表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女は戦いに赴き、僕はゴーレムを造る  作者: 白河マナ
第1章 井戸の中から
9/42

第8話 4人の守護者 - 2

 

「ここにいたのか! シュルト!」


「あれ、カミル」


 冒険者カミル=フェンネル。女性剣士だ。

 長い髪を後ろで結び、美男子と間違えられるほど凛々しい顔つき。鎧の隙間から日焼けした肌と引き締まった筋肉が見え、その姿からは力強さよりも鋭敏さを感じる。

 僕は地下闘技場で何度かカミルの戦いを見たことがあるけれど、凄まじい速さの剣戟で、あっという間に相手を追い詰め、喉元に片手剣の切っ先を突きつけていた。


 カミルはモンスター捕獲のプロフェッショナル。モンスターの討伐をすることもあるけれど、普段は3人の仲間と一緒に捕獲したモンスターを鑑定院に売って生計を立てている。持ち込まれたモンスターの多くは闘技場のバトルに出場することになる。

 僕とカミルは鑑定院や闘技場で何度も顔を合わせているうちに仲良くなり、カミルはスライムに負け続けていた僕のことをずっと応援してくれた。頼れる姉的な存在として、会うたびにモンスターの情報や冒険の話をしてくれる。


「闘技場のレオが探してたぞ。お前、何やったんだ?」


「え、僕は……」


 ゴーレムでスノーウルフを倒しただけだ。あんなバトルをしたのが、何か大きな問題になっているのだろうか。


「アタシも一緒に行こうか?」


「ううん。大丈夫だよカミル。ありがとう」


「そういうところが子どもっぽくないんだよなぁ、シュルトは。もっと大人に甘えることを覚えろ」


 そう言われ、力強く抱きしめられる。

 僕はカミルに弟のように可愛がられている。リリアナ、ジークハルト、奥さんのルーシー、そしてカミル、僕の周りは良い人ばかりだ。


「カミルには一杯お世話になってるよ。そういえば、しばらく見かけなかったけど、どこか遠くに行ってたの?」


「ああ。サンブルク王国が編成した守護者討伐隊のバックアップで王都のギルドに駆り出されてたんだ。いやあ、まったく酷い仕事だった」


「え? 『ネジマキ』は、山の向こうのハイレシア王国にいるんだよね」


「『ネジマキ』は大陸全体の問題だからな。ハイレシアが滅べば、次はこちらか南のトリアーナ王国が標的になるだろ。ハイレシアの国力が低下する前に、協力し合って『ネジマキ』と守護者を叩こうというのが3国間の総意なんだよ。それでまずは守護者から、ということで討伐隊に協力してきたんだ」


「守護者は倒せたの?」


「いや、そこそこ追い込んだらしいが他の守護者の邪魔が入って逃げられたらしい。アタシは前線にはいなかったから細かいことはわからないけど、3個中隊のうち2つの隊が全滅して、もうひとつの隊も半壊だよ」


 以前カミルから聞いたことがある。

 僕のいるサンブルク王国の軍隊の最小単位は分隊といって8人で構成されている。それを3個あつめて小隊、小隊を3個あつめて中隊、中隊を……といったように構成されているらしい。

 2個中隊が全滅、1個中隊が半壊ということは、180人は死者が出ている計算になる。


「そ、そんなに強いんですか?」


「バケモノだよ。これじゃ『ネジマキ』になんて到底たどり着けないね」


「……そうですか」


「シュルトも名前くらい知っておいた方がいい。第1のカーナ、第2のアンテノーラ、第3のトロメーア、第4のジュデッカ――これが4人の守護者の名前だ。どいつも魔法とは違った能力を持っているらしい」


「今回戦ったのはどの守護者なの?」


「ジュデッカとカーナって言ってたかな。どちらも見た目はアタシたちと同じ人間らしいよ」


『ネジマキ』を守る4人の守護者。

『ネジマキ』を倒すには、先に4人をどうにかする必要がある。200人を超える軍隊でも歯が立たないのなら、いまの僕のゴーレムでは何の役にも立たない。


 それとも僕のゴーレムやリリアナの大魔法が完成する前に、軍隊や冒険者によって守護者や『ネジマキ』は討伐されてしまうのだろうか。

 英雄クラスの冒険者――この世界に数組しかいないと言われるS冠(エスクラウン)の称号を持つ彼らなら、『ネジマキ』を倒すこともできるのではないか。



【彼女の魔法完成まであと332日】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ここまでお読み下さりありがとうございます。
ブクマ登録や評価にて応援して頂けると嬉しいです。

― 新着の感想 ―
[気になる点] ジュデッカってダンテの神曲に出てましたっけ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ