魔族が思ったよりも強いんですが
小説のアイディアはいっぱいあるのに、いざそれを文章にするとなると難しい~
文章を書く時は普段何気なく使っている言葉ですらあっているか不安になってくる。けど、楽しいんだよね!
トゥウェルスは名乗り終えると、さっそく教室全体を見渡す。
勇者に姿を現すように言ったが、トゥウェルスは勇者の容姿は知っているため、別に名乗りをあげなくても問題はない。単なるパフォーマンスである。
「ま、魔族……」「…うわぁ!」「いやぁ!」
徐々にではあるが生徒達は今の状況を理解し始め、初めて味わう恐怖からか何人かの生徒が叫び始める。
それに対してトゥウェルスは右の親指にはめている少し大きめの指輪を光らせながら一言。
『大人しくしろ!』
トゥウェルスが発したのはただの言葉ではない。
<上級特殊魔法・言霊>
この魔法は上級特殊魔法という名前だが効果は単純で、自分に対して恐怖心を持つ者や劣等感を感じている者を従わせる魔法である。相手の感情によって効果の強弱が変わり、同じ相手に使うと効果が薄れるため、使いどころが難しい魔法でもある。
しかし、この場では効果が覿面だったらしく、先ほど叫びをあげていた生徒達は皆動くことや叫ぶことはおろか、小さな声すらも出せない状態である。
そんな中、トゥウェルスの魔法をいち早く破り行動を起こしたのは、当然のことながら先生であるギガコヤスだ。ギガコヤスはこの魔法騎士団長が設立した学校のしかもSクラスを任されているということからもわかる通り、かなりの実力者であり、魔族と戦ったこともある。
そのため、魔族を初めて目の当たりにする生徒たちに比べて、魔法の効果も薄かったのである。
「生徒達に危害は加えさせん!」
ギガコヤスは左中指にはめている指輪に魔力を流し、魔法を発動する。
<上級攻撃魔法・炎豹>
ギガコヤスが発動したのは上位魔法の1つで、豹を思わせるような形をした炎で対象を攻撃する魔法である。この魔法は炎でできた豹なだけあってかなりの迫力であり、そしてその迫力に申し分ない威力を発揮する魔法である。
先ほども説明した通り、ギガコヤスは魔法騎士団を多く輩出している実力主義の学園の先生だけあって、使える者がほとんどいないと言われている上位魔法をいとも簡単に発動してみせた。
「ほう、上位の魔法をほとんどノータイムで発動するか…」
ギガコヤスの魔法にトゥウェルスは驚きの声を漏らす。
しかし、この驚きは追い詰められた時のものではなく、「思っていたより頑張るな~」くらいの軽いものである。
「だが、相手が悪かったな」
トゥウェルスは迫りくる炎豹に右手を掲げ、魔法を発動する。
<初級防御魔法・火盾>
「…なっ」
ギガコヤスは驚きの声を漏らす。その声はトゥウェルスが先ほど発したものとは違い、追い詰められた時に出るものである。
それもそのはず、トゥウェルスが発動したのは下位の防御魔法である。本来であれば、高位の攻撃魔法を防ぐことなどできるはずもないのだが、トゥウェルスは魔法に込める魔力量と魔力コントロールによって覆してしまったのだ。
しかし、ギガコヤスが驚愕したのはそれだけではなかった。
「今の魔法、魔法陣を使わなかっただと?」
「下位の魔法ごときの魔法陣など頭の中に入ってある」
頭の中に魔法陣を思い浮かべることができれば、魔力を集めるだけで魔法は発動する。実際エンディリオもそれによって魔法とも呼べないような極微小の雷の魔法を発動していた。これも天才であるエンディリオだからこそできるものである。
しかし、極微小の電気を発するのと下位とはいえ、複雑な魔法陣によって構成されているちゃんとした魔法を発動するのとでは難易度が段違いすぎる。
これが人間よりも遥かに長寿であり、魔法に…魔力に愛された種族、『魔族』である。
「…くそっ! こんな相手にどうすれば……」
生徒たちがいるとはいえ、魔族相手に生半可な魔法は通用しないと踏んで、苦渋の選択の後発動した自らが行使できる最強の魔法をいとも容易く破られたギガコヤスはどうにかしてこの状況を打破するべく思考を巡らせていた。
「…さて、今度はこちらの番だな」
トゥウェルスはそう口にすると、またもや魔法陣なしで魔法を発動する。発動した魔法は魔法騎士が使う魔法でも基礎中の基礎となる魔法
<初級支援魔法・身体強化>
ギガコヤスはゴクリと唾を飲み込み、トゥウェルスの次の行動に備える。
そんなギガコヤスを見ながら、トゥウェルスは軽く頷き、脚に力を入れて…
「では、行くぞ!」
--バッ!!
ギガコヤスは相手を見失わないように常に油断などせず注視していた。しかし、相手が一歩踏み出した瞬間、教室に響き渡る轟音と共に、そんなギガコヤスをあざ笑うかのように彼の視界から消えてしまう。
ギガコヤスは突然のできごとに一瞬だけ呆然としてしまったが、慌てて防御魔法を行使すべく指輪に魔力を流す。しかし…
「遅い!」
「…がっ」
魔法が発動するよりも速く、トゥウェルスの膝蹴りがギガコヤスの腹に入る。そして、少し遅れて背中に衝撃と痛みを感じ、ギガコヤスは敵の膝蹴りで壁まで吹き飛ばされたと瞬時に理解する。
そして、それと同時に感じてしまう…
(勝てない……)
しかし、ギガコヤスには守るべき生徒達がいるた諦めるという選択肢はなかった。
であれば、やれることは一つ。ギガコヤスは朦朧とする意識の中どうにか魔力を指輪へと流し込み、初級の魔法を外へ向けて発動する。
「何のつもりだ?」
「…この学園には、優秀な先生が二人いてね…一人は今は出かけておられるが…もう一人は今もこの学園にいる……先輩として頼るのは格好がつかないが仕方ない…」
「ほう、ここに理事長以外にも強者がいるとは知らなかった」
「お前たちが、どうやって情報を手に入れているかは知らんが……そいつは、今年からここに来たからな。…そこまで新しい情報が回っていないようで安心したよ……」
ギガコヤスはそこまで話すと気を失った。
ギガコヤスはこの一か月にも満たない期間で今年から入ったある人物が自分なんて足元にも及ばないほど優秀であることに気がついていた。時々残念で目を離せない後輩だが、この状況をどうにかしてくれそうな唯一の人物である。先輩として情けなく思い、悔しいが今は仕方ない。
トゥウェルスは気絶したギガコヤスには目もくれず、先ほどギガコヤスが言っていたことについて考えていた。
(…セブンガード様の手の者がこの学園に入り、情報を手に入れていたはず……となれば、セブンガード様はエルファイブ様にこの情報を隠していたことになる……まさか、その謎の強者とやらの実力を確認するためにわざと情報を隠して、エルファイブ様の部下をこの学園にのり込むように誘導したのか?)
「なるほど、ならばそれに乗るとしよう」
トゥウェルスはそう決めると、その強者がくるまでここで待つことにする。
そうして、トゥウェルスは教室にいる生徒達の突然の出来事についていけてない顔やら状況を飲み込んでしまった哀れな者の恐怖によって歪んだ顔を一人一人確認していく。さっきまでの騒動で何もしてこなかった時点でここには勇者がいないと予想していたが、念のためである。
トゥウェルスの予想通り勇者がここにはいないことを確認すると、目に留まった一人の女性のもとへと近づいていく。
「おぉ…この魔力の感じ、そしてその美しい容姿……懐かしい。貴女はエイリーナ・アレインスターさんでお間違いないですね?」
「へ?」
トゥウェルスの言霊魔法のせいで今まで何もできず、ようやく効果が薄れてきてエンディリオからもらった腕輪に魔力をこめるか迷っていたところ、突然魔族から丁寧な口調で声をかけられたエイリーナは状況が飲み込めず、王女らしからぬ変な声をあげてしまう。
「た、確かに私はエイリーナ・アレインスターですが…」
「おぉ!やはりそうでしたか!」
トゥウェルスは両手を広げ、喜びを全身で表す。
何故このような反応をさせているのか、よく分かっていないエイリーナはただ戸惑うばかりである。
そんなエイリーナの反応を確認したトゥウェルスは申し訳なさそうに話を続ける。
「これは申し訳ありません、エイリーナさん。実は私の仕えている御方と貴女の祖先であるアイシアさんとは知った仲でしてな…つい、はしゃいでしまった!」
「……そうでしたか。アイシアさんというのは、200年前の勇者のチームにいた…」
「そうです!そうです!」
エイリーナは自分がトゥウェルスと話している間に救援が来ることを信じ、今までにない緊張感に冷汗を流しながら、何とか言葉を発する。
そんなエイリーナの考えは知らず、どこか嬉しそうなトゥウェルスは改めてエイリーナの目を真っ直ぐ見る。
「エイリーナさん。我々と一緒に魔族領へと来ませんか?…人間は私利私欲にまみれた者が多いと聞きます。ですので、貴女が望むのであれば、私達は丁重に貴女をむかえることを約束します」
「……申し訳ありません…」
トゥウェルスからの突然の提案に、一瞬頭が真っ白になるが、何とか断ることに成功する。
エイリーナの頭はフル回転状態ではあるが空回り状態であり、会話の受け答えは全て直感と今までに培ってきたお姫様スキル頼りである。
「…そうですか」
トゥウェルスはエイリーナの答えが分かっていたのか、少し残念そうにはするものの、すぐに引き下がる。彼は無理やり連れ去る気はないようだ。
「それでは、本来の目的を実行させてもらうとしようか……ちょうど来たようですし!」
すると、教室に同時に二つの光が壁を天井を突き破りながら降りそそいだ。
敵はドアから入ってきたのに、味方が天井を突き破ってくるってどういうことですかね?




