表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/124

74.桜花国記(混じりモノのエルフ族)


 少女を抱えながらエルフ族の集落に着くと、辺りは騒然としていた。


 「カッ、カグラ! 無事じゃったか!」


 エルフ族のご老人が慌てて駆け寄ってきた。


 俺は、そのご老人が誰なのか分かっているので慌てる様な事は無い。

 事前の調査資料でこのエルフのご老人は、ここエルフ族の集落の長の1人。

しかも、巫女族の家系のエルフ族の人だ。

 たしか、子供達からは大爺と呼ばれていると、資料に書いてあったな……。


 見た目は、ルトールと同じくらいだが、エルフの見た目は人のそれと違い年齢は正直良く分からなかった。


 「今は、疲れと腹部への打ち身で意識を失っているようですが、怪我は無い様ですよ」


 眠る少女を奪い取ろうとする勢いのご老人を落ち着かせるため、あえて少女の無事な顔を見せ落ち着かせる。


 「バカモノが……心配させおって……」


 少女が寝息を立ってて眠るのを見たご老人は、先ほどよりは落ち着いた様子で少女の無事に今の心境を吐露とろした。


 「先ほどダークエルフの方から聞きました。 孫を助けて頂き何とお礼をしたら良いか……」


 だいぶ落ち着いたのかご老人は頭を下げるのを止めてくれた。

 しかし、その表情は、とても複雑な顔付きをしている。

たとえると、苦悶の表情と言ったら良いだろう。

とても複雑な顔付きだ。


 そして、俺は、このご老人の複雑な心境は良く分かっていた。

 彼ら髪の色が金髪でなかったり肌の色が違うエルフ達は、ここ大エルフ皇国のエルフ達より混じりモノと言われ、ずっと同じエルフなのに忌避され蔑まれてきた。

 国に居場所が無く国を追われた彼らに更に追い討ちを掛けたのが、人族の奴隷狩りだった。

 老若男女関係なく人族にさらわれていった中間達

 それら人族より逃げて逃げて住む場所まで追われた彼らは、この様な人が住むには厳しい環境まで来てようやく集落を築けたのである。

 そんな住む場所を取り、ましてや自分達を狩ってきた人族に頭なんか下げて礼をしているのに思うところがあるのは当たり前だ。


 一応、前もっての接触で我が国の事情は知っていると思うけど、長年のうらつらみをすぐに氷解させるには、もう少し時間を置かねば難しいものだろう。


 「っと! 自己紹介が、まだでしたね。 私は、ここより遠く離れた皆様が魔界と呼ぶ国、私共は桜花国と呼んでいる国の国王をやっています素鵞真幸そが まさきです」


 丁寧にゆっくりと、相手に失礼がない様に更に低く頭を下げたあと、まっすぐ相手の目を見て自己紹介をする。

 先ほどの説明にもあった様に人族に1つ思う所がある相手の気持ちをおもんぱかっての行動だ。


 「は……はぁ、あ! いえ、私は、この集落の長の1人でカドラと申します」

 

 おそらく今までにこんな態度を取った人族に会った事がないのだろう。

 ご老人は、少し唖然となったが、すぐに姿勢を正し挨拶した。


 「それと、こちらのお嬢さんを……あれ?」


 ご老人……いやカドラ氏に右手で抱いている少女を渡そうと持ち上げると、同時に俺の胸が引っ張られた。

 おかしいと思い胸元を見ると、少女の左手が俺の胸元の服をシッカリと握られていた。


 「よっ、はっ」 と服を引張り何とか放そうとするが、この子のどこにこれほどの力が有るのだろうか一向に握られる服が離れる様子がない。

 もっとも起こさない様にしていたから、それほど力を入れる事が出来ないのだが……。


 困り果ててカドラを見ると、スヤスヤと眠る孫の様子に目じりがやや下がっている。

 ひょっとして爺バカ?


 「……ん……んぅっ」


 そんなこんなやっていると、服を引っ張った振動か分からないが少女が身動みじろぎして目蓋まぶたがゆっくりと開いていく。


 「……」

 「……」


 少女は、眠りから覚め目を開くと、そのまま固まってしまい。

 かく言う俺もどうしたものか、考えを巡らせていた。


 「……あ」

 「ああーーーーーーー!!」


 少女が口を開き何かを言おうとした時、別の方向から幼く甲高い声が響き渡る。

 見ると、腕の中の少女よりも若干幼い幼女が、少女と俺と指差して叫んでいた。


 「ヒメさまーーーーーっ! 人族が! ヒメさまを放しなさい!」


 急に幼女が走り寄って来たかと思うと、俺の事を叩いたり腕を引っ張ったりしている。

 叩いてもポカポカと効果音を付けたくなる位に痛くも痒くもない。


 「んぐーーーーっ! 大爺さま、人族がヒメさまをさらおうとしてる!」


 何を勘違いされたかと思ったらこの子は、どうやら俺が奴隷狩りの人族だと勘違いしているみたいだ。

 それに加え俺の腕をグイグイと引っ張るが、幼いゆえかそれとも力が強くないからか、腕を引っ張られても少しも動く気配が無い。


 「これこれ、ウルタ」


 そんな幼女に絡まれる俺を見かねてカドラが、幼女を両手で持ち上げて放す。

 カドラの手の中で今も暴れる幼女に苦笑いしながらカドラを見ると、同じく苦笑いのカドラがそこにあった。


 「はあ、この子はウルタと言いまして、カグラが帰って来なく心配していたようで……それにカグラの事になると周りが見えなくなりまして」

 「ほう、それは……しかし、幼いながらもシッカリしてますね」

 「まあ、その……赤子の時よりいつも一緒でカグラの事を姉の様に慕っていまして……」


 それで俺の腕の中に少女がいるのを見て暴走しているらしい。

 お互いに孫の様な子供達の存在に強く出れずに困っていると 


 「やめなさいウルタ!」


 俺の腕に抱かれた少女カグラが、暴れる幼女ウルタを注意する。


 「この人は、奴隷狩りから私を助けてくれた人です。 無体な事をしては、なりません!」

 「ひ、ヒメさまーー」


 カグラの一言でウルタは、心配し過ぎたせいか目から大粒の涙が現れた。

 それと同じ時だったか、


――グキュゥゥゥ~~~………………


 2人のお腹から盛大な音が聞こえた。


 緊張の糸が切れたって感じかな?

 お腹が空いてると、力が入らないよね。


 先ほどウルタの力が殆ど無かった事と、カグラも含め体重が普通の子供より軽く感じる。


 無限収納にすぐに食べれる物あったかな?


 子供達に食べさせる物を無限収納から探す。


 何か無いか、何か無いか……そうだ! ここへ来る前にタイ焼き焼いたんだ!


 焼いたタイ焼きを思い出して、無限収納から取り出す。


 「はい、お腹空いてるなら食べなさい。 甘くて美味しいから」


 気皿に並ぶタイ焼きを2人の前に差し出す。

 2人は、何も無い空間から出現したタイ焼きに驚きを隠せない様子だ。

しかし、そのタイ焼きから放たれるこうばしい匂いと甘い香りに目が釘付けになっている。


 カグラとウルタは、タイ焼きと俺の顔を交互に見ているが、一向に手を出そうとしない。

 何故だろうと? と思うと、カドラが「大丈夫だから頂きなさい」の小さな声で言うと頷いた。

 ウルタが両手で2つのタイ焼きを、カグラは右手で1つのタイ焼きを(左手はいまだに俺の服を掴んでいる)掴むと、ハフッと可愛らしい音を立てて頬張った。


 「あっまーーーーーい」


 と、ウルタは叫ぶと、夢中でタイ焼きを口の中に押し込めて行く。

 子供らしい反応に不思議と目じりが下がる。

 まさに作った甲斐があると言うものだ。


 一方カグラに目を向けると、頬張ったタイ焼きを不思議そうに見ていた。


 「もしかして、嫌いな味だったかな? 他にも色々な味があるから、そっちも食べてごらん?」

 「……う、ううん、甘くて美味しい……それに不思議な香りがする」


 不思議な匂いにタイ焼きを見ると、カグラが選んだタイ焼きは桜餡のタイ焼きだった。

 まあ、たしかに不思議な味と匂いかもしれない。

 

 「……美味しい……お母さまにも食べさせたい……あっ! お母さま!」

 「お母さま?」


 タイ焼きを握り締めたまま慌てた様子のカグラに、祖父のカドラの方を見る。


 「ええ、私の娘……この子の母親のカーナが、妊娠してまして……その、どうも体調の方が思わしくなく」


 カドラは、そこまで言うと眉を寄せる。

 そう言えば、この子が外に薬草を取りに行ったのは、母親の体調がすぐれないためだ!


 「もし良ければ、見せて頂けないでしょうか、私と共に来た者に医者の知識が有る者がいます。 もしかしたら、お力になれるかも知れません」

 「あイヤ……しかし……」


 いまだ俺達を信じることが出来ないのだろう。

 カドラは言いよどむ。


 「お願します。 お母さまを助けてください!」


 その声はカグラだった。

 クリッとした大きな瞳をまっすぐこちらに向け懇願する。

 そのカグラの真剣な表情に祖父のカドラも肩の力を抜き頷き。


 「どうか娘を、よろしくお願します」


 と頭を下げた。

 それを聞き1つ頷くと、一緒に連れて来た医療班を呼ぶんだ。

 もちろん女の衛生兵で桜花でもめずらしい多腕族たわんぞくの女性だ。


 カドラの先導でカグラの母親であるカーラがいる居住区へ移動する。

 カグラの表情は、早く母親に会いたいという表情と心配の表情が入り混じっているようだ。


 しかしなんでこの子は、俺の服から左手を離してくれないんだろう?


 疑問に思ったが、まあ重い訳でもないので抱えたままでいる事にした。




 案内された先は、集落の最奥

 山の横穴を利用した洞窟だった。


 その家の洞窟の入口には、2人のエルフの男が厳しい表情をして入口の両脇を固めていた。


 この村には、男のエルフが少ない。

 いや、調べた限りでは、他の集落を含め全体的に男性の比率が少ない統計が出ていた。

 そして、その原因は、人族にある。


 エルフ族の集落のみならずこの地方では、昨年大規模な人族による奴隷狩りが行なわれ男達は、戦って命を落とすか奴隷として連れ去られるか被害にあっている。

 そして、この時にカグラの父親は、自分の妻や娘を守るため戦いその時に命を落としていた。

 そのため以前集落があった場所を捨てこんな僻地へきちに移動せざるえなかったのだ。


 「おっ、長! それに姫様までもっ!」


 門番の男達は、誰か近づいて来た事に警戒していたが、長であるカドラの顔を見た途端一瞬気を抜いたが、その後に俺が付いて来たのでの男達は溢れ出んばかりの殺気を出して弓と槍を構える。


 まあ、人族なら警戒するよな……。

 ルトール達エルフ族から話は聞いてはいたが、どうやらエルフ族は子供の出産率が悪くめったに子供が生まれないらしい。

 そのため妊婦や子供を集落全体で大事に大事に守っている。

 だから長の後から子供を抱いた人族の俺が現れた事にひどく警戒している……いや、もしかしたら人質を取って長に案内させていると勘違いしているかも知れない。


 「待て待て、この方は話をしたであろう国の王様じゃ、人族だが警戒することは無い」

 「しかし!」

 「これまで度重なる食糧を送ってくれたのは、この方じゃから安心せい」

 「しかし、人族です!」

 「分かっている。 見てみい、この方は武器すら持っておらず1人じゃ、それにカグラも安心して食べ物食べているじゃろう」


 そんなカドラの説明に男達は、どこか納得できない表情をしている。


 まあ、そらいくら言葉を重ねていたとしても急に現れた人族を信用しろとは無理な話

 さて如何どうしたものかな……ふむ。


 「カドラさん、念のため槍のかたを護衛として一緒に来てもらいましょう」

 「ですがそれは、我々があなたを信用していない証拠、それでは長としての面目が……」

 「まあ、すぐには無理でしょう……そんな事よりこの子の母親が心配です。 先を急ぎましょう!」

 「は、はあ……聞いたなウルト、ヒクライア、ウルトはこのまま門の守りを続け、ヒクライアは一緒に来い」

 「はっ!」

 「……くっ!」


 ウルトは納得出来ないといった表情で、反対にヒクライアは油断無く俺の後ろに付く。

 後ろに付いたのは、もし万が一の事があれば躊躇無く槍で刺し殺すつもりだろう。


 「では、こちらです」

 「はい」


 洞窟の中に入っていく。

 洞窟内部は、なぜかホンノリと明るく、それにジメついた感が無い。

 気温も熱くも寒くも無く、どちらかと言うと過ごし易い感じがした。


 「カーラ、入るよ」

 「……は、い」


 洞窟の置くには、扉で仕切られた部屋がありその扉の前でカドラが声を掛けると、中から苦しそうな返事が聞こえた。

 扉を開け中に入ると、中は香をいた様な良い匂いが漂い。

 中央でワラの上に敷物を敷いた簡素な別途の上に女性が寝ていた。


 「……お、父様……それにカグラっ! どこに行っていたの! それに……ひっ、人族……つぅっ!」


 女性は額に汗をかき苦しそうにしていたが、俺の事を見るや否や目を見開き勢い良く体を起こそうとしたが、どこか痛みがあるのだろう顔を歪ませて起きる事が出来なかった。


 「あ、いや、そのままで大丈夫だよカーラ。 この方は、前に話をしたオウカを言う国の王様じゃ、人族じゃが心配する事はない」

 「そ……そうですか……すいません、失礼な事をして」


 カドラは娘の身体を思ってそのまま横にさせる。

 女性も俺の事を聞いていたのだろう、若干恐怖が残っているが素直に謝った。


 「いや、こちらこそ驚かせてしまって申し訳ない。 ほら、お母さんの所へ」


 恐怖の残る女性と警戒を解かない後ろの男性にこちらから近づく訳にはいかず少女を下ろすと、少女は真っ直ぐ母親の元に走っていった。


 「お母さま」

 「カグラ、遠へ行ってはダメって言ったじゃない……心配したんだから」

 「ゴメンなさい……お母さまに薬草持って来たくて……でも、持ってこれなかった」


 少女の今にも泣きそうな顔を見た女性は、怒った表情でなく優しげな微笑をたたえながら「良いのよ」 と言い片手で少女の頭を撫でる。


 「お母さま、コレあの人から貰ったの、甘くて良い匂いの不思議な食べ物なの」

 「あら、本当に良い匂いね」


 少女が差し出した物をそのまま少女に返し、女性は俺に目礼で感謝を述べる。

 俺の方も大した事では無いと、軽く首を振り応える。


 「マサキ様、そろそろ」

 「ああ! カーラさん、こちらは私と一緒に来てくれた医師でカーラさんの状態を観たいのだが構わないだろうか?」

 「は? お医者様? あら、多腕族なんて何百年ぶりかしら」

 「はい、その痛みの原因を診察したいと思います」


 隣の多腕族の衛生兵も優しく微笑むと、その微笑みが影響したか先ほど俺を見た時の恐怖が和らいでいく。


 なんか俺、悪者みたいだな。


 「……分かりました。 よろしくお願します」

 「はい、では、診察をしたいと思います」


 カーラは彼女が診断する事を受入ると、衛生兵の女性は俺に目配りしたので俺は頷くと


 「どれ、ここは女性だけで男は外で待ちましょう」

 「そうですな、カーラの事よろしくお願いします」

 「お任せ下さい。 痛みの原因をすぐに見つけます!」


 その言葉を聞き男であるカドラと俺、それに警護のヒクライアの3人は部屋を後にする。

 どうやらヒクライアは、人族で男の俺以外はカーラに近づくのは問題ないようだ。




 少女は、男達が部屋を退出して行くのを見つめ、そして自分の左手がどこか所在無さげな感覚を覚える。


 「……?」

 「どうしたの? カグラ」


 母親に問われたが、自分でも良く分からない少女は、「分かんない」 と言ってタイ焼きを1口かじる。

 その甘くて不思議な香りに心が暖かくなるカグラだったが、何だかチクリと胸が痛い様な不思議な感覚がした。


 「じゃあ、診察しますね。 この器具を使いますが、痛みなど無いですから安心して下さい」

 「はい……こちらの薄くて透明な四角いのは?」

 「モニターですね。 この機械を使ってお腹の中や子供様子が見れるんです」

 「お腹の中を! 見る!」


 自分のお腹の中を見るなんて想像できない女性は、お腹を切り開くのかと恐怖したが先ほどの説明で痛く無いと言われたので混乱してします。


 「ええと、我が国の魔法、魔道具なので安心して下さい」

 「は、はい……あの、大丈夫なんですよね?」

 「もちろんです! 母子共に傷つけたりなんか致しません!」

 「は……はあ、お願します」


 豊満な胸をドンと張る多腕族の女性にカーラは、半信半疑ながらも自分でお願いした事と腹をくくる。


 「では!」とお腹にかかる衣服をズラし器具を当てると、モニターに本当に小さなエルフの赤ん坊が映る。


 「ッ!!!」

 「わあ! 赤ちゃんだ!」


 そして、母親の感情に呼応する様にモニターに映る赤ん坊もピクピクと動いた。


 「こ、これが、私の赤ちゃん」

 「そうです。 赤ちゃんの成長に問題は無さそうですね。 おっ! 男の子ですね、おめでとうございます」

 「そんなことまで分かるんですか!」


 今までは、予言以外で生まれてくるまで男女の判断が出来なかったのでカーラは、生まれてくる前に男の子と分かった事に驚く。


 「ええ、ここに付いてるのが見えますよ」

 「あっ!」

 「?」


 モニターの映像には、アレが小さいながらもハッキリと映った事にカーラはやや頬を染めながら納得し、カグラの方は何の事か分からず首をかしげる。


 「ふむ、成長は問題なしと言う事は………………ッ!!!」


 器具を操作しモニターからお腹の状態を見ていた女性医師は、眉間に皺を寄せ真剣な顔つきに変わる。

 その様子に一抹の不安を覚えるカーラ

 カグラは、そんな事に目もくれずにモニターもかじり付いていた。




 「なるほど、ルトールはこの集落の他の長に挨拶してくれたんだね」

 「はい、なお、他の集落へは、別の部隊がおもむいてますが、こちらの長が説得に当たってくれるそうです」


 部屋を出ると、ルトールと救出部隊の体長達が待っていた。


 「ダッ、ダークエルフ!」


 ルトールの姿に最後に出てきたヒクライアが驚きの声を上げる。

 どうやらダークエルフを見たのは、初めてだったらしくビックリしてしまった様だ。


 「ほっほっほ、外の者も同様に驚いておったわ!」

 「すいません、話には聞いていたのですが……」

 「気にすることは無いよ若いの……ダークエルフは、桜花以外で殆ど残っておらんからのう」


 寂しそうにルトールは言う。

 桜花の詳細な調査によってルトールと同じダークエルフは、世界中にまだわずかに生活している事が分かった。

 しかし、その数は、人族以外の種族全体でも少なく混じりモノと称されたエルフ族より遥かに少ない数だった。

 その残り少ない同族の事を思ってだろうルトールは、この移住計画に率先して尽力していたのである。


 「体長、他の部隊は?」

 「ハッ! 全班担当の集落に到着し説明と食糧など物資搬送に良い場所の選定にあたっています」


 いままで救援物資を集落に送るのに、その集落の人に持たせて運んで貰っていた。

 これは、その集落にいらぬ騒動をもたらさないためと、こちらを信頼してもらうために行なってきたからだ。

 しかし、人の輸送には限界があり、その集落全体に配るだけの物資には程遠いものだった。

 なので今回は、物資搬送に隠密性が高く垂直離着陸が高い輸送機を使う予定だ。

 見た目は、オスプレイに近いがティルトローターの部分が桜花国で独自開発した噴流式魔道具になっている。

 なぜ、こんな形式になっているかと言えば、プロペラの回転による風切り音を防ぐためとモーター回転の駆動音を低減させるためだ。


 もっとも噴流式にしたからと言って無音航行が、出来るわけでは無いんだけど……。


 そして、今その輸送機は、空母赤城から順次発艦して各集落の上空で待機している。

 これは、こちらで勝手に着陸場所を決めるのではなく集落の希望に沿って、また、不要と言う集落があった場合の対応だ。

 他の集落に行った部隊は人族以外の構成になっている。

 もちろん、ここエルフの集落も俺以外は獣人族などの構成になっている。


 まあ、相手に配慮を重ねる事が大事だからな……でもな……はぁ……。


 昨年のここエルフの集落に対する人族の行動を俺はいていた。

 世界中に散らばっている種族が多すぎて、そこを狙う人族の行動に中止出来ていなかったのが原因だった。


 でも、皆頑張ってるから何も言えないんだよな。


 少ない人員とAIの手助けで出来るだけ頑張ってはいたが、やはり抜けはあった。

 どうしようもない事など、この人生の中でいくらでもある。

 でも、俺の中では、何とかなったのでは? と言う言葉がいつまでも俺の胸にモヤモヤと残っていた。


 はあ、堂々どうどうめぐりしても仕方が無い。

 もっと情報を集めるようにしてその分析もシッカリ出来る組織を構築しないとな……。


 俺が、桜花の応報分析能力を向上させる事を決意した時、カーラの診断を行なっている部屋の扉が勢い良く開け放たれた!


長いのでカット

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ