86.桜花国記(フォルフェバレク王国)
フォルフェバレク王国
この国は、桜花の東に位置し人口3000万人王国である。
国内の起伏は平野で西に外海へ出る港、東に内海港と大陸を横断する領土を持っている。
北部に大山脈があり、この先に世界最大の帝国 ケルファルト大帝国の領土があり隣接しており絶えず紛争が続いていた。
しかし、いかにケルファルト大帝国と言えどもこの大山脈を超える事叶わず、大山脈の幾つかの地に要塞を築きその領土的野心を虎視眈々《こしたんたん》と狙っていた。
南部には、小王国が連なりひしめき合っているが、そもそもフォルフェバレク王国に領土拡大の野心が無いため、比較的良好な関係を築いていると言えた。
領土面積は、ケルファルト大帝国に次いで世界2位の大きさだが、属国領土など支配地域面積を入れると世界5位の位置にある。
面積はケルファルト大帝国よりも小さいが、簡単には手を出せない相手
いわゆる、目の上のタンコブ、的な存在のフォルフェバレク王国
今、この国の王の冠を頂いているのは、18代目の王であり
フォルフェバレク王国始まって3人目の女王 アイリサルナ・フォルフェバレクがその位に着いている。
善政を敷き国民からアイリスの名で親しみを込め呼ばれ、父祖が築き上げた領地を守り続けていた。
現在33歳の女王
大国である国の女王といえば聞こえは良いが、彼女の人生は決して平坦モノではなかった。
前国王で遠縁にあたる アルフレッド・フォルフェバレクと16歳で結婚、23歳で長女クリス、25歳で嫡男オスカーを授かり幸せな日々を送っていた。
しかし、そんな幸福な人生の中、不幸を突然襲ってくる。
アイリス27歳の時、突如としてケルファルト大帝国がフォルフェバレク王国に大規模侵攻を起こした。
フォルフェバレク王国は、これに対応すべく大山脈に軍を派遣、山岳地帯で激しい戦争になった。
辛うじてこれに勝利する事が出来たフォルフェバレク王国だったが、その戦争で無理がたたり国王アルフレッドを病で崩御
王位継承権を持つ親族は、さきの戦争で戦死あるいは、老齢な者、嫡子が戦死またはいない者ばかりでフォルフェバレク王国の王位が空位になる危機的状況に陥いっていた。
嫡子であるオスカーは、幼過ぎて王位に出来ず
そこで白羽の矢が刺さったのが、アイリスだった。
この時、アイリス28歳
政治にかかわる事も無いと思っていたので政治に疎いと思われたが、彼女は類稀なる政治への才能を有しており、戦火で疲弊した国民への税の配分
戦火により失われた軍の再編成と多岐に渡る難しい案件を処理して行くのだった。
以来5年間、彼女が率先して国を牽引して行く。
もちろん彼女1人が処理して行った訳ではない。
そこには優秀な文官と武官が存在しなければ難しい事だった。
フォルフェバレク王宮
大テーブルの上には幾つもの羊皮紙が並べられ、そこには事細かに何か書かれている。
そして、テーブルを囲んで難しい顔になる幾人もの顔、
部屋の上座に当たる部分には、同じく難しい顔で目を閉じる美しい女性がいる。
彼女こそ、この国の主にして女王である アイリサルナ・フォルフェバレク その人。
今彼女は難しい局面に立っていた。
「では、今年も不作であるのは間違いないのですね」
アイリスの言葉にテーブルに座る男達は、そろって目を伏せる。
今ここで行われているのは、国の重要な案件を決める会議だった。
この時代だとめずらしいが、この国では女王が臨席しての会議が行われていた。
多くの国は、臣下が協議した議案を国王が採決する体制であり、国王が発した命令は有無を言わせぬ決議であり決定事項だった。
そして、さらにめずらしい事が、この会議は女王主導で行われており全員の意見を聞き会議の議案を採決するといった政治体制になっていた。
ゆえに、ここで全てが決まると言っても過言ではないと言える会議をしている真っ最中なのだ。
「はい、その通りです女王陛下」
立ち上がり発言するは、この国の内務卿 アルガス・ヴァンフィール
年齢60歳と、この会議に出席する者の中では一番の年寄りで、痩せており年齢どおりに皺が寄った顔をしている。
しかし、彼がいなければ、この国の内政は覚束無いと言われるほどの知恵を有し女王の片腕として内政を取り仕切り、さらに貴族の中で最大の派閥を率いる侯爵で若き女王の後見人である国の重鎮であった。
そして、その内政力もさる事ながら外交にも長け、本来は内務、軍務、外務の3卿でこの国の政治を取り仕切るのだが、現在は内務と軍務の2卿でアルガスが外務も担当している状況であり、それをこなせる人物であった。
「特に小麦の収穫は絶望的です。 対応として大麦を栽培しておりますが……大幅な減収となる事は明白です」
「今は、税の話をしているのでは、ありません! 多くの国民が飢えに直面している、それが問題なのです!」
テーブルを叩き叱責するように言葉を返すアイリス
その声には、民衆が苦しんでいる時に何を言っているんだ? とばかりに若干の怒気が含まれていた。
これを聞いたアルガスは、それ以上言葉を続けずに黙って一礼して席に着くのだった。
このやり取りを見た列席する貴族は押し黙り、なかには苦虫を噛み潰した顔になる貴族達もいる。
この貴族達は、例年通りの税収を維持、または、増額しようと女王に具申しようとしていた者達だ。
しかし、その具申をする前にアルガスが税について触れ、女王はそれを怒りで返す。
それを聞いた列席する有力貴族も押し黙っているのを見て、もしこれ以上、自分達が税の事を会議で続けるならば女王の怒りを買うだけでなく有力貴族の心象が悪くなると考えられた。
だからこそ、押し黙るしか無く苦々しい表情になったのだ。
しかし、その言葉を投げつけられた当の本人であるアルガスは、気にした様子が全く見られない。
苦々しく表情を作る貴族達にどこか困った表情でいるようだ。
『まったく、困窮する民から税を取り立てれば国外へ逃げるかもしれない、悪くすれば反乱にもなる。 それでは、さらに国内が衰退し北の備えも覚束無くなると言うのを分からんのか? この馬鹿どもは!』
アルガスの心の中では、バカ貴族への誹謗中傷が並べられていく。
こんな貴族は取り潰したいと思う所だが、アルガスと言えど簡単に貴族は潰すわけには行かない訳があった。
それは、先の戦争で失った貴族の穴埋めだ。
そもそも、先の戦争で死んだ貴族のその多くが優秀であった。
しかし、その後継である跡継ぎも優秀であるか? と言われればそうではない。
今回の様に馬鹿な考えを持つ者も居るからだ。
中には、コレはと思える人材も居るが、その多くがまだ若く発言力が弱い。
だからこそ育てて行きたいと考えているアルガスだが、そうも言っていられないほど状況だった。
北のケルファルト大帝国が軍備を整え再侵攻の兆しがあると、情報が入っていた。
しかも、ここ数年の不作によりフォルフェバレクは税の減収が続き、民も飢えを我慢するほどだ。
飢えては、働く事もままならないので貿易で小麦を輸入しようとしたところ、北にある諸国群は、こぞって小麦の輸出を絞っていた。
フォルフェバレクと同じく不作であるのなら仕方ないが、豊作である国も同様で絞っている。
これを見ると正確な情報をまだ掴めていないが、どうもケルファルト大帝国が裏から手を伸ばしている可能性が高いと、アルガスは考えていた。
ゆえに簡単に貴族を潰すわけにも行かず、かと言ってバカ貴族の暴走も止めなくてはならない。
だからこそ、各有力派閥と示し合わせ今回の発言に至っていたのだ。
最大派閥を率いていて、しかも内政の長であるアルガスが税について女王から叱責を受け意見する事も無く下がた。
これは、アルガスが納得したと言う体を見せた事と、これ以上税について言うなよ! 暗に示していたのだ。
この様に内政を回す知力の速さと、貴族の派閥調整を事も無く出来るアルガス
そんなアルガスが、なぜ若き女王に付き従っているか疑問に思うが、これは女王の父がアルガスの親友であり、祖父が敬愛する人物だった事
それにアイリスの事を幼い頃、それこそ生まれた時から知っており家族ぐるみの付き合いである事
アイリスの祖父と父親が、先の戦争で亡くなり、また、結婚相手の国王も崩御しアイリスを守る者が少なくなった事が、女王の後見人であるアルガスの行動原理となっていた。
『必ずやアイリス様を守り、そしてオスカー様成人の暁には……』
その熱い思いを胸にアルガスは、女王のために国の内政のみならず外交に力を入れてきたのだった。
「失礼!」
そこへ1人の人物が手を挙げる。
何者! とアルガスは手を挙げる人物にギロリッと目を向けるが、すぐにその人物が誰なのか分かった。
「どうぞ、ハルダー伯」
女王からの許しを得て立ち上がる男
彼こそフォルフェバレク王国の国軍を一手に与る軍務卿であり、千軍万馬の戦上手として他国に知れ渡る将軍 バルト・ハルダー伯爵だ。
その形は、大柄で筋骨隆々な身体つき、肌は日焼けし色黒で髪も黒く後ろに纏め上げ、口元の髭もあいまってまさに中世の将軍と言った感じだ。
先の戦争でも将軍として参戦、数多くの武功を上げているが、多くの兵、多くの将軍を失いさらに肝心の国王を病で失うなど結果はあまり良いものではなかった。
このため生き残った事に責任を感じたハルダーは、伯爵を嫡男に譲り自身は隠居しようと考えたほど義理堅い男であった。
ハルダーは、すぐに女王(まだ王妃)アイリスに謁見、彼自身の進退を伝えようとした。
しかし、彼女から出た言葉は
「此度の戦で多くの者を失いました。 それなのに生きている者まで去ろうと言うのは、死んでいった者達に何と言い訳する気ですか? 責任をお感じなら彼らの分も働くべきではないのでしょうか? 私はそうします」
この時、アルガスなどからアイリスに王位に着くように強い要請があり、巷の噂になっていた。
もちろんハルダーもこの噂を聞いていたので、先ほどの言葉の意味と女王の決意がどの様なものか痛いほど伝わってきた。
『このお若い王妃様が、ここまでご決意なさっている。 私はなんと愚かなんだ……』
深く自分を戒めると、
「承知しました。 この身粉骨砕の覚悟で努めます」
アイリスに深々と頭を下るのだった。
そして、そんなハルダーにアイリスは女王になるとすぐに軍の統括である軍務卿を任せるのだった。
「王国の食糧難は重々承知してます。 しかし、このままだと北方守備にも影響が出てケルファルトが侵攻してくる可能性が高いと考えられます。 その辺りもご考量頂くようお願します」
短い言葉ながら、王国が弱みを見せれば、すぐにケルファルト大帝国が南進してくる。
だからこそ税が減収でも、その使い道に注意が必要だ! と暗に含んだ内容だった。
「ええ、伯の言うとおり、守備隊及び北部の港町の重要性は承知してます」
アイリスは頷いて皆に聞こえる様にハルダーに返すと、ハルダーは恭しく頭を下げて着席した。
彼女もハルダーに言われるまでも無く、ケルファルトの動きを注意していた。
ただ、こういった事は心の中で分かっているだけではダメで、言葉で伝える事で他の者への安心を買う事が出来る。
つまり、今回のハルダーの言は、女王は軍にも気を配っている事を周囲に伝える役目にもなったのだった。
これについてアルガスや他の貴族も承知していたのでハルダーの進言を殊更に咎めるような事をしなかった。
ただ、ここに誤算が生じる。
先ほど増税を進言しようとした貴族達の事だ。
彼らは、有力貴族達が前もって談合して決めている中ハルダーだけが、ただ1人自分の意見を述べたと思ってしまった。
別にハルダー自身そんな事を思っていた訳ではないが、不平貴族にはそう聞こえたのだ。
この事は、後に多くの不平貴族がハルダーの周りに集まるようになりハルダーを悩ませる原因となるのだった。
会議も終了し退出しようとしたアルガスとハルダーだったが、アイリスから突然の呼び出しがかかり王宮広間へと移動するのだった。
政治体系考えるの難すぃ
アイリスの子供の年齢修正
変更前 変更後
クリス 14歳 10歳
オスカー 9歳 5歳




