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プロローグ
長閑に揺れる緑の中に偽りのない真実を表すような清く美しき教会がある。
その教会の扉の前には、未来を見据えているかのような透き通った瞳を持つシスターが背筋良く立っている。
瞳に映し出されているのは赤子を抱えた一人の女性、赤子は聴こえてくる安らかな波の音を子守唄となり、うたた寝をしている。
一方、女性は協会には似つかない汚れた軍服を身に纏っていおり、哀しげな表情とともに口を開く。
「私はここに戻ってくることも、この子を待つこともできない。でも私にとっては希望なの、だからどうか......」
シスターは涙が零れ落ちそうな彼女の頬に優しく触れる。
「あなたの大事なものを私達に守らせてくれてありがとう。」
彼女はシスターの言葉に救われたように瞳を閉じる。流れ落ちた雫は頬をつたい、シスターの指先を濡らした。
-20XX- 5月24日
エスペランサ日本支局・群馬支部襲撃事件前日




