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神から授かったジョブは酔狂士!? 〜酔えば酔うほど最強! でも、酔い潰れたら戦闘能力ゼロ!?〜

作者: コイコイ

「よっ、酔狂士ナツキ!」


「やめてくれ。それに俺なんかに構うなって。おまえ忙しいだろ? 聖騎士ハンク」


 仕事を終えた俺は家に帰ろうとすると、後ろから声をかけられる。

 そして、振り返った先にいた相手は、幼馴染のハンク。


 大柄でガタイの良い黒髪短髪男で、顔については少し濃いと言われているが、性格はいい奴だ。


 聖騎士ってのはジョブだ。


 この世界は神によってジョブ(適正)が与えられる。

 ジョブは村人、戦士、魔法使い等幅広くあり、上位職にはハンクのような聖騎士や賢者なんてのもある。


 誰にどんなジョブが授かるかは分からず、それは個人の適正で神によって決められる。

 この世界の子供は十五歳になると、神殿に行き神からジョブを授かるのだ。


「そんな怒んなって! 俺たち幼馴染だろ? それより今は何の仕事してるんだ?」


「……作物作ってるよ」


 ジョブはあくまで適正であり、その仕事に就かなくても構わない。

 ただジョブは神からの適正のお告げである為、与えられたジョブに相応しい成長をする。


 例えば魔法使いから魔力が強く、多い代わりに体力が低い。戦士と言えば、身体は強い代わりに魔力が低いと言った感じだ。


 ただ、魔法使いでも剣持って戦えるし、戦士も魔法は使える。

 だから、そのジョブの仕事をしないといけない訳ではない。


 昔には村人でも鍛えまくって強くなった人もいるって聞いたくらいだ。

 

「たぁ〜〜!! 俺たちがガキの時のリーダーが農民かよ!!」


 俺は小さい時に親が死んで、村の村長さんに育てられた。

 それでも、俺は村長さんのおかげで明るく過ごせて、そこらの子供の中では力も強く、身体能力も高くて、生まれつき髪は茶色で顔も整っていてかっこいいと言われ、村では一番人気者だった。

 

「ジョブがジョブだから仕方ないだろ」


 しかし、ジョブが俺の人生を変える。


 俺のジョブは酔狂士。


 酔狂士は今までに出た事ないジョブと言われたが、その名前から笑い者にされ、一気にどん底に落ちた。


 酔狂士……その名前から酔っ払って狂う者と言われ、俺は働く場所さえなく、村長さんの作物を作る手伝いをして何とか毎日過ごしている。


 なぜ、ジョブの事がみんなに知られたかと言うと、仕事に就く時にはジョブを公開しなければならないのだ。

 それは、魔道具である水晶に文字が浮かぶから誤魔化しはきかない。


 俺はいろいろ働こうとして、ジョブを知られると同時に断られる事になった。

 そういった噂は、小さな村ではすぐに広まってしまうからだ。


 そんな俺と違ってハンクは聖騎士という上位ジョブを与えられ、村で一番の人気者になった。


 人気者になったハンクだが、ハンクだけは俺が酔狂士というジョブを与えられた後でも、変わらずに接してくれている。


「またそうやってジョブのせいにして! おまえは俺と違って元々が良いんだからもっと胸張れよ!」


 そう言ってハンクは俺の背中をバシバシと叩く。


「痛いって! おまえの自分のジョブの事を考えろよ!!」


「あっ、わりぃわりぃ! でも、やっと感情を出したな!」


 ハンクはそう言ってニヤっとする。

 こいつは本当に……。


 それにしても、ハンクは聖騎士のジョブを授かり、その能力で今は城の方で働いているはずなのになんでここにいるんだ?


「ほっといてくれ。……でも、なんだ? おまえ城で働いているんじゃないのか?」


「あぁそれな、辞めた!」


「っ!? 辞めたっておまえーーっ!?」


「まぁ俺みたいな奴には城みたいなところは堅苦しいんだよ。ジョブが仕事になるとは限らないだろ?」


「まぁ確かにそりゃそうだけど……」


「って事で一杯付き合え!」


「なっ!?」


 そう言ってハンクは俺の腕を掴んで引っ張る。


「おい、やめろって! 俺は酒飲まないって知ってるだろ!?」


 酔狂士のジョブを得た事によって、酒に対して拒絶反応を示すようになり、一度も酒を飲んだ事がないし、この先も飲むつもりはない。


「いいじゃねぇか! 奢ってやるし行くぞ!」


 しかし、聖騎士のハンクに力で敵うはずがなく、俺は引きづられながら連れて行かれるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「かんぱーい!!」


「……かんぱい」


 ハンクに連れて来られたのは、村に一つしかない酒場。

 と言っても、日中はご飯屋をしているし、その店主であるおばちゃんも顔見知りだ。


 そのせいで、この店に入った時も「酔っ払って暴れないでちょうだいよ?」って嫌そうな顔で言われた。


 酔狂士ってジョブが何かは分からないけど、ジョブの通りに成長するし、文字からすると俺は酒を飲んだらややこしい人間のはずだ。

 だから、あながしおばちゃんの言う事は間違いじゃないだろうし、俺は酒は死ぬまで飲むつもりはなかった。


 それなのに……。


「グビグビ……プハァー!! やっぱ酒はうめぇな! ん? どうした? 早く飲めよ、うめぇぞ?」


「いやハンク、俺のジョブ知ってるだろ?」


「なぁに、大丈夫だ! おまえが暴れたら聖騎士である俺様が止めてやる!!」


 そう言ってハンクは力こぶを作ってニヤリとする。


 こいつ……まぁ確かに俺なんかが万が一暴れても聖騎士のハンクがいたら大丈夫か。

 ジョブを得てから五年、やりきれない思いで溜まるものもあったし、酒は何やら発散出来るって言うからな。

 お言葉に甘えて飲ませてもらおうか。


 俺はハンクが頼んだビールというお酒を見つめ、そしてそのジョッキを口へ持っていきハンクがしたように上を向いて一気に飲む。


「グイグイ……プハァ!」


 なんだこれは!?

 喉を通る刺激と程よい苦味と香り……うまい!!


「おっ! 良い飲みっぷりだな!」


「当たり前だ! 俺を誰だと思ってる? 酔狂士ナツキだぞ?」


 なんだ?

 飲むと同時に身体が熱くなって気分が良いぞ?


「ハハ! 初めて飲むのにそんな一気に飲むからさっそく回ったか? よし! 今日は飲むぞ!!」


 そう言ってハンクは追加のビールを頼む。


 飲むつもりじゃなかったけど、飲んでみれば美味しく、良い気分になれるお酒を俺は感動を覚え、ハンクに付き合う事にした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「いいよなぁ〜おまえは聖騎士で」


「はは! なんだ? 酔っ払ってるのか?」


 あれから一時間くらいだろうか?

 俺はハンクと一緒に飲み続けている。


 ビールだけだとお腹に溜まるので、途中から焼酎とかいうやつを氷を入れて(ロックと言うらしい)を飲んでいるけど、これはこれで何というか刺激の強さはビールより強いけど、刺激の後に香りが広がって美味しい。

 

 それにしても、これを酔っ払ってるっていうのかどうかは分からないが気分はいい。

 今まで言えなかった事が躊躇いなく、口から出る開放感。

 そして、おばちゃんや周りの客が『大丈夫か?』って顔で見てるのも気にならない。


「そんな事よりよぉ〜聖騎士だったら身体能力も高いし、神聖魔法も使えるし仕事も選びたい放題だろ?」


「まぁな、でもナツキの方が昔は強かっただろ?」


「昔の話だろ? なんせ俺のジョブは酔狂士、成長も何もないさ」


「そんなの分からないだろ?」


「いや、分かる。俺が成長してたらハンクに引きづられて来ないで帰ってたって」


「そんな卑屈にならなくても……どうだ? 久しぶりにやるか?」


 ハンクはそう言うと、右腕を出して来る。


「勝てる訳ないだろ?」


「いや、分からないだろ? 知らない間に成長してたかもしれないし」


 昔はよく近所の子供達で腕相撲を競い合っていた。

 俺は当時村で一番強かったな。

 まぁ、今では聖騎士のハンクに勝てるはずないけど。


 でも、なんか気分が良いし何やら身体から力が溢れてくるような気がするし。

 まぁこれが酔っ払ったってやつなんだろう。


 負けたって気にならないし、やってみるか。


「分かった。ほら、やるぞ!」


「おっ! ノリがいいじゃねぇか! 酔狂士様の実力見せてもらおうか!」


 ハンクの出した右手を、俺は同じ右手で掴み準備する。


「よし、いいな? いくぞ? レディ……ゴー!!」


 ハンクの声と同時に俺は一気に力を入れ……


『ドゴォォォォォオオオオオンンンッ!!』


「へっ……?」


 俺が力を入れた瞬間、ハンクの腕ごとテーブルを破壊し、床にはハンクが転がった。


「イテテ……」


 なんだこれは……?

 酔狂士で成長してたってのか?


 いや、違う。

 農作業してる時はこんな力出ないし……まさか……?


「あんた達なにやってるんだいっ!!」


 物凄い物音に店主のおばちゃんが怒涛の表情で駆け寄ってくる。


「あっ、ゴメン!! おばちゃーー」


 あれなんだ?

 世界が回って消えていく……?


 俺はすぐ様立ち上がって謝ろうとしたところで意識が途絶えた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「……ここは…………っ!?」


「おっ、起きたか?」


 ハンクと一緒に酒場で酒を飲んでいたはずなのに、目が醒めるとそこはいつも見慣れた自分の家だった。

 そして、それを確認すると同時に頭に痛みが走り痛みで目を瞑る。


「あっ、まさか二日酔いか? まぁ仕方ねぇか、初めて酒飲むのに俺よりペース早かったし」


「……俺、そんな飲んでたのか?」


「あぁ、途中から焼酎を水みたいに飲んでたじゃねぇか! あれは初めて酒を飲む奴の姿じゃねぇな!」


 そう言ってハンクは笑い声をあげる。

 俺、そんな飲んでたっけ……記憶が……。


 というか、気持ち悪い……。


「うっ……」


「おまえまさか吐く気か!? 吐くならトイレに行けーーっ!!」


 俺はハンクに言われるがままに、口に手を当て込み上げてくるものを抑えながら、トイレへと急いだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ったく、調子乗って飲み過ぎるからだぞ」


 トイレと友達になる事、三十分。

 何とか吐き気が治まり、トイレから出る事が出来た。


「スマン」


 もはや謝る事しかできない。

 

「まぁ、最初はみんなやるもんだ。それより昨日のは凄かったな」


 ハンクが言ってる事は昨日、俺が腕相撲で発揮した力だろう。



「……酔うとあんな風になるのか?」


「まさか!! それだったら俺も強くなってるはずだろ? あれがおまえの酔狂士の能力じゃね?」



 ハンクの言う事はもっともだ。

 酔えば強くなるなら、俺はハンクに勝てるはずなかった。


 酔狂士……やっぱりその能力か?

 神から授かるジョブはその適性でだけでなく、ジョブ固有の能力を発揮する事がある。

 それが俺の場合、酔うと力が上がるって事か?



「……」


「おっ、なんだ? 自分の隠された能力に気づいて嬉しいのか?」



 いや、違う。

 酔わないと強くなれないなんて、なんて情けない能力なんだと思っただけだ。

 誰かが絡まれたりしてて助けようと思ったら、俺は酒飲んで酔わないといけない。

 そんな酔って助けに行ったら、逆に俺は酒を飲んで絡みに行ってる奴に見えるだろう。


「いや、違うって。自分の能力に呆れただけだ。酔ったら強くなって暴れるって事は今まで言われてきた事と変わりないって事じゃないか」


 いくら飲んで酔えば力が強くなるって言ったって、世の中のどこに、酒飲みながら仕事出来るところがあるって言うんだ。

 それこそ、働きがどうこうという以前にクビだ。


「いやいや! それでも酔ったら聖騎士の俺より強くなるんだ! 凄い能力じゃないか?」


「何言ってんだ、いくら力が強くなるって言っても酔ってる状態じゃないと強くならない奴をどこで雇うんだ? それとも何か? 城では酔っぱらいも雇ってくれるのか?」



 ハンクは俺の言葉に「う〜ん……」と言って黙って考え込んでしまった。

 そこまで真剣に考えなくても分かってるだろうに。

 俺のジョブは言われてきたままのジョブだって事だ。


 すると、突然ハンクは「あっ!」と言って俺の方へと歩み寄り、肩を掴んできた。


「な、なんだ?」


「ナツキ! 二人で冒険者をしよう!!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そこから始まる酔狂士ナツキの物語。


 酔狂士のジョブ固有の能力は他にも……


「えっ!? ションベンしたいのを我慢して、手に意識したらションベンじゃなくて、手から魔法が出た!?」


 酔狂士の効果は……


「う〜ん、アルコールの強さで酔うスピードと、持続力、酔い潰れ度と、酒の種類を混ぜると酔いが回るし強くなるけど、酔い潰れやすい……か」



 ヒロインとは、


「おまえの事は俺が守る!!」

(あ〜酔ってる時にしかこの台詞に説得力がないのが辛い……)


 そして、夜の街では治安を守る頼もしい酔っ払い。

 酒のマナー違反は許さない!


「酒は楽しく飲め! 酒に飲まれる者はこの酔狂士ナツキが許さないっ!!」


 酔っ払いの酔っ払いによる、酔っ払い最強伝説が幕をあける!!


メイン作品を執筆している途中で思いついた設定です!

設定は思いついたけど、なかなかすぐに連載とはいけないと思い、忘れないうちに、気分転換で冒頭部分を執筆してみました!


もし、反響があれば連載時の参考にしたいと思いますので、ご意見、ご感想等ありましたら、よろしくお願いしますm(_ _)m


合わせて、メインで執筆している『魔王だって普通の生活したい! 〜普通を目指してるのにだんだんと普通じゃなくなる件〜』の方も、もし、読んで頂けたら、ご意見、ご感想等頂けたら、嬉しく思いますので、よろしければお願いします!m(_ _)m

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[一言] 「酔狂士」のジョブ、いいですね。作者様がお酒を飲んでいるときに思いついたのでしょうか。設定が変わっていて、とても面白いと思います。 酔っ払っているときにしか何もできない……不遇なようで、そ…
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