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ベゴニア

作者: いたか

ごめん


ちょうど1年前、私に好きだと告白してきた場所で、今日、私は彼に振られた


1年前の私は恋というものにがよくわからなくて、友達の好きだの付き合うだの、振った振られたという話を小説の中の話のように感じていた

友達のことは好きだし、家族のことももちろん好きだ

好きという感情は自分の中にもある割と身近なものだったが、それに恋愛というフィルターを入れると途端にわからなくなった

そんな時に、はじめて私に恋愛感情を持っていると伝えてくれたのが彼だった

私は友達に見えていて私に見えていない世界を見たくて、彼に「はい」とだけ答えた


2人でご飯を食べに行ったり、どこか遠くに旅行に行ったり、メールで他愛のない話を夜遅くまでしていたり、私は友達と何が違うのかよくわからなかった

しかし彼とのそんな時間は楽しいと思った


1年一緒にいたけど、きみが俺と同じ気持ちでいてくれてるのか、わからないのがしんどくなった


付き合っている中で、彼は私によく好きだと言った

抱きしめられるのは、心が暖かくなるような、心に空いていた隙間をうめられるような、そんな感じがした

キスは小説で読んでいたようなメルヘンチックなものではなかった

ただ触れている場所が唇なだけだと思った

それでもこの行為を彼以外とするのは嫌だと思ったし、彼に私以外とされるのは嫌だと思った


きみが付き合ってくれた1年間は、きみにとっても10年、20年後に、ふと思い出せるものかな


そういって彼は私に背を向けた

今思えば、私は彼に自分の気持ちを伝えたことがなかった

彼が伝えてくれる気持ちをただお礼を言って受け取るだけだった

彼にとってはそれは私からの返事にはならなかったらしい

私はほとんど自分の気持ちを、考えていることを、彼に対する思いを、話さなかった

言わなくても伝わっていると思っていた

私といるときの彼は幸せそうに見えたから、それでいいと思っていた

振られた今、私はあまりにも傲慢だったと気づいた


好きだよ


彼の遠い背中を見ながらつぶやいた

彼は振り返ることはなかった

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