93.桜花国記(桜花ーフォルフェバレク条約調印)
アルフィーナが、フォーカナスの赤の魔女である事を知ったフォルフェバレクだったが、とくに態度が豹変したわけではなく表面上は来訪時と同じく変わらなかった。
それでは、条約を締結! とは、いかない。
いくら内密の条約だろうが、国である以上は対面と言うものを気にするモノである。
盛大に開かれた晩餐会、フォルフェバレクの特産品や名物などの紹介から始まりフォルフェバレクお抱えの魔法使い部隊による魔法演習
騎士や騎馬による軍事演習などを見学していった。
これらは、前者が自国の生産力の素晴らしさを見せ付ける事、後者が軍事力の大きさを俺に見せ付けるために行われたのだろうが、すでに我が国で細部まで調査済みなので目新しいものは無くアルフィーナは、食べ物以外に興味は無いと言わんばかりに魔法使いの演習時には、「くだらん」「まだ、この段階の魔法しか行使出来ないのか……」 など辛口のコメントが俺に聞こえる範囲で飛び出し、騎士たちの演習では欠伸をかく始末。
一方で俺は、大学時代各国の文化をフィールドワークで体験してきたので、こういった文化に触れるのは面白くて仕方が無く色々と質問してしまい担当者を困らせるのもしばしばだった。
数日を掛けて各地を見て周り過ごした後、ようやく調印式となった。
もっとも各地を視察していたのは、俺達だけであって外交官は条約内容の再確認など実務をこなしていたので申し訳ない気持ちではある。
「では、条約の取り交わしをお願い致します」
進行役の事務方から声が掛かり、俺とアイリス女王が2枚の羊皮紙に書かれた内容を確認し署名する。
俺は、丸に山桜の飾り絵の上に名前を漢字で書き
アイリスは、フォルフェバレク王家の紋章が飾られた場所に名前を記入した。
「これで条約が締結なされましたわね」
「ええ、王家の存続する限り条約は有効なので、お互いに国を富まし民が恥じる事の無い王たらんとしましょう!」
お互いの証を交換し合い、友好を確かめる様に手を軽く握り合う。
本来だとフォルフェバレク王家では握手はしないのだが、握手の事を聞いたアイリスが是非にとの要請で行った。
「時に……」
「はい?」
「マサキ殿とアルフィーナ様の間には、お子はおられますか?」
突然のアイリスの質問に驚いたが、まあ隠すほどの事も無いか。
「ええ、男子が3人います」
「おぉ! それは、おめでとうございます。 さぞや聡明なお子様なのでしょうね」
「いやはや、嫡男は我が子の事ながらたしかにアルに似た賢い子ですね。 まったく私に似ずによかった」
「ご謙遜を……会ってそれほど時を経ってはおりませんが、マサキ殿の英明は今この時も感じています」
「いや、これは、冗談でも嬉しいですね」
社交辞令とはいえ褒められて悪い気はしない。
ましてや息子が褒められたのだ父親として嬉しい事だ。
「……」
「? どうかされましたか?」
アイリスが急に黙ってしまい気分を悪くしたのだろうか?
「いえ……そうだわ! マサキ殿達が我が国に来て頂いたのですから、今度はコチラからオウカ国へ言ってみたいですね」
「え! 私の国にですか!」
「じょ、女王陛下! お戯れを!」
驚いて声が上ずってしまったが、どうも今の提案はアイリスの突然の思い付きによるモノの様でアルガス以下、フォルフェバレクのお付の者達が慌てている。
「どうでしょうか? ご迷惑とは思いますが……ああっ! たしか軍務卿に聞いたのだけど、マサキ殿は今回の訪問の際、信頼の証として人数を最小限にしたとか」
「ええ、大勢で来ると目立ちますので……」
「でしたら、私共も最小限に致します。 これを持って我が国の信頼の証として頂きたい」
「「女王陛下! 何を仰られますっ!」」
今度は、アルガスのみならず軍務卿のハルダーまで慌てて止めに入ろうと前に出るが、それをアイリスは悠然と手で制した。
「如何でしょう?」
ふむ、別に我が国に来る事は問題ないが……
『どう思う、ポルトナ』
『ハッ!』
俺は、自分の通信を使ってミナを中継して首相のポルトナを直接呼び出す。
すると、外交官の魔素通信から現在の状況を見ていたポルトナから間を置かずにすぐに返事が返って来た。
『……良い事かと思われます』
『そうか』
短いやり取りで内閣の意思を聞き、すぐに意識を戻しアイリスへ向き直る。
「分かりました。 我が国にご招待致します」
「ッ! それは、ありがとうございます。 無理を承知のお願、断られると思いました」
「いえ、確かにコチラだけと言うもの具合が悪いですからね。 仔細については後日外交官達で話し合わせましょう」
「どうぞ、良しなに」
深々と礼をするアイリスにコチラも礼をし「それでは、またオウカでお会いしたいと思います」の言葉と共に条約の式典は終了した。
式が終了したので次のニカナ帝王国へ移動するため一行は来た時と同じ帰路につく。
もちろん、それぞれから別れの挨拶やフォルフェバレクからのお土産を沢山渡されたのだが、まあ割愛させてもらおう。
そして、帰りの船
すぐに迎えは来るのだが、ここで不意にアイリスの突然の申し出を考えた。
おそらくアイリスの思惑は、我が国の国情視察の面が強くあると思う。
もちろん他の面もあるとは思うのだが……それは、あとで話し合う必要があるだろう。
あとは、どの様にフォルフェバレクの女王を迎え歓迎するのか
どの様なモノが桜花にあり、それを見せ付けるのかを……。
そっとも、その辺も含め内閣も承諾したのだから、もうすでに対応に追われている事だろう。
「さてさて、どうしたものか……」
悩んでもしょうがない問題でも、性分で悩まずにはいられない。
まあ、我が国の計画に対する修正は些細なものになるだろうけど……。
何事も計画通りに進まないモノだな。
波に対して揺れが少ない木船で、沖合いへと進む。
「次は、ニカナ帝王国か……」
遠のくフォルフェバレクの大地を望みつつ次の国への準備を進めるのだった。
次回の異世界転送物語は!
ニカナに到着するマサキ
持成される料理の中に、あのお酒が!
マサキと、アルフィーナの運命や如何に!
さ~て、この次もサービス、サービスぅ!
(※予告は過大な物になっているので注意して下さい)




