覚悟
-9月21日午前10時00分-
ノックをして訪室の許可を得た後、ゆっくりと青年がドアを開け個室に入ってくる。
「はじめまして、柴桜誠です!一応神奈川支部の警備隊隊長やっています」
まるで面接を受ける新社会人かのような爽やかな挨拶をする好青年が彩月の目の前に立っている。マイナスポイントは軍服の着崩れていることくらいである。
あの時の女性が言っていた上司がこの人であると彩月は察する。
「はじめまして、綺堂彩月と言います」
お互いよそよそしい挨拶をベッドサイドで繰り広げる。
「えーっと話は一応、紬ちゃんから聞いてるんだっけ?」
この時初めて彩月は以前訪れた女性の名前が紬であることを理解した。
「はい、あの時は自分混乱していて......」
「だよね......僕も様子を見てくるだけって伝えたのに全部話してきたとかあの子言うからさぁ」
柴は頭をかきながら苦笑いしている。
「詳しく話を聞きたいんですけどいいですか?」
彩月のまっすぐな瞳を見て、柴も顔色を変える。彩月の真剣な姿勢に応えるように落ち着いた声で話し始める。
「調査が滞っていて、何故君が純正型の同化人種であるのか、そして君の前に現れた異種族について何もわかっていないんだ」
柴は淡々と話しながら写真を数枚取り出した。写真に映るのは見た事のない生物の数々だった。
「僕が今日、話に来たのは君を勧誘するためだ。僕等はこの写真に映るの異種族と日々戦っている」
「エスペランサですね、俺も少し調べました。対異種族を目的とする組織で国からの支援も受けている、そして組織する人間のほとんどは手術を受けた同化人種であってますか?」
彩月の切り返しに柴は関心した様子を見せる。
「うん、よく調べられている、組織は千葉に本部を構えて、居住区のある他八の県に支部を置いている、僕は神奈川支部の中でも戦闘に特化している警備隊の隊長」
「その隊長が直々に俺をスカウトしに来たってわけですね」
「そういうことだ、でも君には拒否権がある......残念ながら能力を有している限りは施設の中で過ごすことになるが衣食住が保証されている安全な基地の中で生活することができる」
そういうと施設のパンフレットを取り出し、彩月に差し出した。
しかし彩月はそのパンフレットを受け取る素振りはない。
「寿柚寿はエスペランサにいるんですよね」
柴は差し出したパンフレットを軍服の内ポケットにしまい彩月の問いに対して深く頷く。
「俺の唯一の友達なんです、もしかしたら彼女はそうは思っていないかもしれませんが......だから次こそ友達を守りたいんです!」
「君の決意を尊重するよ、改めてよろしくね彩月くん」
柴は彩月の目の前に手を差し出す。
久しぶりに呼ばれた自分の名前に少し驚いた表情を見せる彩月はその手をしっかりと握った。
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
握手を交わした後、2人はお互い笑顔だった。
「入っておいで」
柴が手招きするかのように誰かを呼ぶ。
ドアから顔を出したのは金髪がトレードマークの美少女である。
「綺堂くん久しぶり......」
頬赤くして病室に入ってくる。
さっきの話を聞かれていたと気づき、照れ臭くなった彩月は口元を手で隠しながら、
「寿さん、久しぶり」
と答えた。
「じゃあ僕は明日の9時に迎えにくるから」
柴そう言うと病室から足早にさっていった。
沈黙した時間が数分流れる。
「綺堂くん、あの、助けてくれてありがとう」
「寿さん、あの時は助けられなくてごめん」
2人は沈黙を打破しようと言葉を振り絞るが、その言葉は重なる。
「あの、寿さんじゃなくて、柚寿でいいよ友達だしっ!!」
彼女は慌てたような素振りで彩月に問いかけた。
「うん、柚寿、ありがとう」
今は彼女との再会を素直に喜ぼうと彩月は彼女に笑顔を見せる。
「あ、もう帰るね、柴大尉待ってるし!」
そう言うと柚寿は駆け足でさっていった。
彩月は優しく彼女見送った。
-白松高等学校吸血種襲来事件まで後4日-




