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主人様のおしごと


私は今、休んでいる

だから働かない


ああ、働くと言っても私に出来る事など子供の使いの様なこばかりなのだが

他の全ては母がやってしまうからね

まあ私などまだ子供なのだ

母が言うにはね


休みなので色々見て回ったりもした

あの大きな体で闊歩していた彼等が小さな体になり、その代わりに空を自在に飛ぶ様になったのを見て感心したりもした

母に頼み少し涼しい所でしばらく過ごしたりもした

雪と氷の世界だ

その次は暖かい所で泳ぎたいと母に頼み赤く燃え上がる海を楽しんだ


海から上がりひと休みした時のことだ

とても可愛い者に出会った

我が友ワンワンとその仲間達


しばらくぶりに生あるものを見たからだろうか

私はしばらくそこで休む事に決めた


ワンワンはとても賢く優しい

なので私は今休みなのだが、少しばかりこの子達の面倒を見ている


余り見た目では分からないが、ワンワンに聞くと色んな種類の仲間がいるそうだ

エルフやら人やらと言われても私にはワンワン達との違いがいまいち分からないのだが皆可愛いものだ

私はこの可愛い生き物達を見守っている

だからそれは仕事と言うには大げさだ


うーん

説明は難しいな

ではひとつふたつ見てみると良い

コレが私の『仕事』だよ





ここはどこだろう?

自分が死んだ事はわかるのだけど


「やあ」


主人様?

私は死んだのでしょう?


「そうだね」


コレは一体?


「お前には感謝して居る、お前はワンワンを産んでくれた」


私は後悔しています

あなたに息子を預けて以来あの子はおかしくなってしまった


「それはすまなかった」


このままでも構わない、どうかあの子の側に居てはやれないものか


「ではそうしよう、ただしもう一度親としてと言うわけにはいかないよ?」


側に居てやれるのなら


「ではそうしよう、それではこれからもワンワンの側に居てやってくれ」



『ああ、女の子だ、元気な子だ。一面サクラの花が咲き乱れる日に産まれたんだ、名は授かったも同じだな』





ここはどこかしら?

私は夫に看取られ死んだのでしょう?


「やあ」


主人様?

此処は?

私は死んだのでしょう?


「そうだね」


コレは一体?


「お前には感謝して居る、ワンワンと二人、沢山の子を産んでくれた」


勿体無い

しかし私は心配です

夫は

ワンワンは少しばかり頼りがない

もう少し側に居て支えてあげたかった


「ではそうしよう、ただしもう一度つがいにと言うわけにはいかないよ?」


見守ってあげられるのなら


「ではそうしよう、ワンワンを見守ってあげてくれ」




『初めましてマイ、私がワンワンだ、お前のワンワンだ。何かあればなんでも言うといい』






あら?

死ぬかと思ったけど楽になったわ


「やあ」


んん?あなたどこかで会ったわね

それにここはどこ?

私、さっきまで家で死ぬほど苦しんでたんだけど


「苦しみから死が君を救ったようだ」


あー・・・

あ!

思い出した!

髪飾りの!

その変な喋り方で思い出した

なに?あんた死神だったの?


「まあそうだね」


本当にもぉ

ただでさえ貧乏神に取り憑かれてたのに

全く


「元気そうだね」


まあね

こんなにペラペラ喋ったのは久しぶり

もう何日も息しかしてなかったら

まさか娘もここに来るんじゃ無いだろうね?

もしそうならその貧相な腰の物蹴っ飛ばしてやるよ?


「安心して良い、スズの事は私が責任を持つ」


あらそう?

死神ってのは神様も兼業なのね


「神ではないのだけれどね、君には礼がしたい。スズを産んでくれたことへの礼だ。何でも言ってくれて良い」


あんた幼女趣味?

ああ、冗談よ

そうね

せっかく目の前に神さまがいるんだから

次に産まれる時は貧乏は嫌

貴族ほどでなくて良いから贅沢がしたいわね

もちろん化粧なんかしなくても皆んなが振り返るような美人

それと男は選り取り見取り

男に選ばれるんじゃなくて私が選ぶ方ね

騎士みたいな剣さばきにも憧れるわね

おっと、ムキムキは御免よ?

美人薄命も嫌よ?

毎日キレイに着飾りたいわね

見渡す限りが自分の畑で実りはもぎ放題

お酒も毎日飲みたいわ


「コレは大変だ、覚えきれるかな」


大丈夫よ

神様でしよ?

あ、それからもう一つ


「なんだい?この際だ、どんどん言うといい」


たまにでいいから娘に合わせて


「再び親子にとはいかないよ?」


たまにでいいわ

チラッと

それで

あの子が困ってたら助けてあげられるくらいなら最高ね


「それは私の仕事なのだがね、いいよ、そうしよう。では行ってくるといい」




『見ろ!この赤児を!両の手を開いて生まれて来た!コレはその手でこの世の全てを掴む事になるぞ!親バカ?馬鹿で結構、この子の名ももう決めてある。[貴い意志]と書いて[キイ]だ!この子は間違いなく己の名など打ち負かすほどの女になるぞ!」




まあ本当に仕事と言っても大体何時もこんな事ばかりさ

ああ、やはり仕事と言うほどのことを私はしていないね

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