ようやく主人公らしいことをできた気がする
最初の方に言っていた通り、シスコンが戦闘をして区切りがいいので、更新頻度を落とそうと思います。
トゥウェルスは突然乱入し、レイジにとどめをさそうとしていた自分の剣を弾いた者に対して怒りや驚きは感じていなかった。驚きを感じなかったのは、どこかのタイミングで乱入してくるだろうと予想していたからで、怒りを感じなかったのは、その乱入者が主であるエルファイブが特別視している存在の一人であったからである。
「やはりこの魔力は……貴方はエンディリオ・アレインスターさんでお間違いないですか?」
「やっぱり魔力でバレるか……ああそうだ、俺がエンディリオ・アレインスターで間違いない。あまり一般人の前ではばらさないで欲しかったんだが…」
エンディリオは正体を言い当てられたことに対してあまり動揺はしない。相手が魔族ならそれくらいのことは起こるかもしれないとあらかじめ予想していたからだ。
しかし、この場に一般人であるレイジがいるのは少し問題ではある。
「レイジ君、今聞いたことは秘密にしてもらえるか?」
「は、はい。分かりました」
「ありがとう、君は少し下がって回復しておきなさい」
レイジは言われた通り、二人のそばから離れようとするが、トゥウェルスの目的は彼を殺すことである。今の弱った彼をみすみす逃そうとはしない。
「行かせん、炎槍!」
攻撃魔法最速の中級魔法を魔法陣なしで発動する。今の覚醒状態のトゥウェルスは魔法陣無しでも中級魔法くらいなら発動できる。
そんな魔法陣無しの最速で放たれた最速魔法に対して、レイジは魔法の発動はおろか、剣で防ぐ動作すらできない。レイジは咄嗟のことで目をつぶってしまうが、一向に本来であれば襲ってくるであろう炎魔法による身が焼かれるような熱さが感じられない。
恐る恐る目を開けると、
「ラ、ラ〇ルド」
「普通の雷盾だ。何だよそのラ〇ルドって」
「いえ、何でもないです」
ついついレイジは雷盾の見た目が前世で熱中していた胸が熱くなる某アニメに出てくる技に似ていたため、思わず声が漏れてしまった。しかし、悲しいことにこの世界にはわかってくれる人は存在しない。
そんなレイジを無視して、トゥウェルスは驚きの声をあげる。
「なぜ、人間の貴方が魔法陣無しで魔法を使える…それに、初級魔法で私の魔法を防ぐなんて……なぜだ!?」
トゥウェルスは少し前にギガコヤスが同じようなことを言っていたことも忘れて、エンディリオへと問いかける。
それもそのはず、魔法陣無しでの魔法の行使は魔力に愛され、さらに長寿であるが故の知識と経験がある魔族だからこそできるものである。
では、なぜエンディリオが魔法陣無しで魔法を発動できたかというと……
「俺は魔法の研究をして、実際新しい魔法だって一から創っているからな、魔法陣の仕組みはほとんど理解している。あとは咄嗟にそれが頭の中で組み立てられるかだが…それは練習したらできた……まぁ、セラ姉さんやローレンスみたいな天才なら感覚だけでやりそうだけど…」
エンディリオの知識は五歳の時から独学で勉強し続け、13歳という若さで魔法研究者となり、15歳の時点で世界が注目する存在となっていた。
また、エンディリオにセラネリアスやローレンス、レイジのような魔法の才能はない。しかし、彼にはそれを補って余りある頭脳を持っているのだ。長寿である魔族と同等もしくはそれ以上の知識を持ち、経験は天才的な頭脳による思考力でカバーする。それによってエンディリオは魔法陣無しでも魔法が発動できるのである。
「あと、なぜ低位の魔法で防げた理由だったか……それはお前でも分かるんじゃないのか?」
「…っ!」
そう、トゥウェルスは分かっているのだ。しかし、それを認めるということは、魔族であり尚且つ覚醒状態であるにも関わらず自分が今まで下に見ていた人間に劣るということを認めることになる。
トゥウェルスは自分に自信を持っている。彼の実力は魔王やその幹部達には及ばないが、位だけでいえばその次にあたり、魔族の切り札である覚醒を使うことも許されているからである。本来ならば、魔力や身体能力において大きく下回る人間に遅れをとるはずはない。
「そうだ、私が人間に劣るはずがない!私には無限に近い魔力と圧倒的身体能力があるのだから!」
そう叫ぶと、トゥウェルスは黒剣にレイジとの戦闘の時とは比べものにならないほど膨大な炎を纏わせ、身体強化の魔法も最大限に発動させる。
トゥウェルスが纏うあまりにも膨大な魔力により、彼を中心に風が吹き荒れる。少し離れた所にいるレイジですら竜巻の中にいるような感覚に襲われるほどのもので、何とか地面にしがみついている。
「はぁ!」
トゥウェルスが声をあげると、一瞬にしてエンディリオの前に移動し、剣を振り下ろす。
レイジは離れた位置にいたため、何とかトゥウェルスの動きが見えた。しかし、もしあの剣が自分へと振り下ろされていたならば、反応すらできなかっただろうと冷汗を流す。
そして、その剣を向けられたエンディリオは左手に持っている剣を逆手に持ち替え、振り下ろされてきた黒剣を防ごうと前へと突き出す。
そして、二つの剣がぶつかり合った瞬間、ドガンッという爆音と共に二人の周りを土煙が覆う。
エンディリオはまず、鍔迫り合いの状態から相手の力を利用して回転し、その勢いのままトゥウェルスの腹にめがけて右手の剣を斬り払う。
トゥウェルスはそれを後ろに飛んでなんとか避けようとしたが、腹に感じる焼けるような熱つさから完全には避けきれなかったと予想する。傷口は見ずに血が噴き出していないことから致命傷ではないと頭の隅で考え、回復はせずにもう一度攻撃をしようと踏み込もうと力を入れるが、一瞬にしてエンディリオが目の前に迫ってきたため、半分無意識に防御へと移行する。
「速い!」
もちろんトゥウェルスは一度たりともエンディリオから目を離していない。それなのにトゥウェルスはエンディリオが目の前にくるまで反応できなかった。なんとか彼の攻撃を防げたのも長年の経験による戦闘の勘のおかげである。
しかし、一度防いだからといってエンディリオの攻撃が終わるわけではない。左右の手に握られている双剣による怒涛の攻撃が始まる。
「ぐうぅぅ……」
右、左、右、左と続く斬り払い、突き、振り下ろしと最適な形で行ってくるため、一つ一つが重くて速い。また、双剣の黄金に輝く刀身とそれが纏う雷によって、トゥウェルスはまるで無数の雷が同時に襲ってくるような錯覚に陥ってしまう。今の彼には反撃する余地がないどころか、致命傷を防ぐのに手一杯であり、少しずつダメージが与えられている。
(だが、勝機はある。攻撃をいなし続ければいずれ魔力切れになる、それまで耐えれば……)
エンディリオは自然の魔力を操ることができ、自分の魔力へと変換することも可能である。つまり、魔族やレイジ同様、エンディリオも魔力を瞬時に回復させることができるということだ。
しかし、エンディリオのそれは魔族のように角が自動的に行ってくれることでもなければ、レイジのように規格外の自然回復でもない。そのため、集中している状態でなければ魔力回復はできず、現在のような戦闘中にはできないのである。
よって、トゥウェルスの考えは正しいのだが、それはこの状態がずっと続けばの話である。
「そろそろか」
「……?」
エンディリオの言葉に言いようのない不安を感じるトゥウェルスであったが、今はそのようなことに気を使っている場合ではない。トゥウェルスは目の前の男の攻撃をなんとかいなし、魔力切れに追い込まないと勝てないのである。自分は魔族で、覚醒まで使っているのに正攻法では勝てない、トゥウェルスはそう考えてしまったのだ。
「今お前は、俺を格上として見ているな?」
「………!?…しまった!」
トゥウェルスは慌てて距離を取ろうとするも、もう遅い。
『動くな!』
「…っ!」
エンディリオはトゥウェルスに言霊魔法が効いているのを確認すると、手に握る黄金の双剣に魔力を流し込む。
ここで普通に攻撃しない理由は、普通の斬撃だと死なないように調整するのは難しいからである。
エンディリオはものの数秒で双剣へと魔力を流し終えるとそれを頭上に掲げる。辺りは先ほどトゥウェルスが本気を出した時とは比べものにならない惨状になっている。空は数秒前まで快晴だったのに今は厚い雲で覆われており、それにもかかわらず空で無数の光を走らせている雷のせいで先ほどよりも明るい。
「この魔法剣技は本来であれば山すら簡単に吹き飛ばすもので、俺が唯一完全に理解できていない技でもある。だが、安心しろ。威力の調整はできるから死なないようにすることはできる。お前にはいろいろと聞きたいことがあるからな。だから、安心してそこで動かずに立っておけ」
言い終わるや否やエンディリオは剣を振り下ろし、巨大な雷がトゥウェルスへと向かう。
<魔法剣技・雷砕の金槌>
--ドゴーーン!!
凄まじい音が学園中に響き渡る。
トゥウェルスがいたところは大きく窪んでおり、ちょっとしたクレーターが出来上がっている。クレーターの中はまだ煙が充満しているため、トゥウェルスの様子を見ることはできない。
トゥウェルスがどうなったかを確認するため、レイジは晴れていく煙を凝視する。そして、うっすらと中が確認できるようになると、そこに立つ一つの存在が目に入る。
「…あれを食らって、まだ立っているのか……」
「恐らく、咄嗟に言霊魔法を打ち破って、上位の防御魔法で身を守ったのだろう。だけど、もう戦う力は残ってなさそうだな」
トゥウェルスはゆっくりと歩き始める。しかし、先ほどまでの威圧感はもうなく、満身創痍といった感じである。
「…ゲホッ!…ゲホッ!………私の負けだな」
自分の負けを宣言すると、トゥウェルスはその場に膝をつく。しかし、それは歩けなくなったからではなくある部分を隠すためであった。
「まずい!レイジ、今すぐここから離れろ!」
「…え?」
「もう遅い!」
エンディリオはトゥウェルスがやろうとしていることにいち早く気づき、レイジに逃げるように言う。しかし、既にトゥウェルスは心臓部分に埋め込まれた魔石に魔力を流し終えていた。
「命を代償とする禁忌魔法か……防ぎきれるか………」
「命に代えても主の命令は遂行する!」
エンディリオは自身が操れる全ての魔力を使い、防御魔法を発動し、トゥウェルスは自身が持つ全ての魔力を禁忌の魔法へと費やす。
<最上級防御魔法・雷神門>
<禁忌魔法・炎獄>
トゥウェルスは自信を燃やし、直径10メートルはある炎柱を作り出す。それは空で向きを変えてレイジへと襲いかかる。しかし、レイジと炎獄の間に現れた雷でできた巨大な門がトゥウェルスの禁忌の魔法を食い止める。
「「……ぁぁぁああああ!!!」」
エンディリオとトゥウェルスは共に全ての力を出し切っているため、無意識のうちに腹の底から声が出る。
いつまでも続くかと思われた二つの巨大な魔法の衝突は、炎獄の勢いが徐々に弱まっていき、終わりを迎えることとなった。
二つの魔法が消えて見えてきた光景はつい数分前とは同じ場所とは思えない状態である。草木は吹き飛ばされ、遠くで転がっているか折れているかで、地面は炎獄による高温で溶けている。
「……これを、防がれてしまった…か」
炎獄の炎が完全に消えてから少しすると、かすれた声でトゥウェルスが話し始める。この声を聞いただけで、彼がもう長くないことが分かる。
「それは命を代償とした魔法だ……発動した時に満身創痍だったお前にはこれが限界だろう。だから、俺もどうにか防げた」
「……なるほど………さすがはあのお御方が認めたアイシアさんの血を引くものといったところか……」
「そのあたりのこともじっくりと聞きたいところなんだが……無理そうだな」
「すまない、貴方になら話してもよかったのだろうが……それはできなさそうだ。……それに私自身アイシアさんのことはよく知らないのだ……アイシアさんのことを聞くなら、我が主かあの御方に…………」
トゥウェルスは少しずつ声が小さくなっていき、やがてその声は完全に聞こえなくなった。
やっと主人公の戦闘シーンまでたどり着いた~
実は頭の中でこの物語はほとんど解決しているんです。ただ、小説を書くのが初めてなので、どうでもいいところでつまずいてなかなか筆が進まないんです。軽い気持ちで始めたけど、結構大変ですね~
これは楽しいと感じなかったら続かない、私は楽しいから続けるけど!




