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38.桜花国記(晩餐会は続き)


 夜になってもリアレスの村の各所では、建国を祝ってのうたげがそこかしこで開かれワイワイと盛り上がっていた。

 モニターに映し出されている建国式の様子に、万歳と叫び浴びる様に酒を煽る者。

 桜花の国旗にグラスを掲げ、周りで飲む者達とともに 我が王と我が国の未来に! と声を合わせ、グラスを傾ける者などお祭り状態が続いていた。


 そして、喧騒の中、1人がある歌を口ずさむ。

 その独特な歌詞とメロディは、聞いた事が無い者には、いったい何の歌なのか分かるはずも無いが、先ほどまでうるさいほど叫んで酒を煽っていた者達が、一斉に静まり返ると続くように歌いだした。

 みなが歌いだしたそれは、桜花国の国歌、君が代である。(正確には、君が代の2番)

 自分達のために出来た国の歌、自分達のために豊かな暮らしをもたらし、そして、先んじて自分達の前を歩く異世界から来た王に敬意と誇りを持って全員歌いだす。

 そんな光景が、どこの酒場や家庭、そして会場で見られた。


 そんな村の様子を知ってか知らずか、まだまだ晩餐会は続いていた。



 フォートル達と話を終えると、一人椅子に座りくつろいでいた。

 立食式だが、部屋の隅には椅子を置いて疲れた者は、そこで休むようにしている。


 「ぬおー、マサキ! 休んでいる場合じゃないのじゃ! この魚の料理は上手いぞ! 白身の魚じゃが、油がのっていてそれに掛かっている甘じょっぱいタレがまた食を進めるのじゃ!」


 俺が、椅子に座っているところにアルフィーナが、皿に山の様に料理を盛った上で口に頬張りながらやってきた。


 「ああ、ウナギだね! 湖にいたのを捕まえたんだ、型の良いものをさばいたから油がのっているんだよ」


 木の家の湖には、ナマズの他にウナギもいた。

 最初に仕掛けた罠が、岸辺に近いところだったため、警戒心の強いウナギは取れなかったのだが、水深が程よい深さのところにウナギ専用の罠を設置したところ獲る事が出来た。

 今日の晩餐会には、その中でも方の良い日本だとアオと呼ばれるものを調理して出している。


 「おお! ウナギか! ……で、それはどんな魚なのじゃ?」

 「アルフィーナ様、この様な生き物です」


 ウナギを知らなかったアルフィーナは、首を傾けて疑問符ぎもんふを浮かべる。

 そこへ、各員の挨拶を済ませたミナやってきて、ウナギの映像を壁に投影しながら説明してくれた。


 「なんと! ナマズとは違うのじゃな、この様な長細い生き物がこれほど美味しいとはのう!」


 アルフィーナは、ウナギの全体像を見て驚きの表情を見せる。

 しかし、ウナギを食べる勢いは、一切変わることは無い。


 「はい、適切な処置をしているので、泥臭さなどは取れて美味しくいただけます」

 「なるほどのう、これほど美味な食材なら皆も喜ぶじゃろう!」

 「そうだね、でも、取り過ぎないように漁獲量を調整しないといけないね、もっとも今は、完全養殖に向けて孵化ふかと成長促進をしているんだけどね」


 現在、各村に水産試験場を設けて魚類貝類などの水産物の完全人工養殖を実験中だ。

 マグロやエビ、それに回遊魚など多くの種類を完全養殖に向けて飼育している。

 その中で、ウナギも養殖中だ。

 日本の最新の技術を取り入れつつ、環境を整備、餌の変更を行い孵化率・生存率はほぼ100%近くになり、餌の生産コストも削減できた。(日本だとサメの卵をペーストにして与えていたのでコストが高い)

 それでも成魚に成長するまで、あと数年の月日を有するため今出ている料理に使われているウナギは、湖から取ってきたものだ。


 「ほお、養殖のう。マサキは大したものだのう、先の先を見つめている」

 「まあ、俺の知恵じゃなくて、先人の知恵で日本でも問題になってたからね」


 需要に供給が追いつかずに乱獲の末、いつのまにか高級魚になってしまったでは遅すぎる。

 今出来る事は、今するだけの事をしただけだ。



 「しかし何じゃ、疲れたのか? 妙な顔をしおって」


 神妙な面持ちで俺の顔を覗きこむアルフィーナ

 もちろん手には、次に口に運ぶウナギの切り身を持ったままで


 「いや、ずいぶんと大事おおごとになったな~って思って」


 つい、数年前まで、日本の人材派遣でサラリーマンをしていたのに、今では、小国ながら1国の国王になってしまった。

 人生何があるか分からないな。


 「ふむ、私のいた国の国王は、何もせずにふんぞり返っておったが、マサキは気負いすぎじゃ! もっと堂々としておれ!」


 アルの国では、国王がどんな感じだったのか分からないが、俺は皆の前でふんぞり返るほど器が大きくは無い。

 むしろ、もっと頑張らないと! と思ってしまう。


 「まあ、国王となったからには、出来る限り頑張るつもりだよ」

 「ん? マサキよ、お主がこれ以上頑張ると、他の者が気を休める暇がないのじゃ。何事も程々《ほどほど》にするのじゃ」


 俺が頑張ろうと気合を入れると、若干呆れ顔でアルフィーナは応えた。


 「ん~そうかな? この会場だって、王宮だって建国を決めた日から今日まで皆が頑張ったからここまで出来たんだよね?」


 この会場(王宮の一部)は、俺が建国を決めた日から、皆が突貫作業とっかんさぎょうで工事して建ててくれたのだ。

 俺が何度も手伝うと提案しても、フォートル達がこれは私どもがすることなので、マサキ様はマサキ様のお仕事をして下さい! と断られた。


 そして、この王宮は、東西に1辺が2キロ以上の長さで、西に開拓事業間(現在、人口増加により手狭になったの拡張工事中)、南には開拓事業間で決められた事を処理する分野毎の事務施設、北に天乃神社あめのじんじゃ、南に地下鉄の駅と周囲を囲まれて大変予立地に建築中だった。

 建築中とは、文字の如くまだ完成に至っていない。

 建国を決めた日から今日まで日数が少なすぎたため、とりあえず間に合わせで式場と晩餐会場を先行して建てたのだった。

 今後は、寝所や執務する部屋等を建てるそうだ。


 「はあ~、でも、ここが完成したらやっぱり住まなきゃ駄目かな?」


 とにかくこの王宮は大き過ぎる!

 木の家の傍に建てた家が、かすんで見えるほどに大きい。


 「本来だと、国王となれば王宮に住むのが当然と思いますが、もっともそれは、対外的な意味や国民に威厳を見せるためで、この桜花国では、今のところ必用は無いかと見受けられます」

 「うむ、まだまだ小さな国じゃから、すぐに住む必用も無かろう」


 アルフィーナもミナもすぐに住居を移す必用は感じていないようだ。


 「そうか、じゃあ、しばらくは向こうから通う事になるな。 明日から大変だな~、開拓事業の会議や開拓地の視察、法の整備や国民への伝達……アレ? 今までと変わらないな!?」


 考えてみれば、国王になったから何か変化するような事も無く、明日も同じ作業が待っている。


 「な~んだ、対して変わらないなら悩んでも仕方ないや!」

 「そうじゃ! 解決の道筋と言うのは、1人では解決できん! お主1人で悩んでも仕方なかろう。今日は食べて飲むのじゃ! ホレホレ!」


 アルフィーナはそう言うと、嬉しそうに持っている皿を俺に向ける。


 「うん! それじゃ、俺も何か貰おうかな! ん? あれ? 真白とチャコは?」


 気を取り直して立ち上がると、いつも俺の傍にいる真白とチャコが近くに居ないことに気付く。


 「真白は、あそこで牛の肉塊にカブリ付いておるのじゃ」


 アルフィーナの指差す方向に視線を向けると、確かにローストビーフの塊を切らずにカブリ付いている真白が見えた。


 「真白……」


 まあ、今日は色々とあったから退屈してたんだろうな……。


 「チャコ様は、お食事を取られたあと、あちらで眠っております」


 ビュッフェ方式で料理のアレコレを配膳しているメイド達の後ろにスヤスヤと眠るチャコが見えた。


 「グッスリ眠っておるから起こさぬ方が良いじゃろ。 目を覚ませば寂しくてマサキを呼ぶからその時に傍に居てやるのじゃ」

 「そうだね、分かった。 じゃあ、俺も何かつまむ物でも取ってくるかな!」

 「待て! 私も行くのじゃ!」

 「お供いたします」


 いつものメンバーで食事を楽しみ、時より声をかけられ軽い会話を交わす。

 そんな、晩餐会が進んでいった。





 「ジニスのうじは何にするの?」

 「はっ!鋭牙えいがにしようかと……」

 「へ~、するどきばか、いいね! アクサは?」

 「はい、私は海にちなんで、海波かいばとします」

 「おお!いいんじゃない!」


 2人とも俺に頼む前に名前が決まったようだ、よかったよかった!


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