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57.閑話 大海原の者達

お疲れ様です。

2話連続の閑話となります。


 桜花国暦13年 7月12日


 夏の日差しが増すように海波かいはが激しいここは、桜花国沖合の海

 今ここに激しい波を掻き分け押し進む船の集団があった。


 「よし! 波は高いが、船列は乱れていないな」


 船に備え付けられた司令官席に座るは、沖野おきのアトア大佐

 彼は、桜花国軍第1艦隊の司令官という立場にある。


 そんなアトアが座る船は、桜花国軍の戦艦 富士ふじ

 桜花で最初の戦艦として造られた船である。


 その全長は250メートル

 かつて日本海軍が保有していた戦艦大和が、全長263メートルなのでそれに迫るほどの大きな船だ。


 船首に光る紋章は、丸に山桜、これは、桜花国王家の家紋である。

 旧日本海軍の戦艦なら本来は皇室の家紋、菊花紋なのだが、ここ桜花国では丸に山桜が設けられていた。

 富士の建造当初、関係者の図面では菊花が設けられる予定だったが、

 「菊花の御紋は、日本の御紋。 この世界にいる日本人は俺1人、たった1人の日本人の勝手で使って良い御紋ではない」

 の一言で丸に山桜に変更された経緯があった。


 ただしこの事は、広く桜花国民に知れ渡り

 マサキが日本を大切に思っている事、、そして、そのマサキが日本文化を自分達にもたらしてくれた事を誇りに思う再認識の場となった。


 「この船の操舵、そして安定性は群を抜いていますね」


 アトアの言葉に返事を返したのは、海波かいばヨーギル少佐

 彼は、この1年以上、この戦艦富士の艦長を職とし、また、アトアの参謀として良く活躍していた。


 「各艦よく着いて来てくれている。 就役間もない艦もあるのだがな」


 スクリーンに映る各艦の船影を見てアトアは眼を細める。


 第1艦隊と言っても富士の前後に5隻の船が縦列で走っていた。

 前から松島まつしま橋立はしだて八雲やくも、富士、初瀬はつせ浅間あさまだ。

 艦隊と言ってもあまりにも少なすぎる。

 しかし、それは仕方が無い。

 富士以外の艦艇かんていは、12年の年末から13年の年始に初めて出港した船ばかりなのだ。

 去年から現在に至るまで、1年以上訓練に没頭する毎日だった。


 「ようやくここまで形になったな」

 「はい、本年末にも新たに就役する船も御座います。 それにそろそろレークの港にも造船所が新設するとか……」


 この桜花では、機密と言うほど機密ではないが、それでも軍関係の事となると情報も絞られて一般に発表されていた。

 そして、今ヨーギルがアトアに振った話こそ、最近噂になっている造船所の話題なのだ。


 「ふむ、耳が早いな。 まあ、極秘という訳ではないし、来月に開港するから構わないけどな」

 「はっ、と言うともしや……」

 「ああ、空母赤城が建造される予定だ。 すでに受注会社も決まっているから、そろそろニュースで分かるだろうがな」

 「やはり!」


 ヨーギルやその周りの兵から歓喜の声が漏れ出す。

 それもそうだろう、なぜならこの桜花では、いまだ空母が建造された事が無かったからだ。


 現在、実証機であるが、F-15に似た戦闘機が造られ桜花の大空を飛んでいる。

 つい2、3年前までプロペラ機が飛んでいた事を考えると、恐ろしい速さで飛行機の進化が進んでいる。

 そして、現在急いで研究機関で造られているのが、ステルス機と艦載機と発表されていた。

 そう艦載機、つまり船から飛び立つ飛行機を現在建造中だと国が言っているのだ。

 船から飛び立つなら、もちろんその船が必要

 この研究発表は、空母もしくは、それに類する何かを造ると暗に示しているに違いなかった。

 この発表を受けちまたでは、どこがその造船に携わるのか話が盛り上がっていたのだ。


 「それにその後には、おそらく大和の建造にも着手するだろう」

 「やっ、大和ですか!」


 アトアのその言葉に周囲から今度は驚きの声が上がった。

 大艦巨砲主義の極みとも言える超大型の戦艦 大和

 当時の日本では、極秘にしていたため一般の国民には名を知る者は少なかった。

 しかし、その後の調査や証言などでその存在が世に知られ、その大きな雄姿から後世においてその名は大変大きなものとなった。

 そして、日本の歴史を学んだここ桜花でも、大和の名は大変有名と名前なのだ。


 「もっとも。赤城のあとの上、他の戦艦も建造するから、いつになる事やら分からんがな」

 「いえ、予定でも凄いですよ!」


 ヨーギルも周囲も興奮し大いに喜んでいる。


 もっとも、マサキ様の心配は、今は国防ではなく別の所にあるんだがな……。


 アトアは思い出す。

 マサキから検討するようにと渡された作戦計画を。

 そして、現在の軍首脳部だけではなく、桜花の国政に与る者すべてに重くし掛かるこの作戦計画を……。


 この計画の進行しだいで、マサキ様は身を切る思いになるだろうから……。


 アトアは、敬愛する王が、この件にあまり思い詰めない様に願うばかりだった。


 「まあ、その辺にしておけよ、お前ら!」

 「これは、失礼しました!」


 ヨギール他、盛り上がっていた者達も口を閉ざし姿勢を正す。


 そのアトアからの一言で静まったその時だった!


――ビーーーーッ! ビーーーーッ!


 『水中より突発音、かず16、推定魚雷、我が艦には5発の音源が向かってきます』


 けたたましい警報の後にAIの富士より予測物の警告がなされる。

 「総員戦闘配置!」

 『総員戦闘配置、総員戦闘配置』

 「艦の外にいる者無し、水密扉すいみつとびら及び各部すべて問題なし!」


 「対魚雷戦ヨーイ!」

 「対魚雷戦用意ヨシ!」


 アトアは、富士からの警告を受け総員に戦闘配置に着くように言うと富士によって艦内に放送される。

 また、戦闘配置により担当者から、戦闘行動に支障が無い事が告げられた。


 ヨーギルからは、富士からの警告にいち早く対応し艦の防衛に入ると、すぐに防衛担当者より復唱が返って来た。


 「対魚雷戦始め!」


 防衛担当は、ヨーギルからの言葉を受け前方のモニターに映る魚雷(すでにAIによって番号が付けられている)に向け効果的なポイントに水中爆雷を打ち込む。

 アトアは、その様子を気にするも無く前方に3次元で映し出された、自軍の状況と水中からの魚雷の状況に目をやる。


 この魚雷は、トラップだろう……とすると本命は、この魚雷ではなく……。


 「艦長、副砲を使い周囲に音響ブイを打ち込め。 それと垂直打ち上げ型UAVも全機出せ!」

 「了解! 遊撃手、副砲で音響ブイを打ち込め!」

 『UAV、全機打ち上げます』


 副砲から艦から離れた位置に音響ブイが放たれる。

 これは、海底で動く物を検知するための物で音波を発生し、その音が艦の底に取り付けられた集音装置から富士によって分析、潜水艦などを調べるシステムになっている。


 垂直打ち上げ型UAVとは、文字通りミサイルの様に垂直に打ち上げられその後、艦の周囲を旋回飛行しレーダーで周囲に敵艦がいないか調査する飛行機である。

 このUAVは、小さいため長時間の作戦行動に向いていないが、この様な緊急時又は、上空に索敵機が無い場合などに短時間索敵する能力があるので便利である。


 これらすべての操作や分析などを、富士が一手に受け持っているのでこの艦が人員を多く必要としない理由となっていた。


 他の艦も対魚雷戦をしつつUAVを打ち上げていた。

 多ければ多いほど索敵範囲も広くなるので、各艦の判断はもっとも正しい判断だと言える。


 そこに海底から腹に響く様な大きな音と、大きな波が出来その影響で艦が大きく揺れる。


 『迎撃ようげき成功』


 先ほどの対魚雷戦用の水中爆雷が、魚雷の近くで爆発し発生した激流と共に魚雷を巻き込んだものだった。


 『続いて海底より突発音、数10、我が艦に3本向かってきます』


 普通の聴音担当者なら耳をつんざくほどの大音響だが、富士は瞬時にノイズを取り除くと、突発音の数と向かう先をわり出し、警告を発する。

 もちろん各艦のAIとデータリンクしているので、各艦の分析結果を照らし合わせているのでその信頼性は疑うところはない。


 各艦も自艦に向かってくる魚雷に対応するため行動を開始した。

 ちょうどその時だった!


 『本艦の3時、距離3キロの地点から空中へ射出物、数10、同じく9時3キロより射出物、数10、ミサイルと推定されます』


 UAVを使っての情報がすぐに届く。


 「松島、橋立は魚雷を処理しろ! 八雲、浅間がミサイルの迎撃、初瀬は主砲で3時の敵を狙え! 9時は我が艦が行なう! 主砲は9時方向に向きを変えミサイルが、発射された場所に海進弾を散布、準備出来次第に発射せよ!」

 「了解、9時の射出場所に主砲固定、海進弾充填……発射!」


 アトアの指揮により各艦が与えられた命令通りに行動を始める。

 富士の狙撃手もアトアの指示通りに目標をロックすると、主砲を発射する。

 富士の3門の主砲は、轟音と共に砲弾を発射し目標へ飛んでいった。


 『海中より爆発音多数……命中、圧壊音あっかいおんを確認。 松島、橋立より入電、魚雷全弾撃破。 同じく八雲、浅間よりミサイルの迎撃成功』

 「ふぅ」


 富士の報告を聞きアトアは被っている帽子を取って一息入れる。

 そして、もう一度被り直し機を引き締まると


 「訓練終了! 戦闘態勢解除、各艦はUAV及びブイの回収を行なえ。 終了後、各艦の艦長、副官は富士の会議室に集まるように!」

 「了解、戦闘態勢解除、すべて回収するぞ」


 アトアの言葉にヨーギルが、担当各員に指示を飛ばした。


 そうこれは実戦形式の対潜訓練だった。


 『蒼龍そうりゅう雲龍うんりゅう浮上します』


 富士の方向でアトアがモニターを見ると、海面より潜水艦の司令塔が顔を覗かせてきたところだった。

 しかし、その司令塔は、通常の煙突の様な司令塔と形状が違う。

 出っ張りは小さくどちらかと言うと、船の艦橋部分のみに近い形だ。


 少し時間が経つと艦橋だけでなく、潜水艦の上の部分が見え出す。

 その大きさは、150メートルほど原子力潜水艦に近い大きさがある。

 しかし、稼動乗員は65名、日本の通常動力型潜水艦の人員と同じ人数で稼動航行出来る。


 今回は、この潜水艦2隻に適役として訓練に参加してもらっていた。


 「司令、ここまでの訓練をする必要あったのでしょうか?」


 アトアが、椅子に座り一息入れると、ヨーギルが隣でささやく様に聞いた。


 「俺も思わんでは無いが、マサキ様から、技術発展がいちじるしいから現在の戦闘戦術もすぐに古くなる。 新しい戦術を導入する前に今のうち学んでおいた方が良い。 だそうだ」

 「今やっている事は、すぐに古くなる。 ですか、たしかに我が国の発展は著しいですから頷けますね」


 アトアの言葉にヨーギルは頷いた。


 「学び、実践し、体験して、更に学ぶ。 そこからどう発展・開発していくかは、おのが次第」

 「マサキ様が常に言っている事ですね。 もとを知り応用・発展せよ! つまり我々が今やっていることは、基の部分なんですね」

 「そうだ、それにこれは、我々が後人に教えねばならない事だ」

 「……そうですね」


 自分が今学んでいる事は、次に自分が後輩に教える事

 その後輩は、更にそこから先を学び、その後の後輩に教える。


 知識・技術の継承のバトンが、今自分達が持っている事を心に刻み2人は窓に映る大海を見つめる。

 眼には見えないが、見つめる先には桜花の国土と、自分達のバトンを受け継ぐ子供達が待っているのだから。






□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 「マサキ様、これが新造艦の富士なんですね」

 「ああ、アトアが司令官でヨーギルが艦長になるって聞いているよ」


 俺は、アトアを連れて富士の艦橋に足を運ぶ。


 「おぉ、ここが艦橋! 写真では拝見しましたが、この様になっているとは!」


 初めて艦橋に上がったアトアが、驚きと感嘆の声を上げている。


 「まあ、そうだよね。 驚くよね。 あの、アトア、紹介する者がいるけど、驚く……いや、呆れるなよ」

 「呆れる? マサキ様、自分はどんな相手でも失礼な行動はしませんが?」


 俺の言っている事にアトアは心底不思議そうな表情をしている。


 まあ、それも今のうちだけどね。 アトアには、申し訳ないけど……。


 「ああ、分かっている。 ちょっと待って、富士! 司令官のアトアだ、挨拶しなさい」


 周囲にある機械に電源が入っていく。

 そして、正面の空間が徐々に明るくなっていき!


 「はぁーい! 司令官、富士だよ。 よろしくね!」


 黒髪の美少女が手を振って挨拶してきた。

 しかも白と青でいろどられたセーラー服を着ている。


 その様子にアトアは、眼を点にして声も出せずに呆然としている。


 「富士! 普通に挨拶しなさい!」

 「マサキ様、私、これが普通なんですけどぉ?」


 富士は、口元に人差し指を当てて頭を傾けて何が問題なのか分かっていない様子だ。


 ……あぁ、頭が痛い。


 「あ~……じゃあ、軍人秘書官風に演じてくれ」

 「はっ! 初めましてアトア司令、わたくし、この艦の頭脳を務める富士です。 以後お見知りおきを!」


 富士は、ビシッと姿勢を正し敬礼する。


 ノリが良いのは結構だが、やれば出来るんだから最初からやって欲しいものだ。


 「マ、マサキ様、これは?」


 眼を点にしながらアトアは俺の方を見る。


 「俺のせいじゃないから! ミナ達が創った人工知能なんだから、この性格は俺のせいじゃないから……」


 俺は頭に手をやり溜息をつく。

 アトアの方は、いまだ呆然としたままだ。


 はたしてこの先大丈夫だろうか?

 

お読み頂き、ありがとうございます。

次回は。物語の本筋に戻ります。

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