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61.桜花国記(国外の課題)

 桜花国歴13年4月


 アルフィーナの方は、だいぶ安定してツワリも治まり体調も戻ってきた。

 それでも自分の初めて子供と言う事で何かと心配になりアルフィーナに確認してしまっている。


 「アル、体調の方は大丈夫かい?」

 「大丈夫じゃ、お主も心配性じゃのう」


 アルフィーナの方もヤレヤレと言った感じで困った表情で応える。

 しかし、それでも心の中では嬉しいのだろう口元の口角が少し上がっていた。


 俺もアルフィーナも共にこの世界に親戚が存在しない。

 もしかしたらアルフィーナの故郷に遠い親戚が居るかも知れないが、もう100年以上前の事なので家系が続いているのかあやしい。

 子供が出来た事は喜ばしいが、共に初めての経験な上両親もいない。

 まして妊娠出産育児などに立ち会った事も無いので色々と考えは出るのだが、全てがおぼつかない状態だ。

 そのため周りの者達が気を使い、手を回してくれている。

 今日はアクサがやってきて、アルフィーナの事を色々と面倒見てくれていた。


 「ご安心をマサキ様、もうツワリも治まっている様なので無理せずいつも通りに過ごして大丈夫です!」

 「ああ、分かってるんだけど、どうも落ち着かなくて」

 「マサキ様、父親になるんですから、もっとドッシリ構えて下さい! それに今慌てていると、ご出産の時まで持ちませんよ!」


 アクサの言葉を聞いて一時は、落ち着かせるもののやはりすぐにアレヤコレヤと考え始めてしまう。

 周りの者達も、まあしょうがないと肩をすくめ気にした様子を見せないようにしていた。


 う~ん……はぁ、まあ、俺が産む訳じゃないからなあ……。


 悩むのを一時止めてアルフィーナの座っているソファーの隣に腰を下ろす。

 最近では、家に居る時出来る限りアルフィーナの傍に居て、お互いの特にアルフィーナの精神の安定につとめている。


 まあ、お互いに血の繋がった親族がいない事を考えると、落ち着くためにも近くに居たほうが安心するからだ。


 「少し大きくなった?」

 「うむ、まだ服の上からじゃ分からんが、触ると確かにふくらみを感じるのじゃ」


 アルフィーナの腹部に優しく手をあてると、確かに違う膨らみを感じる。


 それを感じた瞬間、俺の中に湧き上がる感動で自然と笑みがこぼれ、それと共に嬉しさのあまりに瞳が潤んでしまう。


 「チャコもこっちにおいで」

 「はい、お父様」


 それまで少し離れていたチャコに声をかけると、嬉しそうに尻尾を振ってアルフィーナと俺の間に腰を下ろした。

 別にチャコをないがしろにしている訳ではないが、心をく対象が増えたのでその分チャコ自身も寂しさを感じているのかもしれない。


 「チャコも触ってごらん」

 「はい……わっ! アルお母様のお腹膨らんでる!」


 触る直前までチャコの尻尾は、おっかなビックリと言った感じにピンと立っていたが、アルフィーナのお腹に触るとゆっくりと尻尾が振られ、興味が湧き上がると振るスピードが速くなって行った。


 「ふふ、この子が産まれればチャコはお姉ちゃんじゃな!」

 「お姉……ちゃん」


 チャコはその言葉にまだ実感が湧かないのか、不思議そうにアルフィーナの顔を見ていたが、ゆっくりとその言葉を認識すると尻尾を振る勢いは増していった。


 「お姉ちゃん! チャコお姉ちゃんなの! お父様っ!」


 アルフィーナは身重みおもなので俺の方に抱きつき興奮した様子のチャコ


 「ああそうだよ、チャコはお姉ちゃんになるんだ」

 「はいなの! お姉ちゃん頑張るの!」


 チャコは張り切って応えるが、あまりにも興奮し過ぎて昔の口癖が出ていた。


 何はともあれ家族が増えるのは本当に嬉しい事だ!



 そして、その光景を遠巻きに見守る女性陣がいた。


 「う~ん、赤ちゃんって、あんな感じになるのか……赤ちゃん……いいなぁ……」

 夜空は、生まれてくる赤ん坊に思いをせ楽しみでしょうがなく、そしてうらやましそうな様子をし


 「……うぅ、主様の子供……うらやま……いえ、でも……」

 真白は、懐妊の方を聞いてからずっと何かを考えている様子で


 「マスターの子ですか……(ミナママと呼ばせましょうか……いえ、ここはミナお母様が……そして、行く行くは……)」

 無表情ながら何かを考えているだろうミナ


 (((((嬉しい限りですね、いつかは私も……)))))

 情報共有外で考える5人のメイド達がいた。


 その者達を他所にアクサは、娘アクテを授かった当時の光景をマサキとアルフィーナに重ね優しい表情で微笑んでいた。




 そんな自分の家の状況だが、今日も仕事のために俺は王宮に出勤していた。

 アルフィーナの方は、本人が安定すれば問題ないと言っていたが、周りの者達が、無理はいけません! と半分強制的に産休扱いになり今は家で退屈と格闘している。


 「ふむ、報告書を見る限り国外の情勢は理解した。 今後の対応についても書かれている通りなんだね」

 「はい、主様、我が桜花国についての国外の認識は、未開で異様な生物が跋扈ばっこする地、魔界、人族の敵である魔族が住む地、と言った認識です」


 執務室で真白が持ってきた報告書に目を通す。


 真白は現在、情報を分析する機関に所属している。

 もっとも真白が、全ての情報を統括する最高責任者と言う訳ではなく、国外の情報を分析する一部門の責任者と言う立場だ。


 「月花げっか、君の意見は?」


 真白の後ろに控えていた月花に質問する。

 なぜ責任者の真白じゃなく、月花に意見を求めたのかは、恐らく気付いていると思うが月花がこれら国外・国内の全ての情報を統括する立場にある者だからだ。

 もちろん彼女だけではなく、舞花まいか蓮花れんか氷花ひょうか翠花すいか達も遂次ちくじ情報を共有しているので各々担当の方面を統括している。


 なぜ一括に統括する人間を立てないのかと言われれば、1人の人間が全ての情報を得てしまうと、その譲歩を元に己が利益なるように使用したり、脅迫したり、不信のおちいるなどのリスクが伴う。

 これは、アメリカであるFBI長官の様にする訳にはいかないからだ。

 彼は当初、その知性でFBIの組織改善や数々の情報を持って犯罪の摘発に尽力していたが、いつからか情報によって歪められた感情は、その情報で自身の立場を強化するばかりか、さらに情報を集めるために強権を発動させたり、それに歯向かう者に得た情報で脅したりと目に余る行為が繰り返され、最後は誰も信じられずに孤独死した。


 情報は生き物で時には、理性を歪めてしまう物なのかもしれない。

 だからなおさら、1人に情報を統括させるのではなく、5人のメイド達をもって情報を各部署に流す仕組みにしたのだ。


 「はい、マサキ様、通信の御許可を頂けますか?」


 月花は一礼すると、俺と真白、アルフィーナにミナが互いに頭の中で相互対話が可能な通信へのアクセス権を求めてきた。

 5人のメイド達は、許可さえ与えればミナを通して通信する事が出来るので秘匿性の高いものは、これらの通信で行なっているのがつねである。


 う~ん、神様に貰った通信機、あと3つ余っているんだよな……近いうちにチャコと、それと夜空に渡すのも良いかな。


 そんな事を考えていると、眼下に地図とグラフ等が展開されていく。


 『このように、国外情報分析機関の報告と同じく、各国の情勢と今後の見通しになっています。 これらをかんがみてやはり工作活動が将来的に必要と考えられます』

 『ふむ、真白は?』

 『月花と同じように考えます』


 真白も同意見の様だ。


 『なるほどね……しかし、工作するには、人が必要だな。 それにお金も……』


 人間全てが、聖人君子である訳ではない。

 お金で動く者も中にはいるのだ。

 そして、それら工作活動に必要な物もやはりお金だ。

 お金で人を動かした方が、足がつきにくい上、不要ならば切れば良い。

 もちろんそれに伴うリスク、たとえばこちらの思惑とは違う方に動く可能性など、多くの不確定要素をはらんでいる。

 しかし、これらのリスクを踏まえても捨て銭なら、動かす方のメリットの方が高くなるのだ。


 『月花、個人情報調査で各国の商人の内、善良と判断される商人のリストアップをしてくれ。 例えば暴利を貪るのではなく、儲けが少なくても遠くの村におもむいて商売する者、低所得層からの商売で買い叩きをせずにキッチリと商売をする者など、堅実で誠実な商人を頼む』

 『マサキ様、その条件は、いささか難しいと思います』

 『分かってる。 多少条件からハミ出しても構わない。 その判断は月花達に任せるよ』

 『承知しました。 こちらで厳選し近日にご報告致します』


 月花は、一礼して承諾する。


 『真白は、月花達の纏めたリストを参照し、現地の通貨を取得する方法と、それに伴うリスク等の課題を検討してほしい』

 『分かりました主様、しかし、現地通貨の取得と言いますと、貴金属や宝石を流すのですか?』

 『いや、それでは足がつく、食品が良いだろう。 例えば小麦、ただし現地と同じ品質の物、この国の品質だと恐らく上等過ぎて目を引いてしまうからね。 そこら辺の品質などの情報も分析研究して欲しい』

 『承知しました。 分析・検討と並行へいこうして農業、水産、林業関係者の意見も取り入れたいと思います』

 『そうだね、多くの意見を参考に現地の文化・文明を壊さない様に慎重に行なってくれ』

 『はいっ』


 真白も今回の案を持ち帰り研究してくれるようだ。

 多くの者の意見があれば気が付かなかった危険や課題も出てくるので一切をお任せしよう。


 「以上かな?」

 「はい、主様」

 「よしっ! 今日はこれで終了だね」


 ここで検討する案件が、これ以上ない事を確認すると俺は、気合を入れて勢い良く立ち上がる。


 「? 主様、この後、何か有るのでしょうか?」


 俺のその気合の入り様に真白は首をかしげる。


 「ああ、今日はアルが産婦人科でエコーの検査を受けるんだ」

 「? アルが産婦人科にかようのは、いつもの事だと思いますが……」


 なおも疑問がつのる真白に俺は、今日だけは違うと言いたい!


 「そうだけど、今日は、もしかしたら性別が分かるかもしれないんだ!」


 そう早ければ4ヶ月過ぎると、体内の赤ん坊の性別が判断される。

 もっとも遅ければ8ヶ月まで分からない時もあるから、確率的には低いほうなのだが。


 「はあ、性別が特別なんでしょうか?」


 聖獣であるからか真白は、いまいちピンと来ないみたいだ。


 「うーん、まあ男の子でも女の子でも、どちらでも良いんだけど……やっぱり早く知りたんだ」

 「はあ、そう言うものなんですか……」




 マサキは逸る気持ちを抑えきれずに執務室を後にすると、真白と月花だけが執務室にポツンと残される。


 「主様は嬉しくて仕方がないんですね」

 「はい、初めての子供となれば、それも一入ひとしおでしょう」


 そんなマサキの背の影を見て真白と、月花は互いに感想を述べ


 「……そうですか」

 「……そうですねぇ」


 2人は、そんなマサキの様子に納得し合いある考えを頭に浮かべる。


 (( もし ))


 同じ事を考えてると知らずに2人は、もしもの未来を想像し思いを馳せていた。

 実現するか否かは、考えずに……。



 世界の情勢と同じく桜花の国の歴史も積み重なる。

 いったい今後どの様にこの国が歩んで行くのか

 まだ、誰も予想出来なかった。



 アルフィーナのお腹の子の性別は。この日には分からず。

 意気込んで産婦人科に乗り込んだマサキは、肩を落とし盛大に溜息をついたのだった。


五色花冠について説明が多くてすいません。

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