36.桜花国記(建国式)
桜花国暦3年 11月2日
この日、リアレスでは桜花国建国の儀が執り行われるため、いつもよりも人々が多く溢れかえっていた。
会場は、儀式のために関係者や各村の代表者が燕尾服やドレスの正装を着て並び静まりかえっている。
重厚な扉が開かれると、外から眩い光とともに1人の黒髪の人族が入ってきた。
白いワイシャツ、白いネクタイを締めて、紺色のスーツに身を包み中央に敷かれたレッドカーペット上を颯爽と歩いてくるのは、この桜花国の王となる素鵞真幸その人だ。
マサキは、集まる人々の中央を抜けて、一段高くなった舞台の上に来ると反転して人々に顔を向けて止まる。
舞台の左から、ドレス姿のアルフィーナとミナがそれぞれゆっくりとした足取りで現れ、マサキの両脇少し後方に同じ様に顔を人々の方へ向けて佇む。
次に舞台の右から3人の男女、先頭からフォートル、ジニス、アクサが両手で何かを掲げながら現れると、静にゆっくりと落とさないように歩いてきた。
そして、マサキの前まで来ると、一斉に礼をしてフォートルから順にマサキの前に来て両手に掲げる物を差し出す。
フォートルの掲げたソレをマサキが受け取ると、それは幾重にも折られた布の様な物だった。
空になった台を掲げたままで一礼してフォートルは下がったので、マサキはアルフィーナに手に持つ布を渡すと、アルフィーナは布を両手で持ち自分の前に広げてみせる。
アルフィーナの広げたソレは、白地の布の上に紅色の羽を広げた三本足の鳥だった。
次にジニスが、前に出てマサキに差し出すと、マサキは台の上のソレを受け取ると腰に刺した。
マサキの差したソレは、真っ白な大小の刀、これはミナが作った刀でマサキが選んだ黒の方ではなく白い方の刀、柄の部分には桜色の糸で一輪の丸に山桜の家紋があしらわれている。
ジニスが下がると、次にアクサが台の上の物をマサキに差し出す。
台の上には、四角い木製の箱が載せてあり、マサキはソレを受け取るとミナに手渡す。
箱の中には、何が入っているのかと言えば、それは国璽が入っていた。
国璽とは、国家の表徴として押す璽で、日本の御皇室は金製の天皇国璽と刻された御璽と、大日本国璽と刻された国璽がある。
マサキが渡された国璽は、白金の様な輝きを持つ金属製(ミナが用意製作したので何の物質か不明)で、桜花国璽と刻されていた。
3人は、それぞれの持つ物をマサキに手渡すと、一斉に礼をして来た時と同じ様に右に下がった。
フォートル達と入れ替わるように再び右から1人の女性が現れる。
現れたのは、蒼く美しい長い髪で同じ様に蒼いドレスを身に纏ったアオイだった。
アオイは、フォートル達と同じ様に一礼してマサキに縦に折られた和紙を渡すと、すぐにに下がった。
マサキは受け取った和紙を前で開くと、それは筆で文字が綴られた紙
静まり返った広間にタイミングを計り、マサキは一文字一文字読み上げていく。
「本日、11月2日
ただいま、3者より、国旗、剣、国璽を受け取りました。 この時点を持って、王位の元始とし桜花国の建国と致します。
また、私がこの世界に現れた3年前のこの日を持って、桜花国暦とし今日を桜花国暦3年と致します。
私の祖国は、日本であります。この日本の良いところを見習い、悪いところを見直し、皆が幸せに笑顔でいれるように努めるので、皆もともに歩んでいこう!」
読み終え顔を上げると、その会場にいる全員が頭を下げて敬愛の念を表していた。
そして、マサキは再び中央の通路から会場の外に足を向けて歩き出す。
その後ろには、国旗を持つアルフィーナと、国璽を持つミナが後に従い会場を出て行く。
これにより、建国の式は終了した。
なんとも簡素でマサキらしい式典だったが、会場の外である王宮の外では、リアレスに集まった人々がモニターに映し出される式の様子に興奮し歓声を挙げ、ある者は万歳をしていた。
この大歓声は、小さな桜花国の始まりの歴史であり、世界に響かせるほどの大きな産声だった。




