真実
深い闇の底からゆっくりと浮かんできたような感覚に包まれながら彩月は目を覚ました。
一定のリズムで響く機械音が聴こえる。身体は動かそうにも激痛で動かせない。
「目が覚めましたか?」
その声に反応するも、自分の声は全く出てこない。かろうじて頷く。
「自分の名前、わかります?」
必死に絞り出そうとするも、声が掠れきってうまく喋れない。
「綺堂彩月さんですね」
そう看護師が彩月の言葉を拾い上げて反応する。
「全身が痛むと思いますので、休んでいてください」
看護師のこの言葉を聞くとまた眠りにつく。
夢は寿と仲良く買い物をする光景を映し出した。彼女の笑顔、美しい金色の髪。まさか、彼女が自分に友達になろうだなんて......
その瞬間忘れてはいけないものを思い出したかのように起き上がる。
「痛っ」
「綺堂さん、どうしましたか?」
起き上がった綺堂支えるように看護師が駆けつける。
「寿さんは、寿柚寿さんはどこにいますか?」
看護師は落ち着くよう彩月に働きかけるも、その手を振り払うようにして枯れた声で訴える。
看護師を静止するように、彩月のもとに黒い軍服の女性が歩み寄ってくる。
「綺堂彩月、寿は2日前にここを退院した」
女性は彩月と同年代くらいの容姿であるが、鋭い眼光は10代の女性とは思えない。
ベッド上の彩月を見下ろすように視線を向けている。
「......本当ですか?」
半分錯乱状態にあった彩月は落ち着きを取り戻す。
「無事だったんですね」
彩月はそう続けるも女性は何も言わない、彼女の表情に違和感を覚えた。
「無事じゃないんですか?」
彩月は不安げな表情を浮かべる。
そうすると彼女は口を開いた。
「一命は取り止めた、しかし彼女はもう人ではない」
「人ではない?どういうことですか?」
「こういうことだ」
彼女はそう言うと首につけていたチョーカーを外す。
次の瞬間、目を疑うような光景に彩月は絶句する。
彼女は翼を生やした。翼だけでなく、目の色が深紅にかわり、手首の周囲に輪状の光り輝く物質が現れた。
「天使......」
「天使などではない。私は同化人種だ、天魔種と言われるものだ」
「同化人種!?」
「聞いたことはないのか、異種族の細胞を同化手術で取り込んだ人間のことだ」
そう言うと彼女はチョーカーをつけて元の姿に戻る。
「異種族ってあの......」
彩月は襲撃されたあの大蜘蛛を思い出した
「寿柚寿は私と同じ手術を受けてと同化人種なった。普通な手術じゃ恐らく助からないとの判断でな、そして彼女は退院しエスペランサに入隊した」
エスペランサは対異種族組織であると授業で習ったことを思い出す、あの頃は異種族もエスペランサも自分とは程遠い存在だとしか認識していなかった。
「でも異種族って防壁の外にいて......」
「あぁ、基本的に居住区に現れることは無い。今回は原因不明の出現だ」
「俺、思い出せないんです、あの後どうなったのかも何も覚えてなくて気がついたら病院にいて」
「あれは綺堂彩月、お前が殺した」
「え......」
「お前は生まれながらの同化人種、いわば純正型だ、首飾りを外して抑えられてた細胞が活動して能力が覚醒した。しかし反動がでかくて私達が駆けつけた時にはお前も気絶していた」
「俺が同化人種!?」
彩月は次々と突きつけられる言葉を全て受け止められていなかった。
「3日後、私と私の上司が来る。それまでにエスペランサに入隊し異種族との戦いに命を賭すか、この施設で一生保護されて生きていくか決めておけ」
一方的に言い放った女性はその場を立ち去る。彩月は「待ってくれ」の一言も言えないほどにショックを受けていた......
-9月18日 午後18時20分-
場所:エスペランサ神奈川支部・高度医療機関ICU病棟




