表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念シスコン王子様  作者: ちゃんくろ
22/25

勇者の師匠はシスコンです


遅れました~

親睦会の幹事やってました!

やってよかった~凄い楽しかった!


「ふぅ、終わったか…」


 エンディリオは突如学園に現れた魔族であるトゥウェルスを無事に倒し、完全に生命活動が停止していることを確認すると、そこでようやく肩の力を抜く。

 応援が駆けつけて来てくれるまではここに残らなければならないため、エンディリオはしばらく待つことにする。


(まだ誰も来ないということは、学園の中はスゴイことになっているんだろうなぁ……竜巻やら雷やら巨大魔法のぶつかり合いやら……うん、俺し~らない!)


 エンディリオは考えるのをやめた。


「先生。先ほどは危ないところを助けていただきありがとうございました」


 レイジも戦闘が終わり安心したのか、さっきまでの張りつめた雰囲気はなくなっており、エンディリオに助けてもらったお礼をしに来た。

 本来であれば、真っ先に魔族に立ち向かわなければならないのは自分の方だったことから、レイジの言葉にエンディリオは複雑な気持ちになる。


「いや、本来であれば俺が戦わないといけなかった…すまなかった」

「いえ、あれは条件反射みたいなものなので…普通は先生の行動の方が正しいと思います」

「条件反射?」

「はい、冒険者をやっていると、人間領にいる魔族に対してはやられる前にやれが基本なので」


 エンディリオは今まで王城に引きこもっていたため、魔族どころか狂化獣や普通の獣すら相手にしたことがない。そのため、先ずは相手の戦闘力はどれほどのものかや目的を知るために様子見から入ってしまうのだ。だから、今回の一件も先ずは敵を知ることから始めようと思ったのだが、レイジは根っからの実践タイプであることから、エンディリオがそれらを確かめる前に飛び出してしまい、このようになってしまったのである。


「それにしても、先生はお強いのですね」

「まぁ、努力でどうにかなるところは全て極めたからな。ただ、今回相手にしたのは魔王でもなければ幹部ですらない……もしそれらを相手にするとなると、勝てる自信はないな」


 今回彼らが相手をしたのは魔族の中の隊長格である。そして、まだその上には7人の幹部とさらに上には魔王がいるのである。隊長格一人がこれだけの戦闘力を持っていることを考えると、幹部が出てこなかったことや集団で攻めてこなかったことに対して不幸中の幸いと言う他ない。また、今の魔王になってからというもの、魔王を含め何人かの幹部が人間に対して友好的であることも救いである。


「俺は…今回、魔族相手に手も足も出ませんでした……勇者という肩書や少人数のパーティでAランク冒険者になったことで、少し浮かれてたのかもしれないです」


 レイジの言っていたことは仕方ないことだと思いながら、エンディリオは黙ってレイジの言葉を聞いていた。周りからは生まれた時から勇者としての期待を寄せられ、それに見合うだけの成果をあげてきたに違いない。14歳という若さで既にAランク冒険者になっていることからもそれが窺える。

 だが、レイジはまだ子供なのだ、それだけのことをして慢心しないはずがない。そして、そんな彼が今回の一件で素直に反省できることが凄いことだとエンディリオは考える。


「俺は今回の一件でどれだけ自分が未熟なのかを知り、強くなるにはもっと努力しなければならないことを思い知りました。先生は努力でどうにかなる部分は全て極めたとおっしゃいましたよね?」

「ああ」

「ですので先生!俺の……いえ、私の師匠になってください!」

「……え?」


 まさかの弟子入り志願に思わず聞き返してしまうエンディリオ。


「私は……いろいろあって強くならないといけないんです。……引き受けてくれないでしょうか?どんなに辛いことだって耐えてみせます!」


 エンディリオにはこの目の前にいる勇者様が真剣に頼み込んでいることがひしひしと伝わってくる。きっと生半可な気持ちでこんな事を言っているのではないだろう。それにエイリーナの友人であるレイジが強くなれば、彼女は今よりも安全にこの先の学園生活を送れるようになるだろう。

 そこまで考えたエンディリオの答えはもちろん……


「いやだ」


 当然断る。


(リーナが安全に過ごせるようになるのは魅力的だが、もしそれでリーナがこの男に惚れたらどうするんだよ……お兄ちゃん許しませんよ!それに……)


「何故か聞いてもよろしいでしょうか?」


 ここで今考えていた理由はとてもじゃないが使えないため、もう一つの理由だけを話すことにする。


「こう見えて、先生って結構大変なんだぞ。授業が終わったら生徒達の評価の見直しをして、次の日の授業の進行を考えたり、テストを作ったりなどなど!それに加えて師匠なんて受け持ったら、休日が潰れちまう……」

「なんか、すいませんでした……」


 なんだか仕事の愚痴みたいになってしまったが、これがもう一つの理由である。教師は思っていたよりも数倍しんどいのである。エンディリオはそれに加えて、教師歴一か月であり、持ち前の頭脳を駆使してどうにかここ最近は仕事に慣れ始めたが、まだまだ元引きこもりにはつらい状況は続いている。

 さらに加えると、ここ数日は何故かよく女子生徒に話しかけられることが多く、放課後はなかなか職員室にたどり着けない。職員室にたどり着いても、次は女性教師達が待ち構えているのだ。そして、それに嫉妬した男性教師がエンディリオに「若いからこれくらい余裕だろ?イケメン死すべし!」と言いながら仕事を回してくるのである。

 さらにさらに加えると、とても深刻なことに妹成分が不足している。


 以上のことから、それらに加えて休日が潰れるとなると、エンディリオは発狂しながら学園に雷砕の金槌を打ち込むことになるだろう。繰り返すが、エンディリオは王子で今まで何不自由なく暮らしてきた元引きこもりなのだ。


「いや、いい……俺もなんか悪かったな。聞きたくもないような話を聞かせてしまって…」

「いえいえ、こちらこそ。嫌なことを思い出させてしまったみたいで…」


 二人の間に微妙な空気が流れる。

 二人は気まずい空気の中、いろいろ考える。どうして、このような空気になってしまったのか、エイリーナが呼びに行った他の先生はまだ来ないのか、どうして新任教師である自分ばかりに仕事が押し付けられるのかなどなど。しかし、応援は来る気配がなく、仕事も減るどころか、今回の一件のせいで増えるところしか想像がつかない。

 先にこの空気にしてしまった罪悪感から耐え切れなくなったエンディリオが話を切り出す。


「…その、なんだ……師匠は無理でも、放課後にうちのクラスで希望者だけが集まってやっている魔力コントロールの練習に来るぐらいならいいぞ。あくまで授業の延長みたいなものだが……見る限りだと君には必要ない気もするがな」

「いえ!行かせていただきます!」

「そうか、なら放課後に2年Cクラスの教室に来てくれ」

「はい!ありがとうございます、師匠!」

「ああ。あと、師匠じゃないよ」


 なんだかんだ言いながら、完全にほったらかしにしないのがエンディリオである。彼は昔からエイリーナとローレンスの面倒を見ているため、ここでもお兄ちゃんスキルが発動したのだろう。

 忙しいはずの放課後にCクラスで生徒達の練習に付き合っているのもそれが原因だ。


「ところで師匠、そろそろ誰か来てもいいころ合いだと思うんですが」

「君、結構強情だね。まだ誰も来ないのは学園の中が大騒ぎになっているからだと思う。あと、ギガコヤス先生の様子やさっきの魔法の応酬で誰が出るか押し付けあっているのかもしれないな」

「はは…確かにあの魔法のやり取りがあった場所に近づくのは嫌がるでしょうね……」


 二人がそんな会話をしていると、突然後ろから声が聞こえてくる。


「遅くなってしまい、申し訳ございません。微力ながら私達生徒会が手をお貸しいたします」


(ん?……この声はまさか)


 その声はエンディリオにとって、ものすごく聞き覚えのある声であった。

 エンディリオが振り返るとそこにはやはり、よく知った人物が立っていた。


(やっぱりお前かーー!!そう言えば、ここの生徒会長になったって前に言っていたな)


 どこか冷たさを感じさせるがとても美しい顔立ちに、透き通るような薄い青色の長い髪と白い肌、それに加えとても愛らしく感じてしまう小柄な体型であるため、彼女を初めて見た者は皆口を揃えてこう言う。


<雪の妖精>


 そして、なぜエンディリオが自分が受け持っているわけでもない彼女のことを知っているかと言うと、彼女-ルーデリカ・フロンズワールはエンディリオの元婚約者なのである。

 彼女の方もエンディリオの顔を見ながら、その美しい顔はどこかひきつっているように見えた。




トゥウェルス「いつまで私の前で喋っているのかね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ