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残念シスコン王子様  作者: ちゃんくろ
11/25

Q,友達の作り方を教えてください


大掃除2日目…これは無理だ!


 私は今、一人で廊下を歩いている。入学式を終えて、自分の教室に向かっているところである。そして、何故一人かというと…恐らく、私がこの国の王女だからだろう。普通、王族や上位貴族は王都にある礼儀作法に重点を置いた学園に通う。ここに通うのに私のような身分の者には似つかわしくない。きっとそんな理由から、皆は私にどう接していいのか分からないのだろう。はじめの方は私からも声をかけたりはしたのだけど、ものすごく肩に力を入れて、頭を下げてからもの凄いスピードで逃げられてしまう…

 心が折れそうになる…どうやら私の友達をたくさん作るという野望は潰えてしまいそうだ。


(はぁ…大したことはしていないのにもう疲れた。リオお兄様の方はうまくできているのでしょうか?…きっとうまくやってるのでしょうね…リオお兄様は私なんかと違って何でもできてしまう人だし)

※お兄ちゃんはパニックになって、噛みまくりです。しかも、何故か満足気


 ついさっきまで、友達を作ろうと意気込んでいたが、結果がこれなので少し自虐的になってしまう。


(…って、ダメダメ!何のためにここに来たの、私!学校生活は始まったばかりなんだから!)


 心の中でも意気込んでみたのはいいものの、内心の不安は晴れてくれない。私は学園の寮で暮らし始めて既に一週間経つ、一週間しか経っていないのに、もう昔のことのように思えてくる。毎朝訪れてくるリオお兄様、そんなリオお兄様と家族のもとへ向かい、皆で食事をする。そんな生活が遠い昔のように思えてしまう。リオお兄様には恥ずかしいところも見られたし、恥ずかしいこともされたし、恥ずかしいことも言われたが、それすらも懐かしい……やっぱりそれは無しで!

 今日は特に寂しく感じてしまう。周りには生徒がいっぱいいるのに、皆私の方を見て友達同士でコソコソ話している。私もその中に入れておくれ〜!と視線を送り、微笑みかけると目を逸らされてしまう。


 そうこうしていると、いつのまにか自分のクラスについてしまった。教室に入って、見渡してみたがまだ三分の一程度の生徒しかいなかった。

 とりあえず、自分の席に座って生徒や先生が来るまで、大人しくすることにした。なるべく話しかけやすいオーラを出しながら!



ーーー



 あれから30分ほどたち、教室には先生を含む全員が揃った。エイリーナの放っていたオーラは誰にも届かず、結局一人のままである。それは、決して嫌われているわけではなく、むしろ逆…エイリーナは男子からは熱い視線を女子からは憧れの視線を向けられている。エイリーナの容姿はまさしく理想のお姫様で、彼女のことを見慣れていない人は例外なく見惚れてしまうのだ。


(この後、クラスで自己紹介があるはず…そこで、私が親しみやすさを出すことができれば…)


 エイリーナは考える。もう、これしかないと、自分が避けられているのは王族という立場を恐れてのことで、自分が怖くない印象さえ与えられれば…と。


(自己紹介は得意だ、ここにいる人よりもさらに大人数を相手に話したことだってある!)


 エイリーナは知らない。皆は決して彼女を怖がっているわけではない、憧れているのだと。そして、そんなエイリーナが完璧な自己紹介をするということは、その憧れをさらに強くしてしまうということを…


 自己紹介は滞りなく行われている。現在は、入試成績一位のヴィーレが自己紹介をしているが、ちゃんと聞いているのはエイリーナくらいである。他は、もうすぐ順番が回ってくるエイリーナに注目している。

 この状態にヴィーレは面白くなさそうにエイリーナを睨みつけている。

 ヴィーレはこのクラスで唯一エイリーナをよく思っていない人物である。入試成績一位であるにもかかわらず、誰も自分には注目しない。皆が格下のエイリーナに注目する…納得いくわけがなかった。

 そして、エイリーナの順番が回ってきた。皆が注目するなか、その視線すらも気にすることなく話し始める。


「私はエイリーナ•アレインスターと申します。名前の通りこの国の第二王女という立場ではありますが、この学校にいる間の立場は皆さんの学友…ただのエイリーナです。これから、皆さんと一緒に学園生活を楽しめることをとても楽しみにしています。これからよろしくお願いします!」


 惚れ惚れとしてしまうような理想的な礼とともに自己紹介が終わる。同時刻に行われているであろうエンド先生の挨拶とは雲泥の差である。しかし、この場においてはエイリーナはエンディリオのような自己紹介をするべきだったのかもしれない。


…パチパチ


 いったい誰から始めたのかはわからないが、クラス全体に拍手の音が木霊する。クラスメイト全員からのスタンディングオベーションである。

 エイリーナに対して好意的な気持ちを持っていないヴィーレも一人だけ座っていても目立ってしまうので仕方なく立つ。せめてもの抵抗で拍手は音が鳴らない形だけのものである。

 そんなたかが自己紹介でこれだけの反応を見せられたエイリーナはというと…


(…あれ?私、嫌われてない?)


 しかし、何度も繰り返すが、周りの人間がエイリーナを避けるのは彼女のことが嫌いだからではなく憧れが強すぎるからである。誰もがエイリーナに対して「話をするなんて恐れ多い!」という気持ちを持ってしまっている。そんな状態でのこの自己紹介…皆の憧れの眼差しが強くなってしまっている。

 等のエイリーナはこの事態には全く気づかず、この結果に満足してしまっているが、彼女の目的とは反対方向に爆走してしまっている。

 エイリーナがこのことに気づくのはもう少し先である。



 エイリーナ達新入生の今日の予定は、入学式、クラスでのホームルームと魔法のお披露目である。魔法のお披露目は生徒達が最初に他の生徒の実力をある程度把握することにより、学習意欲を向上させようという目論みがある。

 現在はその最後の予定である、魔法のお披露目のために新入生は訓練場へと集められている。

 お披露目の内容はとても簡単で、魔法騎士科の生徒はペアを作りって模擬試合をし、魔法科の生徒は一人ずつ得意な魔法を皆の前で使うというものだ。


 まずは、魔法騎士科の模擬試合から始まる。魔法騎士の生徒が試合をしている間、魔法科の生徒は訓練場に設けられた客席で試合を観る。

 この試合は約60組が一斉に行うため、本来は何処を観るかで迷ってしまうのだが、今回はある一組の…否、ある一人の生徒が観客の注目を独り占めしている。

 その生徒は、漆黒の髪と瞳を持つ美少年で、見るもの全てを飲み込んでしまいそうな闇を連想させる。しかし、それすらも無くしてしまうほどの優しい雰囲気を発しているため、彼のことを見る女子の視線はとてもホットだ。


「あの人が噂の勇者様ね…」


 エイリーナはそんな彼の容姿を見て、彼が最近噂になっている勇者だと予想する。

 エイリーナがそう判断した理由は彼の持つ黒い瞳と髪である。この特徴を持つ人物は歴史上三人しか存在しない。一人目は500年前に前魔王を倒した英雄、バルフィラ。二人目が200年前に<森>の最も最深部まで辿り着いたと言われている男、カルディス。そして最後に目の前にいる男性である。この三人は同じ特徴を持ち、抜きん出た力を持つことから「勇者」と呼ばれている。


(彼が噂の勇者であるなら、今後、私達王家とも関わりを持つことになる…ここで彼の実力を把握しておかないと……)


 エイリーナが今後関わりを持つかもしれない勇者に注目するなか、試合開始の合図が出される。


「…え?」


 開始の合図のすぐ後に決着がつく。勇者のおっそろしく速い剣技、会場にいる全ての人が見逃したに違いない。そんな光景にエイリーナは思わず疑問の声をあげてしまった。


(…速い。まさか、ここまでとは……)


 そんな光景に心を奪われていると、いつの間にか全ての試合が終わっていた。

 次はエイリーナ達、魔法科の出番だ。こちらは、入試の成績の順番で一人ずつ得意な魔法を使うだけである。

 先ずは、入試成績一位のヴィーレちゃんの出番だ。


「炎の渦よ!はぁ!」


 放った魔法は、火と風を組み合わせた中級魔法だ。彼女は14歳でありながら属性融合魔法を使える天才なのである。当然、この魔法を見た生徒は「おぉ!」と感嘆の声をあげる。そして、今回は派手さを求めてこの魔法を使ったが、彼女は闇魔法を得意としている。

 しかし、先ほどの勇者の衝撃が強かったため、そこそこの反応で終わってしまう。彼女は何かと可哀想な結果になることが多い…入試成績一位の天才なのだが…


 次は入試の成績が二位だった、エイリーナの番である。エイリーナの得意魔法はエンディリオに散々叩き込まれた防御魔法である。攻撃魔法に関しては、そこまで得意ではないエイリーナだが、防御魔法に関しては先生顔負けの実力を持つ。

 そして、そんな魔法を放ったエイリーナは勇者の衝撃によって、多少のことで動じなくなってしまっている生徒達の心を惹き付けた。


「なんて美しい魔法なんだ…」


 そう、エイリーナの防御魔法は見る者の心を掴んで離さないほどに美しいのである。魔法の美しさとはすなわち、魔力コントロールが上手であるということで、これはその美しさに見合うだけの強度も兼ね備えている。

 残念なヴィーレちゃんも初めはあまりにも美しい魔法に見惚れてしまっていたが、我に帰ったとたんにエイリーナを「キーッ!」と睨みつける。エイリーナはそんなヴィーレに気づくことなく、客席へと戻っていく。皆から見てのエイリーナのお姫様レベルはさらに向上してしまっている。ここまでくると、エイリーナが話しかけるだけで跪いてしまうレベルだ。


 まだ魔法のお披露目は続くのだが、これ以降の人達はとても可哀想に思えてくる…一位のヴィーレですらあの反応である…ハードルが高すぎる。皆、高すぎるハードルはくぐっていくことでその場を乗り越えた。



 今日の学園での予定も全て終え、エイリーナは帰る準備をし始める。残念ながら、エイリーナは自己紹介や魔法のお披露目で手応えを感じたはずなのに友達はいまだにできていない。

 泣きそうになる自分を自分で慰めつつも帰路につき、歩いていると、エイリーナは突然後ろから声をかけられた。


「…すいません!先ほど防御魔法を見せてくれたかた!」

「はい!」


 今日はもうダメだと思っていたエイリーナにまさかのチャンス、声を弾ませながら振り替えってしまうのは仕方ないだろう。もし、自分に対して声をかけたわけではなかったら?なんてこれっぽっちも考えていない。


「貴女が欲しいです!俺と一緒に戦ってくれませんか?」

「……へ?」


 声をかけてきたのは黒い瞳に黒い髪を持つ青年…勇者と呼ばれる男であった。

 彼の突然の告白まがいの言葉に、エイリーナは情けない声しか出ない。


「…あ…す、すいません!俺はレイジって言います!先ほど貴女の魔法を見させてもらいました。…俺のチームにはどうしても貴女のような一流の防御魔法を使える人が必要なんです!」

「…そ、そういうことでしたか。とりあえず場所を変えませんか?」

「…え?あ、わかりました!すいません!」


 皆からの視線に耐えられなくなったエイリーナは場所を移すことを提案する。レイジはそれにより、自分達が注目されていることに気づき、慌ててその提案に乗ることにした。

 二人はそうと決めるとすぐにその場を離れ、人気のない場所へと移動する。


-エイリーナにとって家族以外でこれから深く関わることになる男性との初めての出逢い……このレイジとの出逢いがエンディリオとエイリーナの二人にとって良いものになるのか…それとも良くないものとなってしまうのかは、まだ分からない。しかし、この出逢いが二人の関係を変えていくのは、確かなことである…




Wi-Fiが〜(携帯から投稿)

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