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彼女は戦いに赴き、僕はゴーレムを造る  作者: 白河マナ
第1章 井戸の中から
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第7話 4人の守護者 - 1

 

「おわああっ!」


 ベッドで寝ていた僕は全身に圧迫感を感じて飛び起きる。その拍子に、金銀銅貨が掛け布団の上から大量にこぼれ落ちた。


「一体なに!? 重いっ!」


 見ると、布団の上に大量の貨幣が山積みになっていた。

 すぐそばにリリアナが無言で立っている。

 彼女はこうしてたまに仕事で稼いだお金を僕に持ってくる。最初は手渡しだったのに、だんだんと渡し方が大雑把になってきている気がする。


「おはよう、リリアナ」


 起きた直後でまだぼやーっとしている頭のまま挨拶をする。

 彼女は僕に不意打ちのように口づけをして、開けっ放しの二階の窓から飛び降りる。そしてそのまま冒険者ギルドの方に走って行ってしまった。


「……ゴーレムを造ろう」


 彼女が持ってきたお金を整理し、着替えて一階の工房に向かう。朝食を軽く済ませ、いつもように粘土を作業台に置く。

 今日はもっと大きなゴーレムを造るために僕の魔力を込めた粘土を作り置きすることに専念する。目標は僕の頭大くらいの粘土のカタマリを10個。


「きっつー! もっと低い目標にすればよかったーっ!」


 重石をつけられたように両腕が重かった。

 一心不乱に粘土をこねてこねて、魔力を注いで注いで、最後に魔力が離散しないよう球体にした各粘土に術石をはめ込んでいく。それを何度も繰り返す。

 10個完成。僕は昼食を取らないままゴーレム用の粘土を造り続けた。目標の10個が完成したのと同時に、僕は工房の床に大の字で寝転び、しばらく動くことができなかった。

 寝たままの体勢で、粘土と術石の残量を確認する。


「そろそろ術石も残り少なくなってきたな」


 今日10個も使ってしまったのであと3個しかない。

 明日にでもリリアナに頼まないと。


「あとは、ゴーレム用の粘土の発注も必要か……そうだ、鑑定院に行ってセーシャさんに昨日の結果を聞きにもいかないと」


 僕は片膝をついて立ち上がり、両腕を揉みながら家を出た。



◇ ◆ ◇



『石・粘土屋 双子のうさぎ』

 店の中に入り、陳列されている商品は見ずにカウンターに向かう。

 薄暗い店内は石と土の匂いが充満している。その匂いの中には、僕が慣れ親しんでいる粘土の匂いも含まれていた。

 僕は久しぶりにロドスタニアの町の中心部まで歩いて、ゴーレム用の粘土を買いにこの店までやってきた。注文したのはローム地方産の粘土500キログラム。馬車で届けてもらう量だ。


「シュルト様、いつもお買い上げありがとうございます」


 店の主人――ドルネさんは9歳の僕に対しても丁寧に接してくれる。

 僕が使っている粘土は、主にレンガの素材として建物の外壁や道路の舗装、その修繕などに利用されている。いつも業者並みに粘土を発注している僕は、お店にとってかなりの良客らしい。


「今回もそれを魔法士ギルドに送って頂けますか」


「はい。かしこまりました」


 僕がゴーレム造りに使っている粘土には、魔力が込められている。魔法士ギルドに送って、そこでお金を支払って魔力を込めてもらう。

 粘土の注文も魔法士ギルドへの手配も始めのうちはリリアナがやってくれた。彼女は大魔法を実行して言葉を失う前に、僕にゴーレム造りに必要なことを一通り教えてくれた。素材のとなる特別な粘土の準備からゴーレムの基本的な造り方、鑑定院や地下闘技場でのバトルも、すべて彼女に教えられて実践していることだ。


 店を出た僕は、ぶらぶらと市街地を歩いていた。

 暖かな日差し。高く澄んだ青空。


「今日も平和だなあ」


 子どもたちが笑顔で走り回る姿を見ていると、思わずそんな言葉が出てしまう。でも決して世界は平和ではない。この国の遥か東、高く険しい山脈を挟んだ向こう側にあるハイレシア王国は、災禍『ネジマキ』に襲来され、複数の町や村が壊滅したと聞く。

 僕が元いた時代――300年前にも『ネジマキ』は現れた。ジークに聞いた話だけれど、その時の『ネジマキ』は4人の守護者とともに4つの国を滅ぼし、忽然と姿を消したという。


『ネジマキ』も気になるけど、守護者ってどんな人たちなのかな……。そんなことを考えていると、背後から女性に声をかけられた。



【彼女の魔法完成まであと332日】

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