その名はヒバナ、はたまたシミン
注)原文は蛮族時代の文字、文法で書かれており必ずしも正しく訳されているわけではない事を留意して頂きたい
四街道戦争
ヒバナ侯乱心
帝国大乱
呼び方はそれぞれだがそれが示すところはひとつ
ヒバナ領及びゴブリン族諸侯並びにエルフ族、それらによる帝国からの離反だ
ヒバナ侯爵家と言えばタ皇帝ハンディ家に次ぐ大家であり大国力と万人軍と呼ばれる各種族からなる無敵の大群で名を馳せている
そのヒバナ家が帝都レーダで行った初代ヒバナ侯シミン没百年の席に集まった来賓を前にこう告げたのだ
「私、シミン二世はお爺様の御言葉を守り、我が領内において貴族を廃し万人万族甲乙を平等としその上で只今この時を持って帝国から離脱する」
出席者はヒバナ侯は乱心されたかと笑ったが、それに習う様にゴブリン諸侯連合代表とエルフ族代表エゴマが今後人間との折衝は帝国ではなくヒバナ領を相手とすると触れをだしたことにより帝国全土に激震が走った
さらに帝国にとって悪いことに獣人の巫女ウジイエが帝国全ての獣人に対しヒバナに参集せよ、ヒバナに非ずんば人にあらずとふれを出したのだ
獣人にとってはウジイエからヒバナ以外の毛無は人と思うなと触れが出たのだから諸侯はたまらない
帝国に住まう三十万の獣人が全て帝国の敵に回ってしまうのだ
タ皇帝とてただ見ていたのではない
諸侯にヒバナ乱心と檄を飛ばし四方からヒバナ領を攻め立て
その上、帝都のヒバナ邸を万の軍勢で攻め立てようとしたのだ
だが帝国軍がヒバナ邸で見たものは
迎え撃つ獣人でもなければ自慢のゴブリン兵団でも無い
不老にして不滅、子飼いの獣人一匹で人間世界を滅ぼせると言われ恐れられ
全ての人に幸と豊さを与えて下さった愛すべき魔法使い
白姫様
その白姫様がヒバナ侯邸宅の庭で呑気に茶を飲んでいるのだ
帝国で一番偉いのは誰だと言われればそれは皇帝であろう
では帝国民にこの世界で一番偉いのは誰と聞けば皆が皆白姫様と答えよう
現に皇帝が此処に砦を立てよと命じ、いざ工事となった段で通りすがりの白姫様に此処を芋畑にしてはどうかと言われれば砦の話など最初からなかったかのように皇帝自ら直ちに芋畑にせよとふれを出しなおしたのだ
その白姫様がヒバナ侯の邸宅で茶を飲んでいてはどんな大軍も手が出せない
皇帝の甥にあたる軍の大将が、白姫様に戦さ場になりますゆえお立ち退きをと申し出たが、白姫様は辺りが騒がしくてたまらない、自分の居ないところ見えないところで勝手にやってくれと答えるばかり
これには大将も困り果て、茶会が終わるまで静かに大人しく屋敷を取り囲むしかなかった
さらに、その様子を見た正堂が「帝都帝国、そして世界の主人にして大正人白姫様のお膝元で戦装束とは何事」と怒り狂い
ハンディ家を呼び出すとこの蛮族めと口を極めて罵り、破門し
今度はヒバナ侯邸宅前で帝国軍と正堂軍が睨み合う事態になってしまったのだ
帝国にとってはさらに悪いことにこの話に尾ひれがついて広まり
帝国とヒバナとの戦さのはずが帝国が白姫様に刃を向けたと人々に広まり
帝国では無く白姫様に忠誠を誓うエルフ族とゴブリン諸侯連合が兵馬を仕立て帝都を取り囲んだのだ
元よりゴブリンなどはヒバナ領に百万とも百五十万とも言われる居住者を持ち、ヒバナ領の二人に一人がゴブリンとまで言われるのだ
その上、帝国の人口の三分の一に匹敵するゴブリン諸侯連合まで敵に回し
さらに人間の事に興味などないエルフまでもがこればかりは許せんといきり立ったのだ
ヒバナ領を四方から攻める諸侯達も苦戦が続いた
有り体に言えば散々なのだ
ゴーレムでも勝てぬと名高い獣奇兵
闇夜に明かりもなく一糸乱れぬ隊列で進んでくるゴブリン兵団
味方殺しの皆殺しと悪名高いヒバナ騎兵隊
初代ヒバナ侯シミンを正人と崇める狂信集団義勇正堂隊
さらに帝国内どころか異教徒からも怪しげな物を買い漁り領国中にばら撒く帝国最大の商店であるゴブリン商会が惜しげもなくそれらに金をばら撒く
そして極め付けはいつの間にか包囲されている屋敷を抜け出し、領国で槍を振るうシミン二世とその一族
シミン一族は明らかに魔法であろう術を操り帝国諸侯の何もかもを打ち砕く
正堂
ゴブリン商会
ヒバナ侯爵家
初代シミンの血を受け継いだ一族にいつの間にか支配されて居たコレらが帝国に牙を剥いたのだ
思えば全て初代シミンの描いた通りなのだろう
それとも噂に聞くシミン一族を影から支配するアカリと言う女性の差し金だろうか
ゴブリン商会は創業者に子がなく
創業者の甥であり初代シミンの四男が後を継いだ
ゴブリン商会創業者夫人は正堂の外戚であり、二代目以降のゴブリン商会店主の夫人は全て正堂から迎えられている
そしてヒバナ侯爵家はと言えばこの百年、諸侯や皇帝からの縁組は全て断りゴブリン商会一家に産まれた女性から嫁を娶らせている
初代皇帝の父にして建国の祖であるクリナは初代シミンを若いうちに害してしまえば良かったと常々口にして居た
いつか彼奴は私の帝国を壊すとも
帝都レーダでの不穏な空気はそのままだが四つの街道からヒバナへ攻め込んだ帝国軍は全て引き上げた
ありていに言えば逃げ帰ったのだ
攻め込んだ四つの軍は全て連戦連敗しヒバナ軍が突然追い討ちやめねば帝国軍の屍が街道を埋めるところだったのだ
一例をあげるならば帝国軍の大看板にして無敵のハンディストーンゴーレム軍
ヒバナ侯爵謀叛時の切札と言われたコレ等はヒバナ軍と15回激突し15連敗の後に壊滅したのだ
初代ヒバナ侯シミンが存命中色々な噂を立てられた獣人の巫女ウジイエ
彼女がシミンに任されたひとつがストーンゴーレム対策
それを受けたウジイエは獣人の中でも戦闘の天才と言われるカンヂにこれを命じ、カンヂは瞬く間に「あのウスノロの脚を狙ってやれ」と策を纏めたのだ
《ツメ》と呼ばれる出どころの怪しげな獣人専用の武器でひたすら膝を狙われる岩石の巨人達は次々に文字通り膝を屈し後はなぶりものにされたのだ
まああのゴーレムの脚を狙えと言われそれができるのは獣人くらいなのだが
しかし詰まりそれはヒバナにとってはゴーレムなどでかいまとでしか無かったのだ
ゴーレムでも相手にならぬこの事実は帝国どころか異教徒にまで衝撃として広まった
帝国のアレで勝てぬのなら我々でどうしろと言うのだと
ヒバナ侯爵家
ゴブリン諸侯連合
エルフ族
正堂
コレらは戦勝にうかれることもなく帝国各地と異教徒の国々に触れを出す
『コレより五年の後にヒバナと呼ばれる地は境を閉ざす、これは二度と開くことはない、領外に家族、一族縁者のいる者は五年の内にヒバナの内と外、何方かを選べ。ヒバナが国を閉ざすのは五年後の黄金三月新月の夜である』
これが後に多くの悲劇を生みその事を持って帝国で『ヒバナ』の文字が禁忌となる歴史の始まりである




