45.桜花国記(第1村人発見)
お疲れ様です。
引き続き、龍翼人族の里へ です。
朝食も済ませ、西に取っていたルートを今度は北西に舵を取り進んでいく。
黒龍山はまだ遠くに見えているが、今まで人の手が入っていない未開の森ばかりが続いていたが、チラホラと人の手が入った形跡が少しずつ見え出すと、里に近づいている事を実感してくる。
「真白、ストーーーーップ!」
真白は俺の声に素早く反応し、走る速度を緩め停止した。
前方を見ると、明らかに獣道とは違う人の行き来をして出来た道と、遠くに僅かではあるが畑が見える。
どうやらここが里の入口みたいだ。 道作りはこの辺にして皆が来るのを待ったほうが良いな。
「真白、しばらくここで皆を待とう」
「ウォン!」
真白の背中から降りるて真白の労をねぎらうため頭を撫でてあげる。
すると真白も嬉しさを全開にして尻尾を振り、目を細め顔を擦り付けた。
しばらく真白と待っていると、バスが追いついて来た。
「どうしたのじゃ?」
アルフィーナが不思議そうな顔をしながら降りて来た。
どうも里まで一気に道を敷き設すると思っていたようだ。
「この先に畑があるからね、徒歩での移動になると思うんだ。 ボルガ、あれは村の畑だろう?」
続々とバスから降りて来たのでボルガを見つけ質問してみる。
「はい、畑で間違いありません……まだ、こんなに小さく痩せた畑を使いまわしているのか」
ボルガは、畑を見ると懐かしさと少し思うところがある様だ。
「それじゃあ、この先はボルガに案内してもらおう!」
「いえ、マサキ様それでは……」
「いいんだ、何かあればその時に対応するから」
「……分かりました」
里の者達も見知った人間がいれば少しは警戒を解いてくれるかもしれないから、ボルガには悪いが先頭に立ってもらう。
畑に挟まれた細い道を全員でゆっくりと進んでいく。
ふと畑に目をやると、ジャガイモのや葉っぱや冬瓜の実が成っているのが見える。
しかし、どれも育ちが悪く葉が小さい、これでは10月の収穫量に期待は出来ない。
「ボルガ、この里も同じ畑に同じ作物を何回も使っているのかい?」
「はい、その通りです。 私が出て行った時と、まったく変わっていません」
どうやら昔から同じ畑を使い続けたので、土地が痩せてしまったみたいだ。
しかし、工夫次第で同じ畑でも作物の成長を促進できると思うんだが、そういった人間はいなかったのだろうか?
しばらく道沿いに歩いていくと、数人の龍翼人族が畑で作業しているのが見えた。
「止まれ! お前達、いったいここに何の用だ!」
1人の龍翼人族の男が、行く手を塞ぐように立ちはだかり大きな声を上げる。
他数名の男達も、先ほどまで畑仕事に使っていたのであろう鍬の様な道具等を手に持ち、俺たちを警戒していた。
「久しぶりだなラグル、昔者は小さな子供だったのに、今ではこんなに大きくなっていたのだな」
「?」
ボルガは、立ち塞がる男に声を掛けると、男も訝しげにボルガを見る。
「なぜ俺の名前を知っている!」
男はボルガの事が分からないのか、持っている道具を今にも振り上げる勢いで吼えた。
「ぬっ! 私が分からないのか?」
おそらく昔の面影の残る男に話し掛けたはずなのに、自分を認識できない男にボルガは悲しい表情を作る。
「……ボルガ、そのヘルメット脱いだら?」
ボルガは、他の護衛の3人同様に、服と同じ迷彩色の戦闘用ヘルメットを目深に被った状態だった。
これでは顔が良く見えない上、おそらく見た事も無い服装だから思い出してくれと言っても難しいだろう。
「はっ! そうでしたな、普段からこの格好に慣れていた性で、まったく気が付きませんでした」
纏めるだけではなく、自身もキツイ訓練に参加しているボルガは、いつものこの格好に慣れて忘れていたようで、少し照れた様子でヘルメットを外した。
「これでどうだ?」
「! ……」
男達全員が、目の前で起こった出来事に口を開けて唖然とする。
彼らからしたら自分達と同じ龍翼人族が、変な被り物を外したとたん出てきたのだから驚きもするだろう。
「あんれ、あんたボルガかい! 昔この里から出て行ったボルガじゃないかい?」
男達の奥で成り行きを見ていた一人の龍翼人族の女性が、ボルガに気付いて前に出てきた。
「え! ボルガって、あのボルガさんかい!?」
「ボルガ……えぇ、あの人なのか!」
道を塞いでいた男達も女性から出た名前に聞き覚えがあり、ようやく自分達の前に立つ者が何者か分かったみたいだ。
「ああ、久しぶりだな」
「おおー! ボルガさんか! いや、なんだいその可笑しな格好は! 全然分からなかったよ」
「あらー、ボルガ、何やってたんだい? えらい昔に里を飛び出てそれっきりで、みんな死んじまったと思っていたよ」
ボルガという懐かしい顔をようやく思い出した彼らは、その反動から警戒心を解きボルガに駆け寄って思い思いの挨拶をしていく。
「うむ、話せば長くなるな……しかし、ここは変わらないな、昔のまんまだ」
「ボルガさん、そんなの当たり前だよ! この里は、昔と少しも変わらないよ!」
「そうだよ~懐かしいだろう、そんな事より、みんな心配してたんだよ~」
おそらくボルガの変わらないの言葉は、良い意味で言ったのではなく違う意味だと思うのだが、ここにいる里の者達には故郷に帰ってきて懐かしんでいると思ったのだろう返事を返す。
「ああ、ありがとう。 ただ今日は、こちらにいる方々を黒龍姫様に会わせたいと思って来たんだ」
「こちらの人族が? 黒龍姫様に?」
里の者達は、不思議そうに俺達一行に目を向ける。
どうやら、ようやく話が先に進むようだ。
「ああ、こちらの方々は、俺が住む……集落でお世話になった、いや、恩人達なんだ」
ボルガは遠まわしに俺達の簡単な紹介をする。
まあ、いきなり国王とか言っても、理解してもらえるか怪しいから仕方が無い。
「へ~ボルガさんの恩人か……だけど、ボルガさん、黒龍姫様に会うという事は、黒龍山に登るんだろう? いくら恩人でも黒龍山に入るには族長の許可が必要だよ」
「ああ、分かっている。 だから里に行って族長に会おうと思っているんだ」
黒龍山に入るには族長の許可が下りないと入れないのは、ボルガから事前に聞いて分かっていた。
もっとも最初ボルガは、里を無視し飛行機を使って里を飛び越えて黒龍山に入ろうと計画していたんだけど、さすがにそれは失礼だろうと却下した。
山に入るにしても里の族長に話を通すのは絶対とし、ボルガもそれを承諾した。
「でも大丈夫かい? 里にはあの4人もいるけど」
「もちろん承知の上だ!」
心配する女性にボルガはしっかりと頷いて応えた。
その4人と何かあったのだろうか? もしかしたら出奔する原因とか?
「通してもらえるか?」
「あ、ああ、もちろんだ! でも、里の者が驚くかもしれないから、俺がひとっ走り先に行って知らせてくるよ」
「頼む」
ボルガの返答を聞くと、前方にいたラグルは踵を返し、おそらく里の方向に向かって走り出す。
「ボルガ、大丈夫かい?」
「……はい、問題ありません」
何かを飲み込むように目を瞑り、スッと目を開けたそこには、何か決意を感じさせる表情があった。
俺は、ボルガの心情を汲み取り、それ以上聞く事はしない。
あとは、ボルガ自身がその行動で示すだろう。
「それじゃあ、みんなも進もうか!」
ここまで来た時と同じ様にボルガを先頭で1列になり細い道を歩き出す。
木々の隙間からは、遠くに黒龍山の姿が見て取れ、雲1つない空に佇むそれは、とても壮大な景色で見るものを魅了する。
しかし、これから向かう里の雰囲気は、暗雲立ち込めているかの様に重く暗かった。
お読み頂き、ありがとうございます。
次回は、里の中に入って行きます。




