普段あまり話さない人ほど好きなことに対しては饒舌になる
ここにきてようやく魔法について少し説明します。
このあたりが、私が書きたかった第一ポイントになりますので、少し文章が調子に乗っているかもしれないです!
入学式を終えた次の日、バルフィラ魔法騎士学園ではさっそく授業が始まる。
そして、エンディリオことエンド先生が担当する2年Cクラスの本日のスケジュールは午前は座学のみで、午後に訓練場を使って実習することになっている。ちなみに、今は授業が始まる前のホームルームの時間となっている。
「皆、おはよう!改めて、このクラスの担任となったエンドだ。今日からの授業で皆に魔法の楽しさを知ってもらう努力をするから、よろしく!」
エンディリオはさすがに二日目なので、昨日のような醜態は晒さなかった。
生徒達はそんなエンディリオを見て、「本当に昨日の先生と同じ人物か?」と疑問に思ったが口には出さなかった。それよりも気になる物がエンディリオと共に教室に入ってきたため、そちらに目が奪われる。
そんな生徒達の疑問を代表して尋ねてくれる人物がここにはいた。
「先生、その大きな荷物は何でしょうか?」
我らがCクラスの委員長だ。彼女は背筋をピンと伸ばし、真上に手を挙げながら、エンディリオと共に教室に入ってきた荷物について尋ねる。
「ふっ!よくぞ聞いてくれた委員長!これは今から皆に配る教科書だ!」
「教科書ならすでにもらっていますが…。あと、まだ委員長ではないのですが…」
委員長が言う通り、教科書は三年間使えるもので、二年生であるこのクラスの者はすでに教科書を持っている。
「実はこの教科書を見てみたんだが…思ったよりも遅れていたからな、少し弄ってみた。間違ったことは書いていないはずだから安心してくれ」
「…教科書を弄った…?」
この教科書が改正されたのは三年前のことであり、常に魔法の最先端を走っているエンディリオにとってそれは許容できないことであった。
委員長の質問に答えながら新しい教科書を生徒の手元に配り終えると、エンディリオは説明を開始する。
「俺が書いた方の教科書も前の教科書の流れに沿っているから内容についてはほぼ同じだと思ってくれて大丈夫だ。ただ、ちょっとした応用や今現在研究されている内容なども少し載せてあるから、より深く勉強できるようにもなってある。あと、教科書の所々には参考文献なども載せたりしてある」
エンディリオは昨日の醜態は何処へやらといった感じで饒舌である。
そんな様子を呆然と見ていた生徒達は配られた教科書を開いた。
「…見やすい」
パッと見ただけでも見やすいことが分かる。さらに、今まで分かりにくいと感じていたところには、参考文献やらエンド先生のコメントなどが書いたりしてある。そして、章末にはその章の技術を応用したものや今も行われている研究の公開可能な内容が載っている。
これを一人でやったとしたら、いったいどれほどの時間を要したのか…その疑問をまたもや委員長が尋ねる。
「…これを一人で?…いったいどれだけ時間がかかったのですか?」
「俺ことエンド先生が一晩でやってくれました」
「いやいやいやいや、いや無理ですよこんなの!」
「実際は書くのに一月、複製に一週間といったところだ」
「…それでも、信じられませんね……」
教科書を作る際、内容面は自分でやるしかなかったため、作りあげるのに一月かかってしまったが、複製は父親であるライドボルガの権限を使い、人を集めて行ったため、一週間で終わったのである。
このレベルの内容の三年間使える教科書をたった一月で作りあげたエンディリオがいかに人間離れした暇人だったのか…実際、生徒達は「お前人間じゃねぇ!」といった表情をエンディリオに向けている。
そんな生徒達の視線を無視して、エンディリオは教科書の説明を続けているが、朝のホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴ることにより、終了した。
「おっと、もう終わりか…午前は魔法の座学だったな…10分後に授業を始めるから、教科書の120ページを開いて待機しておくように」
エンディリオがそう言うと、教室から出た。それを見送った生徒達はさっそく教科書を開け、読み始める。
新しい教科書の出来がいいためか、生徒達は興味津々で食い入るように見ていた…
ーーー
10分後、エンディリオは再び教室に戻ってきた。そして、この時点ですでに生徒達は自分の席で待機していた。
「さて、それじゃあ最初の授業を始める」
「「「よろしくお願いします」」」
エンディリオにとって人生で初めての教師…魔法に関しては自信があるが、どれだけそれを他者へと伝えることができるのか…ほどよい緊張感を感じながら話し始める。
「先ほど言った通り、教科書の120ページから始めようと思う。そこに書いているのは魔法を使うにあたって重要な要素が書かれている。現段階で重要だと思われているのは、体内を巡る魔力量、魔力コントロール力、魔方陣だ。だが、魔方陣は身に付けている物…俺でいえば、指輪や腕輪に組み込むことができるから、実質的に魔法の力量で差が出るのは魔力量と魔力コントロールで差が出る。では問題だ、これら二つのうちどっちの方が重要だと思う?…それじゃあ、カレン。分かるか?」
突然当てられたカレンは一瞬動揺してしまったが、気を取り直すと、迷わずに答える。
「魔力量ね!」
「理由は?」
「魔力コントロールはある程度さえできていれば高威力の魔法も発動できるけど、魔力量が少ないと発動できないから、魔力の量の違いがそのまま魔法の実力の違いとも言われているわ」
「ああ、正解だ…」
「ふふん!これくらい楽勝なんだから!」
「だけど、最近は魔力コントロールの方が重要なんじゃないかって俺は思い始めている」
一番始めに当てられ且つ完璧に答えられたと思っていたカレンは得意気になっていたが、エンディリオの言葉を聞き、訝しげな表情になる。
それは他の生徒も同じで、皆エンディリオの発言に疑問を持つ。
「どうしてよ!もしそうだとしたら、今まで教えられてきたことは間違いってことじゃない」
「いや、それは違う。これに関しては人それぞれの考え方だ。まずは、俺が魔力コントロールの方が重要だと思った根拠を皆に教える、そこからは自分で考えるんだ」
生徒達はそれを聞き、さらに難しい顔をする。そして、誰かが呟くように声を発する。
「明確な正解はないということか…」
「そう、魔法は答えがないことの方が多い。今まで当たり前のように思われていたことも、人の捉え方次第では全く逆の結論に行き着くことだってある。だから、魔法の教科書は何回も訂正を繰り返されているんだ。…俺達研究者はそんな当たり前に疑問を持ち、自分の理論を提示して、相手を納得させることが好きで、とても満たされるんだ。……想像してみてくれ!自分の理論を提示することで、教師や研究者達が驚愕した顔をする場面を!それに…」
「エンド先生!それよりも、先ほどの魔力コントロールの件は…」
「ん?…ああ、すまない。少し脱線してしまった」
生徒の誰かが、自分の世界へと入って熱く語りだしたエンディリオを止める。あのままいけば、脱線した状態で午前を終えることになっていたと思われるため、その生徒の行動はまさしくファインプレーだ。
「それでは、俺の理論を説明しよう。…例えば、脳内で魔方陣を組み立てて発動できる弱い魔法<小雷>。これは、そこに置いてあるペンに普通に放つと少し動かすぐらいの威力しかでない」
エンディリオはその言葉と同時に微小の電気を教卓に置かれたペンへと放つ。そのペンは宣言通り、少し動いただけだ。
誰もが知っている小雷である。
「では、この小雷を次は同じ魔力量で可能な限り魔力を圧縮した状態で、勢いよく放つとどうなるか…」
そう言うと、エンディリオは小雷をペンに向けて放った。すると…
ーバチッ
電撃を受けたペンは短い音と共に粉砕された。
「なっ!」
生徒達は驚きの声を上げる。
もちろん、生徒達は魔力コントロールにより魔法の威力をある程度は上げることができるのは知っていた。今回はペンを机から落とすのが関の山だと考えていた。
しかし、今目の前で起きたことはある程度という言葉では言い表すことはできない。
エンディリオが放った小雷は魔方陣を頭で組み立てることができるような、何の危険性もない魔法だ。しかし、今回彼が放った小雷は戦闘でも充分効果を発揮する威力…最下位の魔法と同じくらいの威力がある。
生徒達はまだ呆けているが、エンディリオは容赦なく続ける。
「まだ理由はあるぞ…まずは、目に魔力を集中させてくれ」
生徒達はどうにか気を取り戻し、言われた通りに目に魔力を集中した。
これは、魔力の流れを見るときに使う技術の一つだ。これをすることにより、魔法により隠蔽されたものを見破ることができたりしてとても便利で、実力がある者は戦闘中や森に入るときは必ずといっていいほど行っている。
「皆できたな?それじゃあ、俺の掌の上の魔力を見ておいてくれ」
エンディリオに言われた通りに彼の掌を見る。…すると、生徒達は本日二度目の衝撃を受ける。
「…教室内の魔力が集まっている……」
「そう、魔力のコントロールが上手くなると自然の魔力も利用することができるようになるんだ」
「自然の魔力を操るなんて…聞いたことありません……」
ここまで珍しく黙っていた委員長が声をもらす。真面目にコツコツと勉強してそうな委員長ですら知らないのだから、世間的には知られていないと言ってもいいだろう。
エンディリオはその反応に満足したのか、口元をニヤリとさせながら、その理由を述べる。
「それもそうだろう。恐らく現段階でこれができるのは俺だけだ。俺が自然の魔力を操るなんて発想に至ったのも偶然だしな。そして、これをさらに極めると…」
エンディリオはそう言うと、集めた魔力を自身の中へと吸収していった。
それはまるで…
「まるで…魔族みたい……」
実際に見たことはないが、勤勉な委員長は魔族の強さの秘訣である<魔力吸収>を知っている。そのため、エンディリオが行ったことがそれに近いことだと分かった。
「いや、これは厳密に言えば魔族のそれとは違う。魔族は角がこの作業を自動的に行うんだ。けど、俺の場合は意識的にしないといけないから、どうしても隙ができるから戦闘中は使えない。だからこそ、魔族は強いんだ…魔王や幹部どころか隊長格ですら、人間領を脅かすほどに。まぁ、現魔王は人間と争う気は無いみたいだからマシではあるがな。それでも、幹部の中には人間領を侵略しようとするやつもいるから、気をつけろよ」
生徒達は、改めて魔族の強さを思い知り、暗い顔をする。皆は考える…人間である自分達に勝ち目はあるのか?ましてや自分達はCクラスだ。
そんな生徒達の思考を見透かしたかのように、エンディリオは付け加える。
「そんな暗い顔をするな。魔力量は生まれ持った才能に依るところが大きいが、魔力コントロールは才能にはあまり左右されない。むしろ、努力の方が重要になってくる。そして、自然の魔力を操ることができれば、魔力量の差は無いにも等しくなるから、魔法の技術次第ではSクラスのやつらどころか、下位や中位の魔族にだって負けないだろう」
皆の顔が少しばかり明るくなる。誰もが諦めかけていたことが、努力によって叶うかもしれない…そう思ったところで、ある疑問が浮上してくる。
「自然の魔力を操るのはどうすればいいのですか?」
「そうだな…まずは、掌の上に自分の少量の魔力を集めてくれ。…次に、この集めた魔力を渦のようにして周りから魔力を集めるようなイメージをするんだ。あとは、魔法を発動する時と同様の手順だ」
「簡単だろ?」といったニュアンスで説明するエンディリオであるが、生徒達は全くついていけていない。
自分の魔力を掌に集めることはできるが、それを渦のようにすることはできない。
「先生!渦からできません!」
「……皆は魔力コントロールの練習をする時、どうしているんだ?」
エンディリオはそもそも渦ができないことに疑問を持つ。彼の中で魔力コントロールの練習は集めた魔力を自在に変形させることであったため、この段階はまだ初歩だと思っていた。
しかし、世間ではそうではなかったらしい…
「掌に集めた魔力をできるだけ長い時間維持するようにしています」
「効率悪っ!」
「え?」
エンディリオは皆が行っていた練習の効率の悪さに思わず声をあげてしまった…
~設定追記~
今回出てきた魔法の一つ<魔法陣>ですが、これは魔力を流しても壊れにくく、身につけていても違和感のないものに埋め込むことが多いという設定です。
ですので、この物語では指輪などの宝石などがこれに該当します。
また、魔法の位が上がるにつれて魔法陣も複雑になるので、最上級魔法などは大きい宝石に魔法陣を埋め込むため、腕輪やネックレスになります。
魔法を発動する過程を想像しにくいという方は某ヒットマンアニメのリングに炎を灯すところを想像してください。だいたいあんな感じです!
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