られ、踏み込んだその勢いのまま竹刀を上段で構えていた弥代がつんのめるように前へと大きな音を立てて転がったのは見なかったことにする。

 ぐるり、と。その垂れ下がった目尻からは中々想像することのない鋭い視線が場内全体を一度見渡す。

「戸鞠ですが、ここのところ多少無理をさせ過ぎました。薬品庫で倒れているところを見つけました。多少の手は掛かりましたが、あなた(がた)の手当は引き受けることを条件に今は休んでいます。ですので、怪我人は患部を差し出し、大人しくその場に留まりなさい。」

「げぇ………」

 和馬はあまり、佐脇が得意ではなかった。



 佐脇三一という男は一人でいることの方が珍しい、常に四六時中大主の(かたわら)らにいる事が多い男であった。

 そのため屋敷の中では大主様のいるところに佐脇様在り、佐脇様がいるなら近くに必ず大主がおられる、なんて風に教わったものだ。

 扇堂家の屋敷での暮らしが始まって二日か三日経った頃、経験豊富だからという理由で初日から面識を持っていた戸鞠と巴月によって紹介を受けた姐さんと呼ばれる上女中(かみじょちゅう)に教えてもらった。

 まだ病み上がりと然程変わらない身に鞭を打って教えてもらう側の姿勢を見せれば、見込みのある奴だねぇ!なんて女性とは思えない大きな手で背中を叩かれ咳き込んだのを今でも覚えている。忘れられない思い出だ。

 ここのところは特に西へ東へと屋敷の中を忙しなく移動する和馬が佐脇という男を目にしないということは当然なく。何も言葉を交わしていないのに遠目に見て彼の喧しさを毛嫌う下女らとは違って、和馬にはちゃんと彼を得意としない理由がちゃんと存在した。


 これまで二度、雪那と一緒にいるところを彼に鉢合わせ、顔を、見合わせた。

 やはり和馬はその深い意味を知りはしないが、それでも彼が雪那に向ける視線があまりにも、あまりにも酷いもので。

 大主に仕える、長年この屋敷で暮らしてきたその相手が、藤原の血筋である自分に対し、彼女に向けるのと同じ視線を向けるのであれば納得がいったろうがあくまでも向けられるのは雪那のみ。

 まだ幼く、これから多くを知っていくであろう彼女に対して向けていい眼差しではない。

 遮るように、その眼差しから庇うように前に踏みいれば、やっとその視線が自分へと向けられる。

『おや、いたのですね。』

 雪那には出来うる限り笑っていてほしいと望む和馬は、やはり佐脇()が得意ではなかった。

 直接何をしてくるようであれば言い返すなり、やり返すなりが出来たろうが何もされていない手前、ただ彼女を守るように前へ出ることしか和馬には出来なかった。


 淡々と、己の状況説明と要求を申し出た彼は小脇に抱えていた大きめの(ざる)を降ろした。

「手の要らない方は速やかにお帰り下さい。こちらの邪魔になりま」

「佐脇、」

 竹刀が一本、床を叩く。

 その日初めて、和馬は心の底から笑ってであろう氷室を見た。






「それで、本当にどうしちゃったのこの髪?似合わないったらありゃしないよ。誰かに虐められでもしたの?お姉ちゃんであるこのボクがやり返してきてあげようか?」

「冗談にしても笑えねぇぞ…?」

「フフッ、本気だよ?」

「尚更笑えねぇよ。」

 窓枠に肘をつく、どのように相手をこれまで見ていたのかを中々思い出せずにいた弥代は、先ほどの再会から一向に彼女へと視線を向けないように振る舞っていた。

 腕を引かれても、顔を見ないように視線を落として。顔を覗き込まれても、直ぐに視界の端へと意識を逸らして。振り向かれても、俯いてやり過ごす。

 何を話せばいいのかが分からないのだ。

 漠然と、ただ会いたいと思っていたのに違いはないのだが、何もそれは“今”というわけではなかったというのに、まさかまさかである。

『もし良かったらこれからボクと一緒に散歩でもどうだい?』

 何事もなかったかのように、彼女はあまりにも普通に。寧ろ不思議なまでにこれまで通り話しかけてきた。

「いやいや、なんていうかな?ボクもね初めてだったものだからさ。あんな事をキミに言われてどう返したらいいものかと直ぐに答えが浮かばなかったんだよ。ゴメンね?気に、しちゃったよね?」

「いや……ん、まぁ……そこまでは、」

 始めの内は彼女が提案した通り軽く、陽も沈みきった夜道をぶらぶらと歩いていたものだが中々目を合わせようとしない弥代に痺れを切らしたのか、強引に腕を引かれてまだ暖簾の掛かっている茶屋へと引き摺りこまれた。

 店の者が用意した急須を傾けて、自分の分だけでなく弥代のも用意すれば、手の届きやすい位置に差し出される。

 何から何まで任せっきりの状態は、以前着付けを手伝ってもらった時に感じた気恥ずかしさを思い出す。

「い…いいから、それぐらい…自分で、出来るから。」

「相変わらず素直じゃないなキミは。こういう時はありがとうの一つぐらい返せるようになった方がキミもボクも気が楽だっていうのに。」

「生憎と…そういうのにはこれまで無縁だったもんでな。」

(へそ)を曲げた子どもみたいだ。」

「そんなんじゃねぇよ…。」

 その口振りはあまりにも余裕だ。

 自分が以前の春の装いから夏物へと変えたのと同じように、彼女も夏用に薄手のものを仕立てたのだろうか。以前の長ったらしい厚めの袂は先が透けて見えそうなぐらいに薄い、濃ゆい色をした合わせへと変化していた。

 濃く重い色は彼女の、詩良のその色白い肌も髪もより一層際出させるのだがどうにも目が慣れない。白の方がやはり似合っていたように思える。

「……いや、そういんじゃねぇって何余計なこと考えてんだ俺は、」

「せっかく話し相手がいるっていうのにそっぽを向くなんて酷いなキミって子は。態とかと、思わず涙ぐんでしまいそうだよ。」

「二度も同じ手は食わらねぇぞ俺はっ⁉︎」

 つい昨日(きのう)、伽々里にも似た目に遭わされた事を思い出して思わず声を荒げながら弥代は勢いよく彼女の方へと体を向けた。

「……、」

「突然大きな声を出すからいけないんだ。全く、悪い子だねキミは。」

 彼女は、弥代を見ていた。

「こういうお店はね、何もお茶を飲むだけの場所じゃないんだよ。キミがするなってボクを叱った、そういうことをする為に。愛おしい人と愛を紡ぐ為に訪れる人もいたりするんだよ。だからね、弥代。」

「大きな声は、出しちゃダメだよ?」






 鬼ノ目 五節・梅子黄(うめのみきばむ)(やぶ)られし(えにし) ― 駿河異聞録(するがいぶんろく)






「いい加減どうにかなりませんかお二人とも?」

「……ど、どうにか…なりそうでしょうか?」

「どっ、どうにかなったりするんでしょうか⁇」

 現状、どうにもならないから弥代と芳賀は二人正座をし、その(こうべ)を伽々里に差し出すように項垂れていた。どうにかする術があるものだったら是非とも教えてほしいものだと、二人揃って(なか)ば泣きべそを掻くかの要領で掛けられた言葉をそっくりそのままではないにしろ繰り返す。

 その(かたわ)らにはどう足掻いても読むことが出来ない、字、とも到底呼べないようなふにゃっふにゃの、どちらかといえば子どもが落書きで適当に書いたといった方がなんとか説明のつきそうな、そんな何かが白い紙面を染め上げていた。

「紙は貴重なんですよ。一枚だって無駄にしてほしくありません。頑張るのでは結構です。えぇ、その頑張りと姿勢は認めましょう。ですが、出来ないことを無理に出来ると仰って貴重なものを浪費するのはどうかやめてください。心の底から、お願いします。」

「あっ………す、すみません、」

「すっ、すみませんでしたぁぁあ‼︎」

(あぁ…これ字でしたか?)

 四、五枚程重なった内の一枚を手に取り、相良は目を凝らしてからもう一度その字を読もうと試みるのだが、やはりどうにも自分の知る字には程遠い。

 机の端にはお手本として用意しておいたのだろう、今朝早くに自分が仕上げた書面が一枚、文鎮(ぶんちん)を乗せられた状態で置かれていた。道理で提出用にまとめた枚数と書き記した際の枚数が一枚足りてなかったわけだ。間違って棄ててしまった記憶はなかったものでおかしいと思っていたのだ。

「読み書きは、ただ数を熟すしかありませんからね。ここのところ稽古の方に明け暮れてばかりで練習をサボっていたでしょう芳賀さん貴方?元々汚いのが一層酷くなってますよ。練習あるのみです。」

「………。」

「あぁ…そうでしたね。」

 まだどうにか読もうと頑張れば読める方が芳賀の書いた字になる。ここまでどうにか筆の持ち方を教えたのが自分なだけに、彼のこれまでの約三年に渡る努力を思い口を挟んだのが、ここのところの彼はどうにも相良に対して態度が、一言で言えばよろしくない。

 館林曰く、今の芳賀は反抗期真っ只中とのこと。

 自分も十五から二十(はたち)を迎えるまでの間には似たようなことがあったものだから分かるのだと漏らしていたが、生まれてこの方自分は彼が言うようなその反抗期というものを経験したことがないのでイマイチ分からない(それを迎えられる余裕が十代の頃になかったからなだけかもしれないが)。

 が、人よりも長い時間を悠に生きてきた彼女・伽々里も館林と同じ言葉を漏らすのだからつまりはやはりそういうことなのだろう。

 自分がいま芳賀に対して何を言ったところで無視をされる。もしくは特に意味もなく言い返される、反抗されることになる。

 ただ小生意気な返しだと思っていたそれも、よくよく振り返っって考えてみるとみんなそうだったのだろうと思えば、なるほどこれは口を開く気も失せるというもの。

 まさかそれが負の連鎖を招いているとは思いもしないで、相良は大人しく口を閉ざした。

「…まぁ、どうでしょう伽々里?二人も何も無駄にしたくてこうなったわけではないでしょうし、叱るのは止めにしませんか?」

「叱る?いいえ、そうではありませんわ相良さん。私は、どうにかならないのか?とお二人に訊ねているだけです。」



「惜しかったな…最後に書いたのは結構上手くいけたつもりだったんだけどな。」

「そこまで自信満々に言われるとかなり怖いですよ?弥代さんって変なところ自信ありますよね?他はからっきしの方が多いのに?」

「お前も俺も似たような出来だったろうっ!」

「はーーっ!横暴が過ぎるーっ‼︎」

 これまでは書き記すのも読むのも全て人任せにしていた弥代だったが、春先以降少しずつ自分で出来るようになりたいと乗り出した。四年ほど討伐屋に籍を置く、最年少の芳賀の間近(まぢか)に椅子を持ってきて、見様見真似で筆を取り、墨を付け紙面に滑らせる。

 始めのうちは練習用として同じ紙に何度も何度も墨を付けて、なんなら軽く水だけを付けて真っ黒になった表面をなぞるようにして練習を重ねていたのだが、二ヶ月ほどそんなことを続けて根も歯もあったもんじゃない自信が実ってしまったのだろう。結果は今更いうまでもない。

「いやいやいやいやぁ…こいつは骨が折れるよぉ?十八…十七の大人に読み書きを一から教えるとなったら…そりゃぁ…まぁ……うぅん…、考えるだけでゾッとしちゃうねぇ?怪談話も吃驚だよこりゃあ……、」

 討伐屋を出る際に渡された本日分と、ここ最近の失敗して無駄にした分の紙の束を前に腕を組む、丸眼鏡にくるくるの癖の強い髪を揺らす男が苦虫でも間違えて噛んでしまったような表情でやっと口を開いた。

「伽々里先生がどうしてもっていうから、まぁ来てもいいよって言ったよ?言いはしたけどねぇ…そもそもこんな大っきい子二人なんてのは聞いちゃいないからねぇ…一杯食わされた気持ちだよこっちは。暇じゃないんだよねぇ僕はさぁ……見て分かるだろ?こんなに教え子がいっぱいいるんだからさ?」

 わいわいがやがやと、幼い内から学問を学びに訪れているだろう子ども達が肩と肩をくっつけながら狭い距離間で所狭し。薄い長屋の壁を取っ払って三部屋分の広さなんてなれば大きさもそうだが、そこが埋まるぐらいの子ども達の人数となれば中々の大所帯だ。

 親父の頃から寺子屋を続けているために昔から近所では評判がよく。息子もそれを継いで腕があるとなれば繁盛してるのも納得がいくが、パッと芳賀が見ただけでも一人一人別々の本を広げて問題を解いている、問題について子どもたち同士で話し合いをしているように見えた。

 話の矛先をズラそうと感じた疑問を口にすれば、息子にあたる彼の教えてもらいにきているのだがここ数年教え子の出来がよく、頭のよくキレる年長組の子等数人、自分よりも幼い子に教えてくれているのだと、棚の奥から紙と筆を取り出した寺子屋の主人が答えてくれた。

「教え教えられってね。一方的に教わるだけじゃ身になりゃしない、自分のものにできないってのが親父の教えで。人に教えられることが出来て初めて自分のものになる、相手が分かるまで付き合うことで自分の中の理解を、知恵を深める。そうじゃなきゃ分かったって言うのも駄目ってね。寺子屋(ウチ)の、昔っからあるお約束ごとなんですよ。難儀なものでねぇ…ホント。」



(最近どっかで…この人見たことなかったっけ?)

 猫背の、腰の曲がった姿勢の低い男に弥代はどことなく見覚えがあった。割と本当に最近のような気がするのだが中々に思い出せない。ここのところ短い間に色んなことがありすぎて詰まっていると、下ろした手のその先に一冊の本が広がる形で落ちていたのに気付く。

 特に意味はなくそれを手に取れば、一切読めもしないのに文字の羅列を目で追う。なんとなくの意味も分からぬものなど読んでいても何の面白味もありゃしないのに、芳賀と寺子屋の店主が話し込む合間だけ暇つぶしがてら、呼ばれるまでの間だけ読めた振りをする。

 一年前、雪那と出会うまでは全く想像もしていなかった日々を弥代は今こうして送っていた。

 根無し草。寄り付く場所もなく宛もなくただ思うがまま、適当に身を任せ方々を一人旅をしていた。毎晩のように野宿を繰り返し、時折人が暮らす集落の、家から漏れる細い灯りを見てほんの少しだけ一緒に家族と過ごすことが出来る生活というものは良いものだろうなと、あの老夫婦と過ごした短い日々の夜を思い出しては、灯りが消えるのを待って眠りについた。

 金はなくとも、腹が減れば野山に分け入っては動物を仕留めて食事にありつけた。服にしたって一着を川で洗って乾いたらまた同じものを着るだけ。


 それが、どうだろう。

 今じゃ賑やかな、何ならお隣の長谷一家なんて五つ()と子宝に恵まれすぎて、まだまだ夜泣きをする赤子なものだから時折五月蝿くて眠れない晩もある。

 金は、たとえ少なくても働きに応じて屋敷から支払われた給金を討伐屋経由で渡され、それで懐を満たす。この里は東海道が含まれているものだから東へも西へも繋がっている里なだけに、滅多にお目にかかれないような食材も時折やってくるものだから、珍しいものもあるもので。おまけに店も多いものだから今日はどこで何を食べようなんてことを楽しみに討伐屋の手伝いをするようになったり。

 服は、着回せるだけの枚数が今じゃある。おまけに季節毎に袖を通すものを変えられるだけの贅沢が出来るようになった。

 一人だから構わないと、火を焚いて洗った服が乾くまで裸になって暖を取るようなこともしなくたって構わないのだ。

 住み場所があって、食事にありつき、風邪を引かないで済む」だけの服がある。学ぶ機会を得て、多くの人と関わり、そうして少しずつ成長していく。

 小仏の川辺でこれから野宿をすると告げた時の雪那程ではないが、今の自分も野宿にあの頃と同じような生活を送ることとなったら、きっと文句の一つや二つは溢しそうだと答えに至ったら何となく、笑いが込み上げてしまった。

「それ、何も全然笑えるようなこと書いてないんだけど?」

「え……?」


「ど…どちらさまで?」

「こっちのセリフよっ!勝手に人のもの盗って!読みたかったってんなら断りをいれなさいよこの賑やか頭っ‼︎」

「………」

(何で俺見ず知らずのちっちゃ子にこんなこと言われてるんだろう?)

 開いていた本は勝手に閉じられ、舌を出して背を向ける大きなお団子頭の幼い少女。しかし直ぐ様自分に向けていたのとは打って変わった態度と声で少し先の、壁際に寄せられた棚の前であれやこれやと本を抱える、今もまだ芳賀と何やら話し込んでいる様子の寺子屋の主人に向かってだろう声を上げた。

「先生ーっ!遅くなっちゃいましたごめんなさいっ!今日なんですけど、後でお時間のある時にこの本についてもうちょっと細かいところお聴きしたいんですけどいいですかー?」

「そよちゃん、おはよう。小ちゃい子たちが帰ったらねぇ?後四ツ谷の坊ちゃんも今日残るっていってるけど平気かなぁ?手出さないって約束できそうかい?出来るなら全然構わないよぉ?」

「だっ!だっ‼︎出さないもんっ‼︎」

「………?」

 別人か?と疑いたくなるぐらいの変わりように弥代は目ん玉をひん剥く。流石に目を擦ってまでというのは失礼な気がしたのでしなかったものの、やはり先程自分にいきなり暴言ともとれる発言をしてきた少女に違いはない。見た目よりも随分大人顔負けの言葉を口にするもので少しだけ驚く。が、最後の最後になってとても取り乱したような反応を示すあたりはどうにも見た目相応に写った。

「いやっ⁉︎ちょ、ちょっと待てよ!な、何だよ賑やか頭って⁉︎そんな悪口言われる筋合い俺にゃねぇぞ‼︎」

 思い出したように、弥代は勢いよく立ち上がった。

 数歩と距離はない。手を伸ばせば肩を掴めそうな距離で、言いながら弥代は自分に背を向ける少女の、その小さな肩を思いっきり掴んだ。



「いやそうもなりますって弥代さん。女の子の肩ぁ、あんな風にいきなり掴んじゃ平手の一つや二つ…なんなら俺なんて前に戸鞠ちゃんに五、六発程後ろから声掛けただけで不審者と間違えられて貰ったことありますもん。そういうのなんていうか知ってますか?自業自得っていうんですよ?」

「お前は一体どっちの味方なんだ?後、お前本当に止めとけよそれ?戸鞠さんなんならお前の事多分嫌いまであるからな?口訊かれなくなる前に止めといた方がいいからな?忠告はしとくぞ?」

「へへっ、じゃぁ嫌いじゃなかったらもしかして戸鞠ちゃん俺のこと好きな可能性もあったりするんですかね?」

「悪ぃな?俺そんな事これぽっちも言った覚えねぇぞ⁇」

 会話が通じたもんじゃない。

 芳賀と戸鞠の間に何があったのか弥代は一切知らないが、冬の間留守にしていた間に何かがあったことに違いはないだろう。一方的に芳賀が彼女に対して好意を寄せているだけにしか聞こえない話が多いが、嫌いな相手にはそもそも話しかけられたところで返事を返さない、なんなら不機嫌な時は弥代にだって言葉を時々返してこないことがある彼女だから、まだ嫌いでどうしようもないとまでは思われていないのだろうが。

「なんだっけ?息子は母親に似た女に惚れやすいんだっけ?なるほどな?なんとなく納得したわ。」

「一人でその納得するの止めてくれませんか?そんでそれどういう意味ですか?」

「そうかいそうかい?じゃぁ黒介くんは伽々里先生に似た気が強くて芯のある女性が好きってことなんだね?」

「なっ⁈なんでそんな話になってるんですかーーーーーっ⁉︎」

「声がデケェぞ黒!相良さんじゃねぇんだ止めろ‼︎」



「何だ?慌てて家まで氷貰ってきたけど全然もう腫れてないじゃない!もぅ!人騒がせなんだからっ‼︎」

「不服にも程がある…、」

 家が近いからと氷を取りにいった少女は本当に直ぐに寺子屋へと帰ってきた。氷なんて夏場で需要があっても根が張る、高いものだと聞いたことがあるためにそんな簡単に手に入るものなのかと考えていると、横から寺子屋の主人こと、佐々木利吉(りきち)が口を挟んだ。

「そよちゃんの家はね、ここいら東門通りの方でも大きな問屋さんでねぇ。将来はお父さんに変わって女主人を目指してるもんねぇ?」

三浦(ウチ)は敷地も広いからね!土の中って冷たいものなのよ!それを上手いこと利用しておっきな地下蔵があってね!茅葺(かやぶ)き小屋でも上に建てちゃえばこれがなんと氷なのに夏でも早々簡単に溶けたりしないのよ!先達の知恵ってのは凄いのよ!学ぶことがいっぱいよ‼︎」

 冬は更に長期間食材を貯蔵しておいて冷やすことで長持ちさせることが出来る為に、安い時に仕入れて常時品を流すことが出来るのだという。里の東門といえば東海道の東門程ではないが、相模川の上流である甲斐国やら隣の位置する武蔵国からも商人が買い付けにも品を売りにくる事も多いらしい。

 幼い見た目からはやはり想像もつかないぐらい口が達者な少女だ。

「なんならここいら一帯の家の子は大体そよちゃんの所でお世話になってるのが多いからねぇ。将来はそのまま親と同じように三浦でってんで若い時からこうして学ばせに通わせようって来てる子が殆どなんだよ。しがない寺子屋なんかがこんな長屋そ三部屋も使わせてもらえるのは、まぁそういうカラクリがあるってわけさ。」

「何よりもここはね!他じゃお目にかかれない、読めないようなふるい本がわんさかあるのよっ!勉強もそうだけど私はそっちも好きだからね!先生は全部読んだ事があるらしいけど、まだ読んでも分からないことも多いもんだから一個一個教えてもらってね…読み終えるのにはまだまだ三年は掛かりそうねっ!」

「喋らないと気が済まないのかなこの子は?」

 ともあれ、昼刻から西空に陽が傾き始めるまでみっちりと寺子屋で字の書き方を教わった弥代と芳賀は肩を並べて里の東門近郊から大通りまで半刻程かけて帰路につくのであった。






「って感じでさ…。取りあえずえっと、よくある字の特徴?形とかそういうの教えてもらって…あっ、それから字って全部書く時に筆を動かす順番があるのな?そんでもって俺は左利きだから右に書いていくのに手の縁に墨が付いちまうから書くときはしっかり筆を立たせてって言われた。形だけ真似て線引っ張るだけじゃ読めないもん出来るわけだわ。奥が深いのはよく分かったよ。」

「……弥代さん?つかぬことをお聞きしますが、何故私が討伐屋からわざわざ距離のあるその寺子屋を勧めたと思いますか?」

「え……?」

 夏の日は長持ちだ。陽が傾き始める前に寺子屋を出て討伐屋へと帰ってきた二人だが、十二分にまだ空は明るかった。それでも昼刻の青空から夕焼け色に空は染まりだし、伽々里がよく立っている御台所の格子窓から漂ってくる味噌の香りは何とも二人の空腹を掻き立てた。手先が不器用でやや大雑把な芳賀は台所に立つことを伽々里から禁じられているが(四月に一人で出来るぞ!と意気込んで桶に張ったまま結果数日放置された野菜はあまりにも酷く、これをきっかけに全面的に立つことを禁止されたらしい)、古峯でこれでも一応鶫のお墨付きをいただいている弥代には手伝いが許された。夕食の準備中の台所に立つことを許されるというのはそれつまり、味見という名目でおかずを摘めることを指す。

 そんなこちらの魂胆はバレバレだろうが、それでも自分だけ味見をして同じ台所に立つもう一人にはさせてくれないなんて事はないことを弥代は知っていた。なんなら最近は飯屋に行くよりも討伐屋の夕飯時にこうして転がり込んで偶に頂戴することもあったからだ。

 均一に切り揃えられた前髪の隙間から覗くその瞳が、いつぞや彼女から向けられたあの鋭い視線を弥代に思いださせた。

 朝に受けたお叱とは雲泥の、鋭いものだ。

「……?な、何故?…でしょうか?」

「寺子屋で、何か教わったこと以外に気付かれたことはございませんか?」

「気付いた…こと…?」

「えぇ…はい。」

「……………えっとぉ、」

 寺子屋での様子を思い出す。

 教わったこと以外といえば、頬を平手打ちしてきた三浦のお嬢さんの実家が問屋で、東門沿いの通りの一画では名が知られていて。

 寺子屋には物珍しい本がいっぱいあって、それを全部読んだことがあるのは主人の佐々木さんだけで。それで寺子屋の主人が薄ら、弥代にはどこかで見覚えがあって……――

「…うん、えっと、その……何となく、分かったような、分からない…ような。」

「味見は没収です。明日、もう一度行ってきてください。」

「……はい、」

 弥代はやっと思い出した。

 寺子屋の佐々木利吉は先日弥代が辰味噌屋からの頼みで赴いた、上総豆腐屋(かずさのどうふや)に居合わせていた客の一人だ。






『ですので、今日は特別です。いつまでもあんな調子では困ります。あまりこういう手を使うのは好きませんが、私の選り好みで使える手を潰すのもどうかと考えたのです。よろしくお願いしますよ館林さん。』

 言われて、差し出された紙入れを懐にいれて館林は静かに頷いた。用意された夕餉の量が普段よりも物足りないと思ったのはそういう意図があったのかと、それでも空腹感は紛れる程の量で悪酔いを避けるための気配りだったのだろうと納得をし、食べ終えるなり早々に自室の方へと消えていった相良をゆっくりと追った。

 襖越しの呼べば覇気のない気の抜けた返事が聞こえた。

『今から呑みに行きやしょう志朗。』

『正気ですか貴方?伽々里にバレたらしばかれますよ?』

『今日はその伽々里から許可ぁ貰ってやす。それでしばかれるなんて(こた)ぁありやせん。』

『伽々里が…?え?』

 先日の一件から、やはり相良志朗の調子はどうにも優れない。いつもなら腹から出ている声は弱々しく、自信ありげな眉尻も下がり気味だ。

 三日が経ち顔の腫れに、腕の痣等も薄れてきているがそれでもまだその時に振るわれた暴力の片鱗が垣間見える。

 痛みはもうほとんどないのだと溢すも、痕に添えられた指先が痛ましく館林の目には映ったのだ。

 自分の為に振るってしまったであろう暴力にしても、彼の心の傷はまだ何も塞がっちゃいない。それが塞がるのはそう容易いものではないのは分かっていた。少しでも気を逸らすことが出来ればとここ数日は何かと気に掛けていたのだが、不器用な自身ではやはりどうにも上手くいかなかった。

 今朝だって昼前の伽々里のお叱りを受ける弥代と芳賀に対する態度だって全くもって見られたものじゃなかった。

 若輩者である芳賀が反抗期というのも要因の一つであるだろうが、だとしてもやはり落ち込む前の彼であれば、しつこいと突きかえさせるぐらいには食い気味に首を突っ込んでいただろうに。

 これで少しでも彼が、今はから元気でも良いから良くなってくれたらと、せめて、せめて…

「…大丈夫ですけぇ、志朗?」

「ちょ、ちょっと…呑みすぎてしまい…ました…」

 呑み始めてから一刻程経った頃、勘定を早いところ済ませたのだが結構な調子で呑んでいたものだから相良は既に限界を迎えていた。

 久しぶりに外で呑めるとなって羽目を外しすぎたのもあるだろう。大抵酒を飲めば翌朝の二日酔いの酷さにやられ、頭を抱えて呑んだ事自体を悔やむ相良なだけに、夜の間だけでこうまで酔えてしまうのは珍しい。

 その丸くなった背を何度も(さす)るのに同じように膝を折って屈む。

「大丈夫ですか?」

 と、どこからともなくか細い女の声が聞こえてきた。

 摩るその手はそのままに、ぐるりと辺りを館林が見回すとその声の出所は後方だった。

 細くなろうともその月明かりは夜空を彩る。

「お気遣いをどうも。連れが少々戻してしまっているだけですので何も問題はありはしやせん。」

「そうですか?何か私に手伝えることはありませんか?」

 そんなのも何もありはしない。館林の中の野生の勘がこの女は何かまずいと訴えかけてくる。よく知りもしない相手にそんなことを思うのはおかしいかもしれないが、生まれてこのかた今日まで館林は自身の中にあるこの野生の勘に命を救われたことも少なくはない。知らぬ相手を信じるよりは、己の中にあるそれを彼は信じて生きてきたのだから。

「志朗、動けやすか?」

「……、」

「…志朗?」


「こんばんは、信玄様。」

「お会いしとう、ございました。」 

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