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魔人の歴史とワンワン様

魔人の出自はこの地ではないという話を聞いた事があるかい

おそらくそれは本当だ

色々と彼らを調べてみると他の種族と相容れぬ所が多い


例えば彼らだけが作り出せる魔神刀

アレなどはあの時代にあってはいけない程だ

魔人に古くから伝わるお伽話を現代風に語るなら

故郷を失った魔人の祖先は星の海を船で何代も何代も彷徨い

この星に辿り着き《島》に住み着き

ある者は原住民と交配し

またある者は船に戻り再び星の海へと漕ぎ出した


おそらくだが星の海を渡る様な高度な文明を持っていた魔人の祖先達の多くは既に文明の有るこの地に見切りを付けさらなる新天地を目指したのだろう


《島》の遺跡にいくつかそれを示すものも有るのだが何せ推測で二億年も前の出来事

しかも当時の《島》は当然まだ大森林には含まれない

太古かつ外界の事だ

調査は難航した


そこで我々はまぁ無駄足になるだろうなと思いながらもある人を訪ねることにした

ワンワン様だ

自分は億万年生きていると常々口にするワンワン様

数億万年生きていると言う意味だとばかり思っていたが、一度ワンワン様にそれを確かめてみると億年を万回と言う意味だと返事があった


つまり数兆年

流石に数兆はホラだろうが、お伽話にもワンワン様は太古から力の象徴として言い伝えられている

お伽話とは言え数億年前には既に作られていた物だ

主人様の拳であるワンワン様なら数億年位は生きていてもおかしくはない


しかし不安がないわけではない

何せワンワン様はその昔星の海を渡り大森林を荒らさんとやって来た黄金の三つ首竜を退治したとのたまう方なのだ

何故それが昔語りやお伽話として残っていないのかと聞き返すと

それはそいつのあまりの弱さでその時の話がつまらんからだと吐き捨てる方なのだ


イヤイヤ、星の海を越えてやって来た黄金の三つ首の竜とワンワン様が戦うのならそれで映写の一本や十本も撮れますと言い返したのだが

そうか?と首を捻るばかり


つまりホラ吹きのボケ老人とまでは言わないが

そんな方なのだ


そんなワンワン様を訪ね《館》へ赴くと、《館》の長であるスズ様にご案内いただきワンワン様のもとを訪れた

訪れたのだが


なんというか

ワンワン様は《館》の庭にだらし無く寝そべり私が挨拶をしても首だけこちらへ向け「ん?」とか「あぁ」とか言うばかり

それを見たスズ様がなんですその態度はと声をあげワンワン様を踏みつけ頬をつねり頭を叩く

あのワンワン様の頭をだ


ところがワンワン様は溜息をつくばかり

スズ様は私の耳元で娘が嫁に行ってこの方ずっとこの調子だとなげかれ御屋敷へ戻られた

私がお寂しいのですかと声をかけると

ワンワン様は寂しくはないが余りにも静かでなと言ってまた溜息をつく

またお子をなされたら如何でしょうと慰めてみると、ワンワン様は歩き去るスズ様の背中を見て、毛なしはなぁ一度に一人しか子を産まんと言ってまた溜息をつかれた


それはそれは唖然としたものだ

ワンワン様は化石の様な方で我々と違い毛人以外の女性に興味をしめされることはないという偏屈な方だ

それにワンワン様の妻となった者は姫と呼ばれ長くその名を後世に残す


もしこの時のワンワン様のつぶやきが私の考え通りならばワンワン様は毛なしを妻に娶り子を成した事になる


もし本当にそうなら大事なのだがこの日の本題はそれではない

私が要件を切り出すとワンワン様はああそれかとだらしのない姿勢のまま答え言葉を続けた


ワンワン様の話を要約するとこうだ

太古の昔、星の海より声が聞こえた


そこに誰かいるのかと


それを聞いたワンワン様は主人様の歯車を使い星の海に登り歯車と共に声のする方へと向かった

声のする先には大きな筒の様な船がいくつも並びそれらはワンワン様と星の海を渡る歯車を見て驚く

ああ星の海を渡る歯車と言ってわからなければ天使と言えば分かるかな?

そうアレだ


話が逸れたね

筒の船に乗った魔人の祖先達はワンワン様と歯車を見てとても驚いたそうだ

人型だとか何故言葉が通じるだとか


まあそれも最もなのだが

喋るのだからそれは相手が何を言っているかくらい分かるだろうとワンワン様は仰るがまぁ魔人の祖先は驚いただろうね

兎も角、魔人の祖先はワンワン様を相手に交渉をしたそうだ

最初は脅す様な事を言って来たそうだが魔人の祖先の持つ武器ではワンワン様にも歯車にも傷の一つもつけられない事を知ると大人しくなったそうだ

ん?あぁワンワン様と歯車を捕らえようとしたそうだがね

それは無理だろう

星の海を渡る歯車は重力を操り捻じ曲げ光も闇も力に変える


そしてワンワン様だ

その足は風よりも早くその体は石よりも固く

その気になれば夜空に瞬く星を砕く事も容易い

それがワンワン様だ


それこそ星を滅ぼして渡る黄金の三つ首竜でも連れてこいと言う話さ

イヤイヤ少しワンワン様にどくされたかな?

兎も角、ワンワン様は魔人の先祖達に言ったそうだ

我らの星に移り住むのは構わんが大森林への居住を望むなら共化を受けて貰う

それ以外の土地への居住なら一切構わんが原住民とは仲良くしろ

まあそんな事を言ったそうだ


つまり例え大森林以外の土地でも侵略の様なことをすれば黙っておらんぞと釘を刺したのさ

個人的には興味があるがね

何がって?

異星から星の海を船旅する様な大文明とワンワン様との戦さ

ワンワン様は十二次元殺法をお使いになるという

そうなると長距離空間の瞬間移動が精々の文明ではワンワン様のひと吼えで粉微塵だろうか


また話が逸れたね

魔人の先祖達は一旦この地に赴き調査を行い移住者を募り入植し

残りの者はこの先の旅に必要な物資の調達を数十年掛け行い再び星の海へと漕ぎ出したのだそうだ


ああ、ワンワン様はこんな事も仰っていたな

崩壊し縮退した星に故郷が飲み込まれたのには同情をしたなと

私は聞いたのさ

私達の大森林が同じ事になってしまう事も有るのでしょうかと

ワンワン様は鼻で笑われたよ

あんな渦などいつでも消してやると言って

ワンワン様とのにとっては星の海に出来る暗黒の渦も朝のスープに匙を落として出来る小さな渦も違いなどないのだろうね


しかし私はワンワン様のお話を全て信じる気は無いよ

何せ魔人の神話や昔語にワンワン様の事などこれっぽっちも出てこないのだからね

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