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06. オープニング

 ミチルの案内で荒野を進んでいくと、巨大な城壁を持つ大都市が近づいてきた。


 あれが、ゲームタイトルになっている滅亡都市防衛圏を形成している独立都市のひとつらしい。


 城壁の周囲には質素な建築物が無秩序に密集している。


 スラム街というやつだろう。


 スラム街の入り口に到達すると、ミチルが俺キャラに振り返る。


「カッタさん、スラムに着きましたよ!」


「ありがとう。助かったよ」


「でも、今後は気をつけて下さいね。迷子は命取りですよ?」


 俺のことを迷子だと思ってくれたわけか。

 うん、それでいいや。


「そうだな」


「では、私はこれで」


 そうか、せっかくのおっぱいキャラなのに、ここでお別れか。

 もしかして、道案内役だけのモブキャラだったのかもな。


「ああ、さらばだ」


「……」


 ミチルが心配そうに俺を見ている。


「どうした?」


「本当に大丈夫ですか? カッタさん、もしかして記憶喪失とかじゃないでしょうね」


 ああ、これ、「案内役は本当にいりませんか?」というゲーム的な優しさやな。


 ゲーム序盤に街の施設やシステムなどの案内役が存在する時があるが、しかし、デメリットとして自由行動が取れなくて、ゲームプレイテンポが悪くなってしまう事が多いんだよな。


 でも、ミチルはいじりがいのある面白い女キャラだし、ここでお別れをして、二度と出てこなくなっても寂しいからな。

 側に居てもらおうか。


「――その通り!」


「もー! やっぱり! そんな状態でスラムをウロウロしていたら、命がいくらあっても足りませんよ!?」


 ミチルに叱られた。


「それじゃあ、私に着いて来て下さい。スラムを案内しますから」


「ああ、頼む」


 ミチルの後を続いてスラムに入っていくと、ミチルと俺キャラからカメラが離れていき、上空へと上がって大きなスラム街と、更にとんでもなく巨大な都市の姿を映し出す。


 既に俺の手からはコントール権は失われていた。


 これは、きっとあれだな。


 オープニングが始まるに違いない。


 舞台に到達と同時にオープニングを開始するというのは、定番だが良い演出だよ。




 画面がゆっくりと暗転していき、口笛調の静かでメロディアスな音楽が流れてくる。


 荒野にぴったりな曲だ。


 そして、一気にド派手なフルオーケストラとなり、綺麗な声の女性ボーカルが情熱的に主題歌を歌い上げていく。


 荒野を埋め尽くす魔物や機械兵器などの軍勢に向かって、迷いなく突撃しては衝突する大勢の騎士軍団。


 魔法使い達が魔法を雨あられと撃ち放ち、敵の群れの中に爆発を巻き起こす。


 主要キャラ達なのか、格好良い男騎士や美しい女騎士やらが、騎士団に命令を下している。


 黒い軍服を着た女性軍人が静かに手を下ろせば、後ろに控えていた戦車隊が凄まじい砲火を撃ち放つ。


 鉄帽を被りタバコをくわえた荒くれ風な男が突撃銃を構えて撃てば、彼の仲間達も一斉に銃撃を開始する。


 空爆の指示を出す特殊兵や、背中のブースターで空を舞いながら戦う美しい女性兵士達。


 竜に乗った竜騎士達が、竜のブレスで魔物や機械兵器などを焼き払う。


 忍者が手裏剣を投げたり、火薬玉を放り投げては爆発させる。


 侍が刀で魔物達を一刀両断に斬り伏せる。


 格闘家は、気弾を放ったり、かめ○め波のようなものを撃っている。


 シンプルで格好良い人型ロボが両手の銃火器から銃弾を浴びせかけ、肩のミサイルポッドからミサイルを撃ち放つ。


 更には肉食獣型や恐竜型のロボまでが戦場を駆け巡りながら、ビーム系の爪や牙で切り裂いたり、背中や肩などに装備した巨砲からの砲撃を繰り返す。


 そして、敵の大群の真横に現れたのは、大和や武蔵のような戦艦群。


 地上の荒野を走れるようにした地上戦艦らしい。


 超弩級戦艦達が巨砲から黒煙と共に砲弾を撃ち放ち、敵の群れが木っ端微塵に吹き飛んでいく。


 それだけでもド派手なのに、ついには巨大ロボットが上空から巨大航空機より投下されて、敵の群れを踏み潰しながら着地すると、両肩のミサイルポッドから小型ミサイルを雨のようにばら撒きながら撃ち放ち、両手からはレーザービームで敵の群れを焼き払い、胸部からは波動砲をぶっ放して前方を一気に穿つ。


 まさに、ド派手オブド派手。


 凄いゲームだな。

 これらが俺の出来る事なのだとしたら、ちょっとワクワクしてきたわ。


 しかし、波動砲の直撃跡にはいくつかの人影が残っていた。


 どうやら、ボスっぽい敵らしい。


 不敵に笑っていたり、我関せずという感じだったり、または嬉しそうに戦闘態勢を取る人型や異形な姿をしたボス的な存在達。


 そんなボス達の背後からは、巨人の群れを筆頭に凄まじい数の魔物や巨大兵器などの群れが襲来。


 一見、人類軍が押しているように見えた戦場は、カメラが上空へと移動すると、ちっぽけな人類軍を大地を埋め尽くすような圧倒的な数で取り囲む敵の群れが映し出される。


 更に上空からは、巨大な宇宙戦艦が何隻も降下してきており、まるで人類の終焉を告げるかのようにオープニングが終了した。


 画面が暗転し、音楽も鳴り止む。




 ……ちょっと、怒涛のオープニング過ぎて息が止まってたわ。


 ホッと一息をつくと、モニターの真っ黒な画面に、白色の無機質な文字列が次々と浮かび上がり始める。




...システム仮実行中


...オープニングを確認


...プレイヤー存在安定


...運命共導体の生存を確認


...これより本起動に入る


...最新システム構築中


...10%


...30%


...50%


...80%


...100%


...最新システム構築完了


...最新システムを再起動します


...


...ReDiWos・G・System ver2.00


...Reboot!


...OK!


...起動開始!


...


...我こそは世界を滅亡から救う最後の砦


...悪に抗う唯一の善にして希望でつづられた黄金の文字列


...たった1人を救えずして、どうして世界を救えるだろうか


...ここに貴殿の勇気と優しさは証明された


...これより全力で支援を開始する


...世界を救う英雄に万雷の栄光あれ!




 最後に妙な言葉が表示されると、画面はすぐにゲーム画面へと移行し、俺キャラが表示されるのだった。

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