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未来語3.クール・ビューティー・スナイパー

お疲れ様です。

未来語3回目です。

2回目に近い時期で、少し後の話になりますね。

 桜花国暦68年3月25日

 富士演習場


――シューッ………………カァーーンッ!


 先ほどから風切り音と、金属を鳴らす音が頻繁に聞こえている。

 それもそうだろう、ここ富士演習場において今、狙撃部隊による訓練が執り行われていた。


 狙撃の隊員達が丘に一列に並びながら伏して、傍らのスナイパーライフルで目標に照準を付けて発砲を繰り返している。

 全員腕前が良く、遠く離れた的に向かって放たれた銃弾は数多く当たっていた。


 そして、その中でも一際異彩を放っている人物がいる。

 180センチ以上の身長で細身、ヒョウ柄の毛並を見せる獣人族の女性だ。

 彼女も狙撃手でありスコープを覗き込み、その手はしっかりとスナイパーライフルのトリガーの横に指を置いている。


 しかし、彼女を特徴的にしているのは、その高身長でも美しい毛並でもない。

 それは、彼女が伏せている状態で地面主張している胸にあるだろう。

 うつ伏せになって体重を預けているためか、張り裂けんばかりに地面で苦しそうに押し付けられているそれは、横目から見てもハッキリと主張している。


 そんなスタイルの良い彼女は、白霧しらぎりミアーテ曹長そうちょう

 10年前に入隊し厳しい訓練を受け評価され、希望する狙撃部隊に転属したのが3年前の事

 狙撃部隊に女性がいるのはめずらしく、狙撃部隊が設立されて以来彼女で3人目となる。

 そして、今現在狙撃部隊の女性は彼女ミアーテのみだった。


 『風速および地面の温度上昇による着弾位置を調整します』

 「んっ」


 何処からとも無く聞こえ、そして、他には聞こえない声が脳に入ってくると、ミアーテは短い返事で返す。

 ミアーテの覗き込むスコープは、いたって普通のスコープだがミアーテが見ている標的には、弾丸の通り道と着弾予測地点が邪魔にならない透明な配色で映し出されていた。


 これは、彼女のみならず狙撃部隊全ての人間に使用されている補助ソフト

 各個人個人のデータを集積、天候、風速、気温など様々なデータの元に算出された情報をそれぞれの身体に流れる魔導ナノデバイスを通じて脳に反映している。


 彼女はトリガーに指をかけ、その着弾位置が狙っている的の中央に位置した瞬間! ミアーテはトリガーを引き絞る。

 すると、ボシュッ! と言う空気が抜ける様な音共に2000メートル以上の距離にある的に目掛けて弾丸が発射された。


――………………カアーンッ!


 遠くの方で金属がぶつかった音が聞こえると、狙った人型のパネルがユラユラ揺れていた。


 サイレンサーも付いていないのに、何故発砲音が聞こえないのかと言うと、ミアーテ達が使用しているスナイパーライフルに秘密がある。

 ライフルと呼称したが、この銃にはライフリングがされていない。

 その代わり魔導機構まどうきこうそなわっており、弾丸は魔障壁などで加速と回転が加えられ内部から空気と共に弾丸が押し出される。

 銃内部に弾丸が当たらないように誘導する装置も組み込まれており、銃のメンテナンス性なども考慮されボトルアクションで次弾を装填出来るようになっていた。


 『命中』


 脳内に聞こえる音声を無視してミアーテは、スコープを覗き込んだまま自分が狙った的を凝視する。


 「3ミリ左にズレた。 修正」

 『了解、補正します』


 ミリ単位すら許さぬとは、彼女の性格なのだろう。

 ミアーテは、一生の妥協を許さずに再度スコープを覗き込みトリガーを引く。


 すると、さきほどと同じ様に金属の甲高かんだかい音が、遠くから聞こえる。


 『命中』

 「うん」


 スコープを覗き込むミアーテも今回の結果には、無表情ながら満足の行く結果だったようだ。


 「訓練終了! 機材を片付け5分後に輸送トラック前に集合!」


 上司である中尉の号令により、全員機材を片付け始める。

 ライフル以外の機材を確認しトラックの前に並ぶと、人員点呼後にトラックに乗り込む。

 これで今日の訓練は終了らしい。

 あとは、帰ってから各々《おのおの》で自分専用のスナイパーライフルの点検整備に入る事になっている。




 機材の収納、銃の整備後ミアーテが寮に帰る時間は、すでに夕方近くになっていた。


 「……シャワー浴びよう」


 ミアーテが、シャワー室に入ると何人かの女性がすでにシャワーを浴びているようだ。


 「おお、白霧曹長か!」


 ミアーテにまず話しかけてきたのは、ミアーテより身長が高く肩幅もあり腕のちからコブは一般女性の胴回どうまわりより太い、男性と比べても引けを取らないほどの見事な体系をしているこの獣人族(赤狼)の女性は、炎慈えんじサイファ曹長

 彼女は、歩兵であり軽機関銃での制圧射撃などが大好きな女性だ。


 「うほ~、今日も大変でしたね~、どれんで差し上げましょう!」


 言うが早いか、身長150センチほどの小さな頭角族とうかくぞくの女性が、ミアーテの後ろに周り彼女の胸を両手で鷲掴わしづかみにすると、上下にみしだきだす。

 この小さな女性は、廉真れんまエレア、リアレス王立大学学長である廉真れんまフォクノルの孫娘で現在、桜花軍衛生兵軍曹おうかぐん えいせいぐんそうとして医療に従事している女性だ。

 しかし、この女性は、女性限定でセクハラをする事がしばしばある。


 「だ、だめですよ~、軍曹、上官に対して」


 ミアーテもエレアのこの行動は、いつもの事なので気にした様子もないのだが、それでもオドオドしながら止めに入るこの女性は、秋矢真あきやまリツカ伍長、戦車部隊の狙撃手を務める女性だ。

 リツカが必死で止めに入るが、エレアはやめる気配がまったく無い。


 「やめんかっ! このセクハラ魔神!」

 「ブベラッ!」


 エレアは、頭頂部を殴られて床に叩きつけられた。

 殴りつけた女性は、そのままエレアの後頭部を足蹴に起き上がれない様にする彼女は、朱鱗しゅりんマキア軍曹、蜥蜴族とかげぞくの女性で彼女は、偵察を得意とした部隊に配属されている。


 「まったく、白霧曹長もエレアに注意して下さいよ」

 「気にしない、エレアのこの行動は、いつもの事」


 まったく表情を変えないミアーテにマキアは、ヤレヤレといった表情だ。

 この5人は、所属部隊は違うが、気の合う仲間で一緒にいる事が多い。


 「はあー、バカやってんじゃないよエレア! それよりも白霧曹長、今回の狙撃訓練も首位だったらしいな! 凄いじゃないか」


 サイファは、その身体に見合った大きな声でエレアを叱り付けると、ミアーテに話題を振った。


 「ん、偶然」

 「んな訳あるか、この2年ずっと首位を独走してるじゃないか」

 「たまたま」


 サイファの賞賛しょうさんにもミアーテは、表情を崩す事無く応える。

 なんとも簡素な答えに普通の人なら感じ悪くえるかもしれないが、この5人は何年もの付き合いなので気にすることは無く。


 「白霧曹長凄いです!」

 「さすがですね」


 リツカとマキアが、サイファに続きミアーテを賞賛する。

 たしかにミアーテのこの記録は、桜花において凄い記録になっていた。


 「いや~、さすがギリアム殿の娘ですねぇ」

 「エレアっ!」


 いつの間にかマキアの足の裏から逃げ出したエレアが同じく褒めたのだが、ギリアムの名前が出たとたんサイファが怒鳴どなる。


 「炎慈曹長、いい、父は私の誇り」


 ミアーテは、サイファを真っ直ぐ見つめそれが本心である事を伝える。

 サイファも、そんな彼女の姿に慈母じぼの様な表情でミアーテを見つめ返した。

 長年一緒にいる2人だから、言葉を多くしなくてもお互いの気持ちが通じ合っているようだ。


 ミアーテの父ギリアムについてだが、

 彼女の父は、白い毛並の美しい獣人族(雪ヒョウ)で故郷では、どんなに遠くにある的でも外した事が無いと言われるほど弓の名手として知られていた。

 ミアーテが、父の事を知ったのは13年前、成人したばかりの15歳の時に初めて知った。

 これは、彼女の父親が行なってきた事と深く係わっているのだが、その全てを娘に伝えたのはギリアムが亡くなった後の事になる。


 10年前に国王であるマサキは、親族の許可を得てギリアムに係わる情報を公開し彼の行動に対する感謝と、その功績に勲章を授与した事で国民に広く知られることになった。

 そして、天之神社あめのじんじゃに桜花の国で初めて合祀ごうしされた人物になるので知らない国民の方が、圧倒的に少なかった。


 「ほら、白霧曹長もさっさと身体洗いな、風邪引ちまうよ!」

 「うん」

 「お前達もだよ!」

 「分かりました!」

 「了解!」

 「へ~い」


 ミアーテに続き、サイファに促されリツカ、マキアが応え、そしてエレアも気の抜けた返事で返した。


 この5人は、

 のちの『第1次桜花国世界大戦』

 他の国からは、『魔族の大進行』『終焉しゅうえんとし』『大厄災だいやくさい』など数多くの名前で呼ばれた戦争に功績を残す事になる。


 なかでもミアーテの功績は、父ギリアムにいで語られるほどに大きな功績になったと言われている。



 食事を終え就寝の時間になり、寮は夜のとばりが下りる。

 ベッドに横になりながらミアーテは、おのが胸に掛かる真っ白いペンダントを手に取り見つめる。


 カチャッという音と共にペンダントが開くと、


 そこには、ミアーテ似の獣人族ヒョウの女性と、真っ白な毛並の獣人族(雪ヒョウ)の男性が2人並び

 間に挟まれる様に抱かれているのは、まだ生まれたばかりの赤ん坊

 2人は、その泣いている赤ん坊を大事にいつくしみ微笑んでいる、そんな姿が写されていた。


 「……父さん」


 最後まで家族を思い大事にしたギリアムをミアーテが、初めてたりにしたのはその死後の事だった。

 身体はボロボロで冷たく横たわる父、

 そして、父の傍らで泣き崩れる母、

 その様子に理解が追いつかずに呆然とする私、


 そんな私にあの方は、悲痛な思いに今にも泣く出しそうな顔で私の両手を握り


 『ごめんね』


 そう言ったのを今でも思い出す。


 父は、最期まで家族や仲間を守ってくれたマサキ様にひたすら感謝をしていた。

 だから、父はあんなに頑張れたんだ。


 それなら、私も……父の意思を継いで……。



 ミアーテは、眠りに落ちる。

 その胸に掛かるペンダントをしっかりと両手でいて……。


お読み頂き、ありがとうございます。

初登場の人物ばかりで、名前を覚えきれないと思いますが、

ギリアムや彼女達のお話は、物語が進んでいくと自ずと分かると思います。

まあ、そこまで行くのが、大変なんですがね……。

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