死から戻った私は、今度は幸せになります!
「いやぁー!やめて!」
「お嬢様!私達を気にせず逃げてくださっ!?」
言い切る前に侍女は剣で胸を刺され地面に転がった。
「なぜ!?どうしてこんな事に!?」
私はキャメロット王太子殿下の婚約者だったけど、聖女であるカロリーナ嬢殺害未遂容疑をかけられて、婚約破棄され、国の最北の塔に投獄される事になり、頑なに着いて行くと言ってくれた3人、従者のジョゼフ爺と侍女のマリアとマチルダと共に馬車で向かっていた。大きな音がして馬車が止まったと思ったら勢いよくドアが開き、馬車から引っ張り出された。足元には真っ赤に染まったジョゼフが倒れていた。
マリアもマチルダも私を自分達の背後に隠すように立った。そんな二人も次々と倒れていった。目の前は赤く染まっていた。
「ジョゼフ!マリア!マチルダ!!」
目の前の血だらけの遺体を抱き締めながら叫んでいた。その時後ろから心臓を剣が貫き私は絶命した。
意識が途切れるまでの短な時間、うっすら見えたのはラズベリーブロンドの髪色とその手に握られた血塗られた剣、そして
「ヒロインの私の邪魔をするから悪いのよ」
と言う声だった。
♢♢♢♢♢♢♢
「眩しい……」
カーテンから漏れる太陽の光で目が覚めた。
「ここは…?」
見覚えのある風景。生前の自室だった。
「お目覚めですか?お嬢様」
「マ、マリア!?」
「はい?どうかなさいましたか?」
死んだはずのマリアが生きている。そして私自身も。何が何だか分からなかった。
「マリア?私が誰か答えて…」
「いったいどうされたんですか?お嬢様はアリエル・シャルレ公爵令嬢じゃないですか。お熱でも出ましたか?」
マリアが私のオデコに手を当てて熱を測る。
「やっぱり少しありますよ!お医者様をお連れしますから横になって少しお待ち下さいね」
マリアは足早に部屋から出ていった。
「一体どうなってるの??」
フッと横を見ると殺された自分より随分と幼い自分が部屋の姿見に写っていた。
その姿を見た瞬間意識が遠のいていた。
「アリエル、ごめんなさいね。
私の我儘で時間を巻き戻したの。
また貴方に辛い思いをさせてしまうかもしれない。
それでも私は貴方に生き直して欲しかったの」
神殿に祀られていた女神像にそっくりな女性が泣きながら私に謝っていた。
「レオノーラ様?」
レオノール国を守っていると言われる女神様だった。
「私の姉が守る世界から転生してきた少女が貴方を陥れ、殺害したのよ。
あの少女は転生する時に姉から加護を貰ったの。だから聖女としての力がある。姉は姉の世界で不幸だった彼女を私の世界で幸せな人生を歩ませたかったの。
でも少女は力を持った為、自分だけ幸せになろうとしたの。他の誰を不幸にしても……。
この世界で貴方が邪魔だったから、少女は貴方の苦しみむ姿を見たくて貴方だけじゃなく貴方の大切な人達も滅殺した。
私は姉の加護には干渉出来ない。
でも私は私の世界に生まれた貴方を助けたかった。私の加護の力で少女に負けないで……。本当にごめんなさい……」
レオノーラの瞳からは止めどなく涙が流れていた。
私は私の為に泣くレオノーラ様をそっと抱きしめた。
「レオノーラ様、ありがとうございます。私は生きます。
生きて私の為に死んだ者達を守ります。あの時ほど辛い事などありませんから。チャンスをくださった事に感謝します!」
♢♢♢♢♢♢♢
再び目が覚め、マリアに今がいつなのか聞いた。私が死ぬ日から7年前に遡っていた。私は8歳になる歳だった。婚約者に選ばれる前。今からなら出来る事は沢山ある。まだ拙い字でやるべき事を書き起こした。
・体力をつける
・王太子の婚約者にならない
・知識を増やす
・秘密の護衛騎士団を作る
・頂いた加護の魔力を高める
レオノーラ様から頂いた加護は闇の魔力だった。光と闇は対である。聖女の力と言われる治癒力も光と闇の魔力。
でも聖女にはなりたくない。だから元々持っていた水の魔力のみ使い、闇の魔力は隠すことにした。
♢♢♢♢♢
8歳の誕生日。誕生日プレゼントは何が良いか聞かれて
両親には王立図書館への出入りと、アデーレ夫人とカリス魔導士を家庭教師につけて欲しいとお願いした。
祖父母にはシャルレ侯爵家の騎士団の訓練を見せて欲しい事と剣術を教えて欲しいと伝えた。シャルレ公爵家は元々騎士の家系でもあり、祖母は昔剣術をしていた事から両親は反対したけど、祖父母が自ら教えると説得してくれて、その2つの願いは叶った。
家庭教師をお願いしたアデーレ夫人とカリス魔導士は実力もあるが、過去、人を平等に見る事が出来る方達だった。その為お願いした。
勉強は大変だったけど、知らない事を知る喜びを現世では知った。
剣術の稽古も頑張った。昔は無かった体力もどんどん付いてきて、それに伴い魔力量も増えていった。
祖父母は私が10歳の誕生日後に馬車の事故で亡くなる。
幼い私には味方が必要だった。それに正直、祖父母を失いたく無かった。
「お祖父様、お祖母様秘密のお話があります。お話を聞いて私がおかしいと思われたら私を捨てられても構いません」
「改まってどうしたんだ?」
「アリエルちゃん、話してごらんなさい」
私は話せる事は全て話した。
時間が戻る前にあった事。レオノーラ様の事、加護を頂き闇の力がある事。祖父母の事故の事。ラズベリーブロンドの聖女を名乗る少女の事。
祖父は顔が真っ青になり言葉を失っていた。
祖母は私に近寄り優しく抱きしめてくれた。「頑張ったわね。これからは私達が力になるから、安心して」と言ってくれた。
その後祖父母は爵位を父母に譲り領地に戻る事にした。私の病気療養を理由に私を連れて。ジョゼフ、マリア、マチルダは何も言わずに今回も付いてきてくれた。
♢♢♢♢♢♢♢
領地で11歳の誕生日を迎えた私の側には祖父母が居た。領地に帰った事で事故に遭わなかったからだった。
領地に来て2年、私の事を信じてくれた祖父母は出自を問わず優秀な者を集め私設護衛騎士団を作ってくれた。
護衛騎士団の中には剣術以外にも魔術やSHINOBI術を使える者もいた。
私は皆と一緒に技を磨いた。一緒に訓練する私を皆も仲間と認めてくれて嬉しかった。
記憶の中で今年の冬に疫病が流行るのを思い出し、疫病に効くピレネコ薬草の栽培に力を入れた。ピレネコ薬草は疫病が流行るまではただの腹痛に効く薬草だと思われていて栽培もされていなかった上どちらかと言えば雑草として抜かれていた。前世ではピレネコが効くと分かった後は高値で取引され、市井の者は手に入れる事が出来ず沢山の人が亡くなった。
今回は国中に散らばったSHINOBI達のおかげでいち早く疫病流行が分かり、すぐにピレネコ草を届け、飲ませ、流行を抑える事も出来た。領民には予防薬のお茶として飲ませていたので、SHINOBIを含めかかる者はいなかった。
疫病流行を抑えられた冬、王太子の婚約者が決まった。エミリア・バーロンド公爵令嬢だった。
14歳になり王都学園に入学になった。貴族籍にある者は皆通わなければならない。ここで、私を殺した聖女カロリーナに出会う事になる。でも今の私は王太子の婚約者では無い。狙われるのはきっとエミリア様だ。私の様な思いはさせない!私が守る!そう誓った。
キャメロット王太子とエミリア嬢はとても仲が良かった。お互いを思い合っていた。そんな2人の間に割り込む少女が居た。
「キャメロット君!ここ教えて下さい!!」
キャメロットとエミリアが話していると突然キャメロットの腕に手を回し、教科書を差し出した。
「カロリーナさん、異性の腕に掴んだりしてはいけませんよ。
それにキャメロット様は王族です。その口調は不敬にあたりますよ」
「そ、そんな!?学園では一切、上下関係など無いはずです!それにキャメロット君が今度勉強を見てくれるって言ってくれたから……」
カロリーナは涙を溜めてエミリアに訴えた。途中から見た者はエミリアが虐めていると勘違いする事だろう。
キャメロットはカロリーナの胸が腕に当たり、感触に呆けているのか、何も言わない。
「カロリーナさん、婚約者のある方に、そういう行為は貴族令嬢はされませんよ。はしたない行為です。公然では婚約者同士でもしませんわよ」
エミリアを悪役にするわけにはいかない。そう思いアリエスは声を上げた。
アリエスの言葉を聞き、王太子殿下もハッとし体を離した。
「こ、これからは分からない所は先生達に聞くのが1番だと思うよ。頑張って勉強してくれたまえ」
そう言ってエミリアとその場を後にした。
アリエスは今後のことを考えて学園に居るSHINOBIを交代でエミリアに付けた。
「なんで!なんで!なんで邪魔するのよ!!」
校舎の隅でカロリーナはイライラして地団駄を踏んで叫んだ。
「全然私の思い通りにいかない。キャメロットは私のなのよ!他の誰でも無い、私を好きなんだから!!邪魔する者はみんな消すんだから!!私には光の女神様の加護があるんだから!!」
光が学園を包んだ瞬間その光を闇が包み込み光が消えた。
「え?え?どうなってるの?」
カロリーナは光が消え真っ青になっていた。
その姿を学園の三階からアリエスが見ていた。
♢♢♢♢♢♢♢
「キャメロット殿下、アルト君、カイル君、ジョン君おはよう!」
キャメロット殿下と後の側近として学園でも常日頃側にいる3人に声を掛けながら、光魔法の魅了をかけるカロリーナ。
「「「おはよう!カロリーナ!今日も可愛いね!」」」
殿下以外の3人は顔を赤らめながらカロリーナに声をかけた。
「キャメロット殿下?」
「今朝は急いでいるので失礼する」
カロリーナは3人に比べてそっけない態度の殿下に朝からイライラして爪を噛んだ。
昨日から殿下にだけ魅了が効かない…。なんでなの?
「キャメロット殿下、エミリア様、おはようございます」
「アリエス様、おはようございます!」
「アリエス君、おはよう。昨日頂いたブレスレット2人で付けさせて頂いてるよ。最近は眠りも浅く少し体調不良だったが、今朝はスッキリしているよ。シャルレ領で取れる魔石はすごい効力だね。ありがとう」
「お役に立てて良かったです」
「私、殿下とお揃いが嬉しくて!感謝しています」
「お二人ともお似合いのカップルですもの。真ん中のピンクの石はピンクダイヤモンドなんです。永遠の愛と言う意味がございますので、お二人にぴったりですね」
「「ありがとう!大事にします」」
2人は顔を真っ赤にしながら生徒会室に入っていった。
ブレスレットには魅了魔法の無効化が付けられている。その為カロリーナの魅了は殿下には効いていなかったのだった。
♢♢♢♢♢♢
月日が経つたびに魅了が効くものが減っていった。イライラはMAXになったカロリーナは全てを消すことに決めた。
「私を好きにならないなら皆消えちゃえ!!!」
王都を光が包み込んだ!次の瞬間闇が光を包み込み光が消滅した。
「はぁ?どういうこと?なんで?なんで?」
「私が貴方の魔法を消しました」
「消したって…。私の魔法は女神から貰った光の加護なのよ!消せるわけないじゃない!!」
「消せますよ。私の闇魔法も女神様から頂いた加護ですから」
「あんたも転生者だって言いたいの!?」
「違います。私は転生者じゃありません」
「じゃなんで女神の加護を持ってるのよ!」
「私は時を遡ったんです。女神のお力で。遡る前私は貴方に殺されました。でも今は殺されるつもりはありません」
「そんなの知らないわよ!前に殺されたって言うなら今回も素直に死になさいよ!あんた邪魔なのよ!!」
「貴方は既に沢山のものを手に入れているのに、どうして全てを手に入れ無いと気が済まないの?」
「私は光の女神の加護を貰っているのよ!聖女なのよ!全てを手に入れて何が悪いのよ!邪魔者は要らないの!」
「この世界は貴方のおもちゃじゃないわ。でも貴方を元の世界に戻す事は出来ないのですって。だから私は貴方を無に返します」
「あんたこそ消してやる!」
光魔法がアリエスを包み込み込んだが一瞬で消えた。アリエスにはカロリーナの魔法は効かなかった。女神の加護の力は同等だったが、アリエスは努力を続け力を増幅していた。
「暫くは私の中で眠りなさい。そして時期が来たら生まれ直すの。その時は沢山の愛に囲まれるから安心して」
闇に包まれた消えそうなカロリーナをアリエスは優しく抱きしめた。
その優しさに、温かさにカロリーナは驚いていた。この世界でも前の世界でも誰からも貰えなかった温かさ。生まれて初めて抱きしめられたから。本当は1番欲しかった温もり。カロリーナの瞳から頬に涙がこぼれていた。
「……ごめんなさい…それからありがとう……」
カロリーナは小さな声で呟いた。
カロリーナは光となりアリエスの身体に吸い込まれていった。
学園を卒業後、アリエスは領地に戻り祖父母達と幸せに暮らし、騎士団長と結婚した。2人の間にはラズベリーブロンドの愛娘が抱かれていた。
この作品を読んでくださってありがとうございました!
評価頂けたら創作活力になります!
ぜひお願い致します!
この作品なかなか進まず本日やっと完成しました。
本日は私事ですが、BDです。記念になります。




