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残念シスコン王子様  作者: ちゃんくろ
7/25

初めてのお買い物は17歳です!


ようやく新しい生活に慣れ始めたちゃんくろです。


 エンディリオとエイリーナがシリウスの街に移り住んで二日目の朝、空は雲一つない快晴で街は朝にも関わらず、まるで二人が街に来たことを祝福しているかのような賑わいをみせている。

 そんな中、エンディリオは昨日からお世話になっている家の主であるリリーと買い物をしていた。二人はまだ出会って、一日もたっていないにも関わらず、すでに打ち解けており、楽しく談笑しながら街を歩いている。普通であれば、美男美女が楽しく談笑している光景を見れば、恋人のようにしか見えない。しかし、二人からは不思議とそういった雰囲気は感じられず、仲のいい姉と弟といった感じである。


 二人はまず、日用品売り場の西急ヘンズへと向かっている。そこで必要な物は粗方揃えるつもりである。


「そういえば、買い物って初めてだな…」

「そうなの?…王族ってそんなものなのかしら」

「いや、俺の場合はかなり特別だからな。買い物どころか王城から出ることすらほとんどないよ。…出るとしたら父さんと闘う時くらいだな」

「セラもそんな感じのこと言ってた気がするわ。どうしてなの……って聞いちゃダメか」

「まあ、そうですね」


 そうして間もなく、二人は西急ヘンズへと着いた。

 買わなければならない物はいっぱいあるが、前日にリストを用意していたため、効率よく回ればすぐに終わるはずである。

 しかし、エンディリオは初めて来た物が買える場所…そして、そこでの買い物である。口にはしていないがあっちこっち見て回りたそうにウズウズしているのが、リリーには見て取れたため…


「時間はまだまだあるし、リストに漏れがあるかもしれないから一通り見て回りましょうか」

「そうだな!俺はよく分からないから、今日はそのあたりは任せるよ!」

「了解!」


 リリーはエンディリオを気遣い、ゆっくりと見て回ることを提案する。嬉しそうなエンディリオは若干照れ隠ししながらもそれに賛同する。

 そうして二人は店の中をたっぷりと時間をかけながら見て回った。リリーは時々不意打ちで飛んでくる「これは何だ?」、「こんなのどこで使うんだ?」というエンディリオの質問に対して答えながら、「弟がいたら、こんな感じなのかしら?」と考えていた。


「ここを出ると次は…服屋か」

「そうね、その服だとかなり目立っちゃうから」


 現在のエンディリオの服装は王城にいた時の部屋着だ。ただ王族なだけあって、部屋着といえどかなり品質の良いものであるため、その服装で街を歩くと目立ってしまう。

 そのため、教師用の物も含めて服を何着か買う必要があった。


 そうこうしているうちに店をすべて回り終えた二人はレジへと向かった。店を全部見て回ったせいか、籠に入った商品は予定していたよりもかなり多い。

 それは、リストを作る際に見落としがあったわけではなく、単純に棚に並んでいるものを見ると欲しくなるという、世界の主婦を悩ます「買い物あるある」のせいだ。実は、リリーはそれには弱かったらしい。


 レジに並び始めると、またエンディリオの気を引くものが現れた。レジの女店員さんが持っている『あれ』だ。


「あの、『ピッ』ってなってるやつは何だ?」

「あれはマジックリーダーって言って、商品の黒い部分に刻まれているものを魔法で認識して、お金を計算してくれる機械よ」

「へぇ…機械が計算をしてくれるのか、便利だな」

「そうね。けど、それくらいしか分からないわ。この辺りの分野は私にもさっぱりだから」

「俺も魔法や魔道具の論文とかは読むけど、こういう実用系の魔道具の方はさっぱりだな…今度勉強してみるか」


 実はエンディリオはかなりの魔法好きなのだ。魔法を本格的に勉強し始めたきっかけは「エイリーナを守るために強くなりたいから」というものであったが、日々勉強をしているうちに、段々と楽しくなっていき、今では『エンド』という偽名を使って自分で論文を書き上げたり、オリジナルの魔法を創ったりもしている。

 特に防御魔法の分野に力をいれており、出来のいい魔法は全てエイリーナとローレンスに覚えさせている。

 エンディリオ曰く、もしもの時に自分の身を守れるようにするため、とのことだ。

 マジックリーダーはそんなエンディリオの心に響いたのか、ずっと興味深そうに見ている。


 そうこうしていると、レジでは二人の番が回ってきた。エンディリオはマジックリーダーを見つめ続けている。


 ここでエンディリオの容姿について説明すると、高身長で超がつくほどのイケメンだ。第一王子のシグネスが言うには、「俺も容姿については周りから騒がれているからそれなりだと思うが、あいつを見ると自信をなくす」だそうだ。ちなみに、エンディリオ本人は顔の偏差値が高い者としか会わないため、普通だと思っている。


 そんなイケメンに見つめ続けられる女店員さんは顔を真っ赤にしながら震えている。


「もう少し近くで見ていいか?……いや、触ってみてもいいか?」

「ひゃ!ひゃい!どうじょ!」

「…ダメよ。後ろが詰まってるでしょう」

「…ん?、ごめん…つい」


 リリーはどこまでも勘違いさせそうなこと言うエンディリオのせいでどこまでも勘違いしそうな女店員さんに助け舟を出す。女店員さんは少し残念そうに慌てて仕事を再開する。…慌てているのに、作業がやたらとおそい遅い。


 そんな、「イケメン、女店員ナンパ事件」も収まり、お金も払い終わったところで店を出て、次の店へと向かう。そして、少し歩いたところで、リリーは日の向きからさっきの店で思ったよりも時間を使っていたことに気がつく。


「次の店に行く前にお昼にしない?…そこのお店がおすすめなのよ」

「確かに、丁度いい時間になっているな。おすすめと言われたら気になるし…」

「それじゃあ、決まりね」


 いつの間にかお昼の時間帯になっていたため、リリーのおすすめの店に行こうとした二人に突然声がかかる。エンディリオにとっては聞き慣れた声であったが、その声はいつもとは少し違い、どこか棘が含まれているように感じた。


「おはようございます。リオお兄様」





 私は今、レーナと街に出ている。目的はこれからの寮や学園での生活で必要になるであろう物の買い物だ。本来であればレーナに任せればいいのかもしれないが、私はここに来て少しでも自分一人でできることを増やそうと思っているため、こうして無理を言ってレーナと街を歩いている。私は少しでも早く、セラお姉様のように何でも自分でできるようになりたい。…さすがに冒険者にはなるつもりはないが……


 私がバルフィラ魔法騎士学園に通いたいと思った理由は二つある。

 

 一つ目はリオお兄様と距離を置くこと。私はリオお兄様に対して抱いてはいけない感情を抱いてしまっている。そして、この想いを抑えようと思っても、無くなるどころか日に日に強くなっていく一方なのである。この想いがバレてしまったら、他人の弱みなどが大好きな貴族たちにとってはいい笑いものだろう。きっと家族に迷惑がかかってしまう。

 リオお兄様が教師として私についてくると聞いた時は、本当に焦った。それと同時に嬉しいと思ってしまった自分もいるため、私は私自身のことが嫌いになりそうだ。しかし、セラお姉様の説得のおかげで、リオお兄様は必要な時以外には接触はしないと約束してくれた。あのリオお兄様を本当に説得してしまうなんて…いったい、どんな手を使ったのだろうか。

 いつも私を気遣ってくれているセラお姉様の厚意を無駄にしないためにも、そして私自身の為にも、何としてもリオお兄様への気持ちに区切りをつけなければならない。そして、できれば私に素敵な出会いを…


 そして二つ目の理由はセラお姉様にも話していないことだが、私はセラお姉様のような何でもできる立派な女性になりたいのだ。私は誰が見ても分かる通り、過保護な親や兄、姉たちに囲まれている。理由は分かっている…私がセラお姉様に比べて、弱くて頼りないからだろう。

 だから私は皆にこの三年間で成長したところを見せて、何処かに嫁いでいく際に安心して送り出してもらいたいのだ。


 話は戻るが、今日は買わなければならない物がたくさんある。まずは服屋さんに向かっているところだ。

 今、私が着ている服はセラお姉様が昔着ていたお忍びの際に着ていた物を使わせていただいている。…いるが、サイズが合っていない。…どこがとは言わないが……


 一人で勝手に悲しくなっていると、目的地と思われる場所についた。


「リーナ様、到着いたしました」

「それじゃあ、入りましょうか。……おお」


 中は外からではわからなかったが、かなり広く、とてもお洒落な雰囲気で、思わず声を出してしまった。


「いらっしゃいませ!どういった物をお探しでしょうか?」

「えぇと…普通な感じの目立たない服がいいですね」

「何ともったいない!!お客様はこんなにも可愛らしいというのに!」

「え?…いや、そんなことは「さぁ!こちらへどうぞ!微力ながら私が最高のお客様に合った、最高の服をご用意させていただきます!」」


 店員さんは何故かテンション高めだ。そんな店員さんの迫力に圧倒されて、されるがままに奥へと連れて行かれた。



ーーー



「きゃー!お客様、すごく可愛いです!」

「リーナ様凄く素敵です!次はこれを試着してみてください!」

「……」(助けて…)


 私が王族とバレるのはよろしくないため、レーナには人前ではリーナと呼ぶように言ってある。…それよりもレーナはどうしてそっちにいる!何よ、その手に持っているフリフリは!


「あまり目立ちたくないので、もう少し地味な物をお願いしてもいいですか?」

「「そんな…」」

「すいません…でも、目立ちたくないので」


 そう言うと店員さんは残念そうに次の服を探しに行ってくれた。何とか着せ替え人形の状態から脱出できた…。どれだけ着せ替えられたかというと…百から先は数えてない。とりあえず、レーナの足は思いっきり踏んでおいた。


 そうして、しばらく待っていると店員さんは、一着の服を持って来てくれた。


「うぅん…派手じゃないけど、地味でもない…」

「お客様!どうかこれでお許しください!」

「そうです!リーナ様、これ以上を求めるのは…あまりにも残酷です!」

「私が我儘言ってるみたいな言い方やめてくれないかしら?」


 店員さんとレーナはこの世の終わりであるかのような悲痛な声で懇願してくる。

 私は悪くないはずなのに少し罪悪感を覚えながら、仕方なくその服を買うことにした。


 その後何度か、別の服を着せられそうになりつつも脱出し、テンション高めの店員さんに見送られながら店を出ると、いつの間にかお昼ご飯時となっていた。そのため、次の目的地の日用品売り場の西急ヘンズまで歩きながら飲食店を探すことにした。


「朝も人がいたけどやっぱり昼にもなるとさらに人が多いわね」

「そうですね、これだけ人がいると何が起きるかわかりませんので、気をつけてくださいね」

「分かっているわよ。……あれって」

「エンディリオ様ですね。…あと、隣にいるのは……ってリーナ様!」


 私は見慣れた白銀色を目にすると、咄嗟に避けようとしたが、その時、リオお兄様と隣にいる初めて見る女の人が仲良く話しているのが見えてしまった。その瞬間、今まで感じたことのないような胸のざわめきが全身を駆け巡った。


――誰?…あの人

――私からリオお兄様を奪わないで


 色々な感情が胸をかき乱して、頭の中の整理がつかないまま…


「おはようございます。リオお兄様」


 私は自分でも気づかないうちにリオお兄様に自分のものとは思えない声音で声をかけてしまっていた……

 



スクランブルエッグ作るのに油ってひかないとダメなんですね。油買ってねえよ!

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