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91.桜花国記(王と女王)


 王都に着いたらパレードで迎えられる事も無く王城へと馬車は入っていた。


 「申し訳有りませんマサキ様、なにぶん条約締結 《じょうやくていけつ》まで表に出したくないと先方からの陳情だったので……」


 馬車から降り城の中を案内役の先導で移動していると、同行している外交官が申し訳無さそうに謝ってくる。

 自国の王が、何のもてなしも無いまま迎えられた事を気にしているようだが、華美を好まない俺としてはこの方が安心するし問題ないのだ。

 かえって大々的に迎えら得られた方が、緊張してまともに歩けたかどうか分からない。


 「いや、大丈夫だよ。 事情は把握しているし、まずは条約の調印まで無事終わる事に全力で当たろう!」

 「ありがとうございます。 そう言って頂けると心が救われます」


 外交官は安堵あんどの表情をしたが、すぐに厳しい顔付きに戻した。

 これは国同士の話し合いのため、今後何が起こるか分からないため常に何事にも対応するためだろう。


 王城を歩いて行くと大きな広間に案内された。

 装飾品の飾りや絵などが掛かけられているとても豪華な作りをした部屋だ。

 おそらく晩餐会など催し物で来賓を多く招く時に使われる会場なのだろう。


 中に入ると、国の重鎮だろう多くの男性が左右に並び整列して全員が俺の顔を見て驚いているように感じる。

 さらにその中央には女性が立っており彼女がこの国の女王、アイリサルナ・フォルフェバレク陛下だ。


 「ようこそお出で下さいました」


 アイリスがゆっくりと柔らかな挨拶をし迎えると、左右一堂もこの国の礼儀だろう右手を心臓のあたりに当て片足を引いて礼をした。


 ん? そういえばアルフィーナが、初めて母さんと、爺ちゃん婆ちゃんの霊璽れいじに挨拶した時の礼儀作法に似てるけど……まあ、それもそうだな。


 「ご丁寧にありがとう御座います。 桜花国王、素鵞真幸そが まさきです」

 「妻、素鵞アルフィーナ じゃ」


 揃って挨拶を返すと、女王アイリスと一緒に1人の女の子が前に出た。

 女王は堂々としているが、女の子の方は何て言うかオドオドして俺の事を怖がっている様子だ。


 「アイリサルナ・フォルフェバレクです。 お出迎え出来なかった上、何のお持て成しも出来ずに申し訳有りません」

 「いえ、その件については、こちらも了承しているのでお気遣い無用です」

 「その様に言って頂けると、私どもも救われますわ」


 社交辞令でなく本心でそう返すと、アイリスは優しげな微笑をたたえた。


 うん、美人にこういった笑顔を向けられると悪い気になるどころか、かえて場の雰囲気をなごませるな。


 「それと、こちらが私の娘でクリスです」

 「はっ、初めましぃて魔王様、クリスと言います」

 「く、クリス! こちらはオウカ国王様よ!」

 「あっ! ご、ゴメンなさいっ」


 慌てて訂正するクリスに苦笑いになってしまう。


 どうもこの子は、俺が魔王と聖光教から呼ばれていたのを知り怖がっていたようだ。


 「本当に申し訳御座いません」

 「いえいえ、お気になさらず。 その辺の事情も知っておりますので」


 どうも、聖光教の影響力が日増しに強くなってきているようで場が重苦しい雰囲気になる。


 まあ、彼の者達への対策も考えているので問題は無いのだが、どうも息が詰まるので話題を変えたほうが良いな。


 「アイリサルナ陛下」

 「ソガ国王様、どうか私の事は、アイリスとお呼び下さい」

 「しかし……」

 「いえ、私もそう呼ばれる方が、肩肘張らずにすみますので」

 「でしたら、私もマサキで結構です。 我が国の者達もマサキと呼ばれているので」


 俺もアイリス同様、敬称で呼ばれるのは好きでは無いのでお互いに1国を預かる身だが、愛称と殿で呼び合う事にした。


 「では、アイリス殿、手土産を持参したので見て頂きたい」

 「? マサキ殿、失礼ながらその様な持ち物を持っている様に見えませんが……」


 外交官以外は、手ぶらの状態なのでアイリスがそう思うのも無理は無かった。


 「ミナ、頼む」

 「畏まりました」


 ミナが頷くと、相手に警戒されない様、数歩離れた位置にあるテーブルの上に無限収納から手土産を出していった。


 「「「ッ!!!」」」


 アイリス以下、フォルフェバレク側が目を丸くして驚いている。


 おかしいな? アルフィーナの持つ鞄の様に空間拡張が付与された魔道具があるはずだが?


 「我が国で開発した魔道具ですが……どうかしましたか?」


 嘘であるが、問題無いはずだ。


 「いえ、その様に多くの物を入れられる魔道具を見たことが無かったので……」


 どうもこの国にある空間拡張魔道具より圧倒的とも言える量が入っていた事に驚いていたらしい。


 そんな事もないと思うけど……取り出したのは、色取り取りの反物たんものが50たん

 日本刀5ふり、扇子100本、それと各種酒などの嗜好品を10ほどの樽で用意しただけなんだが……やっぱり多かったのだろうか?

 おかしい……持って行く前に確認したけど、誰にも止められなかったぞ?


 「アル、そうなのかい?」

 「うむ、これほどの量は、おそらく王族が持つ魔道具でも無理じゃろう。 私が盗ん……貰った収納式の魔道具もこれほどの量は入らんのじゃ!」


 そうなのか! 言ってくれればもう少し量を減らしたのに……。

 まあ、これも相手を驚かせる外交手段の1つだから誰も止めなかったんだろうな。


 そう考えていると、1人の老人がススッと前に出た。


 「失礼します。 女王陛下よろしいでしょうか?」

 「ええ、良いわ、アルガス内務卿どうかしたの?」


 アルガスが、女王に一礼して質問の許可を得ると、続いてこちらにも平伏した。


 「私はフォルフェバレクの内政を担当するアルガス・ヴァンフィールと申します。 先ほどのやり取りを聞きオウカ国王様の御后様は、魔道具にお詳しい様ですな」


 アルガスの質問に俺がアルフィーナに目を向けると、アルフィーナもまた頷いて口を開く。


 「うむ、私もこの国の周辺にあった王国の生まれでな、そこで魔法や魔道具の研究をしていたのじゃ」

 「なんとっ!」


 アルフィーナがこちらの大陸の生まれだった事に一同驚きザワめく。


 「こっ、これは失礼! こちらのお生まれでしたか……して、そのお国は?」

 「知っておるか分からんが、フォーカナスと言う小さな王国の生まれじゃ」

 「フォーカナス……フォーカナス……フォーカナス! その名は、たしか200年ほど前に我が国の一部になった国ではありませんか!」


 アルフィーナの故郷を知りアルガスは、驚いている様だ。

 それもそうだろう、自国での国難の際に手を差し伸べてくれた国の王妃が、実は攻め滅ぼした国の出身なのだから。


 えっと、たしかアルが魔女と呼ばれだしたのが、だいたい50歳の時らしく100歳の時に出国したから俺と初めて会った時には、魔界で150年ほど過ごした事になるな。

 で、アレから60年過ぎているから……えっ! フォーカナス国ってアルフィーナが出国してから10年で滅んだの?

 よっぽど末期の国だったのか、アルフィーナが抜けた事で国力が衰えたのかは現在調査中だけど……まあ、あっと言う間に滅んだんだな。


 「あの、ええと……御后様は、そのフォーカナス国の末裔まつえいのお方なのですか?」

 「じゃから言ったじゃろ? フォーカナスで魔法や魔道具の研究をしておったと」

 「は? しかし……その……」


 アルガスを含めフォルフェバレクの面々は困惑の表情をしている。

 そうだよね~俺も最初は、信じられなかったもんだよ。


 「たしか、この国が滅ぼす10年ほど前に出国して桜花に移り住んだのじゃ!」

 「は、はあ」

 「当時、身内を全て殺され、それに魔女だの何だのとののしられておったから、あの国が滅んだ事を知った時は、セイセイとしたのじゃ!」


 当時のフォーカナスと言う国が、アルフィーナと身内にして事を思い返し毒を吐く。

 よっぽど苦々しい事をされてきたんだろう。


 「フォーカナス……魔女……ッ! まさか! フォーカナスの赤き魔女!」

 「おお! 知っておるのか! お主なかなかの博識じゃの」


 当時を知る者などもういないと思っていたアルフィーナは喜びの声が上げたが、一方それを言ったアルガスの顔は、汗をびっしょりと掻き青ざめて行くのが一目で分かるほどだった。


 「内務卿、赤き魔女とはいったい?」

 「……」

 「内務卿? どうかしましたか?」

 「……」


 アルガスは、アイリスの声がまったく耳に入って来ないようで呆然としたまま固まっていた。


 「……ハッ! これは、女王陛下、失礼しました」

 「いえ、しかし、どうかしたのですか? その様な表情を今まで見たこと無かったので驚きました」

 「は……、私が幼き頃に祖父より聞いた話なのですが……あっ、祖父も祖父から聞いたと言うのでかなり昔の話になるのですが……」

 「内務卿、その話の前に休憩を挟めましょう。 少し喉が渇いたのでお茶にしましょう」


 アイリスの目配せにより、出迎えの式を終了し場所を移し休憩がてらアルフィーナがいた時代の昔の話をアルガスが始めるのだった。


書いては消し、書いては消しと繰り返したため、文章が変なところがございます。

申し訳ございません。

出来れば修正したいと思っております。


今回から難産な話になり、投稿が遅れがちになります。

合わせて陳謝いたします。

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