41.桜花国記(河童 後編)
お疲れ様です。
図を試行錯誤しながら書いていたら投稿が遅れに遅れました。
すいません。
夏の高い空のもと、ロケットは煙を引きながら遥か彼方へと舞い上がり、すでにその姿は見えなくなっていた。
観衆は余韻に浸るようにロケットが飛び去った大空を眺め、俺も同じ様に空を眺めて何も考えずに空を眺めていた。
「スッ~~~~~ゴイのう! のうマサキ! いや~小さい物は何度も見てきたのじゃが、大きい物はこれほど迫力があるとは、いや、感動した!」
「ワンワンワンワン!」
「アンアンアンアン!」
アルフィーナが、ロケットの発射を生で見た感動を伝えてくると、同じ様に感動したのだろう真白とチャコが俺の周りをグルグルと周りだして感動を身体全体で表していた。
「そうだね、初めてこれほど大きなロケットの打ち上げを見たけど、これは感動モノだね」
周りを回るチャコを抱き上げて、真白の頭を撫でて落ち着かせてアルフィーナに応える。
「うむ! 見事じゃったのう」
「うん……っと、アル! そろそろチクミナ宇宙研究所の管制室に移動するよ」
「なに……、そうか! そうじゃった! 急ぐのじゃ!」
時間を確認すると、俺達は慌てて移動を始める。
それなりに遠くにあるチクミナ宇宙研究所へは、俺専用車であるバスで向かう。
護衛なんて必要なかったのだが、ボルガやルトール達、警備陣営にどうしてもと言われて前後に護衛の車両を付けて移動を開始する。
20分もかからずにチクミナ宇宙研究所に辿り着くと、全員足早に管制室に雪崩れ込む。
「入るぞ! どうかな?」
扉を開け、声をかけると管制室の中にいた人達は、何事か!と一斉に出入り口の扉から入ってきた人影に目を向ける。
入ってきたのが、俺達だと分かると一礼して仕事に戻っていった。
「お疲れ様です。 お早いお付ですねマサキ様」
1人の少年、いや青年が俺達を出迎えてくれた。
「ああファルター、俺もアルも一刻でも早く見たくて飛んできたんだ」
細身ながら随分とイケメンになった彼は朝永ファルター、現在ここチクミナ宇宙研究所の仕事を仕切っている者の1人だ。
学生と身分のため責任者などの要職に就いてはいないが、卒業したら間違いなく要職にすぐに就くだろう。
「そうなんですか、いや、それは良かった。そろそろ軌道上に乗り観測モードに移行する予定です」
ファルターを先頭に大きなモニターの前まで来ると、様々な数値が踊る画面上に現在の観測機の状態が示されていた。
「ハリナ、朝顔の状態はどうかな?」
ファルターが1人の少女に声をかけると、忙しく画面や周囲とやり取りをしていた少女が資料を抱えながら足早に俺達の固に歩み寄ってくる。
「これは、マサキ様! ようこそお越し下さいました。 現在の朝顔の状態は太陽光発電による起動を受信、現在は位置の微調整とシステムの起動を行なっております」
チョコンと頭を下げて説明してくれるのは木村ハリナ、彼女も学生ながらここチクミナ宇宙研究所重要な仕事をこなしていた。
朝顔とは、今回打ち上げられた静止衛星の事で、今度打ち上げられる軌道衛星は夕顔と言う名になる予定だ。
すると遠くから1人の職員がハリナに向かって何か合図をする。
「そろそろ展開が終了、観測モードに入ります……ですが、本当によろしいのですか? その……同時に一般公開しても」
ハリナの顔が少し躊躇するような、心配するような、そんな顔で俺を見る。
「ああ、構わないよハリナ、これは俺が決めた事なんだ! さあ、同時に回線を繋げて国民と共にこの感動を味わおう!」
「承知しました。では、失礼して」
ハリナは俺の言葉に頷くと、パソコンのキーボードとマウスを動かして何かの操作を行なう。
「それでは、モニターをご覧下さい」
ハリナの言葉通り全員が大型モニターに視線を向ける。
そして、モニターの画面が切り替わると、そこには……。
「これが……地球なんだね」
「マサキ……この青くて丸いのが、私達のおる地球なのじゃな……」
全員の目が釘付けになった画面には、真っ黒な虚空に丸い真っ青な宝石が浮かんでいた。
「そうだよ、これが地球だ」
魂が抜けてしまいそうになるほど美しく青い地球がそこにあった。
「やっぱり地球は、青かった」
「うむ」
目の前に映るそれに思わず口から言葉が漏れ出ると、アルフィーナも頷く。
「……マサキ様、そろそろここ魔界へとズームアップしたいのですが」
全員が感動する中、ファルターが申し訳なさそうに聞いてくる。
「あ……あぁ、すまんファルター、魔界を拡大してくれ」
「はい」
俺の言葉を聞いたファルターは、ハリナに向かって一つ頷くと、彼女も分かってるといった感じで操作を始める。
画面は真ん中より少し上方(北側)に位置する島を拡大していく。
そして、画面枠ギリギリまで島を目一杯拡大して映し出す。
「マサキ様、これが私達の住む魔界の全体像です」
「これが……そうなのか」
モニターには、丸い形の島が映し出されていた。
「マサキ様が居られた日本の地図を、縮尺を同じにして並べてみます」
丸い島が少し左に移動すると、右側にとても見慣れた日本の地図が示された。
日本の大きさと比べると、縦は日本領の島々を合わせた大きさと同じ位で、横は縦の長さと同じ位に見える。
これを見ると、魔界の大地は日本の数倍になるほどの大きさになるのだろう。
「そして、これが桜花国の国土です」
ハリナの操作で画面は、島の右下の方を拡大していき桜花の国を映し出す。
それは、上空の画像からもハッキリと分かるほど建物が並び、線上に道路しかれており確かに桜花と見て取れた。
「なるほど……小さいと思っていた我が国は、結構大きいのだな」
島の大きさから比べると、桜花の国の国土は20分の1位あるだろう。
「この作業に係わっている全ての人々に感謝を! ありがとう! なかでもファルター達は、まだ学生と言う身分なのに苦労をかけてすまない」
周りで作業に励む人々や打ち上げ作業に携わる全ての人達に感謝の礼を表すと同時に、ファルター達には謝罪のため頭を下げる。
「そっ、そんな、マサキ様、頭をお上げ下さい」
ハリナが慌てて止めに入る。
「そうですマサキ様、僕達は好きで作業に従事したんです」
今度はファルターが、同じ様に慌てて止めに入った。
「そうか、ありがとう。ファルター君がいなければ、この打ち上げは更に長い月日を要しただろう」
「いえ、そんな勿体無い」
ファルターに感謝とその功績を讃えると、慌てていたファルターが今度は照れたように頭を掻く。
「それにマサキ様、僕だけの力では、これだけ早く事を成し遂げることは出来ませんでした。 ハリナがいてくれたから、ここまで来れたんです」
「ちょっっっ、ばかっ!」
ファルターが自分1人で成し遂げたのではないと、自信を持って応えるとハリナは何故か顔を赤くした。
「ん?」
「おおっ!!!」
子供達のやり取りが良く分からない。
ファルターは、皆の力があってこそと言ったのじゃないのかな?
でも、アルは何か気が付いたみたいだ、あとで聞いてみよう!
2人のそんな様子から眼を離し、もう一度画面に映る桜花の国に目を向ける。
ここまで大きくなったんだ、誰にも悲しい思いをさせず笑顔でいられる国をつくらないとな!
国の今後に気を引き締めて望む事を誓い、青い地球が今後どのような歴史を辿るのか思いを馳せる。
さあ、明日も頑張るぞ!
「で? アル、ハリナは何で慌ててたの?」
「なんじゃマサキ分からんのか? (これじゃから朴念仁は)……よいかマサキ、ファルターはハリナが居てくれたから事を成せたと言ったのじゃ」
「うん、そうだね。自分1人では、難しかったって、言いたかったんだね」
「それもあるが、違うのじゃ! ハリナのおかげ、と言い変えられるのじゃ! つ・ま・り!」
「? ………………ッ! ああっ、2人は!」
「そうじゃ、まったく」
「いやはや、そうなのか~、いやこれは、めでたい! そうか、なるほで」
この時様子をアルフィーナはのちに手記に残している。
ようやく若い2人の思いに気付いたマサキは、目を細め柔らかい笑みを作って頷いていた。
その様は、まるで孫の成長を喜ぶ老人の様に見えた。
と書いていた。
それともう一つ、 これほど色恋に疎いとは……、大丈夫だろうか?……少し心配じゃ とも。
お読み頂き、ありがとうございます。
次回は、閑話回です。
もう出来ているので近日中に投稿します。




