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11. 戦士のジョブクリスタル

「やあ、どうも」


 防衛圏ギルドまで舞い戻った俺キャラが、ヤンキー姉ちゃんなギルド長に声をかける。


 カウンターの受付に座っている黒色のOL制服にタイトスカートから見える生足が色っぽい、巨乳なヤンキー姉ちゃんは、俺キャラを見ながら眉をひそめた。


「……なんだよ。結局、ミチルの前で格好をつけたくて見栄を張っていただけかよ。……しょうもない男だな。ま、いいよ、男なんてだいたい、そんなものだからさ」


 何を言っているのだ、このドヤンキーは。


「ほら、スラム街で稼げる仕事の求人広告は、あの掲示板に張ってあるから、好きなのを持ってこいよ。きちんと紹介はしてやるし、ミチルにもとりあえずは黙っといてやるからよ」


 ああ……そういう意味か。


 俺が、青アメーバを狩れもしないのに、ミチルの前で出来もしない男らしさアピールをしたと勘違いしているわけか。


「そんな仕事はしないと先も言っただろうが。それに、青アメーバは狩ってきたぞ」


「お前、裸族をやめてまともな姿になったかと思えば、相変わらず頭はわいているみたいだな」


 本当に失礼なドヤンキーだな。


 見た目は綺麗で美人だが、本当にこいつがデレる日が来るのか心配だわ。


「さっき会ってから、まだ30分も経ってないだろうが。何が狩ってきただよ。そんな下らない嘘なんぞ、スラムの子供すら騙せないぞ兄ちゃん」


 ほう、ゲーム内にも時間の概念があるのか、面白いな。


「俺もそんな下らない嘘を言うために、わざわざ、ここに来たりはしない。いいから、さっさとジョブクリスタルを売ってくれ」


「……お前」


 ヤンキー姉ちゃんなギルド長は少しイラッとしたのか、「チッ」と舌打ちをすると、自身の前に小さなウインドウを開いた。


 その瞬間、俺が見ているモニター画面にアイテム売買ウインドウが表示された。


 そこには、戦士のジョブクリスタルのみが販売されている。


 価格は都市通貨20万P。


「ほら、買えるものなら買ってみろよ」


 ヤンキー姉ちゃんが、俺キャラを憐れむような目で見下しながら微笑んでいる。


「いや、その前に換金してくれよ」


「は、私が? 何でいちいち、そんな面倒な事をしなきゃいけないのさ」


 何を言っているんだこいつは。


「ここは、防衛圏ギルド施設内だから、自分のウインドウを開いて、所持している魔石を好きなだけ都市通貨Pカードに放り込めば自動で換金処理してくれるだろうが。さっさと自分でやれ」


 なるほど、そういう仕組みか。


 俺は早速、ウインドウを開いて、都市通貨Pカードに小魔石200個をぶち込むと、20万Pが加算されて、小魔石が全て消失した。


 魔石は防衛圏ギルドの倉庫にでも転送されたのだろうな。


「なー、この都市通過Pカードって、盗まれたら終わりなんだよな?」


「当たり前だろう。本人認証制のセキュリティなんかが欲しいなら、高価な端末機械を買うしかないよ」


 モヒカン筋肉男から奪ってそのまま使えているぐらいだから、都市通貨Pカードは、ただの財布みたいな物のようだな。


 というわけで、俺は迷いなく、さっさと戦士のジョブクリスタルを購入した。


「ほれ」


 俺の所有している都市通貨Pカードの残高が20万P分だけ減少する。


 それと同時に、ヤンキー姉ちゃんなギルド長の売買ウインドウに都市通貨20万Pが振り込まれたのだろう、ヤンキー姉ちゃんは口をぽかんと開けて、口端で咥えていた火の点いていないタバコをぽとりと床に落としてしまう。


「お、お前、マジか?」


「おー、マジマジ」


「本当に狩ってきたのか?」


「ああ、スパスパっとな」


「……ははは」


 ヤンキー姉ちゃんは椅子にもたれかかると、金色ストレートロングな髪を片手で掻き上げながら、呆れたように苦笑いを浮かべる。


「お前、何者だよ」


「カッタだ。以後、宜しく」


「そうかい、ミチルが嬉しそうに自慢していた通り、実力はあるみたいだな」


「さあな」


 ま、俺キャラは主人公様だからな!


 きっと、実力の塊だと思うぞ!


 というか、この生意気なヤンキー姉ちゃんが驚いている姿は、ちょっと快感だな。


 なるほど、こういう快感をプレイヤーに与えてくれるためにツンツンさせているわけか。


 ありがとうゲームクリエイター。


 落として上げての反応に、少しだけスッキリしたわ。


 さて、早速、使ってみるか。


 俺はメニューを開いて、アイテム欄から「戦士のジョブクリスタル」の解説を見てみる。



 ------------------------------

 基本的な戦闘職。


 ■ジョブ特性

 体力に補正ボーナス+5

 ------------------------------



 体力に補正ボーナスか、ありがたい。


 俺は早速、選択して俺キャラへと使用してみた。


 俺キャラの足元から円柱状の綺麗な光が、爽やかな効果音と共に立ち上る。


 というわけで、俺キャラのステータスを確認してみた。



 ============================

 ◆名前 カッタ

 ◆職業 戦士(☆)

 ----------------------------

 ■レベル1

 ----------------------------

 ■体力 13(↑5)

 ■魔力 0


 ■攻撃 7(↑4)

 ■守備 5(↑3)

 ■魔攻 0

 ■魔防 0

 ■速さ 0

 ■運  0

 ----------------------------

 ◆装備品

 剣(攻撃4)

 布の服(守備1)

 革の胸当て(守備2)

 ----------------------------

 ◆スキル

 強攻撃(☆)

 ============================



 確かに体力値にボーナスが付いているな。

 あと、装備品の能力が表示されたり、スキルも覚えているやんけ。


 スキル「強攻撃」にカーソルを合わせると、小さな説明ウインドウがポップアップした。



 ------------------------------

 攻撃値の1.5倍ダメージ。

 消費体力1

 ------------------------------



 1.5倍ということは、今の攻撃力だと11ダメージぐらいか。

 悪くないな。


 ところで、「戦士(☆)」の星マークは何なのだろうか。


「戦士になれたかー?」


 ヤンキー姉ちゃんなギルド長が面倒くさそうに聞いてくる。


「ああ、なれた。だが、この戦士という職業名の後ろに付いている星マークは何なんだ?」


「それは、職業の位だよ。☆がノーマル、☆☆がミドル、☆☆☆がマスター。段位が上がれば、上位スキルを覚えられたりするし、最高位のマスターになれば、更なる上級職が開放されることもある」


 へー。


 つまり、戦士で☆ひとつだから、☆ひとつ用の「強攻撃」スキルを覚えたということか。


 なるほど。


「で、防衛圏ギルドに加入するのか?」


「もちろん」


「今、ステータスを開いているか?」


「ああ、見ているが」


「一応、確認だから、お前のステータスを見せてもらうぞ」


「どうぞ」


 ヤンキー姉ちゃんなギルド長は、カウンターに両手をついて身を乗り出してくると、俺キャラの前に表示されているステータスウインドウを、体が引っ付きそうなぐらいに近づきながら覗き込んできた。


 もし、俺キャラが俺だったならば、ヤンキー姉ちゃんの良い香りを楽しめたに違いない。


 男キャラに対して遠慮なしというか、気にしないというか、見た目通りにサバサバしている性格だな。


 そして、俺キャラをバカにしすぎて異性として扱う気も無いがゆえに、ついつい、自身の女性の部分を見せたり、感じさせてしまう無自覚エロをやらかしてしまうと。


「……確かに職業が『戦士』になっているな。これで加入の条件はクリアだ。ちょっと待ってろ」


 ヤンキー姉ちゃんなギルド長が椅子に座って書類を用意すると、真面目に仕事をし始める。


 普段は口汚くて横柄な態度だが、大事な仕事などはしっかりやるという根が真面目なのがつい出てしまう……みたいなのが、このヤンキー姉ちゃんのキャラ設定か。


 ギャップ萌えとかいう感じだな。


 うん、嫌いじゃないよ。


「名前はカッタ。これで良いか?」


 確認ウインドウが表示されるので、ボタンを押して了承する。


「あいよ」


 引き続き、ヤンキー姉ちゃんなギルド長は書類に書き込んでいき、席を立つと、後ろの事務机に座っているギルド職員に近づいていき仕事を受け渡す。


 ギルド職員が何やら手作業をしばらくした後、ヤンキー姉ちゃんなギルド長に何かを手渡した。


 ヤンキー姉ちゃんなギルド長が受付まで戻ってくると、カウンターに一枚のカードを差し出してくる。


「受け取れ、お前専用の防衛圏ギルドカードだ」


「ありがとう」


 俺キャラがギルドカードを回収する。


「ランクは最下位のDからだ。討伐任務の達成や懸賞首を狩るなどして、防衛圏ギルドに貢献すればランクは上がっていく。ランクが上がれば、専用のアイテムや武器が購入可能になるぞ。あと、討伐データなどは全てカードに記録されるから、ここで提示してくれれば報酬金を支払ってやる」


「分かった」


「とはいえ、こんなスラムでは、上を目指すような無駄に熱い奴はほとんどいないけれどもな。お前も命が惜しければ、バカな夢などは見ずに、青アメーバを狩って日銭の足しにしておけ。酒飲んで飯を食うぐらいならば困らないはずだからさ」


 ヤンキー姉ちゃんの言葉は荒いが、言っていることは忠告であり、優しさでもある。


 やはり、根は良いやつキャラか。

 でも、おっぱいパンチは確定事項だがな!


「とりあえず、レベルアップの方法を教えてくれ」


「は? お前、そんな事も知らないのか」


「そうだ」


「……ったく、レベルを上げるには、ステータス欄でレベルを選択して魔石を注入してやればいい」


 そういうシステムだったか。


 とりあえず説明書を調べずにすんだわ。


 あと、嫌々ながらも、きちんと答えてくれるヤンキー姉ちゃんは、やはりツンデレキャラだったな。


「とはいえ、魔石は貴重な通貨にもなるからな。こんなスラムではレベルを上げるなんて酔狂な奴は、ほとんどいないぞ?」


「そうなのか?」


「当たり前だろうが。ちょいとした装備を整えれば、青アメーバぐらいならば何とか狩れるんだ。あとは、稼いだ魔石を換金して酒、飯、女ってのが、ここいらに住む男連中の日常だよ」


「ふーん」


 と言われても、俺はゲーム世界に生活をしに来ているわけでは無い。


 あくまで、やりたい放題の爽快なプレイを楽しみに来ているのだ。


 となると、レベルを上げてステータスアップや、ギルドのランクを上げで強い武器などをゲットすることこそが大事。


 スラム街でくすぶって一生を終えるようなモブキャラ共と一緒にしてもらっては困るのだよ。


 なにせ、俺は主人公様だからな!


「俺は上を目指すぞ」


 ヤンキー姉ちゃんなギルド長が、少しだけ目を見開いた。


「ふん! お前の命をお前がどうしようが、私の知ったことではないから勝手にしろ」


「ああ、そうさせてもらう」


 俺キャラがヤンキー姉ちゃんなギルド長との会話を終えたその時、防衛圏ギルドに一人の男戦士が少し慌てた様子で駆け込んできたのだった。



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