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40.桜花国記(河童 中編)

お疲れ様です。

今回は、説明が長くなっておりますのであまり深く考えず、そうなんだ~と、いった感じでお読み下さい。


 桜花国暦10年 8月27日


 雲一つ無い青空に照りつける太陽は、肌に刺さるほど暑く

 暑さをやわらげるはずの風は、まったく吹いていない無風状態のイラーイダ近郊内陸部

 ここに、今大勢の人々が押し寄せて今か今かと、その時を待っていた。


 「人員点呼実施、作業員は全員安全な場所に避難しました」

 「了解! 全ての準備完了、天候、気温、風速問題ありません。 発射予定時間70秒前よりカウントダウンを致します」


 特大のモニター越しに発射管制と現場とのやり取りが行なわれているのが聞こえる。


 「会場の皆様、お聞きの通りにロケットの打ち上げは、本日8月27日14時00分に予定通り行なわれます。発射予定時刻60秒前よりカウントダウンが行なわれます。しばらくお待ち下さい」


 丁寧なアナウンスが流れると、全員がモニターに移されるロケットの様子と左上に映る時刻に目をやり、あとどの位か確認する。

 夏の暑さだけではない、興奮と熱気に包まれ皆その時を待った。


 「ロケット起動シーケンス開始いたします。よーい……はい70秒前! 69、68、67……」

 「起動シーケンス、カウントダウンを開始しました。」


 発射予定時間1分前に入りカウントダウンが始まる。

 そして、そのカウントダウンが10秒を切ると、観衆の熱気も最高潮になった。


 そして、その時が来た!


 「5、4、3、2、1、ゼロ」

 「1段目点火、リフトオフ!」


 その言葉通りにロケットの下部から火が点火され勢い良く噴出する。

 たちまち当たりに白煙が、もうもうと立ち込めると、遠く離れていた人々の身体を揺らし、お腹に響くほどの大きな音が襲いかかった。


 そして、最初はゆっくりと、そして徐々にロケットが少し持ち上がると加速して大空に舞い上がると、それを見た人々は、興奮と感動で歓声が上がる。


 「我が国初の国土観測衛サクラを載せたロケットが、桜花国暦10年8月27日14時00分、今宇宙へとその翼を羽ばたかせました!」


 そのアナウンスで歓声はよりいっそう大きくなった。


 モニターには、飛び去るロケットとロケットに搭載した地上側を映す画面の2つが映し出されていた。


 映し出された映像を眺め俺は、今日この日に打ち上げを決めた事に満足し、1月前のあの日の事を思い返していた。



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



 桜花国議事堂、第1議会室

 この第1議会室は、マサキを中心として50人程度が座れる様になっている。

 他にも会議室はあるのだが、大体の会議はこの第1会議室で執り行われていた。


 そして、今日もここで会議が始まる。


 まず内務担当のフォートルから、現在の人口と食糧自給率が示され、次に新たに入居した国民の人数が示された。

 どちらも、順調に伸びていて爆発的な人口増加に至っていないので問題ないだろう。


 「新たな国民の支援と指導を徹底して、トラブル無く桜花の国民になるようにして欲しい」

 「承知しております。マサキ様ご提案のパートナーケアサポート制度が生き、トラブル無く桜花国民へと移っております」


 このパートナーケアサポートとは、移住者の問題で以前提案したものだ。

 これは、新たに桜花国民となる住民に既存の桜花国民がパートナーとなり、生活習慣や心のケアやサポートを行なう事で、現在の桜花の生活環境に馴染ませて国民へと移ってもらうシステムの事だ。

 この間の移住者の生活保護として1年間の住居アパートと仕事が与えられ、1年経つと国民になるかならないかの判断が移住者に課せられる(延長5年)。

 ならないを選んだ場合は、現在の桜花国領域からの立ち退き、国民になるを選んだ場合は、国から小さいながら新居のプレゼントと、仕事の継続が約束されるようになっている。

 このことがこうそうしているのか、今のところ国民になる以外を選んだ住民はいない。

 ちなみに、桜花国での税金は所得税1%で電気水道は無料、学修校の授業料・給食費も無料、医療については一律30%負担となっている。


 「続いて、私が」


 ノソッと立ち上がるのは、司法担当の図書ずしょヴァルカスが説明に入る。

 彼は、近年になって桜花に籍を移した住人で、大きな熊の獣人族の老人だ。

 当初彼は、日本語の勉強と生活習慣を理解すると、その大きな身体に似合わず書物を読むことを好み、仕事もでずにリアレスの大図書館の主に成り果てていた。

 俺が、たまたま図書館の近くを通りかかった時に図書館の職員から助けを求められて確保連行する。

 当初ヴァルカスは、「マサキ様、日本の法律だと定年は65歳だとか、私めは65歳の年齢は、とうの昔に過ぎた老人、出来る事なら余生は読書に尽くしたいと思います」 などとのたまうたが、俺が桜花の法には、まだ定年の年齢等定めてはいない事を

告げると、かなりショックを受けて大人しく連行された。

 連れて来たは良いが、何の仕事を任せようかと考え面接を行なったところ、本を一度読むと中身を理解する記憶力と理解力を買い司法担当に抜擢ばってきしたのだった。


 「裁判所は現在、家裁5、地裁2、高裁1箇所、最高裁1となっております。今後、国の広がりに合わせる形で増えていく予定です。他、弁護士の育成も順調にいっております」


 ヴァルカスは、とてもゆっくりとした口調だが、はっきりと分かりやすく話してくれる。


 彼には、司法、取り分け裁判官と弁護士の育成に尽力してもらっている。

 この仕事に着かせたところ、ヴァルカスいわく、「マサキ様は、私に法典をたまわりました。 同じ書物でこれはこれで面白いのですが、他の書物を読む暇が無くなってしまいました」 と最近口をこぼしていた。


 まあ、しばらく辛抱して欲しい、後任に相応ふさわしい人材が育ったら、いつでも図書館の漬物つけものになってもらって構わないから。


 ヴァルカスの報告を聞き終えると、次に銀髪ぎんぱつ褐色かっしょくの初老の男性が貫禄のある雰囲気で立ち上がる。


 「マサキ様から拝命しました。 公安関係ですが、各地に少しずつ警察署と交番の設置が進んでおります」


 彼は、一影いちえいルトール 人と同じ姿だが耳先がツンと尖がった見た目は、日本のファンタジー作品で出てくるエルフそのもので、ダークエルフそっくりだった。

 彼らの種族名は、日本語の発音だとエルフィだかエリフィになるのだが、この桜花ではエルフ族としている。


 ダークエルフは、元々この魔界の住人ではなく遠く離れた地より遥か昔にこの地にやって来て、フィルの村の北西方向にある険しい山岳地帯に移り住んだらしい。

 ミナの調べだと、彼らの寿命は1000年近くあると言っていた。

 ルトール達に聞くと、親か祖父の代にこの地に移り住んだというから、2000年ほど前になるのだろう。

 他にも、移住を余儀なくされた理由が、かつていた地では、金髪で白い肌、瞳の色は青か緑が純潔エルフと称して権勢をふるっていたらしく、ルトールの親達は見た目がもっともも対極に位置していた事により、混じり者とみ嫌われ逃げ出す原因

になったそうだ。

 混じり者の中には、巫女と言われる者達もいるらしいが、それは今のところどうでもいいだろう。


 話を戻すが、現在ルトールには、公安とくに警察機構の構築を任せている。

 彼のその謹厳実直きんげんじっちょくな性格もあいまって驚くほどの速さで警察機構の基礎を築いてくれた。


 「うん、順調そうだね。 警察のみならず検事の育成も同時に行なってくれ」

 「ははっ!」


 ルトールの事だから、すでにそちらにも手を入れているんだろうな。


 「次に、わたくしからご報告があります」


 ルトールの次に立ち上がるのは、廉真れんまフォクノル、彼は科学技術を担当している近年桜花に移った頭角族とうかくぞくだ。

 顔の横で羊の角がクルッと渦を巻いているのが特徴的な老人だ。

 年齢的にヴァルカスとほぼ同じ年代だろう。

 その老練で重厚なモノの考え方をするこの老人には、科学技術関係の全てを取り纏めて貰っている。


 ヴォルカス、ルトール、それにフォクノル、この3人の様に現在いまの桜花の幹部人事は、新参しんざん古参こさん問わずに多くの人材を、能力しだいで重役に取り立てている。


 「まず始めに河童ロケットの打ち上げ時期を8月27日の14時にしたいと思いますが、マサキ様のご判断をあおぎたいのですが」

 「それは構わないけど、天候等大丈夫なの?」

 「はい、ミナ様から、10年分のリアレスやその周辺地域の天気と温度、湿度、風向きと風速の情報を頂いており、気象研究所と協議した結果、その時期が最も適していると判断いたしました」


 なるほど、ミナの蓄積データをもとに判断したのか……10年分の洗い出しには、さぞ難儀しただろう。

 今回打ち上げる静止衛星には、天気の情報も得られるはずだから、そちらも活用出来るようなるといい。


 「分かった。 そのように周知して貰って構わない。 不測の事態で予定を変更する場合は、フォクノルに一任するけどあまり気負わずに判断してくれ!」

 「承知いたしました」


 フォクノルは、深々と頭を下げる。

 その頭頂部が、近年薄みが増したのは気のせいだろうか?


 「それと、魔女様が開発されました魔素通信を衛星に積み込み、現段階では特に目立った問題はありません」


 魔素通信とは、アルフィーナの研究所で研究されている魔素を使った通信方法だ。

 魔素自体、物質にぶつかっても影響される事なく進むことを利用している。

 人体を通過しても人に害を与える事が無いことも確認されたので、おそらく魔素は電子よりも遥かに小さく、DNAの塩基配列すら通過する物と考えられている。

 また魔素は、ある程度の色分けも可能で(人が放つ魔力紋まりょくもんほどの複雑さは無理)色の変化と強弱で電波以上の複雑な通信が出来る事がわかった。


 この魔素を利用して通信するのだが、電波と同じ様に魔素を球状に飛ばすのは無駄が多い。

 かと言って直線に飛ばすと、今度は受け取る側の位置がズレれば受信が出来ない。


 この問題点を解決したのが、俺が生み出した魔障壁だ。

 魔障壁を通信側に設置しこれをAとすると、受信側にも同様に魔障壁Bを設置する。

 そして、魔素を魔障壁に向かって打ち出し、魔障壁AにBへ移動する書き込みを行なっておくと、魔素はBにタイムラグ無く飛んで行き受信装置に吸収され読み取られる。逆もまたしかり


 今回、静止衛星軌道上で魔素通信を使い距離が離れるとどの程度のラグが発生するのかも調査対象になっている。

 もし瞬間移動していたら光の速さを超える事が出来るかもしれない。


 ふむ、この装置を応用すれば物質転移も出来るかもしれないな……さらに魔障壁無しバージョンも……いやいや、転移先によっては、壁の中にいるの文字が出てしまう。

 いや待てよ、先行して転移先の状況を確認する端末を転移させて周辺の状況を確認して……。


 「……ま! ……マサキ様!」

 「んっ?!」

 「どうかなされましたか? ボーッとんされて」


 フォクノルを始めこの会議に出席している一同が、不思議そうにこちらを見ていた。


 「あいや、すまん。 ちょっと考え事に夢中になってしまった。 で? なにかな?」

 「はい、ロケットの観測・制御は、チクミナ宇宙研究所で行ないますが、やはり会場にも大型のスクリーンとスピーカーの設置した方が、打ち上げ場に来場した人々も楽しめるかと」

 「なるほどね、まあ、その辺も含めてイラーイダのアクテと、会場の警備・誘導するルトール達と話を煮詰めてくれ」

 「畏まりました」


 細かい事をここで決める必要はない。

 現場に携わる者達で必要な事を決めてくれれば十分だ。


 「続きまして、上半期の開拓状況ですが……」


 こうして、ロケット打ち上げの期日が決まり、各員はその準備のため飛び回るのだった。


お読み頂き、ありがとうございます。

ロケットの話が中途半端で色々とすいません。

魔素の説明は、今後展開予定のお話にもでてくるので、この辺でご勘弁下さい。

次は、後編で短いお話になる予定です。(これから書きます)

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