釘付けになる男
男は、自転車を停め信号待ちをしていた。
考え事をしながら待っていると
ついつい青になっているのに気付かないなんて事が
以前にもあったので、今回はじっと前を見つめた。
前方に白バイに乗った婦警がいた。
男は、別段やましいことが無いにも拘らず
ふと、視線を逸らそうとした。
しかし次の瞬間、逸らすどころか
男の視線は、白バイ婦警に釘付けになった。
その婦警は、アイドルかと思うほど
愛らしい顔で、前方に停車した車のドライバーに
素敵な笑顔で応対していた。
男は、しばらくの間
その様子をじっと見つめていた。
周りからすれば、あの自転車は何故
青信号に変わったのに停止したままなのかと思うだろう。
男は、どう思われようと構いはしなかった。
あの笑顔に出会えたことで
全てが帳消しになった気がした。