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姫様の里帰り

名はミイ

なるべく下らない話をしてくれと言う事なので、母の実家の話を

私の名の読み方はミイでもミィでもお好きな方で

名の意味はすごく美人

それでは母に連れられその実家にいった話を


母は「私はここでは姫さまなのよ?」といつもの話を私にし

だからなんだと言うのも何なのでハイハイと適当に相槌を打つ

私の知る母は野良着を着て畑仕事をしているおばさんで

姫さまと言われても


その姫さまは着いて早々、小躍りして母を迎えたじじ様に連れられどこかへ行ってしまった

まあ本当に小躍りしていたのだからじじ様も余程母に会えて嬉しかったのだろう


母の帰省に付き合っただけの私は特にやることもなく

ばば様は議会に呼ばれているとかで出かけてしまい、仕方なく大ばば様に銀輪を用意してもらい暇を潰す

そう言えば此処には父の方の大ばば様もいるはずなのだが何処かで仲間と宴会中らしく姿を見ない


私からすれば何も無い大きな田舎街の中を銀輪で流していると、人間が経営しているのにゴブリン商会を名乗っている商店を見つけた

ここの創業一家は此処では歴代議会議長を輩出しているヒバナコウシャクと並び名家なのだそうだ

私はそこで街の名物として売っている串焼きをひとつ買って小腹を満たした

味の感想は特になし

串焼きなんて何処でもこんなもんでしょ?


次にセイドウと言うでっかいお寺を、門前町で買ったお菓子を摘みながら見て回った

そこには何故かババ様のデッカい像が飾られていて、参拝客は皆有難がってそれを拝んでいた


お寺には歴史館が併設されていていたのでそこも見て回る

そこは歴史館と言うかババ様の事が年代順に紹介されている

後でババ様に聞いたのだが、此処に書いてあることは全部誰かがデッチ上げた作り話だそうだ


サンコウセンソウってなんだ?と思いながら古臭い鎧を着て真っ白な天馬に跨るババ様のデッカい絵を見て首をひねる

シロヒメサマは竜と天使と黒金の巨人を率い愚かなサンコウを打ち滅ぼしたと書いてある

いやぁ、なんだか知らないけど滅ぼしちゃいけないんじゃない?

それにこの絵の天馬

ウチの馬でしょ?

なんだかなあだよ


あ、レーレンさんの事も書いてあって

あの人が来ると何でも燃やしちゃうから大変なんだよなぁ

なになに?炎の聖女?

今度からかってやろう


終わりの方ではババ様がマイクの前に立ち原稿を読んでいる光画が飾られていて、ようこそ大森林へと言うババ様の声が繰り返し流されている

その前で解説のおじさんが熱心にその時のことを話して聞かせていたが、どうでもいいので素通りした


ババ様はエルフでもないのに見た目がずっと変わらない人で、この歴史館に展示されているババ様の絵や光画はどれも同じ様な見た目をしていた

父の方の大ババ様が言うには、母がセンちゃんと呼ぶ女の子のイタズラでババ様はずっと若いままなのだそうだ

センちゃんの事は皆んながはぐらかすのだけど多分正体は偉い人なんだろう

ただ、私が小さい頃「セン」と言う古風な名前を変な名前だと言った時、父の方の大ババ様は大笑いしてそれを喜び、センちゃんは困った顔で私と母を交互に見ていた


買い食いで小腹を満たし母の実家へ戻ると、母は庭の真ん中でジジ様の膝の上に座らされ、ジジ様の頭には花輪がのっていた

私と目が合いうと、母は嫌そうに笑って立ち上がり、ジジ様の頭に乗る花輪を直し私の手を引いて庭の片隅に向かった

そこには小さなお墓がある

そこは母が此処に住んでいた頃遊んでいた犬達が眠っている

犬なら我が家にもいるじゃない

狼だけど

そんな事を思いながら母と二人お墓に手を合わせる

ジジ様は焦れるように母が祈り終わるのを待ち

母の祈りが終わるのを待つと次は温室を見に行こうと言ってまた母の手を引いて何処かへ行ってしまった

まったく


私が呆れているといつのまにか横に立っていた大ババ様が、アレも久しぶりなのだから大目に見てやってくれと言って笑い

私は別に構わないけどと呆れるように答えた

母は大きなお腹をかかえて此処に来たのだからジジ様も少しは遠慮すればいいのに

私の弟か妹か

どちらかわからないけど

此処で産むのだそうだ

私の時もそうだったらしい


私は夕食には戻ると大ババ様に言って別館に向かう

今日は一般開放日ではないので観光客はいない

昔は此処を蛮族館とか迎賓館とか呼んでいたらしいが、今は会館として曜日を決めて開放されている

私はよく手入れされたふかふかのソファーに腰掛け適当に本棚にある本に手を伸ばす

展示品に座って展示品を読んで展示品で昼寝をして売店の飲み物を勝手に飲む

飾ってあった古臭いドレスに勝手に袖を通しているといつのまにかにそこにいた大ババ様がそれを見て笑い

このまま夕食に行こうかしらと私が言うと、ババ様は私を見て懐かしそうに何かを思い出していた

私は脱いだドレスをそこらへんにほっぽり

広間の壁に書かれた文字を眺めた

そこにはこの街が大森林へ組み込まれた時、時の行政府がジジ様から借りたお金について書かれていた

それについて大変慈悲深い事だと書かれている

慈悲深いんなら貸すんじゃなくてあげればいいじゃない

昔、そんな話をジジ様にした事があるのだが、ジジ様はそんな金かした覚えもないのだがと首をひねり

それを見てババ様が意地悪そうに笑らうのを覚えている

ババ様のジジ様への愛情はなんともアレな感じなので、万事がこんな調子らしい

母もよくそれを笑っている

ジジ様は何があっても「それでは風上に立てん」と言ってカッコつけるひとなので、きっとずっとこのままなんだろう


そろそろ夕食だろうか

じゃあ戻ろうか

初日で近所は大方見てしまった

明日からどうしよう?

そんな事を考えながら母の生まれた屋敷へと向かう

もちろん私もここで産まれたのだが

家と言われて思い出すのは《山田》のあの平屋

馬がいて

犬がいて

牛がいる

いつの間にか鶏も


私の名はシジュウ=スズ=マイ=ミイ

《山田》では農家の娘で

この《館》の人達は私の事を孫姫様と呼ぶ


晩御飯にお酒は出る?と大ババ様に聞くと、大ババ様は一体誰に似たのかと呆れていた

多分大ババ様じゃない?

そう返す私の軽口を聞いた大ババ様は

スズの前で酒など飲まねば良かったと言って何百年も前のことを愚痴る

別にエルフがお酒を飲むのなんて当たり前じゃないの?

私はシジュウ=スズ=マイ=ミイ

歯車から始まったエルフで人間で八重歯のある僕の一族

大森林の何処にでもいる女の子

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