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59.桜花国記(統治体制の基礎)


 桜花国歴13年1月


 「……っん」


 毎朝の習慣なのだろう。

 日も出ない明け方、いつもの時間に目を覚ます。


 布団の頭の方に備え付けているライトを薄明かりの状態にして時間を確かめると、そろそろ4時になるところだ。


 「んっ、ん……んっ!?」


 身体の眠気を取り払うために伸びをすると、身体の左側に違和感を感じる。

 布団を軽くめくると、そこには長い赤い髪が俺の左腕にき付く様にからんでいた。


 ヤレヤレと思うが、いつもの事なので気にせずにもう少しだけ布団を捲ると、スヤスヤと俺の腕の中で眠るアルフィーナの姿があった。


 「んにゅ……それも食べるのじゃ……」


 どんな夢を見ているのか知らないけど、俺の左腕を枕に幸せそうな寝顔をして口の端に涎を付けている。


 「よっと!」


 自分の枕を手に取りアルフィーナが枕代わりにしている俺の左腕と交換する。


 腕枕をするのは良いのだが、長時間頭を乗せていると腕に行く血流が阻害されて痺れるのでやめて欲しいんだけど……。


 今日もすこやかに眠るお姫様の寝顔を見ると、そんな思いもどこかへ飛んで行ってしまう。


 「んにゃっ」


 突然アルフィーナが寝返りを打つ。

 すると、肌蹴はだけた寝巻きの胸元から、綺麗なピンク色の頂を含めとても形の良い豊かな2つの山があらわとなり、呼吸と共に上下に起伏していた。


 アルフィーナは、帯締めの日本の寝巻きをいたく気に入り、寝る時はこれを常に着用するほどになっている。

 しかし、窮屈きゅうくつだからと言って下着を着けないのは如何いかんともしがたい。

 本人は気にしていないようだが、いつも寝起きにが肌蹴はだけていて色々と見えているので困ったものだ。


 「ほら、アル風邪引くよ!」

 「んん……」


 俺がもっと若ければ、こんな綺麗な女性の裸を傍で見たら朝から励んでしまうだろうが、そんな若さは無いので寝巻きをキチンと元に戻し布団を掛け直す。


 イヤ待てよ……若かった大学時代もそこまで旺盛おうせいじゃなかったな。

 草食系だったのだろうか?

 まあ、昔はいざ知らず今は、夜の営みをしっかりしているので良いだろう。


 かぶりを振って考えるのを止め立ち上がると、今日も朝のジョギング、それに軽い剣術、体術の鍛錬たんれんのためにジャージに着替える。

 まだ寒い時期だが、この家は暖房を入れなくても保温効果が高いので過ごし易い温度になっているので着替えるのは億劫おっくうではない。


 手早く着替え部屋を出ると、そこには2匹の白と茶色の犬が待っていた。


 「おはよう、2人とも!」

 「ワフッ!」

 「ワンッ!」


 俺の声を押し殺した控え目の朝の挨拶に、こちらも控え目に答えたのは、真白とチャコ

 2人は、獣型の姿でこの時間に待っていてくれている。

 真白は、人化の魔法で獣人にも獣にも姿を変えられるのは周知の通りだが、チャコの方も最近どちらにでも素早く変化できる様になっていた。


 それと、チャコと真白は、アルフィーナと結婚する前は一緒の部屋で眠っていたが、さすがに結婚後はアルフィーナと同衾するので個人の部屋で寝てもらっている。

 最初のうちは、チャコが寂しがってアルフィーナと3人で川の字に眠る事もあったが、最近は立派なレディになる事を目標にしているらしく1人で眠るようになった。

 言葉遣いも語尾の「なの」が付かない様に気を付けているみたいで最近では聞く事が少なくなっている。

 もっともお風呂だけは、今でも俺と入る事があるので立派なレディになるのは、もう少し先になりそうだ。


 玄関の戸を開けて3人で外に出る。

 やはりこの時期は、寒さが厳しく息が白く漂っているが、真白もチャコも気にする様子も無く嬉しそうに尻尾を振って外に駆け出て行く。

 それに負けじと、俺も気合を入れて走り出す。


 アルフィーナと結婚して以降、いつもこんな感じで朝が始まる。






 今日も桜花では、議事堂において会議が開かれ、色々な問題を採決していく。


 「近海の離島に人の存在を確認する事は出来ませんでした。 これによって島全域の住民全てが、桜花国へ籍を移した事になります」


 と桜花の国土調査担当者から報告があった。

 つまり、今回の桜花国への移籍をもって地図で示す島全域が、桜花国の国土となりそこで暮らす者が桜花国民となった訳だ。


 「分かった。 現在の開拓・開発状況はどうなってる?」

 「はっ! 現在の国土開拓開発状況は、目標の90%に達します。 今回の移籍で発生する人数と土地面積は少ないため計画に影響する事は、ほぼ無いと考えられます」


 国土開発開拓状況とは、現在の国民と今回とこれまでに加わった国民へのインフラ整備と、各種役所の設置、学修校及び15歳以上への一般常識の教育などの事で、新規参加組みを含め国として最低限の生活基盤を確保するための事業の事だ。

 他にも新規参加者への住居の建築(これは入居者が国へ借金する形になるが、利息無しの上、普通に家を買うよりかなり低額で貸し付けている)も含まれる。

 ※この住居は、1代の1世帯のみとなっている。

 これらの基準目標を決めており、その目標値に現在では、9割ほど完遂しているみたいだ。


 「順調そうだね。 ミナ、国庫の方はどうかな?」

 「はい、マスター、現在の国庫は、税率が低いのですが、1人あたりの消費拡大と人口の増加で税収が増えています。 国庫もうるっているので王手銀行が1,2件潰れても問題ありません」


 桜花の税率は、日本と比べかなり低い。

 しかし、先ほどミナが言ったとおり、1人あたりの消費拡大と人口の増加のおかげで税収が増えているらしい。

 今の様に公共事業や社会福祉に使っていても黒字で問題ないようだ。

 公共事業は、魔法や魔道具を併用してインフラ整備にあてているので、日本ほど金額が大きくなっていない事が1つの要因になっている。

 また、社会福祉も種族ごとにいや寿命が違うために、年金制や年齢別医療負担を行なっていない。

 年金については、国として今のところ導入する予定はないし、医療負担も一律にしているので国庫を圧迫するほど大きくなっていなかった。


 ミナの言う銀行が潰れる云々《うんぬん》は、それだけ余裕があると言う事だろう。


 「ミナありがとう。 次、憲法の方は順調かな?」

 「えー、ゴホッ、はい、問題ありません。 当初の予定通り本年2月に公布され、11月に施行となります。 ゴホゴホ」


 俺の質問にフォートルが立ち上がり応える。


 現在、フォートルやジェナートには、憲法の施行に向けて調整を行ってもらっていた。

 いきなり憲法を施行して大丈夫か? と心配に思うかもしれないし、もっともな疑問だ。

 しかし、憲法については、桜花国建国初年度から着手、多くの憲法を参考にして問題点をあぶり出し、苦節13年経ってようやく完成したのだ。

 大日本帝国憲法でも施行まで7年の歳月が掛かっているので、完全ではないにしろ十分に完成に近いものになっている。

 ましてや日本国憲法のように1年ちょっとで作られたものと比べるまでも無い。


 「と言うことは、国政選挙も今年中に実施されるんだね」

 「はい、本年7月に第1回衆参議院議員総選挙実施されます」


 ここ桜花国では、憲法施行にあたって立法権の集中を防ぐために2院制を採用する事になっている。

 議席は衆議院100議席、参議院10議席になる予定だ。(参議院は3年後に下位5名が入れ替え選挙を行なう)

 参議院の議席が、日本と比べて異様に少ないのは、議論を円滑に行うためで、議案を可決するにも衆議院に送り返すにも1人あたりの発言を多くするために少なくしている。


 参議院がこんなに少なくては数の暴力で変な法案が通ってしまう! と考える人もいるだろう。

 しかし、他にも議員以外で審査する目がある。


 それは、王家つまり俺だ。


 今回の公布予定の憲法では、王の政治に対する関与がとても大きな物になっていた。

 つまり衆議院で可決した案は、参議院に送られ両院で可決した議案は、その後王の認証・国璽を受ける。

 しかし、ここでただ王が何も言わずに認証するのではなく、議案の説明を受け、王が必要と感じたのならば議案の再検討を両院に命ずる事ができる憲法になっていた。


 国民が支持で当選した国会議員が変な議案を可決するとは、到底とうてい思っていないので再検討を命令する事は無いだろう。

 俺自身、国政は国民が選んだ者が行い、王は神輿みこしで構わないと思っている。


 ただ、その国会議員が変な事をしないように、国会議員を取り締まる法の整備もしっかりとヤルつもりだ。

 日本では、立法権を国会議員しか持っていないので、つまるところ自分達を取り締まる法律を自分達で作らねばならない。

 酷い言い方をすれば、泥棒が自分の行いを制限する法を自分達で作るようなものだ。

 甘くもなれば、グレーな部分も出てくるだろう。


 これに関して今回公布する憲法では、国会議員を規制する法律は、五色花冠ごしきかかんが立法する。 となっていた。

 五色花冠とは何ぞや? となるだろう。

 この五色花冠という組織の種をばらすと、舞花、月花、蓮花、氷花、翠花の5人の事だ。

 この5人は、ミナ製の人工知能と言うだけあって高性能で人格もある。

 ただし、人間が持ち合わせる欲の概念が低いため、こういった規制等は、論理的・合理的に物事を考えてくれるので議員規制の立法は任せる事にした。


 今後、より柔軟に対応出来るように人数を増やすかもしれないが、今のところはこのままで問題ないだろう。


 名前の五色花冠の花冠とは、花のかんむりではなく、花の花弁はなびらの事で、雄しべや雌しべを保護している物の事だ。

 つまり、子供を守る5色の花弁と言う意味で名前を付けてみたのだが良かったのだろうか?


 他にも現在の桜花国は、この五色花冠である舞花達5人が元になって、その下に各自に最近ミナが開発した3機の魔導量子コンピューターが付き情報の処理を行い、各所へ情報伝達を行なっている。

 各所、国会が設置されれば各府省庁等にある量子コンピューターで処理して実行していく事になるだろう。


 性能的には、

 一般のコンピューター >>>>> 量子コンピューター >>>>>>>>>> 魔導量子コンピューター >>>>>>>>>>>>>>>>>>>> 五色花冠(< 越えられない壁=ミナ ※絶壁と言う意味ではない!)

 になるのだろう。

 正確に測定したわけではないので良く分からない。


 この様に人工知能?と、国民の代表を両輪としてこの国を運営していく予定だ。

 人工知能が人間を統制するに疑問や嫌悪が在る人がいるかもしれないが、ここ桜花では、建国以前から人工知能?によるたみの統制が行なわれてきたので今更いまさらである。


 一応選挙についても大まかな概要が出来ている。


 選挙権は、15歳以上で桜花国籍の者が対象となり法律は、王政で整備した法律を国政選挙で選ばれた代表が追認する事になる。

 選挙方法も小選挙や中選挙ではなく、桜花国全域で1人1票を投じて100名の代表を選ぶ。

 選挙区なんて存在せず桜花国内から立候補者1人の投票になる。


 公示後こうじごに選挙の内容、つまり立候補者がどんな人物か知るすべについても一応案がある。

 それは、公示後に立候補した者、現在公人の者は、プライベートな事以外のその人物の過去の情報が漏れなく公開される。

 情報網が発展している桜花では、その情報を元に多くの評価サイト、又は、企業の提供のサイトで立候補者の評価が行なわれる事になるだろう。


 前の世界では、ネットが普及する前は、新聞・テレビ等でしか立候補者の為人ひととなりを知る術は無く、自分で知ろうとすればおのが足で立候補者の事務所や街宣活動を聞きに行かなければならない。

 後者は大変面倒なので、多くの人は前者のメディアを使うのがつねだったろう。

 ただし、これだとメディアが当選させたい人の良い所ばかりを注目させ、悪い部分を隠して目に見えなくしてしまう場合もある。


 それでは、桜花の選挙は大丈夫だろうか? というと、恐らく特定の人の良い部分をピックアップするサイトも出てくるだろうが、それに反対のサイトも出てくるので、過去にどの様な議案に賛成したのか、どの様な発言をしたかが、インターネットを通じて、いつでも、どこでも、誰でも見られるようになり、これらを元に投票者は多くの情報を聞きそこから選定していく事になるだろう。


 日本では、よく発言を撤回てっかいする。 などの言葉を耳にしたが、ここ桜花では、この発言をして、後日撤回したと言う事実が残るのでいくら撤回しても消えない過去になるのだ。


 まあ、簡単に言うと、立候補者の情報を多く国民に伝達し投票してもらう。

 当選した議員を規制する法は、人工知能が決める。

 議会で可決した議案は、王の国事行為を行なう前に、必要があると王が判断すれば説明する。

 説明にいささか問題がある場合(国民に不利益が生じる懸念がある場合)議会で再検討する場合がある。

 これら全て、国民が知るところなり。(国民に情報が伝達される)


 こんな所だろう。


 王の権限が強いと感じれば憲法を変えれば良い。

 一応憲法の方も3年後の参議院選挙後に改憲する事も明示されている。

 どこかの国の様に70年以上も1度も改憲せずに来た国があるが、桜花では先手を打って第1回の改憲を予定しているので敷居しきいは低くなるだろう。

 改憲の国民投票法にも書かれているが、ここでは割愛かつあいする。



 「まあ、順調でなによりだ!」

 「はい、ゴホゴホ、ゴーホホッ!」


 フォートルが返事しようとしたところでせきが止まらないようだ。

 顔色は悪くないようだが、かなり苦しそうな表情を見せている。


 「フォートル、風邪かぜか?」

 「ゴホ、ゴホッ! ……ハァッ、失礼しました。 いえ、体調の方は何とも無いのですが、胸に不快感がありまして……」


 たしかに最近の行動を見ると、体力的に問題なく風邪などでは無いみたいが……。


 「フォートル、無理をするな!」

 「いえいえ、マサキ様、私なら大丈夫です! なんのこのくらい、体の方は問題ありませんので!」


 フォートルは、胸を叩き大丈夫だと見せた。


 「息子のジェナートもフォートルの代わりに十二分じゅうにぶんに務まるだろう」

 「いや、しかし……」


 まだフォートルは、まだまだ働きたいみたいだが、ここで無理をさせられない。


 「そうです父さん、私が後を代わりますから」


 隣のジェナートもフォートルに声をかけた。

 実際にジェナートの能力も高く、フォートルの代わりに問題は無かった。


 「よし、お前は働きすぎだ。 しばし休んで養生するように!」

 「……はっ!」


 このままではらちかないのでフォートルの休職を決めると、フォートルは暫し目をつぶり承諾する。


 俺としてもフォートルを酷使しすぎたのかもしれない、ここは、ゆっくり養生してほしい。


 「公布は、全員出席するように! フォートル、先ほど休めと言ったが、お前が主体で整えた憲法だ。 公布時には出席しても良い。 それまでゆっくり休め」

 「勿体無もったいないお言葉、この老骨に鞭打むちうってでも必ずや出席いたします!」


 俺の〆の言葉にフォートルはすぐに返事する。


 「威勢いせいは良いが、休むんだぞ?」

 「分かっております」


 苦笑いの俺にフォートルは満面の笑顔で返してきた。


 こうして、桜花国の憲法は、発布される事になる。

 もしかしたら、この世界で初めての憲法かもしれないが、大事にし過ぎずに最善の選択で変えて行く事になるだろう。


憲法については、講義で流して聞いていたのであやふやな部分が多くあります。

専門的に学んでいる人には、ツッコミ処満載ですが、どうかご容赦下さい。

難しい事を長ったらしく書きたくないので、すいません。

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