65.桜花国記(暇乞い)
桜花国歴13年6月
アルフィーナのお腹もだいぶ大きくなり、胎動も活発になって着ている気がする。
最近では、お腹に耳を当てて赤ちゃんからの、元気だぞっ! という動きを俺とチョコは楽しんでいた。
真白や夜空達も少し遠慮気味だが、胎動を感じたいとアルフィーナに頼みに来る事もあるらしい。
もちろん、それだけではない。
生まれる前の準備として、着る物からベビーベッドにベビーカーの大物から、哺乳瓶やオムツなど小物も徐々に取り揃えている。
どうも俺が選ぶ品々は、配色が地味みたいで購入を許可される事が少ない。
まあ、カラフルでオシャレな物は、女性陣で選んでくれれば良いと思っているので問題は無いだろう。
ちなみに俺とアルフィーナのセンスに差が、ほとんど無いため彼女が選ぶ物にも待ったが掛かる事もたびたびある。
アルフィーナからは、「マサキより、マシじゃ!」と言っているが、どうだろう?
と、アルフィーナや我が家の近況はこんな感じだ。
そんな賑やかな我が家を離れ、俺は今日も政務に励んでいた。
「へ~、これが、我が国の勲章かぁ」
机の上に並べられた勲章を手に取り眺めつつ、感嘆の声を漏らす。
今もって持っている勲章は、11月の憲法施行に合わせて行なわれる秋の受勲式用の勲章だ。
ここ桜花では、まだ国として勲章や表彰を国民にした事が無かった。
まことに遺憾な事だが、いい訳をすれば、新たに桜花国民になった者達への対応と、各地方の開拓と開発
教育と就職などに駆け回っていた事と、今後国会が出来れば承認されるだろう各省庁の設置などと、やらねばならぬ事が多くとてもそちらに手を回す余裕が無かったためだ。
建国時の国の運営とは、これほど大変なものかと改めて思うほど大変なものだった。
それに加え、俺自身も結婚をして今度は父親になる。
そう言った個人的な事情もあり俺自身もそちらに気が回らなかったのは反省するところだ。
こういった事情も踏まえた上、今度の憲法施行、そして俺がこの世界に来た日と秋にその様な出来事が重なったこともあり、ちょうど良い機会と言う事で今回の受勲式が企画された。
そして執務室の机に今並んでいるのは、序列1位から9位まであり、1位から3位までが1種類、4位が4種類、そして5位から9までが3種類に分かれているので計22個もある。
ただし、序列4位から9位で女性限定に送られる物は桜花の王族か、他国の王族に送られる予定なので一般受賞出来るのは、16個の内になる。
形の方は、第1位が首にかけるタイプの頸飾で後は、綬章、勲章と様々《さまざま》だ。
「今回序列1位と2位は、マサキ様が受賞いたします。 他、4位の女性限定最高章は、奥様である魔女様に渡される予定になっています」
今回勲章の製作を依頼したのは、ドワーフ族の女性、埋忠アルダ
彼女は、鍛冶師であり一代で鉄鋼業の大手企業を運営するドワーフ族の埋忠ロドルクの奥さんだ。
「ああ、そうだったね」
俺とアルフィーナだけが、この国の王族なのでさぞ最初に渡さなければ国としての格好が付かないらしい。
正直、貰わなくても良いんだけど、そう言う訳にはいかないみたいだ。
ほかの14個についてもこれから選考を開始する予定になっている。
――トントン
「マサキ様、よろしいでしょうか?」
綺麗な輝きを持つ勲章を眺めていると、扉のノックのあと一礼して入って来たのはアクサだ。
当初、一緒に勲章を見ようと誘ったのだが、今日は予定があるとかで室外で待機していたのだが、一体どうしたのだろうか?
「はい? どうしたの?」
「ジェナートとフォートルが、挨拶に来ています」
「へ~、ジェナートとフォートルが……」
この執務室で会う時、ジェナートなら前もって予定を入れるので急用かな? それにフォートルも来ているって? なんだろう?
「いいよ、入ってもらって……ああ、アルダすまないが」
「はい、すぐに片付けます」
予定に無かった事なのでこのまま勲章を置いておく訳にはいかないのでアルダに声をかけると、すでに粗方の勲章を収納していた。
早い!
「「失礼致します」」
机の上の勲章が片付け終わりアルダが一礼をして退出すると、入れ替わりにジェナートとフォートルが入ってきた。
「2人揃って急だったけど、どうしたの?」
久しぶりにフォートルに会う事もあり、2人へ向き直ると俺は息を呑んだ。
「はっ、本日はマサキ様にどうしても父が、挨拶をしたいと言いまして……」
ジェナートが悲痛な表情を作る。
それもそうだろう隣にいる父親のフォートルは、半年前と明らかに違い見るからに痩せていた。
「マサキ様、久しく会えずに申し訳御座いませんでした」
「いや、こちらも会いに行かずに悪い事をした」
杖を突き謝罪をするフォートルにいつもとは違う雰囲気を覚えすぐに姿勢を正す。
「いえいえ、憲法の公布に外国への工作開始とお忙しいみぎりです……それに魔女様のご懐妊の報せに大変喜んでおりました」
やせ細っているが、フォートルは喜色満面の表情を作って語る。
「それと、私が歩けるうちにマサキ様にお会いしようと思っておりました」
「何を馬鹿な事を……」
フォートルの言葉を否定しようと口を開こうとすると、フォートルの表情はとても穏やかな笑みをしていたので、それ以上続ける事ができなかった。
「マサキ様から休養を頂き治療に専念したのですが、どうもこの病、医師から難しいとの事でした」
「……」
「療養し復帰したいと思いましたが、どうも無理そうなのでここに最後のご挨拶に訪れました」
ジェナート達家族からも色々と言われているのだろう。
しかし、フォートル自身心の中で決めた事、これ以上の言葉はかえって失礼になる。
そうフォートルから感じ取った俺は、1つ感情を飲み込みフォートルの事を真っ直ぐに見つめ。
「……そうか、私がこの世界に来て13年、フォートルには色々と世話になった」
「滅相も御座いません」
「前にも言ったが、フォートルの仕事は息子ジェナート、それに孫のポルトナが務めている」
「はい、息子は、まだ頼りない部分が御座いますが、マサキ様のお役に立っている様でなによりです」
「あとは、ゆっくりと休んでくれ!」
「……ありがたきお言葉……感謝に耐えません」
フォートルの手を握り今まで尽くしてくれた事に感謝をすると、フォートルの目から数滴の涙が流れ床を濡らす。
俺も目の奥に熱い物を感じ、フォートルの手を一層強く握り締めた。
フォートルが挨拶を終えジェナートと共に退出すると、俺は椅子に深々と腰を下ろし天を仰ぐ。
まだ部屋に残っていたアクサに目を向けると、アクサも沈痛な面持ちのままだった。
アクサも事情を知っていたのだろう。
だから、フォートルが歩けるうちにと今回の面会を急いでセッティングしたんだな。
「アクサ、フォートルの病気は?」
「はい、ジェナートから聞きましたところ癌だと……」
「手術は?」
「……難しい場所で……それに数箇所にあるそうです」
手術が難しければ抗癌治療になるけど、それも数箇所あるとなると……難しいな。
「はぁーー、言ってくれれば駆けつけたのに」
「魔女様のご懐妊でマサキ様には大事な時期と、フォートルとジェナートからキツク言われていましたので……」
アクサは、申し訳無さそうなそうに応える。
別にアクサが悪い訳ではなく、俺自身が浮かれ過ぎた事も要因のひとつかもしれない。
「フォートルは暇乞いに来たんだね……」
その日の夜にアルフィーナ達にフォートルの事を伝える。
母体の事も気になったが、隠すよりも言っておいた方が良いと考えたからだ。
悠久の時を生きるアルフィーナは、こういった場面を数多に見てきたのだろう。
アルフィーナも 「そうか」 の一言でそれ以上何も言わなかった。
ただ、その夜は寂しげに身を寄せてくるのだった。
急いで書き過ぎて文脈・文法が酷過ぎです。
すいません。




