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残念シスコン王子様  作者: ちゃんくろ
12/25

A,周りから浮いている者同士が集まると友達になれます


サブタイトルは疎水結合を意識しました。


 エイリーナとレイジはあの後、校舎の人気のないところをどうにか見つけ、話の続きをすることにした。


「改めて、先ほどは場所も考えずにすいませんでした」

「いえ、少し驚いただけですので、大丈夫ですよ」

「……そうですか、それならよかったです」

「それで、先ほどの話なのですが…」


 レイジは告白まがいの勧誘を皆の前でしてしまったことをもう一度謝罪する。

 エイリーナがそのことに対して、気にしていない旨を伝えると、会話を先ほどの話へと持っていく。


「はい、少し長くなってしまうのですが、俺はつい最近まで自分を含む四人のメンバーと、冒険者として人間領で悪さをする魔族や狂化獣を討伐していました。そして今、俺達が標的にしようとしているのが、ここ最近になって人間領で町を襲っている魔王軍の幹部で『5』の数字を与えられたエルファイブと呼ばれる魔族です。相手の方もどうやら俺のことを狙っているようですし、いずれは戦わないといけないのですが……今の俺達ではエルファイブを倒すことは不可能と思われます…」


 エルファイブとは、魔王軍の7人の幹部の一人で、ここ数年の間で


「どうしてですか?貴方の試合を見させていただきましたが、実力だけでいえば、騎士団長相手でもそれなりに戦えるレベルだと感じたのですが…奇襲によってエルファイブを倒すなら私は必要ないのでは?」

「実は、冒険者としての伝で知ったことなのですが、魔法騎士団が一度、少数でエルファイブに対して奇襲をおこなったみたいなのですが、返り討ちにあったみたいなので、もう通用しないと思われます。だから、魔法騎士団は現在手をこまねいているのだと思われます。そして、エルファイブの軍勢に真っ向からぶつかり合ったら、魔法騎士団が勝つにしても多大な被害がでてしまう…それくらいの敵なのです」

「それこそ、私が加わったところで、勝てる相手ではないと思いますが…」


 エイリーナの言うことはもっともで、レイジは相手の軍勢を相手にすることを前提に考えている。もしそうするならば、エイリーナが加わったところで勝ち目はない。


「…俺には勇者としての奥の手があるのですが、それを使うには仲間に少しの間俺を守ってもらわないといけないのです。しかし、俺達の中には強い防御魔法を使える人はいないのです。…そこで、さっき貴女の魔法を見た瞬間、この人だ!って思ったんです!奥の手さえ使えれば、勝てるはず…協力してくれませんか?」


 レイジは全てを話終えると、頭を下げた。

 しかし、エイリーナは協力できそうにないことを伝える。


「人間に危害を加える魔族を倒すのに協力できるというのはたいへん喜ばしいのですが…立場上それはできそうにないです。…申し訳ありません」


 エイリーナは王族、ましてや一癖も二癖もある他の家族に比べてか弱い部類に入るのだ。家族のお許しがでることはまずないと思われる。


「…立場ということは、貴族の方ですか?」


 こんな話をエイリーナに持ち出した時点でわかっていたのだが、どうやらレイジは彼女が何者なのか気づいていないらしい。


「失礼しました。まだ、名乗っていませんでしたね。改めまして、私はエイリーナ・アレインスターと申します」

「エイリーナさんというのですね…ん?エイリーナ?……アレインスター?…ん?」


 エイリーナが名乗り終えると、レイジは何やら聞き覚えのある名前を必死に思い出そうとする。そして…


-思い…出した!


「おお、おう、王女様!…すすすすすいませんでした!とんだご無礼を!」

「い、いえいえ!私こそ今まで名乗るのを忘れてしまって、すいません。…できれば、そんなに畏まらないでもらいたいのですが…」

「お、王女様相手にそんな…」

「私は貴方に話しかけられた時、凄く嬉しかったんです。…私はこの学園ではかなり浮いてしまう存在だったみたいで…だから、貴方に話しかけられるまで寂しかったんです」

「おれ、私も…この眼と髪のせいでかなり浮いてしまっているみたいで…実は、ここに来てまともに会話したのは今が初めてなんです」


 勇者の特徴である黒い瞳と髪は端から見てもすぐにわかってしまうため、レイジはエイリーナと同じような理由から周りとほとんど会話することができていなかった。エイリーナが王女であることを知らなかったのも、これが原因である。


「私と一緒ですね!…その、突然王女の私が言われたら迷惑かもしれないのですが……私とお友達になってくれませんか?」

「私なんかでよければぜひ!…それに私も学園で話す相手がいないのは寂しかったので…」

「ふふっ…それじゃあ、これからよろしくね!レイジくん!」

「はい!よろしくお願いします、エイリーナ様」

「友達なんだから、敬語と様はやめてよ!…リーナって呼んで、親しい人は皆そう呼んでいるわ!」

「それじゃあ…よろしくな、リーナさん!」

「うん!」


 エイリーナはレイジに「リーナ」と呼ばれると満面の笑みで返事をした。

 レイジは今までそれどころではなかったため、エイリーナの太陽のような笑顔を見て、ここで初めて気がつく。


(よく見るとリーナさん、ものすごく可愛いんですけどぉーー!これはやべぇ、っべーわ!俺、こんなに可愛い子と友達になったの?()()と合わせても一番だよ…っべーわ!)


 エイリーナの笑顔を自分にだけ向けられたレイジの心の中では、お祭りが開催されている。っべー祭りだ。

 そんなことは知る由もないエイリーナはきょとんとしている。


「さて、私はそろそろ寮に帰るわ。また明日ね、レイジくん!」

「あ、ああ…また明日、リーナさん!」



ーーー



 寮に戻ったエイリーナはレーナに今日の出来事を楽しそうに報告している。


「レーナ、私ね!初日から友達ができたのよ!」

「…エイリーナ様、その方は信頼できる方なのですか?立場上、近づいてくる人には注意してくださいね」


 レーナの懸念はもっともで、エイリーナは立場では近づいてくる者の大体は下心を持っているか、王族に対して恨みを持っているかである。

 セミラリネスやシグネスといった面々がエンディリオが教師になるのを黙認していた理由もこれが原因だったりする。


「大丈夫よ!あの人は最初、私が王女って知らなかったみたいだし…それに、会って少ししかたってないけど、そんな悪い人には見えなかったわ」

「そうですか…くれぐれも気をつけてくださいね?…それにしても、初日からお友達ができたのですね…心配していたのですが、よかったです」

「私も、もうダメかなって思ってたのだけど、最後に声をかけてきてくれて…本当によかったわ」

「ただ、このことはエンディリオ様のお耳に入れておいた方がよろしいかと…」


 もしも、学園以外でエイリーナの身に何か起きた場合、レーナが対処するのだが、学園で何か起きた場合はエンディリオが対処することになっている。そのため、エンディリオはエイリーナの情報をある程度把握しておく必要がある。


「そうね…レーナ、お願いしてもいいかしら?」

「承りました」


 レーナがエンディリオの名前を出した途端、エイリーナの先ほどまでの嬉しそうな顔が少し曇る。

 それを見たレーナは慌てて話題を変える。


「それで、先ほど仰っていたご学友とはどんなお方なのですか?」

「…えぇと、レイジっていう男の子で、勇者よ」

「……え?…勇者、ですか?」

「そう!彼の試合を見たのだけど、すっごく強かったのよ!」


 レーナはエイリーナの学園での初めての友達が予想より外角高めだったため、反応が遅れる。

 「そんなこと知らん!」とばかりにレーナの硬直を無視して、エイリーナは初めての友達について嬉しそうに語る。テンションが高くなったエイリーナの口はよく回るのだ。レーナは昔からエイリーナのこれにつきあうことが多かったため、慣れている。

 しかし、エイリーナの話を聞いた途端、それどころではなくなっている。


「ちょっ、ちょっと待ってください!勇者ってあの勇者ですか?」

「え?…ええ、間違いなく本物よ!とても強かったし」

「ということは、黒い眼と髪を持つあの勇者ですよね?」

「そうね、その勇者よ」

「…」


 レーナはエイリーナが通う学校に危険な人物がいないか調べる過程でレイジがこの学園に入ることは知っていたが、まさかクラスどころか学科まで飛び越えてエイリーナと知り合って、友達にまでなるとは予想していなかったのである…しかも、登校初日に。


「…そう、ですか。レイジ様は有名ですが、悪い噂は聞かないので問題はないかもしれませんね」

「ええ!彼とならうまくやっていけそうだわ」


 レーナは再びレイジについて話しだしたエイリーナの話を聞く。そこで、レーナはふと思う。


(そういえば、エイリーナ様がこんなに嬉しそうに人の話をするのはエンディリオ様やセラネリアス様のこと以外、あまりないのに…珍しいですね)


 レーナはエイリーナの話を聞く際、大抵がエンディリオかセラネリアスのことである。エイリーナにとって、エンディリオは好きな人で、セラネリアスは憧れの人である。つまり、エイリーナにとってレイジは出会って間もないにも関わらず、家族に近い存在となっているということである。


(エイリーナ様がこの学園に通うと言われた時、最初はどうなるかと思いましたが…思いの外よかったのかもしれませんね…)


 レーナはそんなことを思いながら、いまだに話し続けているエイリーナを見て自然と微笑んだ。



裏設定コーナー


皆様がお察しのとおり、レイジ君は異世界転生してます。

これでようやくタグ詐欺じゃなくなった~

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