黒い子猫がくれたもの4
10、茜の苦しみ
「みなさんに報告しまーす。今日から、私と光輝君がお付き合いいたしまーす!!」
いきなり入って来た梨乃から飛び出してきた報告は、なんとも残酷なものであった。
「は?またかよ梨乃マネ付き合うの。」
一人の男子が大声で梨乃に言い放ってきた。
「お前いつもバスケ部の男子に手つけるよな?」
また一人の男子が言い放ってきた。
ダンッ…
一瞬バスケットボールの落ちる音が鳴ったと思ったら…
ガラッ、タッタッタッタッタ……
体育館の重い扉を思いっきり開けて飛び出していったのは……
「茜ーー!!!」
私は飛び出していった茜をおった。
「待ってー私も行く!!!」
明梨は走りながら私に追いついてきた。
タッタッタッタッタッタ……
「なんだ?あいつら。」
一人の男子の一言が体育館に響いた。
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私と明梨は茜を追ってきた。
「はあ、はあ、はあ、茜。どうして逃げたの?」
私はやっと止まってくれた茜に尋ねた。
わかっているはずなのに。
「本当はいやだった。梨乃に光輝君を任せるのは。だって、梨乃いい噂ないんだもの。男なら誰でもいいって考えだからいやなの。いやだった、いやだった、いやだった!!!!光輝君を…取られるのは……なのに。いやだよ。」
苦しそうに涙をこぼしながら茜は言い放った。
茜の小さくなった背中がかすかに震えていたのがわかった。
『茜。』
私と明梨は一緒に茜のことを抱きしめた。
「私達がいるよ。茜には。梨乃なんかに茜は負けないよ。だって、茜のほうが何百倍も、何千倍も可愛いもん。」
私は茜に笑顔で言い放った。
「そうだよ。しかも、バスケだってうまいし。元気で明るいし。」
明梨は茜の頭を撫でながら言い放った。
「……ありがとう…二人とも。」
茜は泣きながら笑顔で私達に言ってくれた。
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体育館…
「さー、もう一頑張りいくよー!!!!!」
一人のバスケ部の女子のキャプテンが大声で言い放った。
『はい!!!!』
バスケ部の女子全員が大声で言い放った。
「男子もいくぞー!!!!」
『ウッス!!!!!!』
男子もそう叫んだ。
「本当に付き合うんですか?」
俺は梨乃に尋ねた。
「当たり前じゃない!!」
梨乃はすっごい満面の笑みで言い放ってきた。
「はあ〜。」
俺は大きくため息をついた。
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部活終わり…
「ねえ、ねえ、三人で肉まん食べに行こうよ。」
明梨が言い出した。
「うん。いいね。」
私はその話にのった。
「茜も行くよね?」
明梨は茜に尋ねた。
「うん。」
茜は笑顔で私と明梨に言い放った。
「やったー。」
明梨は喜んだ。
なんだかんだ言って茜が笑顔だったことをちょっと安心していた私と明梨だった。
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コンビニ前…
「うまーい!!!」
明梨が超喜びながら言い放った。
「うん。おいしい。」
私は付け足した。
「茜?」
私はボーっとしている茜に尋ねた。
「え?あ、何?」
茜はちょっと焦りながら言い放った。
「いや、なんかボーっとしてたから。」
私は笑みを浮かべながら言い放った。
「ちょっとね。」
茜は作った笑顔で私に言い放った。
「茜ピザまん?えーやっぱりあんまんだろ?」
明梨はその光景を見ていたみたいで盛り上げようとしてくれたみたい。
「えー肉まんだよー!!!」
私はその話に移した。
「ピザまん!!」
茜は自身ありげに言い放った。
「あんまん!!」
明梨は拳を握り締めながら言い放った。
とても、この時間が楽しかった。
ねえ、茜。
元気になってね。
私はこのとき、かすかに心のなかで祈った。
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ココア(光輝)…
「彼氏は彼女のことを送るって決まりなの!!!」
俺はずっと梨乃に怒鳴られている。
「……。」
俺は黙っていた。
「女の子一人じゃ危ないでしょ?」
梨乃の会話はまだ止まらない。
「さっきからなんなの?」
俺はとうとうキレてしまった。
「え?」
「俺はお前と付き合うなんて言ってないだろ???!!!」
「たとえ、あなたが私から逃げようとしても私は追いかけていくわよ。あなたは私のもの。」
この梨乃が言った言葉に俺はゾクッとした。
(何なんだ?この笑み。)
かすかに笑みをこぼした梨乃の顔が怖かった。
「じゃあ、今日はいいわ。一人で帰る。言っとくけど、私はあなたと付き合ってるってみんなに言うから。」
梨乃はそう言葉を残して、帰っていってしまった。
「はあー。疲れた。」
俺を一言そう言って帰っていった。
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地影の家…
「ただいまー。」
俺は学校がら地影の家に戻ってきた。
「何で、学校に行った?」
地影は顔を怖い顔にし、指をポキポキと鳴らしながら俺に尋ねてきた。
(怖っっっ!!!!)
俺は心の中で恐れた。
「いや、だって、行ってみたかったんだもん。」
「行っていいなんて言ってないよな??!!」
「ご、ごめん。でも、明日から毎日行くから。じゃ、おやすみーー!!!」
ダダダダダダダッ…
俺は急いで自分の猫用ベットに逃げた。
「あ!!コラ、逃げるなー!!!」
地影はその後追いかけてきたが、ベットに入った瞬間来なくなった。
「じゃあ、せめて、約束してくれ。巳緒に変なことはするな。それと、巳緒になにか危険があったら俺に言ってくるかお前が守ってくれ。」
地影は真剣な顔で頼んできた。
俺は元々この顔が苦手だ。
どうしてもこの顔をされると…
「うん。わかった。」
と、言ってしまうから。
「おし、それなら学校楽しんで来い。」
地影は笑顔で俺に言いながら撫でてくれた。
俺はこういう地影が大好きだ。
撫でてくれる手が、大きくて温かくて、今までに感じたことのない愛情を感じれるから。
「うん。」
俺はそう言って、ちょっと満足そうに顔を変えた。
「じゃ、俺は仕事に戻るかな。」
「がんばって。」
「いいな猫って暢気で。」
「えへ。」
ガチャンッ…
地影は部屋を出て行った。
「つまんないなー。」
俺は半月を見ながらそうつぶやいた。
梨乃…いやだな。
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帰り道…
私は二人と別れ、一人で夜道を歩いていた。
暗くてちょっと怖かった。
いつもは、ココアか地影が隣にいたから、怖くなかったけど。
一人だと心細い。
そのときだった。
ブーブーブー…
携帯のバイブが鳴った。
「誰?」
私は携帯を開いた。
−−−地影ーーー
−−−今どこにいるんだ?−−−
地影は心配してくれたみたい。
−−−巳緒ーーー
−−−今は二人と別れる道の近くーーー
私はそう打って、地影に送った。
ーーー地影ーーー
−−−今からそっち行くね。暇だし。−−−
地影からそう帰ってきた瞬間…
「おーい、巳緒ー。」
地影の声がした。
「地影。はやいね。」
私は私の近くに寄ってきた、地影に笑顔で言い放った。
「まあね。走ってきたから。」
私は息切れしている地影を見て笑った。
「さ、帰ろう?家まで送ってく。」
地影は手を差し伸べながら言い放ってきた。
「ありがとう。」
私は地影の手の平に手をのせた。
私と地影は手を繋ぎながら帰った。
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翌日…
地影の家の前にココアが落ち込みながら、立っていた。
「ココア、おはよう。」
「おはよ。」
ココアは元気なさげに言い放った。
「大丈夫?昨日のこと?」
「うん。あいつに逢うの嫌だ。」
「でも、行かなくちゃね。」
「うん。がんばる。」
「梨乃はいい噂がないからね。バスケ部に入って来たイケメンは必ずといっていいほど被害者が多いからね。しばらくは彼女ぶると思うよ。」
私は苦笑いしながら、言い放った。
「はあー。」
「じゃ、行こう。」
「はーい。」
私は窓から顔を出している地影に手をふり、歩き出した。
そして、しばらく歩いていると茜がボーっと立っていた。
「あ、茜。何してんの?」
私はボーっとしている茜に尋ねた。
「え?あ、巳緒。巳緒と一緒に行こうと思って。でも、何で光輝君がいるの?」
「ああ、家が同じ方向なんだ。だから、いつも、そこで会うの。」
「へー。梨乃はいいの?彼女なんだから朝一緒に来ればいいのに。」
茜はちょっと落ち込みながら言い放ってきた。
「あれさ、あいつが勝手に言ってることだから気にしないで。俺は絶対付き合いたくないから。俺は断り続けるよ。」
ココアが言ったこの言葉に茜はすごい明るくなった。
「え?本当に?や…やったー!!!巳緒ー!!!」
「何でそんな喜ぶの?」
ココアは私のことを抱きしめている茜にいきなり尋ねてきた。
「え?それは…。」
茜はちょっとつまりかかった。
「いや、茜が久しぶりに勉強してきたんだって。いつも茜勉強しないからさ。超すがすがしいんだって。」
私は無理矢理話しを変えるようにして言い放った。
「そうなの?」
ココアは茜に聞きなおした。
「う…うん。」
茜も苦笑いになりながら言い放ってきた。
そして、私達は学校に向かい歩き始めた。
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11、彼女ぶり
学校…
「光輝ー!!!」
ガバッ
学校についたココアにいきなり梨乃が抱きついてきた。
「なんだよ。お前。抱きつくなよ!!」
ココアは怒りながら言い放った。
「いいじゃない、私はあなたの彼女なんだから。」
梨乃はココアの耳元でささやくように言い放った。
「俺にはその技きかないよ。だって、俺お前のこと嫌いだもん。」
ココアは怖い顔で梨乃の腕をはらった。
「なによ。それ。」
梨乃は付け足した。
「その性格なおしたほうがいいんじゃない?」
茜は梨乃の真正面にきて言い放った。
「は?あんた誰?」
「バスケ部のマネージャーなのに知らないの?」
「う…うるさいな。わかってるわよ。」
「じゃあ、言ってみてよ。バスケ部の人。」
「渡部でしょ。それから柚本に、伍気でしょ、それから…」
「全員男じゃない。あんたって男のことしか頭にないのね。最低な人間ね。」
茜はそう言い捨てて、教室に向かった。
「は??!!!ふざけんなよ!!!」
梨乃は怖い顔で怒鳴った。
「あ、茜ーちょっと待ってー。」
私は茜に追いついた。
「私にたてついたのを後悔させてやるわ。」
梨乃が誰もいなくなったときにそうつぶやいた言葉は後になってやっとわかった。
梨乃が考えていたことはこんなことだったのかと。
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次に続く…
最後まで楽しんでいただけたでしょうか?
楽しんでくれいてら嬉しいです。




